LUNA −suddenlyアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 6.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/06〜07/09

●本文

『永遠の炎‥それは―――‥‥』

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それは突然の出来事だった。

リアと名乗った女性が現れた事により、事態は急速に進みだした。

「永遠の炎の事を聞きたい?」

そう不敵に笑って、リアは『暁闇』に現れた。


※※


「今日は――あの女の封印が一週間だけ解ける日だ‥」

月天子の言葉に月姫は「‥悪しき聖女・リア」と下を俯きながら呟く。

「純血の腐獣――‥許されない存在から生を受けた、生まれつきの咎人」

「人間界の月鬼達と接触しているようだけど‥何を企んでいるのか‥」

「忘れる事もできない‥遥か昔――‥あの女を信じたおかげで故郷・月を捨てなければいけなかった‥」


※※

「永遠の炎の事を知っているのか?」

「もちろん知っているわ、どんなモノで――何処にあるかも」

リアはそう言って「珈琲」と短く店主・朔夜に話しかけた。

「永遠の炎は意思のある存在。炎と言われていながら形を持たない虚ろなモノ、人から人へと移る不確かな存在」

人から人へ移る、その言葉を聞いて月鬼達は驚いたように目を見開く。

「永遠の炎は命の炎、腐獣を滅ぼす炎―――つまり、心臓よ」

「腐獣の――心臓‥?」

その時、誰もが思った事だろう。

この世界には何千、何億と腐獣は存在しており、今も増え続けている。その中からたった一匹の腐獣が『永遠の炎』を宿しているのだ。

「まるで‥砂漠で砂金を見つけるようなものだな――」

「だけど世界でたった一人、私だけなら永遠の炎を見つけ出す事ができる」

リアの言葉に「本当か!?」と月鬼達がリアに詰め寄る。

「私は腐獣よ、しかも―永遠の炎を宿した腐獣から生まれた純血の腐獣、永遠の炎の波動は私の脳内に刻み込まれている―私だけが永遠の炎を見つける事ができる」

そして私は見つけた、とリアは拳を強く握り締めながら震える声で呟いた。

「今、永遠の炎を宿している腐獣はあなた達も会った事のある―泰牙という腐獣よ」


※※設定※※

月鬼は生まれつき『月天子』か『月姫』―‥どちらかの加護を受けています。

月天子の加護を受けている者は『攻撃系』の能力を持ち

月姫の加護を受けている者は『防御系』の能力を持っています。

同じ加護を受けている者同士は、互いの力を合わせて連携技を使う事が出来ます。
※月姫+月姫
※月天子+月天子はOK。

※月姫+月天子
※月天子+月姫はNG。

相対する能力同士は力が反発しあい、うまく力が絡まらず連携は出来ません。

※能力はそれぞれの系統に反しないのであれば皆様で好きに決めて下さって構いません。

前回までに質問が出たこと(全部掲載はしておりません)

・能力系
◎防御以外の能力(補助・束縛)なども月姫の加護を受けた者が使用可能です。

◎自分以外の存在を腐獣に感染させずに使役する能力は月天子の加護を受けた月鬼が使用可能です。
(その際は使役する存在について詳しく考えていただくことになります)

◎連携技は二人以上でも可能ですが、連携技自体が体力を大幅に消耗するので三人以上と連携しても、上手く能力を扱えない場合があります。

◎連携技を繰り出した場合、術者双方が使う事が出来ます。

・腐獣
◎腐獣の外見は特に決まったものはありません。大きい腐獣から小さな腐獣まで存在します。
(感染した場合は、感染者の姿を維持しており、記憶・知識すべてを所有しています)

◎感染者は腐獣であることを隠す事が出来るが、本能である『破壊活動』を抑える事は無理であり、我慢できなくなった破壊活動で正体がバレる事が多い。

◎自然に生まれた腐獣は知識がないので特殊能力は持っていませんが、感染者は特殊能力を持つ事が出来ます。

◎感染者(人間)は腐獣と人間としての意識を両方持っており、人格が入れ替わる事もある。

◎感染者の遺体は例外なく塵となって消えてしまう。

◎自然に生まれた腐獣は複数行動は滅多にしない。
(仲間だと判別する知性もないので、複数で行動しても仲間割れする事もある)

◎感染者は『使役する』という特殊能力を持たせる事で腐獣を使役する事が出来る。
(ただし感染者は自我があるので使役されることは滅多にない)

・その他

◎普通の人間が持っている『月鬼』『腐獣』に対する認識は、普通の人間が『幽霊』の事を考えている程度。

◎月姫、月天子は法律にまでは介入する事はできない。

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●募集事項
◎映画「LUNA」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な配役は以下の通りになっています。
 ・月鬼(必須/何名でも可)
 ・泰牙(必須/男性一名/腐獣)
(リアはユリアナが演じます)
※他に適役がありましたら、そちらを演じていただいても結構です。
※設定などに疑問などを感じたら、NPCユリアナに質問して下さい。
 その際は別スレをたてていただけると有難いです。

今回のユリアナの配役:OPに登場したリアという純血の腐獣

●今回の参加者

 fa0467 橘・朔耶(20歳・♀・虎)
 fa1024 天霧 浮谷(21歳・♂・兎)
 fa2459 シヅル・ナタス(20歳・♀・兎)
 fa3366 月 美鈴(28歳・♀・蝙蝠)
 fa4956 神楽(17歳・♀・豹)
 fa5196 羽生丹(17歳・♂・一角獣)
 fa5757 ベイル・アスト(17歳・♂・蝙蝠)
 fa5889 藤堂直哉(21歳・♂・一角獣)

●リプレイ本文

「貴方の心臓が腐獣の命の源――永遠の炎なのよ」
 突然、泰牙(天霧 浮谷(fa1024))の前に現れたのはリア(ユリアナ・マクレイン(fz1039))と名乗る女性の腐獣だった。
「俺の心臓が‥?」
「そう、これから月鬼達は腐獣を倒すという目的じゃなく、貴方の心臓を狙ってやってくる‥簡単には殺られないでよ?」
 私を楽しませて、そう言ってリアは泰牙の前から姿を消した――。
「‥永遠の炎、腐獣の命――か。使えそうだな‥永遠の炎から力を得られるかもしれないな」
 そう企みながら泰牙は永遠の炎を護る為に、自分の意識を隠したのだった。


「もしもし、俺だけど」
 携帯電話で自分が育った施設に電話をかけているのは海唄(橘・朔耶(fa0467))だった。この前の朱桜の言葉を気にして電話をかけたのだった。
「永遠の炎――って何か分かるか?」
 海唄の言葉に電話の相手は「調べてみるから、後で電話をかけなおす」と答え、電話を切った。
「何か分かったら電話来るだろうし、仕事の続きをしなくちゃな」
 生徒犬の運送途中だった事を思い出し、海唄は呟く――それと同時に視界に入ってきた人物に目を丸くした。


「今更‥そんな事を言われても困るわね」
 暁闇でリアに珈琲を出しながら朔夜(月 美鈴(fa3366))が小さく呟いた。
「それに‥昔の事だけどリアのせいで酷い事になったと長老から聞いているから信じられないわ」
 朔夜の言葉に「それで?」と水鏡(シヅル・ナタス(fa2459))がリアに問いかける。
「うちらが永遠の炎を手にしたとして、そっちにはどんなメリットがあるんや?まさか死にたがりとかボランティアってワケやないやろ?」
 水鏡の言葉にリアは意味深な笑みを浮かべるだけで何も言葉を返そうとはしない。
「まぁ‥どちらにしても泰牙とは決着をつけるべきでしょうね」
 珈琲を飲みながら氷月(神楽(fa4956))が呟いた。そう言いながら、彼女の心の中では『腐獣であるリアが月鬼である自分達にこんな情報を流すなんておかしい』と疑っていた。
「別に信じなくてもいいわ、私はどっちでも構わないもの」
 氷月の心の中を見透かしたかのようにリアが呟き、氷月はドキッとする。
「とりあえず、色々と考えるよりは状況に応じて臨機応変に動けばええやないの?泰牙の所まで案内出来るんやな?」
「もちろんよ」
 暁闇を出ようとした時に「私も買い物に行かなくちゃ」と朔夜も一緒に暁闇を出た。
「店は大丈夫なの?」
 氷月が問いかけると「弟に任せるわ」と朔夜はにっこりと笑って答えた。


「流石に色々と事を起こしているだけあって‥ネットに情報が散漫していますね」
 呟くのは月鬼の四重(羽生丹(fa5196))だった。彼は最近月鬼達の中で噂されている永遠の炎について調べていると『泰牙』という腐獣が所持していると書き込まれていた。
「‥投稿者は匿名か‥誰がこれを書き込んだんでしょうね‥」
 四重は首を傾げながら、ネット情報を元に泰牙を探しに出かけた。


 一方、その頃の海唄は泰牙と対峙していた。
「何でお前がこんな所に‥」
 敵意をむき出しに目の前の泰牙に問いかけると「‥アンタ、誰?」ときょとんとした顔で聞き返してくる。
「ふざけ‥」
「あ!もしかして逆ナンってやつか!?俺、ナンパされてんのか!」
「違う!」
 幾度となく戦っている筈の泰牙と、目の前にいる泰牙――どうも様子がおかしく海唄は調子を狂わされる。
「お前は腐獣の泰牙だろう、何度も俺達と戦ってきたはずだ」
 海唄が叫ぶと「‥ふじゅう?」と本当に知らないかのように目を丸くしている。
「腐獣だか腐った汁だか知らないが、俺はそんなんじゃないって!」
 必死に「違う」と言い張る泰牙に海唄は一つの仮説を立ててみる。
(「‥もしかしたら‥腐獣との人格が別になっているんじゃ‥」)
「‥お前‥永遠の炎について何処まで知ってる‥?」
 海唄が問いかけると同時に泰牙の様子がおかしくなる。
「永遠の炎‥あ、れ――、まただ‥最近、気が遠くなる事が――」
 ガクン、と地面に膝をついたかと思うと鋭い爪で海唄の足を引っ掻いた。
「なっ――」
「よぉ、人間の方の俺に何を言ってもムダだぜ?何も知らないからなぁ!」
 そう言って手を振り上げ、ヤバイと海唄が条件反射のように瞳を閉じる。しかし痛みはいつまで待ってもやってこなく、目を開くと――大量の水が自分の前に壁を作っていた。
「間一髪やな、危なかったで?」
 水鏡が安堵のため息を吐きながら呟く。
「流石にこの人数はヤバイんじゃないのかしら?」
 氷月が問いかけると、泰牙は「チッ」と舌打ちをする。
「お前等こそ忘れてるんじゃねぇのか?俺は腐獣を無限に生み出せるんだぜぇ!」
 そう叫びながら泰牙は穢れ纏いを使い、腐獣を生み出していく。
 すると、其処に突如現れた腐獣がいた。
「その能力‥お前がそうか‥」
 そう言って腐獣・黒耀(ベイル・アスト(fa5757))は「お前に死なれては困る」と呟き、霜穢の劫火を発動させた。
「受けてみるか、我が霜穢の劫火を‥」


「いきなり電話してくるからびっくりしたぞ」
 そう言って四重に問いかけるのは言鬼(藤堂直哉(fa5889))だった。言鬼も泰牙を探している最中だったので都合はよかった。
「だって一人じゃ怖いですし」
 色々な事件を起こしている泰牙と一人で遭遇しても無事でいられる自信はありませんから、四重はそう言うと泰牙と戦っている月鬼達への場所へと急いだ。


「あらあら‥妙な場面に遭遇してしまったわね」
 買い物帰りに戦闘に遭遇してしまい、黒耀の攻撃を受けて傷ついている水鏡の傷を治しながら朔夜は困ったように呟いた。
「水晶、持って来てて正解だったわ」
「いたた‥助かったわ、あの腐獣の攻撃――結構ヤバイわ。蒼の螺旋を使おうにも相手も水‥冷気を操るから思うような効果がでぇへん‥」
 水鏡が黒耀を見ながら小さく呟く。
「そういえば‥リアの姿が見えへんわ」
 水鏡は周りを見渡すが、此処へ案内してきた筈のリアの姿が見えない。
「‥リアは何が目的でこんな事をしているのかしら」
 氷月がため息をつき、霜穢の劫火の効果を抑える為に『氷雪の誘い』を発動させる。
「冷気を扱うのが自分だけとでも思っていたの?‥お生憎様ね、冷気を操るのはあたしも得手なの、暫くはあたしにお付き合いいただけるかしら?」
 氷月が黒耀を抑えている間に、他の月鬼達は泰牙目掛けて攻撃を繰り出す。
「ちっ‥ラスボスらしく最後に相手してやるよ、まずはザコで楽しめ」
 泰牙はそう呟くと、穢れ纏いを発動させて十数体の腐獣を生み出した。
「今は従わぬ下僕達‥いずれは従えてみせてやるよ」
 泰牙は高らかに笑いながら月鬼達の前から姿を消していった。
「‥泰牙」
 人間の人格と話した海唄だけが複雑な気持ちで逃げていく泰牙を見ていた――。
 ‥とそこへ遅れてやってきたのは四重と言鬼の二人だった。
「お前がのろのろやってるから、終わった後じゃないか!」
「そ、そんな事を言われましても‥まだ腐獣は一体残っていますし‥」
「永遠の炎を持つ泰牙に逢わないと意味がなかったんだよ‥」
 言鬼が『永遠の炎』という言葉を口にした途端、黒耀が「そうか、お前達アレを探しているのか」と低い声で呟く。
「お前、何か知っているのか?」
 氷月が攻撃を止め、黒耀に問いかけると「お前らはアレが何だか知らないのか?」と嘲るように笑いながら答えた。
「永遠の炎とは何か――それはこの星の生命に他ならない‥そうだろう?それが絶えれば全ての存在が死するのだから。星が人の認識出来る『永遠』の限界だ。対して炎は生命や魂魄を象徴する‥星の生命‥永遠の炎を冠するに相応しいと思わないか?」
 黒耀の言葉に月鬼達は動揺を隠せないでいた。リアから『永遠の炎』について詳しく聞いたわけではない、目の前の男が本当の事を言っているとも限らない。
 だけど―――もし、本当なら?
 本当だったら、腐獣を滅ぼす為にこの星全てを犠牲にしないといけないという事になる。
「そんな馬鹿な事‥」
 氷月も攻撃を再開させようとしたが、黒耀の方が先に動いた為、攻撃を避けられてしまう。
「永遠の炎――それは我が姫にこそ相応しい物だ‥」
 黒耀はそれだけ言い残すと泰牙が放った腐獣を盾にして逃げていった。


 戦闘が終わり、夜の静けさを取り戻した公園で月鬼達はリアの事を知らない海唄に事情を説明していた。
「リアは‥俺達にそんな事を話して何の得があるんだろう‥?」
「それには同感だわ、リアの話を鵜呑みにしていると酷い目に合うかもしれないわね」
 朔夜が砕けた水晶を見つめながら小さく呟く。
「泰牙に永遠の炎の事を聞きそびれてしまいました‥」
 四重が呟くと「どっちにしても素直に答えないだろうな」と海唄が答えた。その時、海唄の携帯電話が着信を知らせる。ディスプレイを見ると、少し前に話した施設の人間だった。
「もしもし?」
「おー、俺だ。永遠の炎の事で一つだけ思い出したことがあって電話したんだけど。確かお前が幼い頃に歌っていた歌の歌詞に似たような言葉があった」
「‥俺が歌っていた‥歌?分かった、ありがとう」
 海唄はそれだけ言うと電話を切り、考えるがさっぱり記憶にない。
「さて‥どうしたものかな‥」



「永遠の炎、激しく燃えるがいいわ――この世の全てを焼き尽くすほどに」
 遠くから月鬼達を見ながら呟くのは――妖しく笑うリアだった。



END