LUNA −shakingアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
5.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/19〜07/21
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●本文
『私が何をした?何をすればそんなに忌み嫌われねばならないの?』
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「バケモノ」
物心ついた時に父親から言われた言葉だった。
「アンタなんて生むんじゃなかった!」
次いで母親からも言われた。
私が何をしたというの?
確かに両親が腐獣、しかも母親は『永遠の炎』を所持していたから生まれてきた私の能力は格段に跳ね上がった。
腐獣の子供は人間として生まれる、という前例も覆した存在だった。
だけど私は何もしていない、何もしていないのに忌み嫌われ、蔑まれ、腐獣としても人間としても半端な存在になってしまった。
「‥なら、本当に忌み嫌われることをすればいい」
―‥そのためには月鬼だって、腐獣だって利用してやるわ。
「激しく燃える それは全ての命の源
一つ燃えれば 心をなくし
二つ燃えれば 体をなくし
三つ燃えれば 全てをなくす
永遠に燃え続ける炎 銀色の月が輝く時
その灯火 消える」
気がつけば私はいつもこの歌を歌っている。
誰が作り、誰から教わったのかは分からない。
永遠の炎を消す方法を歌にしているのだと聞いた事がある。
「‥ふふ、永遠の炎を消させはしないわ、月鬼達の命を吸って永遠の炎は激しく燃えるのよ――」
そう邪笑を浮かべながら、リアは高らかに笑っていた。
※※設定※※
月鬼は生まれつき『月天子』か『月姫』―‥どちらかの加護を受けています。
月天子の加護を受けている者は『攻撃系』の能力を持ち
月姫の加護を受けている者は『防御系』の能力を持っています。
同じ加護を受けている者同士は、互いの力を合わせて連携技を使う事が出来ます。
※月姫+月姫
※月天子+月天子はOK。
※月姫+月天子
※月天子+月姫はNG。
相対する能力同士は力が反発しあい、うまく力が絡まらず連携は出来ません。
※能力はそれぞれの系統に反しないのであれば皆様で好きに決めて下さって構いません。
前回までに質問が出たこと(全部掲載はしておりません)
・能力系
◎防御以外の能力(補助・束縛)なども月姫の加護を受けた者が使用可能です。
◎自分以外の存在を腐獣に感染させずに使役する能力は月天子の加護を受けた月鬼が使用可能です。
(その際は使役する存在について詳しく考えていただくことになります)
◎連携技は二人以上でも可能ですが、連携技自体が体力を大幅に消耗するので三人以上と連携しても、上手く能力を扱えない場合があります。
◎連携技を繰り出した場合、術者双方が使う事が出来ます。
・腐獣
◎腐獣の外見は特に決まったものはありません。大きい腐獣から小さな腐獣まで存在します。
(感染した場合は、感染者の姿を維持しており、記憶・知識すべてを所有しています)
◎感染者は腐獣であることを隠す事が出来るが、本能である『破壊活動』を抑える事は無理であり、我慢できなくなった破壊活動で正体がバレる事が多い。
◎自然に生まれた腐獣は知識がないので特殊能力は持っていませんが、感染者は特殊能力を持つ事が出来ます。
◎感染者(人間)は腐獣と人間としての意識を両方持っており、人格が入れ替わる事もある。
◎感染者の遺体は例外なく塵となって消えてしまう。
◎自然に生まれた腐獣は複数行動は滅多にしない。
(仲間だと判別する知性もないので、複数で行動しても仲間割れする事もある)
◎感染者は『使役する』という特殊能力を持たせる事で腐獣を使役する事が出来る。
(ただし感染者は自我があるので使役されることは滅多にない)
・その他
◎普通の人間が持っている『月鬼』『腐獣』に対する認識は、普通の人間が『幽霊』の事を考えている程度。
◎月姫、月天子は法律にまでは介入する事はできない。
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●募集事項
◎映画「LUNA」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な役は以下の通りです。
・月鬼(必須/何名でも可)
・腐獣(必須/何名でも可)
(リアはユリアナが演じます)
※他に適役がありましたら、そちらを演じていただいても結構です。
※設定などに疑問などを感じたら、NPCユリアナに質問して下さい。
その際は別スレをたてていただけると有難いです。
今回のユリアナの配役:OPに登場したリアという純血の腐獣
●リプレイ本文
「懐かしいわね〜」
そう言って、自分が育った施設を見上げるのは琥珀(ユフィア・ドール(fa4031))だった。今回彼女と海唄(橘・朔耶(fa0467))は『海唄が昔歌っていた歌』の事を調べる為に休日を利用して施設を訪れたのだ。
「全然変わってないわね、ねぇ?そう思わない?」
琥珀が呟くと「里帰り気分だな、琥珀は‥」と海唄がやや呆れ気味に呟いた。
「私、皆に挨拶してくる!」
琥珀は言い終えると同時に教官室へと向かっていった。
「やれやれ‥仕方ないな」
何処から探そうか、そう考えていると顔馴染みの教官がやってきて「久しぶりだね」と挨拶をしてくる。
「あぁ、そういえば調べ物で来たんだっけ、資料室に頼まれていた資料を纏めてあるよ」
「悪いな、そういえば琥珀も来ているから会ってやってくれよ」
海唄が教官に呟きながら資料室へと向かい始めた。
「これか―‥な?」
資料室に到着し、適当な椅子に座って纏められた資料を読み始める。ほとんどの資料は役に立たないものばかりだったが一冊のノートに書き殴られたものがあった。
またあの子は歌を歌う、きっとこのままでは皆が死んでしまう、どうにかしなければ
「‥歌を‥歌うと皆が死‥ぬ?」
どういう事だ、と海唄が首を傾げる‥しかし数分後に彼女はその理由を知る。
※※
「さて、あいつらはもう施設に着いた頃かな」
時計を見ながら呟くのは朱桜(ヴォルフェ(fa0612))だった、彼は海唄と琥珀を見送った後に仲間から聞いたリア(ユリアナ・マクレイン(fz1039))と泰牙(天霧 浮谷(fa1024))の事が気にかかり暁闇へと向かっている途中だった。
「あら、朱桜やないの」
暁闇の近くで水鏡(シヅル・ナタス(fa2459))と夜光(神楽坂 紫翠(fa1420))の二人と出会う。
「こんな所でどうしたんだ?夜光は外に出るなんて珍しいな」
「‥姉貴が食料が底をついたまま出掛けた‥」
「買い物先で偶然会うたんよ」
な?と水鏡が夜光に話しかけると、首だけを縦に振って夜光が返事をした。
「とりあえず店の中に入れて〜‥暑くて死にそうやわ」
水鏡が手で仰ぎながら夜光に言う、しかし『準備中』の札が掛けられている暁闇の前で一人の女性がうろうろとしている。
「‥月鬼?」
朱桜の呟いた言葉が聞こえたのか、女性・ベル(ブラウネ・スターン(fa4611))が此方を振り向く。
「月鬼‥?そうか、この店の月鬼というのはお前達の事なのだな?私はベル、最近腐獣の行動が活発化していると聞いて、一緒に戦わせてもらいたくやってきた」
「そうなんや?とりあえず中に入ってから話の続きをしようや」
夜光が鍵を開け、四人は店の中へと入っていった。
※※
「腐獣‥ふじゅう‥おかしいな‥辞書に載ってないぞ」
泰牙‥もちろん主人格の泰牙は自宅の押入れの中から辞書を引っ張り出して『腐獣』について調べたが、辞書には載っていない。
「‥やっぱり嘘だったのか‥?ま―‥いっか、別に大した事じゃなさそうだし」
流石は泰牙、どうでもいい事はすぐに忘れる事が出来る素晴らしい体質の持ち主だった。しかし主人格の泰牙が腐獣について調べている時、腐獣の泰牙は『永遠の炎』に干渉しようとしていた。理由はもちろん、自分の力をより強くする為。
「燃え盛る為の薪――更なる破壊が望みか?」
泰牙が聞こえてきた言葉に「え?」と呟くと同時に意識が薄まり、腐獣の泰牙の意識が覚醒した――。
「ふふ、漸く話が出来る相手に変わったわね、待ちくたびれたわ」
そう言ってひらりと軽やかにベランダへと降り立つのは‥リアだった。
「純血か、それで話というのは?」
「永遠の炎から力を得たいのでしょう?力を得るには火力が足りないわ、破壊を繰り返し、永遠の炎を燃え滾らせないと力は得られないわよ」
リアは「頑張ってね」とだけ言い残してベランダから降りていく。高さは人間が飛び降りれば即死になるほどだが、彼女は腐獣だ。これくらいの高さなどわけもないだろう。
「働いてもらうわよ、終わりの日まで――ふふふ、あはははっ!」
降り立った後、上を‥泰牙の部屋を見上げながらリアはけたたましく笑った。
「姫――」
リアを姫と呼び、後ろに立ったのは黒耀(ベイル・アスト(fa5757))だった。
「あら、彼の元にいなくてもいいの?仲間なんでしょう?」
「私が奴を守ったのは、永遠の炎を宿しているからに過ぎない‥。奴に従う理由など何もない、私が従うのは‥姫、貴方だけです」
彼自身、泰牙を守ったわけではない、彼が宿す『永遠の炎』を守った‥それだけの事なのだ。
「そう‥でも私に従う必要はなくなるわ―‥だって、私は‥」
言いかけてリアは「止めましょう」と呟き姿を消した。
「‥奴が動く――か」
空を駆けて飛び出した泰牙を見て、黒耀は呟き、そして後を追った。
※※
「さて、何が真実なんだろうな」
朱桜が呟き「んー‥」と水鏡が考えるように唸る。
「真実かどうかなんて実際には分からへん、判断材料が少ないうちらには真偽を確かめるのは困難やな」
水鏡が答えると「最もだね」とベルも呟く。
「もともと月鬼は腐獣と争っていたが、これ以上争っても被害が大きくなるだけだぞ‥」
お互いにな、夜光が呟き珈琲を飲もうとした時に物凄い気を放つ腐獣の気を感じた。
「な――‥」
夜光に続いて、他の月鬼達もその気配に気づく。
「この気配は――」
朱桜が言い「何度も会うたら気配くらい覚えるわな」と水鏡も呟く。
そう、感じた気配は泰牙のもの、しかし放つ気が大きすぎて正確な場所を掴む事が出来ない。
「泰牙は少し先の噴水公園よ」
リアが店に入りながら呟く、しかしイマイチ信用出来ない相手なので月鬼達も躊躇っていたが「犠牲者、増えるけどいいの?」と呟くリアの言葉に動かされて、月鬼達は泰牙のいる噴水公園まで走り出す。
「月が陰ってる‥気持ち悪いな‥」
ベルが口元を押さえながら呟く。そう言っている間に噴水公園へと着いた。
「止めろ!」
破壊を繰り返す泰牙に朱桜が叫ぶ。
「‥クク、まぁた性懲りもなく来たか、いい加減諦めろっつーんだよ」
泰牙は腐獣を生み出しながら笑う。
「今回、俺の力を使う‥何とか隙を作ってくれ、後‥巻き込まれるなよ?」
夜光が言い終わると同時に全員が散らばって行動を開始する。最初に水鏡が水の弾丸を作り泰牙へと放つが、黒耀によってそれを阻まれる。
「‥また、アンタかいな」
水鏡はため息混じりに呟く。
「簡単に死んでもらっては困るのでね、我が姫の封印があと少しで解ける!それまで誰にも永遠の炎は消させはしない!」
「何を言う!お前等さえいなければ‥!」
「永遠の炎が全ての命を司るものと知って尚も消すというのか?地球が滅びる原因はお前等だ、月の鬼共、その行使する能力で星の命を蝕み、我らを滅ぼそうと言うのだ、なるほど‥『鬼』の名を継ぐに相応しい」
黒耀が応戦しながら嘲るように呟く、しかし水鏡は黒耀の言葉を耳に入れることなく能力・蒼の螺旋を黒耀に放った。
「これくらい大きければ簡単に凍結は出来へんやろ?」
「く――っ」
完全に水鏡の攻撃を避ける事は叶わず、致命傷ではないにしろ深手を負ってしまう。
「あーぁ、黒耀はやられたか‥ま、俺には関係ないけどね」
余裕を見せていた泰牙が攻撃をしようとした時、足元に違和感を感じる。
「な‥っ!」
足元の影は泰牙の足を掴み、身動きが取れない状態だった。そしてベルの能力で泰牙自身の動きを封じる。
「夜光!今だ!」
朱桜が叫び、夜光は「どうなっても‥知らんぞ?」と呟きながら鎖を幾重にも巻きつけたブレスレットを取り「強制解除、風よ」と言いながら能力を発動した。彼の能力は自分を中心に風が巻き起こり、敵味方関係なく吹き飛ばしてしまうという諸刃の剣なのだ。
「くそおおっ!」
泰牙が逃げようと動きを取ろうとするがそれは叶わない。そして視界の隅に見えるリアの姿――。
「あの純血が月鬼達を――!一体どっちの味方だ!純血め!」
言い終わると同時に攻撃を受け、泰牙は吹き飛ばされて壁に叩きつけられてしまう。
意識の失った泰牙と黒耀にとどめを刺そうとするが、それはリアによって遮られた。
「リア?何故ここに‥」
「今、彼らを死なせるわけにはいかないのよ‥最後にお礼を言うわ、全てのお膳立てをしてくれてありがとう、この星の住人は阿鼻叫喚の元に過ごしていくでしょうね」
狂ったように笑うリアに攻撃を仕掛けようとした水鏡だったが、彼女の強さは半端なものではなかった。
「分を弁えなさい」
そう言ってリアは泰牙と黒耀を連れて闇夜に溶けていった。
※※
「何だか‥嫌な予感がする」
戦いが終わり、暁闇のソファで横になっている夜光が呟いた。彼にはまだ封印が幾重にも施されており、今の状態で能力を解放する事はかなり辛いものなのだと語った。
「たっだいま〜!」
空気を覆すような甲高い声で店に入ってきたのは琥珀、その後ろには海唄もいた。
「あら、また戦いがあったみたいね」
月鬼達のぼろぼろな姿を見て琥珀が苦笑しながら呟く。
「あぁ、最悪なことになりそうだ‥それより何か分かったのか?」
朱桜が問いかけると「実は‥」と海唄が離し始めた。
「俺が歌っていた歌、それに腐獣が呼び寄せられて来ていたらしいんだ」
そう、琥珀が偶然見つけた前施設長の日記を見つけ、そこにはこう書かれていた。
海唄の歌う歌に、腐獣が呼ばれてやってくる―――と。
END