蒼月の事情2アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
3Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
6.6万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
04/03〜04/05
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●本文
・物語り憑き
それは、物語の登場人物達と触れ合う事の出来る、神秘の職業
それは、親から子へ、子から孫へと受け継がれる伝統の職業
それは、物語憑き本部からの指令により、日々物語の安全を守る、名誉ある職業
*蒼慈家*
蒼月(そうげつ)隊と言う、それなりに聞こえの良い隊名に不服らしい蒼慈(通称:蒼)は時岬(通称:岬)の制服に落書きをしていた。
「時岬様参上!南風の使者と言えば俺の事よ!誉鷺梓紅(ヨロシク)!」
満足げに微笑む蒼。その背後に立った岬が、右手に持ったオタマを振り上げる。
パカーンと言う良い音の後で後頭部を押さえ転げまわる蒼。
「いぃぃぃってぇぇぇぇぇっ!!!」
「自業自得です。ったく、なんで蒼さんはいつもいつも僕の制服に悪戯するんですか!」
「運命?」
「真顔でボケたことぬかすなや!」
岬が再びオタマを振り上げようとした時、突然外から1人の男性が駆け込んできた。
「どうした〜?夕飯が嫌いな物だって聞いて逃げてきたのか?」
「あんた基準で話を進めようとするな!‥‥あの、どうかしましたか?酷く顔色が悪いようですが」
蒼に任せていてはいつまで経っても話が進まないと感じた岬が、男性の顔を覗き込む。
「貴方達、特殊部隊の蒼月隊ですよね!?」
「‥‥その名前で呼ぶって事は、お兄サンは物語り憑きの人だよね?‥‥何か問題でも?」
「た、大変なんです!俺、とある物語の人物の買い物の付き添いを頼まれたんですが‥‥うっかり目を離した隙にいなくなってしまったんです!」
その物語の登場人物は、新しい白い着物を買いにこちらに来ていたのだと言う。
「で、その物語の登場人物って?」
「ゆ‥‥雪女さんです!!」
彼がそう言った時、窓の外にチラリと何かが過ぎった。
「あ、雪‥‥」
「雪女は確か、感情が高ぶると雪を降らせる‥‥んだよな?」
蒼の言葉に頷く岬。
「吹雪にならないうちに見つけ出す必要がありますね。とりあえず、本部にも連絡を入れないと‥‥」
≪映画『蒼月の事情2』募集キャスト≫
*蒼慈(通称:蒼)実年齢23歳(必須)
高身長の色っぽい二枚目。いたってお馬鹿のボケ属性
物語り憑き特殊部隊始まって以来の天才
武器は木刀orプラスチック製の玩具の刀
相手を無闇に傷つける事を嫌い、動きを封じて説得か、気を失わせて強制送還と言うスタイルをとっている
*時岬(通称:岬)実年齢18歳(必須)
クールで落ち着いた雰囲気の少年。身長は普通。常識的でツッコミ属性
武器は二丁拳銃。弾は3種類あり、状況にあわせて変えている
・結界弾:打ち上げ場所から半径1km以内の一般人や物を保護する
→空に向かって打ち上げる
→物語の登場人物が魔法や何かしらの特殊能力を使える場合に使用
→物語り憑きや物語の登場人物、岬や蒼は結界に守られない(あくまで一般人のためのもの)
・捕縛弾:対象をネットで捕らえる
→発射後、対象に当たる前に弾が破裂し、中からネットが飛び出して捕獲する
→対象との距離が近いほど命中率があがる。遠いと逃げられる可能性有
・眠弾:対象やその周囲にいる人物を眠らせる
→発射後、一定の距離を進むと弾が破裂し、中から薄い煙が出る
→岬以外は例外なく全員、その煙を吸い込めば眠りに落ちる
→通常は対象が風下に居る時に使用
*雪女(ゆきめ)(必須)
真っ白な着物を着た女性
感情が高ぶって来ると、半径10km以内に雪を降らせる
→不安程度ならば小ぶりだが、泣き出すと吹雪になる
外見年齢は20代程度まで
・その他
・雪女とはぐれてしまった物語り憑き
・雪女捜索に手を貸す物語り憑き
・物語の登場人物
→蒼・岬以外の特殊部隊員は不可
●リプレイ本文
岬(南央(fa4181))は本部への連絡を終えると、ジョン(ジョニー・マッスルマン(fa3014))に冷たい瞳を向けた。
「目を離すなんて、責任感に欠けてます」
「すみません。でも、早く見つけないと‥‥彼女、知らない人でも飴玉1つでついていくタイプですし」
「どうしてそんな厄介な人から目を離すんですか。まったく、貴方達物語り憑きは‥‥」
お説教しつつも扉を開け、玄関脇にしゃがみ込んでいた女性と視線が合う。
「蒼ちゃん〜、どこ?」
「蒼さんなら‥‥」
「姉上どうしたんです?」
蒼(笙(fa4559))が首を傾げ、萌黄(澪野 あやめ(fa5353))が一生懸命説明を始める。
「食べたいって案内‥‥どこに?」
「あの、蒼さん。この方‥‥日本語喋れるんですか?」
「姉上は蒼さん日本語検定1級だぞ!?」
「何勝手に検定作ってんだソコ!ちっとも当てにならねぇよ」
「まぁ、とりあえず状況はわかった。行くぞ岬ちゃん!」
「や、全然わかんねぇよ。姉弟で勝手に話し進めるなよ」
「最近は言葉を省略するのがブームなのに、岬ちゃんは旧石器時代の人間か!?」
「あんだけの言葉で何が分かるってんだっつーの、ねぇ、ジョンさ‥‥」
「あ、たこ焼き食べます?冷めちゃってますけど」
もぐもぐとたこ焼きを頬張るジョン。それを買っていたせいで見失ったと言うのに‥‥
「ちゃんと最初から、分かるように説明してください!」
ジード(モヒカン(fa2944))はこの世界にかき氷を食べに来ていた。それなのに、案内役の物語り憑きが突如姿を消した。何で自分がと思いつつ彼女の姿を捜している時、ピーターパン(タブラ・ラサ(fa3802))と出会った。物語り憑きとはぐれたと言う説明から始まり、かき氷を食べたいのだと言う話に向かう。
「僕も食べたい!」
それならば一緒に行こうと、物語り憑き捜しは諦めてかき氷探しへと変更する2人。そんな時、買ったばかりの少女漫画を読んでいた雪女(EUREKA(fa3661))と遭遇した。
「良かったわね、恵美ちゃん!思いが通じて!」
感動でウルリとなった雪女が雪を発生させ、それを見てかき氷と勘違いするジード。雪女の手をガシっと掴み、彼女を誘拐する。
「一緒に来てもらうぜ!」
「あら、お仲間さん♪」
素直についてくる雪女。何かが違うと感じつつも、面白そうだからとピーターパンは口を噤んでいた。
「貴女も案内していた物語の登場人物がいなくなったと?」
「そうなのー。雪山!氷、私が教えたもの!」
「つまり、雪山の写真を見せてこの小さいのがかき氷だと教えたんだと」
蒼が萌黄の言葉を通訳する。
「ジードが雪をかき氷だと勘違いしたドジっ子さんの可能性もある」
「盗賊団の頭がドジっ子ですか」
「とりあえず、茶飲み友達連絡網を活用だ!」
蒼が携帯を取り出し、どこかへと連絡を取り始める。
「あ、トメさん?そっち天気どう? そっかー。‥‥あ、六さんトコ雪降ってる?あらぁ、ぎっくり腰?あれ痛いんだってねー、俺が学生の時、担任の先生が‥‥」
「蒼さん、くだらない世間話を続けるんなら、夜ご飯抜きです」
「クールなしっかりした子ね♪」
「違うよ姉上、岬ちゃんはただの暴君だよ!」
「大体の居場所はわかったんでしょう?早く行きましょう。その、六さんの家ってどっちなんです?」
岬の言葉に何を思ったのか、突然木刀を地面に投げる蒼。
「こっち!」
「‥‥蒼さん、いい加減にしやがらねぇとぶちのめすかんな?」
爽やかな笑顔で恐ろしいことを呟く岬。蒼がウルウルしながら岬を見詰め‥‥
「俺の天性の勘は当たるのよっ!?」
「それじゃぁ、外れたら1ヶ月夕飯抜きです」
「ひ、酷い岬ちゃん‥‥」
しょぼんとしゃがみ込んだ蒼を無視して駆け出す岬。ジョンも萌黄も蒼を無視し、岬の後を追って走り去ってしまった。
「‥‥うぅ、孤独だ‥‥」
ジードの苦労話に涙したり、少女漫画で号泣したりラブコメに笑ったり、その度に天候を変える雪女。本部からの要請で彼女を捜していた春日(橋都 有(fa5404))は雪の中で力尽きた。
「どうしてこんなとこ来ちゃったんだろ、どうせ僕なんて役に立たないのに‥‥絶対本部の嫌がらせだよ、いや、そもそも生まれて来た事が間違いだったんだ。ねばねば言うしか能がないし‥‥足遅いし、ていうか短いし、靴下臭いし‥‥」
寒さのために超ネガティブな春日。それをうっかり見つけてしまった岬が、本能的に埋めようとし‥‥何とか踏みとどまる。
「蒼さん、春日さんが‥‥」
「あ、本当だ。よく会うねー。運命?ってか、そんなところで寝てると抱き締めて温めちゃうぞ?」
「何かもう、息絶えそうなんで、そうしてあげた方が良いかも知れません」
蒼のボケに岬がまともな答えを返した時、突然ジョンが上着を脱ぎ始めた。
「HAHAHA〜!暑くて服なんか着てられねえZE!雪風が大胸筋に心地いいNE!」
黙々と春日を掘り返す2人の傍で笑い声を上げるジョンと、温かそうな毛皮のコートを着た萌黄が掘るのを邪魔する(本人は手伝っているつもり)
「ヘイ!ユー、寝たらエンジェルが迎えに来るZO!」
「あはは、本当だ、天使が迎えに来てる‥‥」
掘り出された春日が虚ろな瞳でジョンを見詰め、ヤバイ感じにジョンが頬を叩く。正気を取り戻した春日が鼻水をすすりながら涙を零し‥‥
「命を繋いだからには頑張りますうう!」
気合を入れた途端にすっ転び、落ちたメガネを探し始めた。
漫画で号泣中の雪女を見つけ、あまり効果は期待できないが、一応結界弾を撃つ岬。
「とりあえず、吹雪を止めましょう!」
「だな。それじゃぁ、えーっと、隣の塀に家が建ったってね!いえーい!」
岬の心に吹雪が吹き荒れ、こんな瞳今まで見たこと無いYO!?と言うような冷たい視線を受ける蒼。岬が何かを言おうと口を開きかけた時、突然雪女と萌黄が笑い始めた。
「流石は蒼ちゃん!」
「岬ちゃん、ウケてる!どうしよう?想定外!」
「想定外だったんかい!?」
「それじゃぁ、蒼ちゃんに負けじと私も‥‥」
「貴女は何もせずにそこでおとなしくしててください!」
萌黄にツッコミを入れる岬。雪女がその声にウルリとなり‥‥
「ウケてごめんなさい!」
再び涙が溢れる。
「あー、女の子泣かしちゃいけないのよ〜?」
「岬ちゃんのせいだー!岬ちゃんが、あのフリフリのドンマイ隊の制服着てくれなかったから〜」
「そう言う問題じゃないだろ!」
「私の為に喧嘩は止めて〜!」
「雪女さんはちょっと黙っててください!そして泣き止んでください!」
ビシビシツッコミを入れる岬の頭に、雪玉がボスリと当たる。スノーウェアを着込んだピーターパンがけらけらと笑い‥‥
「あははっ、当たった当たった!怒ってる?怒ってる?」
「あなたった人は‥‥」
岬が怒りを向けようとした次の瞬間「ねばねばネット〜!」の声と共にピーターパンの上にネットがかぶさる。
「ちょ、何これ!?うわ、ねばねばする!!」
「あぁぁぁ、ダメ人間でごめんなさいいいいっ!!!」
泣きながら謝る春日ともがくピーターパンをそのままにして、岬はジードへ向き直った。
「さぁ、一緒に物語へ帰りましょう」
「嫌だ!今月の家計簿が真っ赤なんだ!チマチマ盗賊1本で40人が食っていくにも限界がある!まして、その上前をはねる奴までいるからな!襲って奪ってドカッと集めればドカッと使っちまう!今の俺達に必要なのは安定した収入なんだよ!かき氷屋で大もうけだ!!」
「それが盗賊団をまとめる頭の台詞KA!?」
「暑い国ならカレーの方が良いと思うわ!氷は溶けるもの!」
「お友達になったんですもの、かき氷配達に行きますから!」
ジョンがツッコミを、萌黄がコメントを入れ、雪女が約束をする。
「配達じゃなく、お前は俺の物語に来るんだ!」
「そんな!暑い国に行ったら私は死んでしまうのに!‥‥酷い!やっぱり私とは遊びだったのねーー!?」
雪女が泣き出し、ジードが凍りつく。‥‥蒼と岬が何とか雪女を宥め、埋められた人達を掘り出すのにそれから2時間かかった‥‥
「じゃあまたね♪」
「お世話になりました」
萌黄がジードを引きずり、素に戻ったジョンが雪女と一緒に丁寧に頭を下げてから本部へと戻っていく。ついでだからと、萌黄がピーターパンの首根っこを捕まえて一緒に連れて行く。
「はぁ、疲れた‥‥はい、蒼さんにはコレです」
やる気の無い様子で、お椀に山盛りになったかき氷を差し出す岬。お箸もつけて、見た目は白米と変わらない。
「シロップはお好みでどうぞ」
酢・醤油・味噌の3つに涙する蒼。
「どうして俺だけ!春日ちゃんと岬ちゃんは普通のご飯なのにっ!」
蒼慈家のご飯に招かれた春日。蒼の恨めしげな視線を頬に感じ、箸が進まない。
「あの人は罰です。僕の制服を毎回毎回ダメにしやがって‥‥」
バキィっと、箸を折る岬。
「あぁ、割り箸が折れてしまいましたね」
「あ、あの、時岬さん、それ普通の箸‥‥」
「割り箸ですよ」
にっこりと微笑まれ、言葉を呑み込む春日。何か話題はないかと視線を彷徨わせ‥‥
「それにしても、やっぱりドンマイ隊さんは頼りになりますねぇ」
春日にしてみればそれは純粋な褒め言葉だったが、岬の前では言ってはいけない言葉No1だ。取り出した箸を再びバキリと折る岬。
「いやだなぁ、春日さん。僕らは蒼月隊ですよ。蒼・月・隊!」
「す、すみません時岬様‥‥」
春日の中で、岬=逆らってはいけない人と言う式が成立した。