かぼちゃは悪戯を好むアジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
水貴透子
|
芸能 |
1Lv以上
|
獣人 |
フリー
|
難度 |
普通
|
報酬 |
1.2万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
10/31〜11/04
|
●本文
「さぁ、ゲームを始めようよ」
10月31日、ハロウィンの日に一つの命が芽吹きだした。
ハロウィンという特別な日が生み出した無邪気で残酷な化物。
―ジャック・オ・ランターン―
「さぁ、逃げてよ。逃げ切ればキミたちの勝ち。捕まったら僕の勝ち。その時は、その頭をばりばりと食べてあげる」
そう言って、悪戯っぽくかぼちゃは笑う。
己の命をかけた一日の鬼ごっこ、キミは逃げ切れるか―‥?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
話の簡単な説明
●ハロウィンという特別な日が一つの化物を生み出した。
●化物はジャック・オ・ランターンという名前。
●10月31日を過ぎた時点で、この世から消滅する。
●出演者はジャックから逃げ切る。
●ジャックは無差別に襲い掛かる。
●ジャックは攻撃を与えても10月31日が過ぎない限り、倒す事は不可能。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
募集概要
●出演者&スタッフを募集しています。
●出来ればで良いのですが、出演者を多く出していただけるとありがたいです。
●話はかぼちゃを倒すことではなく、逃げ切ることを前提とします。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
●リプレイ本文
今宵はハロウィン、さぁ‥ゲームを始めよう。己の命を掛けて。
今日は映画撮影の為に広崎(鷹野・瞳(fa2151))、イル(イルゼ・クヴァンツ(fa2910))、月夜(夜野・月也(fa4391))、伊織(金緑石(fa4717)の四人で廃墟と化した洋館にやって来た。映画の内容はカボチャが人間を襲うというハロウィンならではの話。今はイルがカボチャ役の月夜から逃げ回るというシーンを撮影している。
「はっ、はぁっ‥」
後ろを何度も見ながらイルが長い廊下を走る。背後からはカボチャのお面を被った月夜が追いかけてきている。階段を飛び降り、踊り場にある窓ガラスを突き破ってイルはカボチャから逃げていた。その時、異変は起きた。
―ボーン・ボーン・ボーン‥。
洋館中の時計が揃えたように鳴り始めた。
「‥こんな演出は聞いてないけど‥」
逃げ回る中、イルが小さく呟く。そして目の前に先回りしたカボチャ、月夜が待ち構えていた。だが‥どこか様子がおかしい。広崎や伊織の方に視線を向けると、彼らもおかしいと思っているのか首を捻っている。そして―‥。
「月夜?」
イルが問いかけると持っていた剣を振り上げ、イルの頬を掠めた。ツ、と流れる血に恐怖が襲い掛かってきて、イルは「う、あ‥」と言葉にならない悲鳴をあげ、口をぱくぱくさせ、その場に座り込んでしまう。後ろでは皆が何か叫んでいるのが聞こえたが、その瞬間カボチャの剣が再度振り上げられ、イルの意識はそこで途絶えた。
事件が起きる少し前、撮影班とは別に三人の学生が肝試しの為に洋館に忍び込んでいた。
「あれ、震えてるけど怖いの?」
そう言ってヨウ(倉橋・羊(fa3742))をからかうのはカナタ(夕凪・彼方(fa4920))だった。
「ちょっと‥やめましょうよ‥」
喧嘩になりそうな雰囲気の二人を宥めるのは夏木(水無月・鈴(fa3502))、その時だった。屋敷中の時計が鳴り始め、それから少し遅れて悲鳴のようなものが三人の耳に入ってきたのだ。
「‥なに、今の‥」
今まで笑っていたカナタも悲鳴が聞こえて、少し怯え気味になる。とにかく悲鳴の方へ行ってみようという事になり、悲鳴が聞こえた方へ走りだす。すると、二人の男女と出会った。
「キミ達、どこから‥」
二人とも走っていたのか息を切らしながら伊織がヨウ達に問いかける。
「話は後だ!あいつが来る、どこか部屋に入ろう」
広崎に促されるまま近くの部屋へと飛び込んだ。
「あの、何が‥?」
夏木が問いかけると「‥バケモンが出た」と広崎は短く答える。そして伊織が先程起きた事を説明し始めた。
「な、何それっ、嘘でしょ‥」
カナタが叫ぶ。がたがたと手が震え、恐慌状態に陥りそうになったがヨウと夏木が先に恐慌状態に陥り、カナタは二人の手を強く握った。誘ったのは自分なのだから、という罪悪感と責任感がカナタを冷静にさせたのかもしれない。
「この洋館から早く出なくちゃね‥。運悪くここは洋館の中でも奥に位置する部屋だ。上手く脱出出来ればいいんだけど」
伊織がため息交じりに呟いた時「僕は死にたくない!」と言って叫んだ人物がいた。それはヨウだった。ヨウは叫ぶと同時にカナタの手を振り払い、単身で部屋の外へと走っていってしまった。
「何で、僕がこんな目にあうんだ。だから来たくなかったのに!」
走りながらヨウが叫ぶ。その叫ぶ声とは別にくすくすと笑う声が聞こえ、ヨウは足を止めた。そして後ろを振り返るが誰もいなく、気のせいかと前を向いた途端‥。
「コンバンワ」
天井から逆さまにぶら下がっているカボチャの面をつけた人物がゆらゆらと揺れていた。
「うわぁぁぁっ!!」
ヨウは自分に出せる精一杯の声で叫び、門へと無我夢中で走る。
「嫌だ、死にたくない。夢なら早く終われよ!」
あと少しで門、という所で頭を捕まれヨウは動けなくなった。視線だけを後ろに向けるとカボチャの姿が視界に入ってきた。
「あ、あぁ‥」
「つーかまーえた‥」
怖い、そう思う間もなくヨウの意識は途絶え、後には静寂のみが残った。
「今の叫び声は‥」
夏木が聞き覚えのある声の悲鳴に気がつきカナタに視線を向ける。
「‥‥ヨウだ‥」
早く行かなきゃ、そう思って二人は足を進めるがカチと何かスイッチのような物をカナタが踏んでしまう。その直後に天井から柵のような物がカナタと夏木の間に落ちてきた。
「な、何だよ、これ!」
「私は別の道から向かいますから、ヨウ君の所に急いでください!」
そう言うと夏木は来た道を戻っていき始めた。カナタも震える手を抑え、ヨウが無事でいるようにと祈りながら悲鳴の方へ走った。洋館を出た先の所で伊織と合流する。どうやら窓から直接出てきたようだ。それから数分後、彼らは変わり果てたヨウの姿を発見する。
「‥よ、ヨウ‥?」
剣で滅多刺しにされたヨウはまるで捨てられるかのように倒れていた。剣から落ちたとされる血痕は洋館の方へと続いていた。
「‥こんな子供まで‥」
イルとヨウ、遺体を見るのは二回目のせいか伊織の中には恐怖というより怒りの感情の方がこみ上げてきている。自分達はこのまま狩られるしかないのか‥と。
「何で、何で‥ウソだあぁぁぁぁっ」
半狂乱になっているカナタにはっとして伊織は座り込んでカナタと目線を合わせる。
「悲しいのは分かるけど、こうしてても何も始まらない。洋館の中にいる皆と合流しよう」
「ヨウ、僕が誘ったから‥ごめん、ごめんよぉ‥」
「償いたいなら余計に生き残らなきゃ。死んだら謝る事も出来ないだろ?」
カナタを必死に宥め、二人は洋館へと向かった。
「確か、学生組の‥どうしたんだ、その姿‥」
カナタと別れてから洋館内を彷徨っていた所を夏木は広崎と合流した。途中で仕掛けがあり、夏木は頭から水を被ってしまった。そのため着ていた服が濡れ、下着が透けている。
「さっき水を被っちゃって‥」
そう呟いた時、広崎の顔が険しくなり近くにあった花瓶を夏木‥の後ろにいた人物目掛けて投げつけた。
「NO!」
そう言って両手で自分を庇うような仕草をするのはプレザンス(白海龍(fa4120))だった。牧師の黒い服を着ているが、よく見れば血がべっとりと付いている。何やら早口で言っているが英語のため、二人には理解できなかった。
「‥とりあえず、敵じゃなさそうですね」
夏木が言うと「そう、みたいね」と広崎も肩の力を抜いた。すると突然、プレザンスが服に染み付いた血を指につけて壁に何かを書き始めた。
「これは‥かぼちゃですね、その次はDAY31‥今日の事かしら‥」
恐らく壁に書いた内容の事を喋っているのだろうが英語でしか話さないので二人には分からない。
「次はDAY1、明日?」
DAY1と書いた「LOST LOST」と何度も繰り返し言いながら、カボチャの絵を消した。
「もしかして、31日を過ぎたらカボチャ‥つまりは月夜に乗り移っている奴が消えるって事‥?」
広崎が納得したその時、プレザンスが背後を指差しながら何かを叫んでいる。広崎と夏木が後ろを振り向くと血まみれの剣を持ったカボチャが走ってきていた。
「きゃああっ」
夏木がカボチャに捕まり、剣を振り下ろした。胸の所を掠めただけですんだが、服が破れ薄く血も流れている。
「NO〜!」
再度、剣を振り下ろそうとした時にプレザンスがカボチャの前に立ち、夏木の代わりに刺されてしまった。
「牧師さん!」
「薄情だが行くしかないよ!ここにいたらあたし達まで殺られる!くそ、カボチャなんかに殺されてたまるか!」
そう言って逃げた先でカナタと伊織と合流する。
「僕が時間を稼ぐから皆は先に行って」
伊織は門を指差しながら言う。広崎は苦しそうに表情を歪め「‥死ぬなよ」と言い残し門まで走り出した。皆が門の近くまで走っていったのを確認するとカボチャに体当たりをして洋館内まで連れ戻した。しかしカボチャの持っていた剣で刺され、口からゴホと大量の血を吐き出す。せめて一矢報いようと伊織は持っていたライターでカーテンなど燃えそうな物に火を点けた。これで足止めは出来るだろうと呟いて。
「はは‥ゲームには負けたけど、時間は稼げた‥。皆、逃げてね‥」
そう呟き、ぐしゃぐしゃになったタバコに火を点けて最後の一服を楽しんだ。カボチャが目の前までやってきて、剣を振り下ろされた所で伊織はこの世を去った。最後に仲間を助けれたんだ、大満足さと心の中で言いながら。
そして日付が変わり、狂っていた歯車は元通りに戻っていく。
「‥あれ‥ここは‥?」
月夜がハッと我を取り戻すとそこには伊織の遺体と、まだ燻りを見せる火の粉。
「一体‥何が起きたんだ‥?」
月夜の問いかけに答えるものは洋館にはもういなかった―‥。
そして同時刻、別の場所で息を吹き返した人物が存在した。それは夏木を庇い、死んだと思われていたプレザンスだった。痛みを堪えながら胸に手を伸ばすと、彼のダメージの大半を受けてくれた聖書があった。
「‥ジーザス‥」
プレザンスは深呼吸をして、天井を見上げながら一言呟いた。
―クスクス、今年はお終い。だけど、来年‥また会える事を楽しみにしてるよ―
誰にも気づかれなかったが、確かにカボチャの声が洋館内に響いた―‥。