お嬢様の事情9アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
5.5万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/25〜02/27
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●本文
泣く子も黙る、超絶美少女の白雪 可憐(しらゆき・かれん)は目の前に座る母親の儚(はかな)の言葉に首を傾げた。
「信也のことどう思ってるかって言われてもよー、ンな事考えたこともなかったし」
「可憐ちゃん、信也君が好きなんじゃなかったのぉ?」
「は!?ンなデマどっから流れてきたんだよ!?」
顔を赤くしつつも立ち上がった可憐に、儚は無邪気な笑顔を向けた。
「そう。なら良かった」
「良かったって、何がだよ?」
「この間、信也君にも同じ質問したの」
「‥‥で?アイツ、何て答えたんだよ?」
「べっつにー、可憐ちゃんと同じ感じ?如何とも思ってない、みたいなぁ?」
「‥‥そっか‥‥」
寂しそうに伏せられた瞳に、儚は口元に微かな笑みを浮かべた。
「儚ちゃんね、2人は恋人同士なのかなぁ?って思ってたの。でも、違ったんだね」
「だから、いつそんな話しが‥‥」
「良かった」
「え?」
「可憐ちゃんと信也君が付き合ってなくて良かった。安心したの。ほら、信也君って一応うちで雇ってるって形になってるじゃない?だからね、お付き合いには反対だったの。でも、双方の気持ちがキチっと通じ合ってて、私に面と向かって好き合ってるんだって言えるんなら、私が反対したってしょうがないでしょう?好きな気持ちを否定することも、嫌いにさせることも出来ない」
儚は紅茶を一口飲むと、真っ直ぐな視線を可憐に向けた。
「でも、どっちも別に好きなんじゃなかったんだね」
「‥‥あぁ」
苦しそうに唇を噛んで目を背ける可憐に、儚は残酷な言葉を投げつけた。
「可憐ちゃんが信也君と付き合ってないなら、私がお婿さんを決めても問題はないよね?」
「はぁ!?ンでそうなんだよ!?」
「今週末に、可憐ちゃんはお見合いをしてもらうわ。大丈夫、相手はしっかりした人だし、可憐ちゃんの知ってる人。先方からも良い返事を貰ってるわ。だから、形式だけになるの」
「待てよ‥‥」
「可憐ちゃんのおつきは、信也君じゃなくて違う人になる予定だから。男性じゃなくて女性で。でも大丈夫よ、信也君には違う仕事をやってもらうから」
「待てってば!!」
「‥‥可憐ちゃん、時は待ってくれないの。貴方達は自分で決断をした。1度言った言葉は消えないの」
「だからって、何で見合いなんだよ!?わけわかんねーよ!」
「可憐ちゃんには早くお婿さんを迎えて欲しいの。白雪家のため、貴方のお父さんの後を継ぐ人を‥‥」
「親父の後を継ぐって、だって親父は‥‥」
「外国に行ってるって、まだそんな話を信じていたの?おかしいでしょう?貴方の誕生日にカードの1通も送ってこない、電話すらもかけてこない」
「‥‥つまり、何なんだよ?親父は‥‥」
「予想は出来てたんでしょう?」
儚は冷たくそう言い放ち、2枚の『招待状』と書かれた券を可憐の前に差し出した。
「高田さんの家で、パーティーがあるの。本当は私と可憐ちゃんが招待されてたんだけれど、私は行けないから2人で行って来て。‥‥2人の最後の思い出に」
とっても賑やかなパーティーになると思うから、楽しんできてね。
儚は小さくそう呟くと、席を立った。
≪映画『お嬢様の事情』募集キャスト≫
*白雪 可憐
泣く子も黙る、超絶美少女。外見年齢15〜18程度
ふわりと天使の微笑を向けられたがために卒倒した男性がいるとかいないとか
性格は腹黒で大雑把で俺様。猫かぶりの術に長けているため、お嬢様演技も完璧
お嬢様時は『わたくし』『〜様』『ですわ、ですの』信也は『ジイヤ』または『信也さん』
俺様時は『俺、俺様』『お前、てめぇ』『〜だぜ、だよな』信也は『ジジイ』または『信也』
*大胡 信也
女性ならば思わずキュンとしてしまうほどの王子様&勇者様外見。外見年齢15〜20程度
控え目な笑顔(困った時)と凛々しい表情(夕食のメニューを考えてる時)に卒倒する女性がいるとかいないとか
性格はいたってヘタレ。可憐に散々いびられた過去を持つために、絶対服従
通常時『俺、私(可憐に接する時)』『〜さん』『です、ます』可憐は『お嬢様』または『可憐様』
ヘタレ時『わたくしめ』『〜様』『です、ます』可憐は『お嬢様』
白憐(はくれん)と言う白猫を飼っている。
・その他
*高田家の人々
・高田家のお手伝いさん
・白雪家のお手伝いさん
・可憐や信也の友人 など
*お見合いの事を知っているのは可憐だけです
→可憐の性格からして、信也に告げる事はしないと思います
→信也は可憐の様子がおかしい(落ち込んでる)事に気付くとは思いますが、理由を尋ねても可憐は言いません
*可憐は信也の気持ちを誤解しています
→儚の言葉を真に受け、どうも思われてないと信じ込んでいます
*注意事項*
・その他のキャストの性格を決めるにあたって以下の事を厳守下さい
*見た目と性格のギャップ
例1)超美少女でお嬢様外見なのに俺様口調で凶暴な性格(可憐)
例2)王子様か勇者様かと思うほどの外見なのに、ヘタレで腰の低い性格(信也)
●リプレイ本文
雨宮 桜(桃音(fa4619))は元気のない可憐(角倉・雨神名(fa2640))の様子に、かけようとしていた言葉を飲み込むと、慌ててどこかへと行こうとしている白雪 薫(カナン 澪野(fa3319))の姿を見つけて声をかけた。
「薫さん、可憐さんの様子、おかしくない?」
突然声をかけられた薫が大きな瞳をパチリとさせ、可憐にチラリと視線を向ける。
「可憐さんに似合わない雰囲気。どうしたのかしら」
「食いすぎじゃん?」
「そんな適当な事言ってはダメですわ」
「そうよ。きっと可憐さんの事だから、もっと深い悩みが‥‥」
「‥‥って、何時から会話に加わってたんだよ!」
日本人形のような可愛らしい外見の桜とアンティークドールのような愛らしい外見の薫の間に顔を出して会話に加わっていたのは、パーティーだからと言ってめかしこんだ高田麗子(ティタネス(fa3251))だった。いつも以上に気合を入れた洋服は、センスの悪さと相まってあまり長時間見詰めていると胃の辺りがムカムカとしてくる。
「可憐さんの様子がおかしい原因はアレしか考えられませんわ!」
やけに自信たっぷりの麗子。薫が苦々しい表情で頷き‥‥
「‥‥やっぱ、アレしか考えられないよな」
良家のお嬢様といった容姿の鷹栖 雪乃(姫乃 唯(fa1463))は、元気のない可憐に近付くとマシンガントークを開始し出した。
「あ〜ら、可憐ちゃんじゃないの!一寸見ない間に大きくなってぇ。すっかり綺麗になっちゃったわねぇ!あら?可憐ちゃんどうしたの?元気がないのねぇ。もしかして風邪でもひいた?ほらぁ、沢山食べて体力つけなきゃ!折角のパーティーなんだもの!」
取り皿いっぱいの料理に可憐が儚い笑みを浮かべながら首を振る。
「折角ですが鷹栖様、本日は体調が優れませんので‥‥」
「可憐様、いかが致しましたか?」
会場の端の方で談笑をしていた信也(氷咲 華唯(fa0142))が可憐の様子に気付き、向かってくる。
「ご気分でも悪くされましたか?」
「いえ‥‥」
「あらぁ、信也ちゃんも一緒だったのねぇ!相変わらず仲が良いわぁ。あたしも後10年若ければねぇ〜。っと、あたしみたいなのが何時までも居ちゃ悪いわねぇ、まぁ、2人とも頑張んなさいよ!」
去って行く雪乃の背を見送っていた時、別の方角から薫と桜、麗子が走って来た。
「可憐さん、楽しんでくださってます?まだあまり食べていないようですが、これでもどうぞ」
麗子がお皿の上に乗ったバッタを差し出す。‥‥高田家センスの料理は何故か昆虫系が目立つ。可憐が苦笑しながら丁重にお断りを入れ、突然の『お嬢様演技』に麗子と桜が戸惑いの表情を浮かべる。そんな3人をそのままに、薫は信也の袖を引くと少し離れた位置まで歩いた。
「あの、兄さん。可憐のことだけど‥‥何か悩んでるみたいなんだ‥‥」
「えぇ、そのようですね」
「僕には何も出来ないけど、兄さんなら‥‥」
「買いかぶりすぎですよ」
寂しそうに目を伏せる信也に、薫は掴んでいた袖を離すと1歩後ろに下がった。
「‥‥兄さんは、素直な気持ちを伝えた方が‥‥良いと、思う」
「薫さん?」
今にも泣き出しそうな顔で走って行った薫の背中に手を伸ばし‥‥空を切る。信也は手を引っ込めると苦々しい表情で背中を木に預けた。
「元気がない理由、分かってますのよ」
突然麗子が真顔でそう言い、桜が思わず身構える。可憐が浮かべていた穏やかな笑みを凍りつかせ‥‥薫が走って来る。
「いくら流行を先取りすると言っても、五月病にはまだ早すぎますわよ!」
「いや、それ違うから!」「どうしてそうなるんですの!」
薫と桜からのツッコミに「何か間違った事でも言いましたかしら?」と言うような表情を浮かべる麗子。そんな彼女は放っておいて、薫は可憐の腕を掴むと真っ直ぐに瞳を見詰めた。
「お前は馬鹿か?一体何年‥‥信也兄さんを見てるんだ?」
「薫さん、腕が痛いです。放してください‥‥」
「答えろよ!お前、信也兄さんの何を見てきたんだよ!今まで‥‥あんなに近くに居たのに!!」
「痛いよ薫!!!」
可憐が悲鳴に近い声を上げ、薫は手を放すと悔しそうに俯いた。
「信也兄さんはお前しか見てないって‥‥俺にだって分かるのに‥‥」
「薫さん!?」
走り出した薫に桜が声をかけ、麗子が「こっちは任せましたわ」と言う視線を向けてから薫を追って走り出す。桜はその背中に軽く頷くと、腕を押さえて俯く可憐の背中をそっと撫ぜた。
「腕、大丈夫ですか?」
「えぇ。やっぱり男の子は力が強いですね」
「‥‥可憐さんは、信也さんがいなくてもいいの?」
か弱い笑顔で腕をさする可憐に、桜は真っ直ぐな瞳を向けた。
「1年に1回でもいいから素直になった方が人生楽よ?」
英国紳士風の外見に忍者魂を宿した自称・マスター・バロン(グリモア(fa4713))は引きまくる信也の目の前で怪しい巻物を取り出すと忍術を披露しだした。水芸や手裏剣、なんの役に立つのか分からないものばかりで、ソレを見せられている信也は苦痛だった。一応終わったらしい芸の数々に適当に拍手をし‥‥
「迷いや嘘は人の心を曇らせるでござる。多少無茶でも自分の気持ちは押し通す出ござるよ、少年」
バロンは意味深にそう言うと、煙玉を投げつけ‥‥こっそりと木の陰に隠れた。
「いたいた!可憐ちゃーん、何日かぶりねっ!‥‥あらン、何か元気ない?」
ラメ入りの黒スーツを着こなした、パーティー会場において浮いてる人No1の大善寺良彦(橋都 有(fa5404))は「何でもありませんわ」と言う可憐の返事に頬を膨らませた。
「言い淀むなんてらしくないわぁ!アタシの認めた可憐ちゃんはそんな子じゃあなくってよ?」
「本当に何も‥‥」
「‥‥可憐、さっきは‥‥」
シュンとした表情で木の影から出てきた薫が、良彦の顔を見て立ち止まると眉を吊り上げる。
「お前はあの時のオカマ野郎!」
「あらン、アタシに何か御用かしら?」
「よくも吊るしたまま放置してくれたな!おかげで連れ戻されたじゃないか!」
「‥‥ああ、あの時のお邪魔虫さんね!相変わらずぶっさいくねぇ。素地はいいんだからもう少しお淑やかになさいな!社交界の華たる者優雅に!気品を持って!このアタクシのようにね!」
「うるせー!誰が社交界の華だ!この食虫花!」
「こら薫さん!あんた逆上してんじゃないわよ!」
いきり立つ薫を桜が止めようとした次の瞬間、ピクリと薫が止まると耳を澄ませ、いきなり脱兎のごとく駆け出して行った。そして、その後を追う謎の影‥‥
「まだ捕まるわけにはいかないんだー!!」
「待って薫さん!」
薫を桜が追いかけ、可憐が寂しそうに壁に背中を預けると小さく溜息をつく。良彦が可憐の様子に少し距離をとり、壁際の椅子に足を組んで座ると頬杖をつきながら片手にグラスを持つ。
「んもう、つまんないったら。何なの可憐ちゃんのあの顔!さてはまたあの男?」
そう呟いた時、視界の端に信也の姿が映り、良彦は立ち上がると目の前まで歩いて行った。
「ちょっとアンタ、何ぼーっとしてんのよ。可憐ちゃんの様子に気付かないの?相変わらず間抜けな男ねえ!」
「気付いてはいますけれど、理由がわからなければ俺にはどうしようもありませんし‥‥」
「‥‥はぁ、何で可憐ちゃんはアンタなんか‥‥。あんな完璧な『偽お嬢様』で気持ちを押し込めてるような可憐ちゃん見て『理由が分からなければどうしようもない』ですって?ふざけんじゃないわよ。あんな顔させといて、何が『理由が分からない』よ!」
良彦はそう言うと、信也の腕を掴んで可憐の方へ突き飛ばした。
「言っておくけどコレはアンタのためじゃなく、可憐ちゃんのためよ」
可憐がゆっくりと視線を上げ、一瞬だけ苦しそうな表情を覗かせた後で俯く。
「あの、可憐様‥‥」
「信也、お前に言う事がある」
声が震えている。そう思った信也が可憐の顔を覗き込もうとして‥‥突然、可憐が信也の胸に抱きつくと顔を埋め、直ぐに離れると鋭い視線を向けた。
「お前は、もう要らない」
「可憐、様?」
「一応、今まで世話になった礼は言っておいてやるぜ‥‥あばよ」
「可憐様!!」
「‥‥うるさい!お前の世話なんかもう要らないって言ってるんだ!」
「ですが‥‥」
信也に腕を掴まれ、可憐は振り返るとその頬を思い切り叩いた。驚いたような表情の信也が腕を放し‥‥
「二度と俺の前に現れるなっ!!」
「‥‥可憐様、どうして‥‥」
「良いな、命令だ!二度とだぞ、もう二度と‥‥」
言葉がつまり、可憐は信也の瞳を真っ直ぐに見た後で、踵を返すと走り出した。
「可憐ちゃんの声が聞こえたけど‥‥あらん?どうしたの?」
走って来た良彦が信也の腫れた頬を見て首を傾げ‥‥少し切れている唇に、持っていたハンカチを押し当てる。
「どうして可憐様は、泣いていらしたんですか‥‥?」
「まさかアンタ、可憐ちゃん泣かして‥‥!」
キっと目を吊り上げた良彦が、信也の顔を見て思わず言葉を失う。そっとハンカチを唇から放し、血のついた面を折り込むとソレを信也の胸に押し付ける。
「どうしてアンタまで泣いてるのよ‥‥」
信也がその場にしゃがみ込み、良彦は少し迷った後でそっとその場を後にした。
「どうして、可憐様‥‥‥‥」