迷子の事情アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮下茜
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 やや難
報酬 5.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/15〜03/17

●本文

 お菓子屋さんの角を右に曲がり、真っ直ぐ歩くこと3ブロック。
 左手にお花屋さんが見えたらその角を右に曲がり、真っ直ぐ歩くこと5ブロック。
 赤い看板が見えたらその横を曲がり、交差点を通り過ぎた先にある喫茶店。
 ‥‥キチンと聞いたとおりに歩いてきたつもりだ。
 お菓子屋さんの角を右に曲がり、真っ直ぐ歩くこと『5ブロック』
 左手に『耳鼻科の病院』が見えたらその角を右に曲がり、真っ直ぐ歩くこと『3ブロック』
 それなのに、赤い看板は見えない。

「‥‥ここはどこでしょうか?」
 閑静な住宅街で、繭は頬に手を当てながら周囲を見渡した。
 赤い看板なんて何処にもないではないか‥‥それでも、適当に歩けば着くかも知れない。
 繭はそう思うと、住宅街の中を歩き始めた。
 右に折れ、左に折れ、交差点を渡って公園を突っ切り‥‥
「‥‥うーん、ここはいったい‥‥」
 完全に迷子になってしまった繭。来た方向すらも思い出せない。
 今にも泣きそうな表情でキョロキョロと周囲を見渡し‥‥繭に救いの手が差し伸べられた。
「あの、どうかしましたか?」
 繭と同じ歳くらいの男の子が2人、首を傾げながら声をかけてくる。
「どうやら道に迷ってしまったようですの」
「何処に行こうとしてたんですか?」
 2人のうち、優しそうな顔をした少年・翼が柔らかく尋ねてくる。
「喫茶店なんですの」
「待ち合わせか何かですか?喫茶店の名前は分かります?ここら辺は喫茶店が多いんです」
「名前‥‥確か、カタカナで‥‥英語みたいな‥‥」
 真剣に考え込む繭。暫くしてからポンと手を打ち顔を上げ‥‥
「『すもう・ファイト』ですわ!」
「え、それ喫茶店の名前なの?」「どんな喫茶店だそりゃ!」
 翼がキョトンとした顔をし、少しキツそうな顔をした少年・格(いたる)がツッコミを入れる。
「大体『すもう』は日本語じゃねぇか!」
「えぇっと‥‥『すもう・エイト』だったかしら‥‥」
「戦隊物かっ!!だぁら『すもう』は日本語だ!」
「『すもう・フェアプレイ』‥‥」
「凄い長い喫茶店名だね」「だぁぁ!!俺の話を聞けっ!!」
 格が地団太を踏み、翼が苦笑する。
「相撲は日本語!それともなんだ、相撲であってるのか?」
「‥‥すもも、だったかしら‥‥『すもも・ファイト』」
「凄い名前の喫茶店だね」「それ、ぜってー違うだろ!!」
 どうやら喫茶店名すらもよく覚えていないらしい繭。一先ずその話は置いておいて、どこから来たのかを尋ねる。
「駅からですわ。あっちからですの」
 右手方向を指す繭。けれどそちらは駅の方向ではない。
「‥‥お前、方向音痴だろ?」
「失礼ですね!方向は完璧ですの!でも、現在は絶賛迷子売出し中ですの!」
「絶賛?」「迷子なんか売り出すな!」
 どうにもボケとツッコミになってしまう会話に格が脱力する。
「ちゃんと聞いたとおりに歩いてきたんですけど‥‥」
「メモとかは取らなかったの?」
「記憶力には自信があるんですの!」
「だったら何で迷ってんだよ」
「‥‥あ、見てください、あそこに雀が!」
「話をそらすな!」
「と、とにかく、1度駅まで戻ってみよう?もしかしたら道順を思い出すかも知れないし‥‥」
「一緒に探してくださるんですの!?」
「このまま放っておいたら尚更迷子になりそうだからね。僕も格も時間はあるし」
「翼はお人好しだなぁ」
「翼さんと格さんって言うんですか、私は繭って言いますの。宜しくお願いします!それじゃぁ、一旦駅まで戻って‥‥」
 クルリと振り返り、駅とは逆方向へと進もうとする繭。
「そっちは違うよ!」「そっちは逆だ!」
「‥‥さっきから思ってたんですけれど、お2人ってよく声が合わさりますよね」
「まぁ、幼馴染だし、昔からこうだったよなぁ?」
「そうだね」
「ドッペルゲンガーですね!」
「‥‥お前、ぜってー変な風に言葉覚えてるだろ?」


≪映画『迷子の事情』募集キャスト≫

*繭(まゆ)実年齢16(外見年齢15〜18程度)
 おっとり天然、マイペースな迷子さん
 言葉を間違えて覚えている節がある

*翼(つばさ)実年齢17(外見年齢15〜18程度)
 優しい雰囲気の少年
 繭の天然発言にもしっかり反応するが、ツッコミはあまりしない

*格(いたる)実年齢17(外見年齢18〜23程度)
 キツめの雰囲気の少年
 繭の天然発言にしっかりツッコミ、恐らくかなりの苦労人

*その他
・道で出会う人々
・翼と格の友人

*補足*
 繭が行きたい喫茶店は『Snow White』と言う名前です。カタカナではなく英語です
 お花屋さんを耳鼻科に間違えたのは、繭の思考回路が『おはなやさん』→『それらしきものなし』→『耳鼻科の看板』→『お鼻やさん?』と言う道筋を辿ったからです。
 今ではお花屋さんは耳鼻科の事だと思い込んでいます

●今回の参加者

 fa0075 アヤカ(17歳・♀・猫)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa2459 シヅル・ナタス(20歳・♀・兎)
 fa2726 悠奈(18歳・♀・竜)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa3800 パトリシア(14歳・♀・狼)
 fa3887 千音鈴(22歳・♀・犬)
 fa4956 神楽(17歳・♀・豹)

●リプレイ本文

「すももファイト、桃は端午?端午はだんご?タンゴ?タンゴは回る、回るは仔猫、仔猫は可愛いですの♪」
「あ、本当だ可愛い〜」
 ぺったりとペットショップのショーウィンドウに張り付いた繭(阿野次 のもじ(fa3092))と翼(悠奈(fa2726))の首根っこを掴むと、格(神楽(fa4956))は力なくツッコミを繰り出した。
「いい加減ボケは良いから。つか、コレはお前の問題であって、俺達は基本的にどーでも良いんだから」
「まぁまぁ、とりあえず駅まで戻ろう。犯人は現場に戻るって言うしね、現場百回」
 あんたはどこのデカだ。と言うか、犯人(繭)が現場に戻った所で何か収穫があるかどうかは分からない。


 方向音痴の繭を引きずるようにして、翼達は駅へと舞い戻ってきた。
「ここの駅には見覚えはない?‥‥それじゃぁ、道から辿るのは無理だね。記憶のサルベージした方が早いかな?」
「あれ?翼に格?」
 突然背後から声をかけられ、振り返った先には眼鏡をかけた真面目な好青年風の男性が立っていた。
「晃?」
「そんな顔してどうした?って言うか、隣の女性は?」
 晃(森里時雨(fa2002))に翼が簡単な説明を入れ、繭がどこかへ行ってしまわないように首根っこを捕まえている格。犬猫扱いだが、それは仕方がない。
「この駅にも見覚えがない‥‥でも、この駅から歩いて来たはずなんだよな?つまり、現在地の把握が出来ない以上、相対座標指定は混乱の元。絶対座標に基づく行動を推奨いたします」
「や、言ってる意味全然分からないって」
 必死の説明をあっさり切り返す翼。
「つまり、住所から調べれば良いんじゃないか?」
「あ、住所も知らないみたいだから」
「‥‥って、住所知らねぇのかよ!?まぁ、そんな時は電話帳だな。営業中の店舗であれば、これが最強の検索方法と断言しよう!」
「あ、残念だけど‥‥」
「絶対座標どころか、固有名称すらうろ覚え通り越して空耳時空だとうっ!だ、だが、業種検索と言う強力な武器がある。すから始まる喫茶店をリストアップすれば!」
「頑張れ〜♪」
 その大変そうな作業を晃に一任する翼。
「すあまふぁ〜む、酢飲むファミリー‥‥」
「敵は常に狙ってるわよ♪」
 突然そんな声が聞こえたかと思うと、格の背後から何者かが忍び寄り、膝かっくんをしだした。
「し、薔姉っ!」
 ズベシャァっと膝から崩れ落ちた格が従姉の薔(千音鈴(fa3887))を恨みがましい視線で睨みつける。
「あ、翼君もお久し振り!それで、その女の子とそっちの男の子は?」
 キョトンとする薔に、迷子だと言う事情を話す翼。
「だから今、キーワード・DE・ローラー作戦ををしてる所なんだ」
「翼君、ステキセンス?」
 薔が憐れみの瞳で翼を見詰めるが、彼はそんな事には気付きもしない。
「と、とりあえず、喫茶店の名前を逆に辿ったら近くなるかも。すもも・タイト、すもも・メイド、スリー・メイド‥‥もしかして、繭ちゃんってメイド喫茶の子!?」
「逆さ読み!その発想はありませんでした!流石です!」
「逆さ読みじゃなく、記憶を逆に辿れって言ってんだよ!」
 既にツッコミ放棄状態の格に変わり、晃が遠投でツッコミを入れる。
「すのぼ、スロー、スホーイ、スゴイ‥‥すス巣酢素‥‥」
 壊れ気味の晃を電話帳から引きずり離した翼に、格が顔を青くしながら声をかける。
「おい、後の事はお前に任せて良いか?これ以上付き合ってると熱出そうだ」
「うん、活きの良いツッコミ入荷したから、良いよ〜」
「俺は魚市場で新鮮ピチピチ取れたての魚ですかぁぁ!!??」
「まぁ、安心なさい。私がついてるから。っと、どこまで言ったかしら?」
「フィン・マックールまでです!」
「ル‥‥ルイ14世って、何でしりとりになってるのよ!」
「‥‥薔姉さんがいるから心配なんだけど」
 ポツリと本音を漏らした格が、薔に睨まれ‥‥
「先ほどから思っていたのですが、どちらかが岬さんか助さんに統一した方が覚えやすいかと思うんです。あ、格さんはもういないので、どちらも改名の方向で良いですよね」
「勝手に人の名前を決めるなーっ!」
「‥‥ところで、何を探されているんでしたっけ?」


 鳴魅(シヅル・ナタス(fa2459))はパトロール途中でどうやら道に迷っているらしい翼達に声をかけた。よくよく事情を聞けば、迷っているのは繭のみで、他の人はその付き添いだと言う。
「すもも・タイトなんです!」
「そのような喫茶店はなかったと思いますが‥‥」
 実は鳴魅、途轍もなく性格が悪い。「困っている人を助けるのは警官として当然の事です」などと言いながら、繭の途方もないボケに内心厳しく突っ込んでいる。心の声は誰にも分からない、と言うのが彼女の心情だが‥‥
「聞こえてますよ」
 にっこりと愛らしい笑顔で呟く翼。鳴魅がギクリと首を竦め‥‥
「あれ?僕、何か言いました?」
「いえ。な、何も‥‥」
「何か、お巡りさんと一緒にいるとやり難いわ。どうせ町を一周するつもりだったし、もしまだ分からなかったら交番に行くから」
「そう。それじゃぁ、き、気をつけて」
 猛スピードで自転車をこいで去って行く背中に、翼と薔が首を竦めながら視線を合わせた。


 ルシア(パトリシア(fa3800))は困っていた。だからこそ、前方から歩いてくる翼達一行駆け寄り、あろう事か繭の目を見て話し始めた。
「コクトーさんの家を探しているのですが」
「コクトー?」
 顔を見合わせる薔と晃。翼も眉根を寄せ‥‥
「それなら、あっちです♪」
 繭がすっと今来た道を指差し‥‥お礼を言って去って行くルシア。
「今来た道にそんな名前のお家あったかしら?」
「さぁ。翼は覚えてるか?」
「え、あー、繭ちゃんが間違えそうな家はあったなぁと思って」
「繭ちゃんが間違えそうな家?」
「大きな日本家屋で、表札はなんて書いてあったのか忘れちゃったけど‥‥」
「それのどこが繭が間違えそうなんだよ?」
「なんて言うか、スキンヘッドでパンチパーマで顔に刀傷、肩に弾痕がありそうな‥‥」
「「ゴクドーさんっ!!」」
「はぁ、良い事をした後は気分がすがすがしいですね〜♪」
 のほほんとした繭と「あはは、やっぱり間違ってるみたいだね〜」と、いたって他人事の翼。晃と薔が顔を見合わせ、先ほどの少女の後姿に合掌したのだった。


 綾(アヤカ(fa0075))は春の陽気に誘われてショッピングに来ていた。方向音痴気味なので、地図を持ち‥‥なにやら困っているらしき人を発見し「どうしましたか?」と声をかける。道に迷っていると言う翼の説明に同情の眼差しで繭を見る綾。
「あ、そう言えば俺、ノートPC持ってたんだ。地図出してみるか」
 晃がそう言って、パソコンの電源を入れる。
「一周しちゃったけど、やっぱり見つからないみたいだね」
「うーん、喫茶店の名前はスノーホワイトですから、逆から読んでトイワホノス、問いは帆の棲?お船のドックに関連が?」
「え。って言うか、今なんて言ったの?」
「お船のドックに関連が?」
「その前」
「といは‥‥」
「スノーホワイトって言わなかった?」
 コクリと頷く繭。すの魔術に取り付かれていた晃が『すごいサイト』と言う文字を見つけて夢中になりながらも、繭の発言に脱力する。
「スノーホワイトなら、ここだけど?」
 薔の言葉に視線を上げた繭が、一瞬だけ顔を輝かせ‥‥すぐに首を振る。
「違います。カタカナじゃないですから‥‥」
「そっか。じゃぁ、とりあえずここで休まない?仕切り直しした方が良いと思うよ?」
 翼の言葉に、それぞれが賛成の意を表す。
「それにしても、どうしてこんなに必死になって喫茶店を探してるのでしょうか」
 繭がそう呟いた時、突然窓際の席から声がかかった。
「繭!遅いっ!!何してたの〜!?‥‥この人達は?」
 可愛らしい少女が首を傾げ、繭も同じ様に首を傾げると、翼に問いかけた。
「あの、この人は誰ですか?」
「まーゆーっ!!!」
「と、とりあえず、みんな座ろう?繭ちゃんと、そのお友達にも説明しなくちゃならない事があるみたいだし‥‥」
「ここ、ケーキが美味しいんだよ」
 綾がメニューを広げながらそう言って、繭と薔が目を輝かせる。
「それじゃぁ、僕はミルクティ。で、説明は晃、お願いね?」
「え、俺!?」
 突然指名された晃がシドロモドロになりながら、友人と繭に状況を説明し‥‥
「はー、いい暇潰しだったわ。今日、友達にドタキャンされちゃって」
「薔さん、最初から此処だって分かってたんでしょ?」
「‥‥翼君だって、分かってたんでしょう?」
「薔さんが妙な事を言い始めたあたりから、かな?」
 どうやら今回の一番の被害者は晃だったらしい。彼は数日『すの魔術』に嵌ることだろう‥‥合掌。
「あ、そうだ。この人、縄つけた方が良いよ?」
 翼の言葉に、繭の友人が強く頷き‥‥
「とりあえずアンタ、携帯持ちなさーーーい!!!」
「だってぇ〜〜〜!!!」


○NG
・時雨『一度躓くと‥‥』
時「現在地の把握が出来ない以上、そうちゃいじゃしょう指定は混乱の元!じぇっちゃいじゃしょうに基じゅく行動を‥‥」
悠「が、がんばれ森里さん!」
時「あの、これ、もっとゆっくり言っちゃダメですか?」
 『ダメです♪』

●お題DEしりとり
悠「フィン・マックールって誰なんですか?」
千「ケルト神話の英雄って聞いたわ」
の「ルイ14世も英雄、ですよね?」
千「って事は、繭と薔がしてるしりとりは‥‥」
全「英雄しりとり!」
時「な、なんて知的な‥‥」