ホワイトパーティー!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
なし
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/24〜03/26
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●本文
篠宮・ユナは、マネージャーの錦下から渡された小さなプレゼントの箱に首を傾げた。
「あの、これは?」
「大分遅くなっちゃったけど、ホワイトデー」
「家内安全ですね!お礼参りですか!?」
「‥‥あのさ、ユナ。人の話を素直に信じる所は可愛いとは思うよ?思うんだけど‥‥」
この子の将来は大丈夫なのか。
頭の痛くなってきた錦下が、ヨロヨロと壁に手をつく。
「鍵はしっかり、火元もしっかり確認なのです!雑誌で見た限りでは、バレンタインのお返しって日でしたが、実際の意味はソコなのですよね!?」
「ち、違うよユナ!そんな重い意味は無いよ‥‥!」
「でも、ホワイトデーのお礼参りはいつなのでしょうか?」
キョトンとしたユナが、頬に手をあて、考え込むように視線を宙に彷徨わせる。
「あ、そうだユナ。忘れる所だったんだけど‥‥」
うっかりユナの得体の知れない天然パワーに引き込まれ、本来の目的を忘れていた錦下が、ポケットから小さな紙を取り出す。
「今度のオフの日、ユナの誕生日パーティーをやろうと思ってるんだ。連絡は俺から既につけてあるんだけど‥‥って、どうしてそんなキョトンとした顔してるの?」
会場への地図が書かれてた紙を握り締めたまま、瞬き一つしないユナ。
錦下が心配そうに顔を覗き込み‥‥
「え、私の誕生日って‥‥‥‥あれぇっ‥‥‥‥?」
「最近忙しかったからね、すっかり忘れてると思ってたよ。まぁ、俺も忘れてて‥‥翌日気付いて思いっきり自己嫌悪したけど、ユナは俺に言われるまで気付かなかったんだな」
「だ、だって、錦下さん、言ってくれなかったじゃないですかぁっ!」
「自分の誕生日くらい、人に言われずに気付かないとダメですっ!‥‥言うのが大分遅くなっちゃったけど、お誕生日おめでとうユナ」
「有難う御座います‥‥」
「このまますくすくと育って行って、いつか夢の150cm代になれると良いね」
「はい!‥‥って、もう私育ちませんよーっ!!」
怒ったユナがパンチを繰り出し、まったく威力のない攻撃に苦笑しながら、錦下は彼女の頭を優しく撫ぜた。
●リプレイ本文
四條 キリエ(fa3797)はパラチンケンを作りながら、隣で肉団子を作っている錦下に視線を向けた。
「ところで錦下さん、1人で料理作る気だったって、料理趣味?それとも、必要に迫られてなのかな?」
「後者かな。ユナが小食で、外で食べてばかりだと栄養バランス偏るから」
「ユナちゃん小食なんだ」
ユナと初めて会うキリエは、家事が得意な事と料理にもお祝いの気持ちを込め、話しの切欠になれればと準備を買って出た。キリエと同じ様に準備を買って出た犬神 一子(fa4044)がサンドイッチを作りながら、ユナにホワイトデーの間違った知識を入れた事を苦笑しながら軽く謝る。
「いやあ、若い連中がすぐ訂正すると思ったんでな」
「そろそろユナも疑う事を覚えてほしいものです」
そう言って軽く溜息をついた時、穏やかな笑顔を浮かべた宮坂 冴(fa5592)が入って来て、錦下の作った肉団子を会場へと運ぼうと持ち上げる。
「それにしても錦下さん、料理も出来て凄いマネージャーさんだね」
トロリとした口調で喋る冴。手にした肉団子をマジマジと見詰め、ふにゃらんと表情を緩める。
「錦下さん。こっちの準備は終わりました」
このパーティーを思い切り盛り上げてあげたいと一生懸命になっているトシハキク(fa0629)が額に薄っすらと浮かんだ汗を拭う。錦下が小さくお礼を言い、壁掛け時計を見上げる。
「もう時間だな」
白のワンピースを着たユナが到着し、キリエが自己紹介をしながらユナの頭をグリグリと撫ぜ、繊細に着色された木彫りの小鳥の手作り携帯ストラップを手渡す。紐部分にはビーズをあしらっており、裏方本領発揮の丁寧かつ美しい品だった。
「映画出るって聞いたからね。私も裏方ながらドラマ出演の経験はあるし‥‥そう言うの抜きにしても、連絡くれると嬉しいな」
お友達になりましょうと渡された、携帯番号とアドレスの書かれたメモ。ユナが嬉しそうにキュっとそれを胸に抱く。
「誕生日おめでとさん」
一子が持ってきた誕生日プレゼント兼ホワイトデーのお返しの巨大なセントバーナードのぬいぐるみは、ユナの頭身くらいあった。
「しっかり食べて大きくなれよ」
「もうおっきくならないんですってばー!」
ユナがプゥと頬を膨らませ、一子が頭をわしゃわしゃ撫ぜると、手土産に持ってきた苺大福と苺のピンクゼリーをユナの前に差し出す。
「まあ、好みの方を摘んでくれ」
両方手作りだと言うお菓子に、ユナの瞳がキラリと光る。実はユナ、果物の中でも苺が一番好きで‥‥まずは苺大福、次に苺ゼリーを幸せそうに食べる。
「えっと、ユナさんも皆さんも初めまして。俺、宮坂 冴です。冴って呼んでください」
新人なので皆さんへのご挨拶も兼ねてと頭を下げた冴が、ユナに視線を向け、首を傾げる。
「お誕生日がホワイトデーに近いのかな?それとも一緒?」
「お誕生日は、3月14日なのです」
ホワイトデーと一緒の誕生日に、冴がパチパチと手を叩く。
「ユナさん、おめでとう。あと、これプレゼントなんだけど、今度映画のお仕事があるって聞いたの。だから、瓶詰めの飴を持ってきました。のど飴なんだけど、ミルク味で美味しいの。良ければ気分転換に食べてみてね」
可愛らしいピンク色の林檎型の瓶に入った飴に、ユナが嬉しそうに目を輝かせる。
「錦下さんが言ってたのを聞いたんだけど、自分の誕生日って意外と忘れちゃうよね」
1ヶ月前くらいは覚えているのだが、気付けば当日になっていたりする。
「でも、誰かが『おめでとう』って言ってくれるとビックリするけど嬉しいよね。そう言う人達を大事に出来る人になりたいなって思うの。ユナさんも優しい素敵な人になってね」
冴の話を一生懸命聞いていたユナ。何時の間にかユナの背後に来ていた冬織(fa2993)が大きく頷き‥‥
「わしも誕生日を忘れておったのじゃよ」
翌日マネージャーが気付いた事まで同じと、何だかこの2人同じ雰囲気がする。
「誕生日おめでとうユナ殿。幸せな1年であるよう祈っておるぞえ」
微笑みながら、おはぎを手渡す冬織。彼女の手作りおはぎは甘さ控え目に作られているため、ユナの口に合うかどうかを心配したのだが‥‥ユナの笑顔を見る限り、どうやら口に合ったらしい。
「先日紹介し忘れておったが、此れは『がお太郎』と申す」
ライブデビューも果たしたと言う立派なアーティストのがお太郎。
『がお太郎だ。宜しく頼むぜ、ユナ!』
がお太郎が身振り手振りで自己紹介するが、思い切り冬織の口が動いている‥‥と言う事は、見てないふりだ。仕事の忙しいリーダーから預かってきたと言うプレゼントをユナに手渡し‥‥
「息災であれと申しておったぞえ。ちなみに此れは『もえ次郎』と名付けてみたのじゃが、如何かえ?がお太郎とは兄弟じゃ」
「もえ次郎さんですか。宜しくお願いします」
にこっと微笑んでもえ次郎を抱き締めるユナ。ファー付きのポンチョを着た神代タテハ(fa1704)が大きなクマのぬいぐるみと彼女の兄特製のケーキを持って現れ、ややテンションの高くなっていたユナに抱き締められる。
「ユナさん、お誕生日おめでとう」
蝶ネクタイに明るい色のショートスーツと、正装してきたタブラ・ラサ(fa3802)がカスミソウの花束をプレゼントする。ホワイトデーを兼ねて白の花をメインにした&花言葉にいくつかピッタリなものがあると言った理由を自分で発案して持参してきたのだが、その辺は全部入れ知恵と言う事にして、子供っぽさをアピールする。
「お招き頂いて有難う御座います。ユナさん、お誕生日おめでとう!」
ジーンズと白地に藍染の和柄シャツを着た蕪木メル(fa3547)が、桜やチューリップ、勿忘草やラナンキュラス、スイートピーなどをミックスした3月の誕生花一杯の花束を差し出す。彼はバレンタインのお返しは3月14日に事務所宛に贈り済みだった。小鳥を模したガラス瓶に入ったクッキーの詰め合わせのお礼をユナが言い、ガラス瓶は寝室に飾ってあると言ってふわりと微笑む。
「今日も、こんなに素敵な花束を有難う御座います」
「何て言うか‥‥3月の誕生花って色々あって絞れなくって、解るもの全部入れちゃったんだ」
だからこんなに豪華なのだと正直に白状するメル。
「確かに、お花ってどんなのを贈れば良いのか迷っちゃいますよね」
ユナが苦笑し、料理が冷めない内にどうぞと言う錦下の言葉で各自が食べたい物をお皿に取る。甘い物が大好きだと言うトシハキクが山盛りにデザートを取り、勢いの良い食べっぷりにユナが「凄いです」と呟いて微笑を浮かべる。簡単な手品が出来ると言うメルが舞台の上でその腕前を披露し、タブラが最前列に陣取るとじーっと見詰め、パチパチと手を叩く。
「ユナ殿、ちと練習の成果を見てもらいたいのじゃが」
「練習、ですか?」
やっと携帯メールが打てるようになったと、ぼそりと呟く冬織。真剣ながらもたどたどしい手つきでメールを打ち‥‥いい笑顔でユナへと送信する。
『たnじょうbiお目出たう』
「‥‥冬織さん。今度スパルタでメールの打ち方教えます!」
やけに真剣な瞳をしたユナが冬織の肩をガシっと掴む。あまりの剣幕に冬織がコクリと頷き‥‥果たしてユナのスパルタとはどの程度なのだろうかと、首を傾げる。
タテハと料理を食べながら、一子や冴に積極的に話し掛けるタブラ。その近くではメルが嬉しそうな表情で錦下の料理を口へと運び‥‥
「俺もこれくらい作れるようになりたいです。食べたら学べるかな?」
「蕪木さんさえ良ければ、教えますよ」
錦下がそう言って、笑顔を向ける。
「時間なんて芸能界にいるとあっという間に流れるものだけど、地に足をつけて1歩1歩進んでいけば、ユナさんも大活躍できると思うぜ」
そう言う自分も時折暴走しているから大した事は言えないけどと照れたように呟くトシハキク。ユナが、今度のお仕事は映画なのだと告げ‥‥
「俺、今度初めて演技のお仕事するんだけどユナさんも映画始めて?」
「はい。CMは何度かあるんですけれど‥‥」
「共演者の人も錦下さんも一緒だし、頑張ってね。俺、応援してるね」
冴がユナの髪をフワリと撫ぜながら微笑む。
「私も、冴さん‥‥って、お呼びしても良いですか?冴さんの事、応援してます」
「有難う。俺もこれからのお仕事頑張る」
柔らかい空気を共有する冴とユナ。トシハキクが腰を上げ、何やら準備をしだし‥‥スクリーンを広げると、室内の明かりを消す。何が始まるのだろうかとざわつく場が、スクリーンに映し出された写真に静まる。つい先日行った、遊園地での写真が大きく映し出され、次に今までユナが出演したCMが流れる。‥‥アイドルグループだった頃の映像まで流れ、頬を染めるユナ。
「デビューから今までのユナさんの歴史」
「何だか恥ずかしいですね‥‥」
大分幼い時の映像まで流れ、錦下の背後に隠れるユナ。冬織が隠れたユナに手を差し伸べ、キリエと視線を合わせる。キリエがハーモニカを取り出し、聞き慣れたメロディを奏で始める。冬織がキョトンとしている人々を促し、奥から蝋燭の灯ったケーキを持ってくる錦下。
「ハッピバースデートゥーユー♪」
「ユナちゃん、ケーキの蝋燭消して」
キリエに促され息を吸い込むユナ。ふぅっと蝋燭を吹き消し‥‥拍手と共に、そこかしこからお祝いの言葉が花開いた。