destiny ―aloneアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 2.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/23〜06/25

●本文

『此処に来れば、一人じゃないって実感できる、私を見てくれる――』

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その街は昼と夜とで全く正反対の顔を持つ―‥。
朝は爽やか街も、夜になれば一変する。
その中でも独特の雰囲気を持つ店が1軒存在した。

―destiny‥

「なぁ‥あの人って最近、毎日来てないか?」

タツヤが指差したのは、奥のテーブルで楽しげに話している女性・玲子だった。

彼女は一週間ほど前にふらりとやってきてから、毎日来るようになった。

毎日来てくれる客がほしくないわけではない。

むしろ店側としては大歓迎な客だ。

「あぁ、そういえば‥確かに毎日来てるな」

毎日来ているから目についた、というわけでない。

毎日来る+お金を馬鹿みたいに使う女性なのだ。

ルイ、ドンペリ、他にも高い酒を毎日頼んでは楽しそうにしている。

しかし―‥時折見せる寂しそうな笑顔がタツヤには印象深かった。

「あの人、何処かの社長令嬢って聞いたけど、社長令嬢なら羽振りが良くて当然かもな」

「そうかな‥何か無理に笑っているように見えるけど‥」

タツヤが呟いた言葉は騒がしい店内にかき消され、誰の耳にも止まることはなかった。



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●募集事項
◎映画「destiny」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な配役は以下の通りです。
 ・タツヤ(ホスト/必須/男性一名)
 ・玲子(客/必須/女性一名)
 ・他にホストクラブにいそうな人
(バーテン、ピアニストなどなど)
※もちろん必須配役以外は参加された皆様でお好きに演じてくださって構いません。
◎今回も毎回の如く、自由度がかなり高めで決める事などが沢山あり、大変かもしれませんが、頑張ってください!!

●今回の参加者

 fa0898 シヴェル・マクスウェル(22歳・♀・熊)
 fa2495 椿(20歳・♂・小鳥)
 fa4263 千架(18歳・♂・猫)
 fa4559 (24歳・♂・豹)
 fa4713 グリモア(29歳・♂・豹)
 fa4790 (18歳・♂・小鳥)
 fa4941 メルクサラート(24歳・♀・鷹)
 fa5470 榛原 瑛(26歳・♂・猫)

●リプレイ本文

「私、ロマネコンティ頂こうかしら」
 そう言ってタツヤ(慧(fa4790))に笑みかけるのは玲子(千架(fa4263))だった。
「タツヤさんも飲んで?」
 その時の玲子の笑みに『やっぱり‥』とタツヤは心の中で呟く。彼は気づいていた、玲子が無理に明るく振舞い、笑っている事に――‥。
「‥タツヤ、ほらお酒を注いであげないと」
 桂(椿(fa2495))から言われ、ハッとしたタツヤは「申し訳ございません」と軽く頭を下げて玲子のグラスに酒を注ぎ始めた。
「あの人、凄くお金持ちなのね、高いお酒ばかりを頼んでいるし」
 隣の席から玲子を見て呟くのは幹恵(メルクサラート(fa4941))だった、彼女の言葉に「そうですね‥」と隼人(笙(fa4559))が幹恵に酒を勧めた。
「今日も賑やかなようですがお気になさらず。俺は幹恵さんに楽しんでいただけたら嬉しいですから」
 上手ね、幹恵はそう言って勧められた酒を口へと運んだ。
 その時、店内に少し切ない曲が流れ始める、ピアニストの凌(榛原 瑛(fa5470))が弾くピアノの旋律だ。
「ふふ、愛しの彼女の心境を現すような曲ね」
 そう言って凌に客からのリクエストを届けにやってきたのは店員のユリ(ユリアナ・マクレイン(fz1039))だった。
「な‥そんな事はない‥」
 そう言って凌はリクエストの書かれたメモを奪い取り、それに目を通し始めた。
「小谷さん(グリモア(fa4713))此処は私がしときますから、お酒を持っていったら?」
 ユリが呟くと「そうだな‥ちょっとお願いするよ」と言って作ったカクテルを持って玲子の所へと向かっていった。
 それから数時間後、玲子はいつものように帰っていった。
「玲子さん‥いつも何で無理に笑うんだろ」
 タツヤがため息混じりに呟くと「紫陽花、好き?」と桂から突然聞かれる。
「は?」
「オフィス街近くの公園の紫陽花が綺麗ですから、見に行くと良いですよ〜。お昼の12時から13時が一番見ごろです」
 何故に時間指定!?とタツヤは突っ込みたかったが穏やかに笑う桂に毒気を抜かれて、突っ込む事も忘れてしまった。
「はぁ‥じゃあ明日にでも見に行って見ますよ‥」
 首を傾げながらタツヤは帰宅し、彼と入れ替わりに隼人がやってきた。
「‥‥何があるんだ?」
 絶対何かあるだろ、と言いたそうな隼人に「花が咲いているんですよ」と答える。
「花?」
「そう、素朴で可愛い花が」
「‥そうか」
 近くにいた小谷・凌・輪(シヴェル・マクスウェル(fa0898))は互いの顔を見合わせ、謎の会話に首を傾げていた。


「オフィス街の公園って‥此処だよな」
 翌日、タツヤは桂から言われた通りに公園へと来ていた。
「あれ、玲子さんだ」
 公園の片隅で一人で弁当を食べるのは紛れもなく玲子だった。いつもと態度の変わらないタツヤとは反対に玲子は俯いたまま震えている。
「こんな所で玲子さんに会えて嬉しいな」
「嘘‥がっかりしたでしょう‥?」
 ポツリと呟いたのは玲子だった。
「がっかり?何で?」
「私、本当は普通のOLなんです‥でも何で分かったの?」
 服装も髪型も変えていたのに、と問いかけてくる玲子にタツヤは「すぐ分かったよ?」と不思議そうに答えた。
「でも‥だって‥」
「あ、お昼の途中だったね。またお店に来てね、待ってるから」
 それだけ言い残し、タツヤは手を振りながら公園を後にした。残された玲子は『待ってる』という言葉に躊躇いつつ、いつか店で見た幹恵の姿を思い出す。
「‥あの人は凄く楽しそうにしてた‥それは嘘偽りのない姿で店に来てたから‥」
 ポツリと呟き、玲子は再び店へと行く決心をした。


「誕生会?」
 あの後、店に来たタツヤの言葉に凌が聞き返す。
「そう、今日は玲子さんの誕生日なんだ、だから今日玲子さんが来たら皆でお祝いをしよう」
 だからこの曲を弾いてくれな、タツヤはそう言って玲子の好きな曲をリストアップしたメモを渡した。
「俺で役にたつなら」
 凌は呟いて、演奏する事を快諾した。
 その後もタツヤは色々なホスト達の所へ行き、玲子の誕生会に協力してくれるように頼み込んでいた。


 それから数時間後、店が開店して暫くした頃に玲子はやってきた。今までのような派手に着飾った姿ではなく、本来の玲子を引き立てるおとなしめの服装だった。
「お待ちしていましたよ」
 最初に玲子を出迎えたのは桂だった、穏やかな笑みと白いスーツがとても似合っている。
「Happy Birthday‥覚えていますよ?」
 隼人の言葉に「‥え?」と玲子が目を丸く見開く。
「最初に来店して下さった時に教えてくれたでしょう?」
 タツヤが待っています、そう言って隼人と桂にエスコートされ、席へと案内される。店内には以前、玲子が好きだと言っていた曲が凌によって演奏されていた。
「誕生日なんて‥私自身も忘れていたのに‥」
 瞳に涙を浮かべながら玲子はタツヤの所へと案内され、呟く。
「俺は玲子さんに心の底から楽しんでもらいたいだけだよ」
 だから楽しもう、そう言ってタツヤは玲子を席へと座らせる。それと同時に小谷が席へと近づいてきてホット・バタード・ラムをテーブルへと静かに置いた。
「‥お誕生日、おめでとうございます」
 笑顔で渡され、玲子は「ありがとう」と涙の混じる声で小さく礼を言った。
「ほらぁ、早く飲もう!貴方のお祝いなんだからさ!」
 そう言って大きな声で隣の席から乱入してきたのは幹恵だった。
「まー、良いお酒、私の口には合わないわね」
 クスクスと幹恵が呟き「安いお酒の方が意外と美味しいのよ」と言う。
「こうなったら皆で騒ごう!」
 輪はそう言って幹恵に遠慮のないハグをする。された幹恵は息ができないのかバタバタと手を宙に泳がせている。
「輪、幹恵さんが苦しがっているだろ」
 苦笑しながら隼人が輪と幹恵を引き離す。
「でも‥ぶっきらぼうな凌がこんな騒ぎの演奏をよく引き受けたね」
 幹恵と引き離された後、輪が桂に問いかける。
「凌にとって玲子さんは特別みたいだからね」
 桂が「ふふ」と笑って答えると「どういう意味?」と輪から聞きなおされる。
「さぁ、それは本人から聞くしかないんじゃないですか?」
 玲子が来店したとき、凌は玲子の好きな曲を優先的にいつも弾いていた。そんな彼の気持ちを知っているホストは少なくはない。
「玲子さん、いつも綺麗だけど今日は凄く綺麗だよ。そんな笑顔、俺初めて見たし」
 タツヤが呟くと玲子は顔を真っ赤にして「あ、ありがとう」と呟いた。

 そして、楽しい時間はすぐに過ぎてしまい、玲子の帰る時間がやってきた。
「今日はありがとうございました。今度は無理せずに遊びに来ます、それまで待っててくださいね」
 玲子が頭を下げて言うと「もちろん」と隼人が答える。
「此処は無理に来て楽しむ所じゃないし、気楽に遊びに来てね」
 タツヤがにっこりと笑って呟くと、玲子は「えぇ」と首を縦に振った。
「‥私、これから変われるかしら‥無理をする私にじゃなくて‥前向きに素直な私になれるかしら‥」
 玲子が背を向けたまま呟くと、凌が「大丈夫だと思う‥」と小さな声で答えた。
「貴方なら―‥きっと」
「ありがとう」
 玲子は凌に礼を言って、destinyを後にした。
「帰っちゃったね。タツヤ、凌、寂しいんじゃないですか?」
 玲子の姿が見えなくなり、店内に戻ると桂から問いかけられる。
「え?」
「‥何で、俺まで」
「だって玲子さん、前みたいに頻繁に来る事はないでしょうし‥」
 桂の言葉に「構わないよ」とタツヤは答える。
「頻繁に来て無理な笑顔を見るより、たまに来て本当の笑顔を見せてくれる方が何倍もいいよ」
 タツヤの言葉に「同感だな」と凌も答える。
「そうですか、中々生意気なことを言うようになりましたねぇ」
 桂は笑って「ねぇ?隼人」と隣にいる隼人を見ながら訴える。
「お前もうかうかしてると、ナンバー1の座を奪われるかもしれないぞ」
 隼人が言った言葉に「構いませんよ。そっちの方が自分らしくできそうですし」と眉を下げて笑った。きっと桂以外のホストが言った言葉なら嫌味に取れるかもしれないが、桂は心からそう思っているため嫌味には聞こえない。
「あはは、ヤだな、俺はまだ桂さんの足元にも及ばないし!」
 タツヤが慌てて言うと、その場にいたみんなから笑いが沸き起こる。
「彼女を偽から真に変えられたな」
 ボソリと呟いた隼人の言葉はタツヤの耳には届かなかった――‥。


さて、明日の夜はどんなお客様が来るんでしょう?
 destinyでは皆様のご来店をお待ちしております。


END



 打ち上げ
「これは俺のだヨ!」
「い〜や!俺のだ!」
 撮影終了後、撮影で使った食料を巡って争うのは芸能界一といわれる大食いの椿さんと、彼に勝るとも劣らない大食いの千架さんだった。
「ちょ‥喧嘩はナシにして頂戴ね!誰か何か出前とって!」
 結局、彼らの喧嘩はユリアナが頼んだピザなどで収まり、何故か撮影が終了してからの出費が多い今回の撮影でした。
「‥玲子役―‥千架君は男なのに不覚にも一瞬トキめいてしまった‥」
 慧さんの言葉で千架さんはクリティカルヒットを受け、打ち上げは終了していった。


 今回の打ち上げの見所――大食いVS猛獣姫


おしまい。