動物使い 玖アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
2.1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/02〜07/05
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●本文
『運命の歯車が終章へと回る中――人形達が動く』
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何をする気にもなれない。
だって、何かをしても意味がないのだから。
俺は生きる意味を失った―――。
炯都――――‥。
※※
「やれやれ、黒の本拠地に白がいるというのもおかしな話だね」
イザナギが苦笑しながらため息混じりに混じる。
「氷煉――‥翡焔は?」
翠嵐が問いかけると、氷煉は悲しそうに首を横に振った。
「体の傷は癒えています、ですが―――」
「問題は中身の傷、か‥当面の問題は絆を断ち切られて衰弱していく彼をどうするかって事だね」
イザナギはチラリと視線を移し、翡焔が座っているベッドを見た。
以前の彼の雰囲気とはがらりと変わり、ただ虚ろに天井を見上げている。
「彼を救う方法はあるよ」
イザナギがポツリと呟く。
「炯都を復活させることだ」
一時的、その言葉に翠嵐が怪訝そうに眉をしかめる。
「復活って‥確か炯都の人格は死んだんだろ?」
「羅喉という人格、そして九耀という人格は生きているんだろ?それら二つを犠牲にすればあるいは‥」
「そんな事ができるなんて‥聞いた事ありません、ナギ――貴方は何か隠していませんか?」
氷煉が呟いた時、黒の本拠地に爆発音が響く。
「愚鈍な黒ども!我ら人形使いに屈するならよし、逆らうならば皆殺し!さぁ考えるがいい!」
そう言って現れたのは炯都――いや、羅喉と悠然に佇む阿修羅の姿だった。
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●募集事項
◎映画「動物使い」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な配役は以下の通りです。
・炯都(羅喉)、翡焔、翠嵐、氷煉の四名です。
(阿修羅・イザナギはNPC扱いでも構いません)
※参加者の都合でツカワレと白の動物使いと二人一組にできない場合もあると思います。
ですので、今回からは『二人一組』でなくてもOKです。
ですが、相棒がNPCになると劇中の描写は出演者メインの視点になりますので、ご了承ください。
●動物使いの設定など
◎白の動物使いにはパートナーとなる『ツカワレ』が存在します。
◎『ツカワレ』を演じられる方は自分の戦闘形態になる動物をお書きください。動物の種類はPCの獣人の動物以外でも構いません。
例)羊、山羊などBNOで存在しない獣人でも構いません。
◎白の動物使いとツカワレには絆が存在します。絆が深ければ深いほどツカワレの能力も上がります。
◎白の動物使いは限りなく人に近い存在ですが、人ではありません。
◎ツカワレは普段、人の姿をしていますが限りなく獣に近い存在です。
◎必ず白の動物使いとツカワレは二人一組にしてください。
◎それとツカワレは動物となってますが、別に虫だろうが魚だろうが構いません。
◎ツカワレの方はパートナーと繰り出す必殺技を考えていてください。
例)ツカワレがサンマだった場合→自身を焦がしていい匂いをさせて敵の動きを止める‥など極端な話、こういうのでも構いません。
ですが、必ず描写されるという訳ではありませんので、その辺はご了承下さい。
◎それとツカワレの戦闘時についてなんですが外見は半獣化と思ってください。
(流石に完全に動物になってしまうとお笑いになってしまいそうな気がするので)
◎動物使いとツカワレの絆が最高潮になった時に『超必殺技』が使用可能となります。
◎ツカワレには動物使いは必須ですが、動物使いにツカワレは必須ではありません。
契約を済ませていない動物使い、まだ覚醒していない動物使いなどがいますので。
◎黒の動物使いですが、魔と契約した場合、契約した魔が何らかの理由で消失しない限りは契約は続行になり、次の魔と契約できません。
※ですが、イザナギは黒の動物使いの中で一番強い能力の持ち主で、彼の場合は複数の魔を使役する事が可能です。
複数の魔を使役できる能力ゆえに、彼は黒の中で最強となっています。
※イザナミはイザナギが人工的に作り出した魔です。それ故にイザナギ以外と契約を結ぶことが出来ません。
◎動物使いにも特殊能力はあります、ですがほとんどがツカワレの戦力を上げる能力になります。
◎黒の動物使いが魔を製作する時に必要なのは、己の魔力が満タン状態なのと、魔を生み出す赤い月が出ている事の二つのみです。
※プレイングの書き方※
例)動物使い
配役:白の動物使い
役名:水貴
一人称:私
二人称:〜さん
口調:です、ます、でしょうか?
対となるツカワレ:太郎
(出来れば台詞例も書いておいてほしいです)
例)ツカワレ
配役:ツカワレ
役名:太郎
一人称:俺
二人称:お前
口調:〜だ、〜じゃねぇ?
対となる動物つかい:水貴
(出来れば台詞例も書いておいて欲しいです)
‥‥と上記のようになりますが、あくまで例ですので皆様の書きやすい書き方でOKです。
●リプレイ本文
人形使いの拠点、阿修羅の前に立つのは羅喉(橘・朔耶(fa0467))だった。
「阿修羅、黒の動物使いを征服した暁には妹を‥炯都を甦らせてもらえるんやね?」
羅喉は目の前の玉座に座る阿修羅に問いかける。
「もちろんだよ、キミが‥黒達を掌握出来たならね」
「その言葉――忘れんときや」
そう言って羅喉は阿修羅の前から姿を消し――黒の本拠地へと向かい始めた。
「貴方がついていながら‥如何して、如何して母様がこんな事に‥!」
そう言って翡焔(ヴォルフェ(fa0612))に掴みかかるのは、炯都の実子であり、龍と呼ばれている少年・煌夜(ベイル・アスト(fa5757))だった。
「翡焔‥このままじゃ貴方まで死んでしまうわ‥」
氷煉(ユフィア・ドール(fa4031))が衰弱していく兄を見て、小さく呟いた。しかし、煌夜の怒りを身に受けても、氷煉の言葉を受けても翡焔は何も答える事はなかった。
「‥行きましょう‥煌夜‥」
「僕は‥たとえ其処に納得出来る理由や同情できる余地があったとしても‥貴方のそんな姿は見たくなかった‥」
何も反応しない翡焔にため息をつき、氷煉が煌夜と共に部屋を出ようとした時、翡焔は小さな声で「翡煉‥どうか、もうお前は自由に‥」と呟いた。
「‥‥私の自由は‥此処にあります‥」
氷煉は辛そうに表情を歪めながら呟くと、部屋を出て行った。
「アイツは相変わらずみたいだな」
イザナギの所へ戻る途中で翠嵐(レイス・アゲート(fa4728))と出会う。
「さて、これから―――」
どうなるんだろうな、翠嵐が言いかけた時に黒の本拠地内に激しい爆発音が響いた。
「何だ、今の爆発音‥?」
ゴゴゴ、と地響きを響かせながら二度目の爆発音が三人の耳に入ってくる。
「大変なの!」
そう言って慌てて駆け寄ってくるのは黒の動物使い・美海(ミミ・フォルネウス(fa4047))だった。
「どうしたんですか?」
煌夜が問いかけると「人形使いが来たの‥」と不安そうな表情で答えた。
「また派手に登場だな‥?」
翠嵐がため息混じりに呟き、人形使いが現れた場所へと歩き出す。
「私も行きます、煌夜‥貴方はナギの所に行ってください。美海は私達と共に応戦です」
そう言って氷煉はメイド服を翻しながら自分の主・イザナギに反する者を始末しに人形使いの元へと歩いていった――‥。
「いよいよ阿修羅様の宿願が叶う時が来た――‥その為に真のイザナミを甦らせ、その力を龍と共に阿修羅様に捧げるのだ‥」
ククク、と邪悪な笑みを浮かべて呟くのは雪牙(辰巳 空(fa3090))だった。その隣には羅喉も立っている。
「雪牙、任せるで」
そう言って羅喉は目の前に現れた氷煉と美海、アベル(羽生丹(fa5196))の三人を一瞥すると先へ進もうとした。
「黒の動物使い・美海なの‥此処の守護を任されたの‥」
「敵に名乗る必要なんてないよ、叩きのめせばいいだけなんですから!」
そう言ってアベルは自分のツカワレに雪牙を倒すように命じた。
「これ以上は‥行かせないの」
二人で羅喉を先へ行かすまいとするが、雪牙の攻撃によってそれは制された。
「どうぞ、お先に。此処は私が食い止めますから」
そう言って雪牙は『魅惑の芳香』を使い、黒の動物使い達の足止めをした。
「‥雪牙を倒せたなら、私が開いてしたるわ」
アベル・美海と同じく雪牙の能力で動く事が出来ない氷煉に一言告げると羅喉は本拠地の奥へと進みだした。
「おい、何とか言えよ。人形使いが襲いに来てるんだぞ、早く此処から‥」
結局、翡焔を護る役目を氷煉から押し付けられた翠嵐は、翡焔の部屋で苛立っていた。
「ったく‥護るのは得意じゃないってのによ」
ぶつぶつと文句を言う翠嵐の表情が一変して険しくなり、翡焔を蹴飛ばして部屋の隅に追いやる。
ダン、と壁に叩きつけられた翡焔は背中の痛みに表情を歪めるが、入ってきた人物を見て瞳を見開いた。
「‥‥‥‥炯都――?」
「私は羅喉や、炯都は死んだ‥お前は見ていたはずやろ――けどお前等さえ征服出来たら」
そう呟くと羅喉は翠嵐に襲い掛かった。
「チッ!流石に手ごわいか‥」
すげーやりづらい、そう呟きながら翠嵐は問答無用で襲い掛かってくる羅喉に本気で攻撃が出来ないでいた。
(「顔馴染みだから‥やっぱやりづれーわ」)
はぁ、とため息をつきながら翡焔を護りながらの戦いに勝つことが出来るのだろうか‥と翠嵐は心の中で自問自答をしていた――。
「きゃあっ!」
美海の悲鳴が響く、アベル・美海、氷煉の三人がかりでも雪牙という人形使い一人に勝てないのだ。
「これ以上、ナギを傷つけないで下さい‥ナミを‥ナギを苦しめるというなら‥私は本気で戦います」
そう言って氷煉は雪牙の前に立ち、目を伏せる。そして滅多に見せない魔戌の姿を見せ、雪牙に襲い掛かった――。
「氷煉さん‥」
アベル・美海のツカワレは雪牙との戦いで瀕死に近い状態にあった。傷を治すのに長い時間がかかり、今回の戦いにはもう出る事は出来ないだろう。
「‥圧殺が‥効かなかった敵は初めてなの‥」
美海が自身のツカワレを抱きしめながら震える声で呟く。
「人形使い一人であんなに強いなら――‥大勢で襲ってきた時は、どうなるんだ‥?」
アベルの言葉に美海はゾッとする。
「‥氷煉さんなら何とかしてくれるって信じてるの‥だってイザナギ様の魔だから‥なの」
ぎゅっと美海が唇を噛み締め、呟いた時に煌夜がやってきた。
「氷煉さん!」
「煌夜さん‥ナギの所に行ってと言ったのに‥」
「イザナギさんは大丈夫です」
「貴方の事を心配してナギの所に行ってと言ったんですよ?」
そう呟いた氷煉の言葉に「僕は‥」と煌夜が言葉を紡ぐ。
「僕は今まで護ってもらいましたから‥だから今度は僕が貴方達を護る番です」
そして雪牙を強い瞳で見つめ「母様を救う為なら何だってやります」と呟く。
「それがたとえ‥羅喉と戦わねばならないとしても」
そして戦おうとする煌夜に雪牙は大きな声で笑い出した。
「そうか、あの男は知っているのか‥炯都、そしてイザナミを元に戻せる方法を――」
イザナミと炯都が元に戻る、その言葉を聞いて氷煉と煌夜の表情が一変した。
「知っているのですか!?」
目の前に『希望』という名のエサをチラつかされ、二人に一瞬の隙が生じる。その隙を見逃す雪牙でもなく、煌夜に十握の剣、そして氷煉を触手で動きを封じた。
「力無き者は消えよ、強き者は阿修羅様の生贄となれ」
ニ、と嫌な笑みを浮かべながら雪牙は二人に攻撃を仕掛ける――しかし『魅惑の芳香』を使った時に予想以上に体力を消耗しており、致命傷を与えるほどの力は残っていなかった。
「ナギの為にも‥貴方を生かして帰すわけにはいかないわ!」
「母様を元に戻す方法、聞かせてもらいます――」
二人は雪牙の攻撃によってぼろぼろになっても、それぞれの目的の為に雪牙を捕らえようとする―――が‥其処へ雪牙を連れ戻すように現れたのは‥。
「あ、阿修羅様‥」
「此処でお前を失うのは実に惜しい、戻っておいで、時期に彼女も帰ってくる」
そう阿修羅は呟くと雪牙を連れて、その場から姿を消したのだった。
「ナギ――‥ごめんなさい‥」
緊張の糸が切れたのか、氷煉は呟いた後に膝をつく。
「氷煉さん!」
美海とアベルが駆け寄るが「‥大丈夫、ナギの所へ行かなければなりません‥」と答え、覚束ない足取りでイザナギの所へと向かっていった。
「ところで‥最初から思ってたんやけど、何でアンタは黒にいるん?どちらかといえば‥アンタは私らの――」
羅喉が言いかけて、険しい表情で自分を見る翠嵐に気がつく。
「そないに傷だらけの姿で睨まれても怖くないわ」
羅喉はククと笑いながら血まみれの翠嵐を見る。
「私らの力は分かったな?人形使いに服従するかどうか‥考える時間をやる、次に来るまでに結論を出しとくんやな」
そう呟くと羅喉はひらりと窓に身をのせる。
「來我的傍?」
去り際に羅喉が翡焔に問いかけるが、彼は緩く首を横に振る。
「確かに‥お前や九耀の傀儡になれば、もう苦しむ事はないけれど‥俺は『炯都』を捨てる事は出来ない」
「‥さよか、ほな、次に逢う時は敵になってまうな」
羅喉はそれだけを言い残して窓からひらりと身を躍らせた。
「例え‥お前と敵対しても俺は炯都のツカワレでしか生きていけないんだよ‥」
ぽつりと呟く翡焔の言葉は羅喉に届く事はなく、静寂の空間に飲み込まれていくだけだった。
「‥人形使い‥次に沢山きたら‥ちょっとヤバいの‥」
「確かに‥一人でも今回は勝つことが出来なかったから‥」
美海とアベル言葉に、全員が息を呑む。
「今回は大変だったね、皆――‥恐らく‥次はこの本拠地を潰す気で人形使い達はやってくるだろう、それまでに炯都を甦らせる方法を実行しなければならない」
何故、そんなに炯都に拘る?と翠嵐が問いかけると「答えは簡単さ」とイザナギが意地の悪い笑みを浮かべて答えた。
「炯都こそが人形使いの長・阿修羅を滅ぼす唯一の『武器』だからさ――炯都は阿修羅にとって諸刃の剣なんだよ」
炯都を甦らせる、その言葉に翡焔の中で『希望』という名の炎が再び燃え上がっていた‥。
END