Impure Live 光 or 闇アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮下茜
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 なし
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/25〜09/27

●本文

 キョウがギター片手に旋律を紡ぎ出し、シュウがドラムを叩き始める。
「どうしたの、2人とも唐突に・・・」
「弾いてないと鈍りそうだろ?ユナも歌うか?」
「結構よ。それより、今度のライブの説明をしたいから音抑えてくれる?」
 ユナの言葉にキョウとシュウがやや音を抑えて演奏を続ける。
「今回はお題だけを提示するわ。“光”か“闇”そのどちらかについて曲を作ってきて欲しいの。個人でもグループでも構わないわ。ただ、歌詞も曲も完全オリジナルで。曲は1メロ→1サビの流れで作ってもらうわ」
「それと、今回は僕からも1つ何か出そうかなぁって思って・・・」
 何時の間にかドラムから離れていたシュウがそう言って、ふにゃんと気の抜けたような笑顔を見せる。
「アイドルはやっぱり自分の魅せ方を知ってないと・・・と言う事で、演奏中僕にアピールをして欲しいんだ。お客さんにアピールするのと同じ感じで良いから」
「可愛さ、カッコ良さ、綺麗さ、自分のプラスの部分をアピールして欲しいの」
「ちなみに、後ろで演奏してる人もキチンと見るから気を抜かないでね?これはグループ関係なく個人の部分だから、個々に考えてきてね?」
「事前に提出してほしいことを紙に書いておいたから・・・」


・グループ名、個人名
・光と闇、どちらを題として選んだか
・曲名、歌詞
・歌詞内容の意味(光or闇のどんな部分を書いたのかなど)
・自分のどんな部分をアピールするか(可愛さ、綺麗さなど)
・アピールするためになにをするのか


「実際に歌ってもらうわけだけど、テープは却下。もし演奏の手が欲しいようならば、キョウに頼んでくれるかな?」
「ギター、ベース、キーボード、ドラム・・・くらいなら出来るぜ?ただし、俺の出張費は高わよん?」
「・・・変な声で言わないでよ女顔」
「女顔っつーーーなっ!!!」
「・・・まぁ、キョウはImpure World時代ギターがメインだったけど、他のもそれなりに出来るから安心してね?」
「演出の方だけれど、ライトだけはあるから」
「んでもって審査だけどー、一番題に合った曲と歌詞を提供したグループ・個人を選ばせて貰う。ただし、必ず選ばれる人が出ると決まったわけじゃねーからな」
「それから、個人賞として一番良いアピールをした人を選ばせて貰うね。思わず引き込まれるアピールを期待してるね」
「まぁ、賞って言っても賞金も賞品もなにも出ないけれど・・・そうね、後でお茶を出す時にちょっとだけ高級な紅茶を淹れるわ」
「・・・ショッボ」
「五月蝿いわよキョウ」
「そうそう、さっきユナが少し言ってたけど、曲は1メロ→1サビで作ってきてね。前奏とか間奏、後奏は自由に入れてもらって構わないよ」
「素敵な曲を待ってるわ」

●今回の参加者

 fa0034 紅 勇花(17歳・♀・兎)
 fa2654 ゼフィル・ラングレン(20歳・♂・小鳥)
 fa2726 悠奈(18歳・♀・竜)
 fa2847 柊ラキア(25歳・♂・鴉)
 fa2899 文月 舵(26歳・♀・狸)
 fa3956 柊アキラ(25歳・♂・鴉)
 fa4619 桃音(15歳・♀・猫)
 fa4628 シュルウ(20歳・♂・鷹)

●リプレイ本文


「御三方とも、お久しぶりです」
 文月 舵(fa2899)がそう言ってペコリと頭を下げ、柊ラキア(fa2847)と柊アキラ(fa3956)も続いて頭を下げる。
「久しぶりだね、舵さん。それから・・・双子さん、かな?」
 シュウがラキアとアキラの顔を交互に見ながらそう言って首を傾げれば、ラキアが嬉しそうにコクコクと大きく頷きアキラが爽やかな笑顔を浮かべて「はい、一応」と小声で呟く。
「初めまして、宜しくお願いします!」
 悠奈(fa2726)が、ボウっとしていたユナに頭を下げ、紅 勇花(fa0034)も3人に挨拶をする。
「今回は一つ宜しくね」
「今日は集まってくれて有難う。それで、早速なんだけど歌に入ってくれるかしら。ステージはもう用意してあるから」
 ユナがそう言って、ステージの前に置かれていたパイプ椅子に腰を下ろした。


●シュルウ『SHADOW』
 1番手のシュルウ(fa4628)がステージへと向かおうと歩き出し・・・
「ちょっと待って。手に持っているものはなに?」
 ユナがシュルウの手にあるものを指差して冷たい視線を向ける。
「そんなものを持ってステージに上がらせるわけにいかないわ。楽器に傷でもついたらどうするの。それに貴方、何も楽器を持っていないしキョウにも演奏を頼んでいないようだけれど、音はナシなの?」
 冷たい色をした瞳が真っ直ぐにシュルウに向けられ、暫くジっと無言で見詰めあった後でユナが視線をそらした。
「次の人、出てもらえるかしら?」


○紅勇花『4ever 0(フォーエバー・ラブ)』
 キョウがドラムを叩き始め、勇花がギターで重苦しいメロディを紡ぎ出す。不協和音が妖しく陰鬱な雰囲気を醸し出し、よく伸びるアルトの声が響き渡る。

「“私”は何処にいるのですか?」
あなたのココロ見えなくて・・・
不安が揺れて凶つに歪む・・・狂おしく・・・
願いを胸に忍ばせて
目と目を合わせた一刹那
溢れた想いが全てを呑み込む・・・もう、止まらない・・・!

濡れる、果てる、紅い華
閃き、踊る、激情
貫き、引き裂き、高く、高く、昇って逝く
ずっと、二度と、離さない
きっと、二人、永遠に
散華の絆が、固く、固く、二人を結び・・・

・・・嗚呼、堕ちていく・・・

 激しさを増したメロディは後奏のギターのソロへと受け継がれ、勇花が薄笑みを浮かべながらギターを立てて音をかき鳴らし、徐々に体を仰け反らせていく。ヒートアップしていく音が不意にプツリと途切れ、ブリッジに近い体勢だった勇花がそのまま後ろに倒れ込む・・・。


●麗華花鳥(れいかかちょう)『宵蛍(よいほたる)』
 藍色の着物を着た桃音(fa4619)と淡い青色の女性用着物を着たゼフィル・ラングレン(fa2654)が頭の高い位置で結んだポニーテールを揺らしながらゆっくりとした足取りでステージに上る。シュウが照明を落とし、薄暗い中でゼフィルの奏でる繊細なピアノの音が広がっていく。

いつかの空を思い出して 口ずさんだ歌
闇夜に乗って 心地よく聞こえていた
心の中吹き抜けた 冷たく凍てつく様な言葉が
今では 暖かく包むように揺らめいて

呼んでいる 闇の中を
ゆらりゆらり 蒼い蛍
夜が優しく 浮かべ出すのは
君が僕を 僕が君を
求め揺らめく 淡い光

 サビ部分に向けて流れるような強さを持った音が、後奏に入ると穏やかになって行く。途中でゼフィルと桃音が切なそうに目を合わせ、そっと目を伏せると再び前へと向き直った。照明が落ち、ゼフィルだけがピンスポによって浮かび上がる中、桃音が手に持ったスポットライトで小さな蛍の光を作り出す。袖先につけられた青いセロファンによってその光は仄青く見え、揺らめき、時折消えながら暫く暗闇を漂っていた。


○A+Liberties『Heart』
 眩しいくらいのライトがステージを照らす中、赤灰色のボートネックシャツに首にゴーグルをぶら提げたラキアと、ラキアとは色違いの白のシャツにデニムのパンツを穿いた舵、そして黄色のシャツを着たアキラがゆっくりとステージに上がる。舵のピアノが緩やかな音を紡ぎ出し、アキラが奏でるアコースティックギターがその音を支える。

色鮮やかな飾ること覚えたこの世界で
呟くような リアルが隠れている
耳を澄ましても 雑踏に紛れてしまうけれど
目を閉じたその時 僕の中 本当の眩しさが

光さす方へ まっすぐ背を伸ばし手を広げた
何もない真っ白な ただ眩しく眩しく輝く夢

 ライトが明度を落とし、ピンスポットがそれぞれに当てられる。リズミカルなメロディからピアノのソロへと移り変わり、舵だけがライトの中で明るい笑顔を浮かべながら細い指先で音を紡ぐ。低音から高音への曲調転換、緩やかなテンポが勢いを乗せ始め、そのまま真っ直ぐにサビへと突き進む。テンポの良い曲は唐突に終わり、明るい余韻を残したまま3人は頭を下げるとステージから下りた。


●悠奈『抱擁』
 白いロングワンピースにレースのストールを肩にかけた悠奈が淡いスポットライトの中心に立ち、クルリと後ろを向く。キョウがキーボードに指を置き、ゆっくりとした単音を響かせる。音が徐々に集まり出し、賛美歌を思わせる軽やかで幻想的な旋律が聞こえ始めた時、その音に合わせて悠奈がこちらを振り向くとゆっくりと歩き出した。

いつも無理してるよね 泣いても良いんだよ?
その為に私はここに居るの
君がくれた暖かい物 少しでも返したいから
両手を広げて抱きしめるよ だから笑って

この世の全てから守りたいの 君の心の輝き、淡い灯火
私を包む優しい光 無くしたくないから

 緩やかな旋律に乗せる歌声は優しく、天井に向かって手を広げ、宙を抱きしめると床に膝をついて穏やかな笑みを浮かべる。サビに向かってテンポアップしたリズムに悠奈の表情も明るくなり、祈るように両手を組むと目を伏せた。透明な声が空気に溶け、キョウが前奏と同じ旋律を繰り返し、最後の和音をゆっくりと尾を引かせながら切る。ライトがゆっくりと色を落としていき、しっとりとした闇に包まれた。



 全員の歌を聞き終わると、ユナが手に持った紙に視線を落とし一呼吸置いてから顔を上げた。
「率直な意見で言うとね、歌詞がよく出来ていたなって思うのはA+Libertiesかな。ただ場景や感情を綴ったんじゃなく、もっと深い部分まで考えられている歌詞で重みがあるの。抽象的な言葉で暈したんじゃない、きちんと中身のある歌詞で、私は凄く好き。でも、勇花さんの歌詞も良いなって思うの。真っ直ぐな感じが良いわ。闇を良く表していると思う」
「アピールの方だけど、僕は悠奈ちゃんがとても良かったなって思うんだ。可愛らしくて優しい、悠奈ちゃんらしさが出せていたと思うよ。あとね、もう1人・・・いや、もう2人かな?別の意味で良いなって思ったのはラキア君とアキラ君。自分らしさが1番のアピールポイントって言い切れる君達は素敵だなって」
 シュウの言葉を受けて、アキラが一瞬だけ苦々しく視線をそらし、ラキアが嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
「それじゃぁ、皆歌って喉も渇いたと思うし・・・今紅茶を淹れるわ」
「あの、質問があるんですけど!お菓子も出るんですか!?」
 立ち上がりかけたユナにラキアが右腕を上げながらそう言って、真剣な瞳を向ける。
「あ、お菓子・・・考えてなかったわ。うーん、ラキアさん、買って来てくれるかしら?・・・キョウとアキラさんと一緒に」
 ユナの視線がチラリとアキラに向けられ、思わず立ち上がる。
「え、僕もですか!?」
「えぇ。なんと言うかその・・・3人は雰囲気が似てて」
 ふいと視線をそらされ、アキラが固まる。ユナさんは分かってるね!とでも言うかのようにラキアがアキラの手を取り、キョウが重たい腰を上げる。
「ふふ、仲良し兄弟さんやわ」
 舵がそう言って、ズルズルと引きずられていくアキラと、全身で喜びを表現しているラキアの後姿を微笑みながら見送る。
「私は3人が帰ってくる前にお茶の用意をしておかないと・・・お砂糖とミルクと、あ・・・レモンもいるかしら」
 どう思います?と急に話を振られ、勇花が驚きながらも3つとも出しておいた方が良いと言葉を返す。
「私、お手伝いしますね」
 悠奈がそう言ってユナの隣に立ち、ゼフィルもユナに聞きながらお皿やコップを出す。桃音が気を利かせてテーブルの上を拭き、ゼフィルから受け取ったコップやお皿を並べていく。
「ユナさんは紅茶が好きなんですか?」
「えぇ。優しい味・・・大好きです」
 にっこりと、満面の笑みを向けられて舵が思わずたじろぐ。やや戸惑いながらも笑顔を返し、ユナからポットを受け取るとテーブルの真ん中に置く。
「後はお菓子の到着を待つだけですね」
「どんなものを買ってきてくださるのか、楽しみですね」
 桃音とゼフィルが小さく笑みを浮かべながらそう囁き、女の子の雰囲気が漂うその空間に、勇花とシュルウが少し居心地悪そうに視線を彷徨わせる。
「きっと、とっても甘くて美味しいものですよ」
 悠奈がそう言った時、玄関のほうから音が聞こえ・・・
「ラキちゃんに任せれば間違いはないと思いますわ」
 舵が太鼓判を押し、期待を膨らませる面々の前に戻ってきた3人の手には真っ白な包みが握られ、甘い香りがふわりと漂い・・・
 弾む会話は楽しく、真っ白なティーカップから立ち上る湯気は甘い香りを纏いながら天井へと吸い込まれて行った・・・。