LUNA −reversalアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
6.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/06〜08/08
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●本文
『彼女は笑み―――‥そして満足そうに死んでいった‥』
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「お前!一体どっちの味方なんだ!」
リアに向かって怒鳴るのは泰牙‥もちろん腐獣の人格の彼だった。
「何の事?」
「とぼけるな!月鬼達をけしかけたのはお前の仕業だろう!」
泰牙の言葉に「それがどうかしたの?」とリアは答える。
「勘違いしてるんじゃないわよ?永遠の炎をお前が所持しているんじゃない‥永遠の炎がお前を所持しているのよ」
彼には、意思があるのだから―――‥。
「‥‥‥‥‥彼?」
呟く泰牙にリアと黒耀は何も答えない。
「黒耀、後は全てお前に任せるわ――お願いね、私の望みを‥」
リアはそう黒耀に呟き「爪を出しなさい」と泰牙に命令するように話した。
「爪?」
言われながら泰牙は自らの右手に鋭い爪を出した。
「そう、それでいいの――‥」
泰牙の右手を取り、リアは自らの胸を貫かせた――‥。
「え‥?な、んだこれ‥」
血に塗れる己の手と、血を吐きながら倒れるリアの姿を泰牙は交互に見る。
「これでいいのよ、全てはこれから『彼』が決める――‥さよなら黒耀」
そう言ってリアは黒耀に差し出した手をぱたりと地面に落とした‥。
「な、んだよ‥これええっ!」
全てが動く日、リアは死に『永遠の炎』の影に潜む『彼』が目覚める――‥。
※※設定※※
月鬼は生まれつき『月天子』か『月姫』―‥どちらかの加護を受けています。
月天子の加護を受けている者は『攻撃系』の能力を持ち
月姫の加護を受けている者は『防御系』の能力を持っています。
同じ加護を受けている者同士は、互いの力を合わせて連携技を使う事が出来ます。
※月姫+月姫
※月天子+月天子はOK。
※月姫+月天子
※月天子+月姫はNG。
相対する能力同士は力が反発しあい、うまく力が絡まらず連携は出来ません。
※能力はそれぞれの系統に反しないのであれば皆様で好きに決めて下さって構いません。
前回までに質問が出たこと(全部掲載はしておりません)
・能力系
◎防御以外の能力(補助・束縛)なども月姫の加護を受けた者が使用可能です。
◎自分以外の存在を腐獣に感染させずに使役する能力は月天子の加護を受けた月鬼が使用可能です。
(その際は使役する存在について詳しく考えていただくことになります)
◎連携技は二人以上でも可能ですが、連携技自体が体力を大幅に消耗するので三人以上と連携しても、上手く能力を扱えない場合があります。
◎連携技を繰り出した場合、術者双方が使う事が出来ます。
・腐獣
◎腐獣の外見は特に決まったものはありません。大きい腐獣から小さな腐獣まで存在します。
(感染した場合は、感染者の姿を維持しており、記憶・知識すべてを所有しています)
◎感染者は腐獣であることを隠す事が出来るが、本能である『破壊活動』を抑える事は無理であり、我慢できなくなった破壊活動で正体がバレる事が多い。
◎自然に生まれた腐獣は知識がないので特殊能力は持っていませんが、感染者は特殊能力を持つ事が出来ます。
◎感染者(人間)は腐獣と人間としての意識を両方持っており、人格が入れ替わる事もある。
◎感染者の遺体は例外なく塵となって消えてしまう。
◎自然に生まれた腐獣は複数行動は滅多にしない。
(仲間だと判別する知性もないので、複数で行動しても仲間割れする事もある)
◎感染者は『使役する』という特殊能力を持たせる事で腐獣を使役する事が出来る。
(ただし感染者は自我があるので使役されることは滅多にない)
・その他
◎普通の人間が持っている『月鬼』『腐獣』に対する認識は、普通の人間が『幽霊』の事を考えている程度。
◎月姫、月天子は法律にまでは介入する事はできない。
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●募集事項
◎映画「LUNA」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な必須配役は以下の通りです。
・月鬼(必須/特に制限なし)
・泰牙(必須/腐獣/男性一名)
・黒耀(必須/腐獣/男性一名)
ユリアナの配役はリアという純血の腐獣になります。
※他に適役がありましたら、そちらを演じていただいても結構です。
※設定などに疑問などを感じたら、NPCユリアナに質問して下さい。
その際は別スレをたてていただけると有難いです。
●リプレイ本文
「リア(ユリアナ・マクレイン(fz1039))の気が消えた‥?」
月宮殿からの通信でリアの生命気が消えたと連絡を受け、海唄(橘・朔耶(fa0467))は戸惑いを隠せなかった。
「リアの気配がなくなったって‥そんな簡単に消滅するような奴とは思えなかったが‥」
朱桜(ヴォルフェ(fa0612))も驚きながら呟く。
「とりあえず消えたリアを探そう、気配を消しているのか、それとも消滅しているのかを調べよう、他の月鬼達にも連絡が入ってるだろう」
そう言って二人はリアを探しに外へと出て行った。
「何だよ、これ‥説明しろよ‥」
血に濡れた自分の手を見ながら泰牙(天霧 浮谷(fa1024))は震えながら呟く。今まで人を殺めた事が無いわけではない。体の震えは目の前の現状を理解しきれないからだ。
「姫の死で『彼』も時機に目覚める‥‥それまで精々己の存在を謳歌しろ」
黒耀(ベイル・アスト(fa5757))はリアが塵となる前に遺体を浚って泰牙の前から姿を消した。彼の中では予定調和とは言えリアを殺めた泰牙に対してやり場のない怒りが身を焦がしていた。
それと同時に泰牙に異変が起きる。例えるなら血の逆流。血液が沸騰し、自分の体を逆流している感覚に似ている。その力が大きくなるにつれて、自分がその力に支配され、自分が自分でなくなっていく感覚がする。
「‥ふざ‥けるな‥これは俺が‥奪った、体だ‥出て行けっ!」
その力が大きくなっていくのを止められず、泰牙は自分の体を抱きしめるような格好で叫ぶ。
「く‥そおおおおおっ!」
そう叫ぶと同時に泰牙を取り巻く全てが変わる。その場に膝折れた泰牙はこれ以上ないくらい残酷な笑みを浮かべた。
「リア‥ご苦労でした、暫くはゆっくりとお休みくださいませ」
「嫌な月‥」
空を見上げ呟くのは琥珀(ユフィア・ドール(fa4031))だった。月宮殿の連絡を受け、仕事場を抜け出してリアを探していた。途中で氷月(神楽(fa4956))と合流して一緒に行動している。
「アンタたちも連絡受けたんだ?」
後ろから聞きなれた声に琥珀が振り返る、すると其処には水鏡(シヅル・ナタス(fa2459))と銀風(ラファエロ・フラナガン(fa5035))が立っていた。
「この子も月鬼やで‥ええと‥」
「銀風です、風が呼んでいるんだ――災いが来たと‥」
空を見上げながら銀風が呟く。
「急いだ方がいいわね‥」
増していく嫌な気に琥珀が呟き、その気が発する所を目指していく。
「長かった‥己の意思で動けるなんてどれくらいぶりでしょう―――‥?」
永遠の炎に乗っ取られた泰牙は邪悪な気を発しながら満足気に呟く、しかし妙な違和感を感じて首を傾げた。
「‥まだ馴染んでいないのでしょう、時期に全てをいただきますよ‥『泰牙』」
泰牙は自分の手を強く握り締めて呟いた。その時――‥腐獣の気を追ってやってきた海唄、そして琥珀たちが合流した。
「‥泰牙‥この巨大で邪悪な気はお前なのか?」
外見は変わらないが、発する気、雰囲気全てが今までの泰牙と異なり、海唄は眉を顰めた。
「月の鬼どもか、彼が目覚めた今‥貴様達に用はない。疾く去ね」
黒耀は冷たい言葉を投げかける、しかし腐獣を前にして背中を向ける事は教えられていない月鬼達がいう事を聞くはずもない。
「これはまた大胆で斬新なイメチェンやな。何処のお店でコーディネートしてきたんや」
水鏡は泰牙に向かって呟く、それほどまでに今の泰牙は今までと違うのだ。
「なるほど、黒耀の忠告を聞くつもりはないのですね。それでは――」
ゆらりと体を揺らし、泰牙は目にも留まらぬ速さで朱桜に攻撃を仕掛けてくる。
「な――っ」
泰牙の攻撃は見慣れている、だから避けやすい‥はずだった。しかし今の泰牙の攻撃は鋭さも増し、はっきり言って『見えなかった』。
「変だ‥アイツ、もしかして泰牙には似ているが別の奴なんじゃないか‥?」
攻撃を間一髪で避け、朱桜が呟く。
「当たらず遠からず‥と言っておきましょうか」
泰牙は楽しげに呟くと再度攻撃を仕掛けてくる。
「ならこっちも‥」
氷月が応戦しようとした時、黒耀が「彼の邪魔はさせない」と前に立ちはだかった。
「最初から全開でなけりゃ殺られるで!」
水鏡は最初から『蒼の螺旋』を黒耀に目掛けて放つ。
「飽くまで戦うというなら已むを得ん‥姫、許可を得ずに力を曝す事‥如何かお許しを」
そう呟くと黒耀は『霜穢の劫火』を放つ。
「私が拘束しておくから‥今のうちに!早めに決着を着けないと‥嫌な予感がするわ!」
琥珀がショールで黒耀を拘束し、水鏡と氷月、そして銀風に攻撃を促す。
「全ての大気よ、月天子の御名において集い来たれ――切り刻め!飛鳥真空斬り!」
銀風が己の能力を黒耀に向けて放つ、それと同時に氷月も『氷雪の誘い』を発動してナイフに冷気を纏わせる。
「霜穢の劫火を只の冷気と思っていたか?莫迦が‥その真価は凍結――言うなれば絶対零度の概念だ‥故に万物一切で凍結出来ぬ物はない――それが死であろうと」
意味深に呟くと「忘れたか?我こそは姫の‥リアの腐獣だという事を!」と叫び、力を解放する。
「まさか――アレが永遠の炎の本当の力!?」
目の前の泰牙の戦闘能力に圧倒されながら海唄が叫ぶ。
「海唄!!」
どん、と朱桜が海唄を突き飛ばし、泰牙の攻撃を代わりに受けてしまう。
「朱桜――!」
そこで視界に入る同じ月鬼の仲間達、リアが連れていたもう一人の腐獣・黒耀に殺られそうになっている。
「どうする‥どうする、考えろ――‥」
焦れば焦るほど良い考えは思い浮かばない。そこで氷月がよろけながらも此方へやってきて「‥撤退する為の考えがあるわ」と呟いてきた。
彼女の話を聞いて「逃げるのは癪だが、それしか方法はないな」と忌々しそうに海唄が呟く。そしてその作戦を朱桜に伝える。
「見苦しいな、この程度の奴らに手こずるようなら先が思いやられますね」
黒耀の能力によって極寒へと姿を変えた周りを見ながら泰牙はため息混じりに呟いた。
「トドメをさしますか?今後の計画に差し支えが出るかと‥」
黒耀が呟くと同時に氷月が『氷雪の誘い』を発動して黒耀と泰牙‥二人の手足を氷付けにして拘束する。
「‥‥ごめん、あたしの力不足‥あまり長くはもたないから‥」
氷月の言葉に「次はウチの番や!」と持っていた棍を地面に突き刺すと同時に圧縮していた水を解除する。地面に広がる大量の水を使い水鏡は『蒼の波涛』で二人に攻撃を仕掛ける。しかしこれは二人にダメージを与えるのが目的というわけではなく、生じる高波をブラインドにしてその間に撤退するのが目的だった。
「今ならまだ追えるが‥」
黒耀が呟くと泰牙は少し考え「放っておきましょう」と答えた。
「とりあえずは生かしておきましょう‥障害物レースは好きなんでね」
「‥‥力が‥欲しいわ、何も成し得ずに立ち止まるくらいなら‥何の為にこの力はあるの‥」
月鬼達が逃げ込んだのは月宮殿だった、あのまま現世に留まっても追って来られたら今度こそ殺られてしまうと感じたからだ。
「お前‥本当に小さい頃の記憶を持っていないのか?」
朱桜が傷む体を動かしながら海唄に問いかける。しかし答えられない海唄はただ黙って下を俯いているだけだった。
「あの二人の力は強大すぎて僕の力では太刀打ち出来なかった‥」
銀風は唇を噛み締めながら小さく呟く。月鬼達は初めて腐獣から敗北を受け、そのショックは決して小さなものではなかった。
何で、俺の体は動かないんだ?
何か最近、俺ツイてないし‥また何か不幸が俺に舞い降りたのか?
泰牙の中に微かに残るのは――1番弱いはずの人間の人格だった――‥。
彼は無意識ではあるが、永遠の炎からの支配から逃れ、自分の人格を封印した。
これが意味するものは‥?
そしてリアの真意は‥。
「姫、窮屈でしょうが暫くの我慢を‥何、その刻はすぐに来ます――全てが貴方の計画通りです――‥」
END