豹チェンジ!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/31〜04/02
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●本文
ここは東京下町。
閑静な住宅が建ち並ぶ中、何故か周囲の慎ましい家々の雰囲気をぶち壊すような巨大な洋館がデンと建っている。
そこは何も隠していないが、何を隠そう(決まり文句ですから)マッドサイエンティストの堤野さんの御宅なのだ。
「うっふふ〜ん♪で〜きたぁん☆やーっぱり私ってばて・ん・さ・い♪」
ちなみに彼、れっきとした男性だ。
本名は堤野 厳と言う立派な‥‥恐らくご両親も立派な人になって欲しくてつけたのだろう‥‥名前だ。
けれど彼は両親のそんな切なる願いを無視し、周囲には『ゴンちゃん♪』と呼ぶように強要している。
語尾の『♪』は必須であり、もし♪がなかったり厳と本名で呼ぼうものならば『ゴンちゃんのラブリー☆踵落とし』が炸裂するのだと言う。
「これでぇ、震える子羊な少女も途端に女豹にだいへんし〜ん♪プレイガールと言う名は貴方のためにあるのよん!な子になるのぉ〜!」
甚だ迷惑な薬を開発しやがりましたゴンちゃんは、早速窓の外に視線を移しやがりました(言葉遣い悪)
「あ〜!あそこにぃ、ちょっぴり暗い系の少女はっけーーん!んー、美少女じゃないから私好みじゃないけどぉ、まぁいーや!」
可愛ければ男の子だろうが女の子だろうが、ワンコだろうがニャンコだろうが「か〜わい〜♪超好み〜!」と言うゴンちゃん。
今回の少女はお眼鏡にはかなわなかったようだが、自分の作った薬の効果を試したい彼は薬の入った弾をセットすると引き金を引いた。
弾はいたいけな少女に当たる前に破裂し、中からどす黒い煙が噴出する。
「わ!何ですかコレ!う‥‥変な臭い‥‥!まるでロッカーに入れてうっかり出すのを忘れ、3日程経ったサバの味噌煮のような‥‥」
あんたは一体ロッカーに何を入れているのか。と言うか、それ以前に明らかに有害そうな煙を吸い込みながらよく長台詞をペラペラと喋れるものだ。
むせまくる少女の前に立つ厳。黒い煙を手で払いながらグイと少女の顔を上げさせ、三つ編みを解き瓶底眼鏡をはずす。
「あらー。あーた、結構可愛い顔してるじゃない。と、言いたいところだけど、これも私の薬の効果ね」
「薬って一体‥‥」
キョトンとした少女に鏡を差し出す厳。恐る恐るそれを覗き込んだ少女が悲鳴を上げる。
「きゃーー!!誰コレ!」
「あんたよ、あ・ん・た!あんたは私の薬のおかげで美少女に生まれ変わる事が出来たの!もっとも、性格も変わってるはずなんだけど‥‥」
厳がそう言いかけた時、突然少女が心臓の辺りを押さえてヘタリこんだ。
「何か、心臓が熱い‥‥何これ、何か、私すごく‥‥」
カっと目を見開き、肩にかかった髪を背に払う少女。
「私は美少女!私は美の女神!今まで私を振り向きもしなかった野郎どもを次々に落としてさしあげますわー!!」
高飛車・自己中・わがまま=最悪な性格になってしまった少女が、しっかりと留めていた第1ボタンをあける。
「その声は、水瀬さん?」
路地から瓶底眼鏡をかけ、冴えない容姿をした少年が現れた。少女が彼の格好と容姿を見るなり表情を崩す。
「あーら大島君じゃないの。相変わらず冴えないのねぇ〜」
「え、水瀬さん、どうしちゃったの?」
「あーヤダヤダ。冴えない男といると私まで冴えなく見えそうだわ。カッコ良い男探しに行ってこよーっと」
「ちょ‥‥」
「あらぁん、ちょっと失敗だったかしらぁん?予定ではぁ、彼女を見る男全てがその色香にクラリと来る、魔性の女豹が誕生するはずだったのにぃ〜」
「あ、貴方、彼女に何をしたんですか!?」
「んー、ボランティア活動?冴えない少女をときめき大変身♪だったはずなんだけどぉ‥‥」
「あれはどうしたら治るんですかー!?」
「彼女を心底愛している男がぁ、彼女を抱き締めながら耳元で愛の告白をすれば治るはずだけどぉ〜」
厳がそこで言葉を止め、チラリと少年を上目使いに見やる。
「時に貴方、彼女に恋してるんじゃなくって?」
「ぼ、僕は‥‥」
「まぁ、どうでも良いわ〜。彼女が変な男に引っかかろうが何しようが私には関係ないし〜」
「貴方が作った薬じゃないですかアレ!!」
「そうだけどぉ、私はあの子を心底愛すなんて出来ないんだからしょうがないでしょぉ〜。いずれ時が解決してくれるわぁ〜」
「そんな無責任な!もう良いです!僕が何とかしますから!」
少年がそう叫んで駆け出して行き‥‥
「そーんな曖昧な治し方なわけないじゃなぁ〜い。どうせあと小1時間もすれば勝手に効き目がなくなるはずだけど‥‥」
厳が楽しそうに微笑み、ゆっくりと唇を舐める。
「若いって良いわぁ〜ん♪ピュアね、ピュ・ア♪」
≪映画『豹チェンジ!』募集キャスト≫
*水瀬 灯(みなせ・あかり)
実際は大人しく目立たない、引っ込み思案の性格
現在は厳の薬によって大胆な性格に
高飛車・自己中・わがままの三重苦
外見年齢15〜20程度
*大島 完(おおしま・たもつ)
大人しく目立たない
瓶底眼鏡を取ればなかなかの美形だが、自覚はない
眼鏡を取ると何も見えなくなる
灯が好きだが、伝えられないでいる
外見年齢15〜20程度
・堤野・厳(つつみの・いわお)
ロクでもない研究&実験に勤しんでいる男性
実年齢は不明だが、外見年齢は20代後半
可愛い物が大好きで性格はいたって乙女チック
・その他
*灯が声をかける男性達
→ノリの良い性格限定
・灯の友人
→いきなり大胆になった灯に驚かないと言う、脅威の寛大さ
・灯の家族
→友人と同じく、大胆な灯に驚かない(せいぜい「まぁ、反抗期かしら〜」程度)
●リプレイ本文
完(倉瀬 凛(fa5331))は灯(ベス(fa0877))の姉・怜(桐沢カナ(fa1077))の言葉に開いた口が塞がらなかった。
「だからね、いつまでも大人しくしてたって幸せは来ないんだから、いい男つくってきなよ!って送り出してあげたんだ」
「変に思いませんでした?」
「え?どこが?イメチェンって悪いことじゃないし、やっぱり女の子は積極的でないと!」
「そうじゃなくて‥‥」
どうやら話しの通じないらしい怜。これだけ大雑把な人も珍しい。
「で、何?あんた、灯の事捜してるの?」
「そうですけど‥‥」
長い髪をバサリとかき上げ、怜がニィっと口の端を上げる。
「面白そうだからさ、私も一緒に捜してあげる。それに、1人より効率いいでしょ?」
「結構です」
(何だか不思議なお姉さんだし、余計ややこしい事になりそうな気がする)
「あの、情報提供有難う御座いました」
完はペコリと頭を下げると、ダっと怜の前を走り去った。
「もう。一緒に捜してあげるって言ったのに」
ふっと溜息をつく怜。暫し目を伏せ考え込み‥‥
「あ、そっか!テレてるんだ!」
やっぱり年上のセクシーなお姉さんと一緒に行動するのは緊張するわよねと、妙な納得をする怜。
「ここはこっそり後をつけるか」
「あ、大島君じゃないですか〜」
トロリと間延びした声がかかり、完は足を止めると振り返った。クラスメイトの凪(ジュディス・アドゥーベ(fa4339))がヒラリと手を振り、急いでいるらしい完の様子に首を傾げる。
「何かお困りの事でもありましたか〜?」
「あの、水瀬さんを捜してるんだけど‥‥」
「あぁ〜、さっき会いましたよ〜。イメチェンしてて、素敵でした〜」
「あの、どっちに行ったか知らない!?」
「えぇっとぉ、あっちだったような‥‥こっちだったような〜?」
右に左に、指先を泳がせた後で頬に手を当てる凪。脳の回転が凄まじく遅いらしい凪は、いい加減完が「もういいです」と言いそうになった時にやっと数分前の出来事を思い出し、ポンと手を打った。
「ああ!あっちです〜。確か、あっちに行ったような‥‥」
えぇっと、確かにあっちで良かったんですよね〜?と、再び熟考に入ろうとする凪にお礼を言って駆け出す完。その背後をこっそりとつけて行く怜の姿を見つめ‥‥
「ああ言う遊びが流行ってるのでしょうか〜?」
凪に教えられた道を走っている途中で、完は友人の唯(雨月 彩(fa4992))の姿を見かけ足を止めた。突然止まった完に気付き、振り返る唯。
「あ、完君。どうしたの?そんなに急いで」
「あの、水瀬さん見かけなかった?」
「あぁ、灯ちゃんなら見かけたけれど‥‥そうそう、灯ちゃん、何かイイ事でもあったのかなぁ?随分元気だったけれど‥‥」
頬に手を当てて首を傾げた唯に、厳の薬の事を説明する完。
「それなら、私も灯ちゃんを捜すお手伝いをするわ。‥‥あら?あの子、灯ちゃんの‥‥」
銀色の髪を靡かせながら歩いてきた少年が、唯に気付き顔を上げる。
「あ、唯お姉ちゃん」
ふわりと人懐っこい笑みを浮かべる陸(ヒノエ・シオン(fa5487))に微笑みかえす唯。
「この子は陸君って言って、灯ちゃんの弟さんなんですよ。ねぇ陸君、灯ちゃんを見なかったかしら?」
「え?灯お姉ちゃんなら、あっちで見かけた気がするけど‥‥でも、ちょっと雰囲気が違った気もするし‥‥うーん、でも、あの顔は灯お姉ちゃんだよなぁ‥‥」
首を傾げ、一生懸命考え込む陸にお礼を言うと、完と唯は教えてもらった方角へと走り出した。その後ろをそっとついていく怜の姿を見かけ、キョトンと目を丸くする陸。
「怜お姉ちゃん、何してるんだろぉ?」
(それにしても、どうして今日に限ってこんなに水瀬さんの家族や友人に会うんだろう)
捜すのにはとても都合が良いのだが、どうにも調子が狂う。いや、それ以前に最も不思議なのは‥‥
(どうして皆、水瀬さんの変貌ぶりにはスルーなんだろう)
唯一陸が首を傾げたくらいで、他の人は真正面から灯と言葉を交わしたにも拘らず全員がスルー状態だ。どうにも不思議系な人々が集まっている気がする。
「ねぇ、完君、あれ‥‥」
唯が指差した先には、橙と紫のツートンと言う毒々しい色をした巨大な蜥蜴のぬいぐるみを抱えた少女が1人、乙女チックウェービーヘアとフリルとリボンたっぷりのピンクのゴスロリワンピの裾を揺らしながら華麗に歩いていた。
「翠ちゃん」
「あらぁ?唯ちゃんに完ちゃん〜!どうしたのぉ、お揃いでぇ。デートぉ?」
「そうじゃなくて、翠ちゃん、灯ちゃん見なかった?」
「灯ちゃんならさっき会ったよぉ〜!とっても素敵に変身しちゃってぇ、男の人と一緒だからお邪魔しちゃ悪いかなぁ〜?と思って声はかけなかったんだけどぉ、もう、翠ちゃんビックリしちゃったぁ!春だからかなぁ〜?」
翠(姫乃 唯(fa1463))が首を傾げ、どっちの方角に行ったのかと問う2人に右手を指差す。
「でもぉ、男の人とでぇと中だったから、邪魔しない方がいいよぉ〜?」
「そう言う問題じゃないんですって!って言うか、少しはおかしいと思いませんでしたか、水瀬さんの様子っ!」
「えぇ〜。イメチェンした灯ちゃんはぜーんぜん、おかしくなんかなかったよぉ〜?」
「あぁ、もうっ!教えていただき有難う御座いましたっ!」
話しの通じないらしい翠にお礼を言って去って行く完と唯。
「ん〜、完ちゃんも、せぇしゅん☆って感じかなぁ?やっぱり、春だからねぇ〜」
翠はそう呟くと、春の陽気に誘われて鼻歌を歌い始めた。
「ね、そこのおにーさん。私暇なんだけど、付き合ってあげてもいいわよ?」
と、高飛車な言葉で灯に誘われた彰(藤間 煉(fa5423))は胸元で踊るシルバーアクセを指先で弄びながら、隣を歩く灯の肩にもう1方の手を回し、どこへ行こうかと相談していた。なかなか可愛い灯に上玉ゲット!な、心境の彰だったが‥‥どうにもこの子、少し変わっている気がする。と言うのも、話しをする時微妙に視線が合わないのだ。
「んじゃぁどこ行きましょっか〜?」
「ゲーセンはありきたりだし、公園‥‥図書館‥‥って、何か違うわ!」
灯がバシリと彰の胸元にツッコミを入れ、意外に強い力にむせる。
「もしかして灯ちゃん、部活は体育会系‥‥」
「水瀬さん、見つけたっ!!」
人込みの中から瓶底メガネをかけた冴えない容姿の少年が姿を現し、灯の腕を引っ張る。
「放してよ!」
「だめだよ、水瀬さん、帰ろう!今のそれは、本当の水瀬さんじゃないんだよ!」
「うっさいなー。冴えないメガネ君のくせに、何私に説教してんのよ!私はね、さっきまでの自分が嫌いだったの!冴えなくて、自信がなくて、いつもうじうじ悩んでた!でも、私は生まれ変わったの!もう構わないで頂戴!その冴えないメガネ顔を見るのもイヤ」
「水瀬さん‥‥」
肩を落とした完と、心配そうに彼を見詰める唯。2人のやり取りを見ていて、完が灯を好きだと言う事に気づいた彰がニィっと口の端を上げ‥‥そっと、灯の背中に手を回す。
「そーそー、灯ちゃんはお前みたいな冴えないメガネ君なんて必要としてねぇんだよ。俺らは今から遊びに行くんだから、お子様は帰った帰った!」
「ダメだ水瀬さん!」
去って行こうとする灯の手を強く引っ張る完。灯がキっと鋭い視線を完に向け‥‥
「あんた見てると、冴えない自分思い出してヤな気持ちになるの!だから構わないでっ!」
手を振り払った瞬間、完がその場に尻餅をつき、勢いでメガネが外れる。
「いたたた‥‥水瀬さん?」
痛みに顰めながらも顔を上げれば、ポカンとした灯が立っており‥‥元に戻すには今しかないと意を決した完が立ち上がり、灯を抱き締める。
「水瀬さん、僕前から水瀬さんの事が好きだったんだ!」
これで呪い(薬の効果)は解けたと安堵する完。
「そ、そこまで言うんなら、付き合っても‥‥い‥‥い?」
「えっ、ほ、本当に?」
目を輝かせた完の前で、真っ赤になる灯。薬の効果が切れ‥‥赤面しながら走り去る。
「あっ、水瀬さん!?え、何処行くの!?」
メガネがない灯が途中で躓き、メガネがないために灯を追いかけられないでワタワタする完。腕組みしながら楽しげにその場を見守っていた怜が姿を現し、落ちていたメガネを拾うとじっくりと眺める。
「このメガネどうなってるの?その造形をこれだけ隠せるのが不思議だわ」
「ちょ、メガネ返してくださいって!」
オロオロする完にメガネを返し、髪をかきあげて微笑む怜。
「さて、面白いものも見れたし帰ろっかな。後で灯の恥ずかしそうな顔も見なくっちゃね〜フフフ♪」
「んじゃぁ、何か終わったみたいだし俺も帰るか〜」
成り行きを見守っていた彰がそう言って歩き出そうとし‥‥ガシリと、腕をつかまれて立ち止まる。
「あ、あの‥‥」
頬を淡く染めた唯が潤んだ瞳で彰を見上げる。
「私、唯って言います。あの‥‥お‥‥お名前、聞いても良いですか?」
「え?あぁ、彰って言うんだけど‥‥」
2人の視線が絡み合い、暫しその格好で止まる。どうやら一目惚れをしてしまったらしい2人。怜がその様子を見た後で歩き出し‥‥
「あ、怜お姉ちゃん!良かった、あのね、鍵なくしちゃったみたいで家に入れなかったの」
陸が可愛らしい笑みを浮かべて走って来る。怜は陸の頭をポンと叩くと、深い溜息をついた。
「私達は春の陽気に誘われて、姉弟仲でも深めましょっか〜」