嘆きのヒットマンアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
11/02〜11/05
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●本文
嘆きのヒットマン〜アンダーシティ・ポリス2〜
◎これはアンダーシティ・ポリスの続編の話になります。
しかし、話自体は前作と関係ないので、どなたでもご参加いただけます。
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太陽のかけらが隕石となりて、地球に降り注いだ現象―‥熱砂。
生きる事に絶望した人間達は地下に己たちの世界を切り開いた。
その地下世界を守る警察‥アンダーシティ・ポリス
彼らは今日も地下世界の平和を守るために活動を続ける。
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募集事項
●前回同様、アクション映画になります。出演者(地下世界警察に所属する方)は『バムス』と呼ばれる特殊能力を持っています。
●出演者全員が『バムス』を持っている必要はありません。
●出演者全員が『地下世界警察』に所属している必要はありません。
●主な登場人物はポリスの人間、赤い扉の人間、謎の暗殺者、スラムの住人などでしょうか。他に適役がありましたらお書きください。
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話の内容
最近―‥一人の暗殺者の噂でシティは持ちきりだった。
あくまでも噂に過ぎないが、その暗殺者は『赤い扉』という医療団体の人間だと噂されている。
『赤い扉』と対立する団体の重要人物ばかりが殺害されているのだから。
しかし、暗殺者の姿は依然として不明なまま。
男なのか、女なのか、子供なのか、大人なのか、それすらも謎なのである。
地下世界を危険に導く組織『赤い扉』と謎の暗殺者を調査し、害があるようなら排除もやむを得ないと地下世界警察の上層部は結論を出した。
その為に選ばれたのが出演者達である―‥
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●リプレイ本文
少し前に大規模な爆発があった。死者が多数出たが、警察はそれを事故と断定した。悲劇はここより始まる―‥。
「水沼総帥(水沢・鷹弘(fa3831))、ただいま帰宅しました」
傷ついた腕から血を滲ませながら部屋に入ってきたのは使用人の息子であるウーゴ(マリアーノ・ファリアス(fa2539))だった。
「あぁ‥ご苦労。次の標的はコイツだ」
バサと書類を取り出し、ウーゴに渡す。彼はそれを見ると「分かりました」と頭を下げて部屋から出て行った。彼がいなくなった部屋で水沼は一つため息を漏らした。それは代わりに手を汚してくれている彼に対しての申し訳なさからだったのかもしれない。
「ウーゴ!遅かったのね」
そう言って車椅子を動かしながら来たのは総帥の娘であるサラ(谷渡・うらら(fa2604))、幼い外見に相応しくない合金製の義手義足にウーゴはつらそうに目を細めた。サラは怪我をしているウーゴを見て「大変、私の部屋に来て」と言い伝える。
「最近、怪我が多いね」
サラは自分のバムスでウーゴの怪我を治癒していく。彼女の能力は『自分以外』の人間の治癒、己の怪我も治せたなら夢だったバレリーナへの道も閉ざされずに済んだだろう。
「‥私の前からいなくならないでね‥」
冷たい義手でウーゴのそれを握りながら弱々しい声で呟く。ウーゴはその言葉に何も返す事が出来ず「‥もう遅い時間です、お休みください」と言って部屋から出て行った。
「先輩!待ってくださいよ」
先を行く先輩捜査官、草加(草壁・蛍(fa3072))を追いかけるのは新人捜査官のキリー(百鬼・レイ(fa4361))だった。二人は今、連続殺人事件の聞き込みをしている真っ最中だった。
「それで?情報は何かあった?」
「えぇと、凄腕の情報屋がいるみたいです。会いに行きますか?」
キリーの言葉に「当然でしょ」と言って草加は情報屋がいる場所へと向かい始めた。暫く歩くとサングラスを掛けている男装の女性が路地裏に座り込んでいた。
「夜月(夕月夜・火燐(fa4452))ね、話を聞かせてもらえるかしら」
「‥いくら警察の人間でもタダで情報をやるわけにはいかないな」
「こっちは捜査でしてるんだぞっ」
キリーが怒り半分の声で言うと「こっちも生きるためにしてるんだ」と至極当然の言葉を返された。仕方なく情報代を払うと夜月は「毎度」と言って情報を話し始めた。
「‥アテになりますかね」
キリーが情報をメモした紙を見つめながら呟く。
「アテには出来るんじゃない?色々な会社の内情にも詳しいみたいだし」
確かに、とキリーは呟く。警察以外に知られていないはずの会社の内情や対立問題など当たっているのだから信用はあるのだろうと思った。
この日もウーゴは総帥から言い渡された仕事‥暗殺をしに来ていた。警察も本腰を入れて捜査をしていると聞いたため少し急いで仕事をしようと考えたのだ。
「何者だ!」
ウーゴの能力は自身を透明化する事、それとセンサーに引っ掛からない事だった。だから今まで相手に気づかれる事なく仕事を出来ていたのだが、今回の仕事は簡単にはいかなった。標的側に武術の達人がいたようで気配を察知されてしまったのだ。
「くそぉっ!」
何とか標的を殺害する事に成功はしたものの、自分も怪我をしてしまった。それだけなら良かったのだが、顔こそ隠していたが姿を見られてしまったのだ。バクバクと早鐘を打つ自分の心臓を抑えながらウーゴは総帥の元へと戻っていった。
「目撃者が出たのか‥」
署内でその事を聞き、呟いたのはキール(キューレ・クリーク(fa4729))だった。彼女は現場へと急行する。
現場に到着すると先に来ていたファム(大神・真夜(fa4038))の姿も見受けられた。しかし適当な挨拶を交わし、キールは己の能力を使い何か証拠となるようなものがないかと探し始めた。すると現場から少し離れた場所に血痕を見つけ、それは奥へと続いていた。血痕を追って行くと、赤い扉と対立している団体に所属している人間達を見つけた。恐らくは先程殺された人物の報復の為にいたのだろう。
「うっとおしいな‥」
舌打ちを一緒に呟くと、キールを暗殺者の仲間と勘違いしたのか男たちはキールに襲い掛かってきた。
「遅いよ」
襲い掛かってくる男達を高くジャンプして攻撃をかわす。キールの能力は純粋脚力強化、それと五感の強化、並大抵の人間が勝てる相手でもなかった。おまけにキールは警察道場の師範代の一人なのだから。
「お前達、何を知っている?」
男達が回りに倒れている中で、キールはリーダー格の男に問いかける。戦いでのダメージが大きいのか男は話す事は出来ても、動く事までは出来ないようだ。
「か、顔は見えなかった。だけど‥俺はあいつを一度見たことがある、あいつは―‥」
「‥この跡は‥こっちだな」
ファムはあれから現場にいた様々な人に聞き込みをして暗殺者の特徴がある人物に酷似している事を聞きだした。それを署に伝えようとしていると見知った顔が二人、前から歩いてきていた。しかし表情はどこか怒っているかのように見えた。
「二人ともどうしたんだ?」
ファムが問いかけると「やられたわ」と低い声で草加が呟いた。何のことか分からずにキリーに視線を向けると「これです」と言って一枚の紙を見せてきた。
「‥情報?」
「はい、偽情報を掴まされたんです。正確には偽じゃないんですが‥」
そう言って言葉を濁すキリーに意味が分からず眉間にしわを寄せた。
「どうでもいい情報は当たっているんですよ。ですが肝心の暗殺者の事になるとまるでデタラメで‥」
はぁ、とため息をつくキリーにファムは自分が調べたものを渡した。
「情報屋の情報よりはアテになると思うが‥」
そう言うと「一緒に行きましょう」とキリーから誘われ、情報屋と赤い扉まで行くのに同行する事にした。
「よくも騙してくれたわね!」
バキと路地裏に鈍い音が響き渡る。
「おや?間違えたか、こちらもスカを―」
黙りなさい、と言って草加は拳を振り上げた。
「アンタが赤い扉の総帥と接触して情報を与えている事は分かってるのよ」
そう、少し前に署からの通信で夜月が水沼と頻繁に接触している事を聞かされた。今まで夜月は水沼に殺害する人物の情報を流し、警察側には偽の情報と本当の情報を渡すことで捜査を攪乱していたのだ。
「草加さん、メギドだけは止めてくださいよ」
メギドとは草加の能力で発動したら周囲の人間、敵味方なく消滅させる能力なのだ。頭に血が上っている今の状況なら使いかねないと心配してキリーが口を挟んだのだ。
「‥殺したいなら殺せばいいさ!」
覚悟を決めたのか、夜月が目を伏せる。しかし何も衝撃が来ないので不思議に思い、目を開くと立ち去ろうとしている三人の姿を見た。
「殺さないわよ、文句を言いたかっただけなんだから」
そう言う草加に「利口な判断だな」とファムも呟いた。
「信用を失った情報屋なんて死んでいるも同然だからな。情報屋として生きていく事はもう出来ないだろう」
ファムの言葉に「くっ」と唇を噛み締めながら呟いた。そして三人は赤い扉へと足を向けた。
赤い扉に着くと一階ロビーにウーゴの姿があった。
「あんな子供が‥暗殺者‥」
キリーが自分の事は棚にあげて呟いた。
「‥キリー、ファム、私は総帥の所まで行くわ。あの子の相手は任せるわ」
了解、二人はそう言ってウーゴに向かって走り出した。
「無能な警察共がぁっ!」
シュンと姿を消し、キリーの背後に回って攻撃を仕掛けてくる。ウーゴが二人に集中している間に草加はエレベーターに乗り込み、総帥室へと向かった。
「‥しまったっ」
ウーゴが慌ててそちらに向かおうとしたがファムのバムスによってそれは出来なかった。
「これは、動きが‥」
ファムのバムスは動きを鈍らせるものだった。草加を追うことを諦めたウーゴは持ち前の武術で攻撃を仕掛けていった。
「ファムさん、避けて!」
そう言ってキリーは銃を放つ、それは避けられそうだったが能力を使い弾道を変えてウーゴの足を撃ち抜いた。その時「やめてぇっ!」とサラの声が響き渡った。
「私から仲間も地位も‥愛する者さえも奪って‥一思いに殺しはしない。お前達も私と同じ苦しみを味わうがいい」
水沼は殺害された男の写真を握りしめながら呟く。その時草加が部屋に入ってきて「それが貴方の本音?」と問いかけた。
「‥何がですか?」
最初はシラを切ろうとしたが「証拠はあがってるわ」と監視カメラに写ったウーゴの写真を見せた。
「既に調べはついているわけですか、優秀ですね‥それなら何故あの時は‥」
いえ、と水沼は言葉を止め「詳しい事は署でお話しましょう」と大人しく連行されることを呟いた。
「お嬢様‥」
ロビーに現れた人物、サラを見てウーゴは戦闘態勢を解いた。
「私を撫でてくれた手で、抱きしめてくれた手で人を殺めるの?」
サラが泣き叫びながら問いかけるとウーゴは真意を語った。サラから母親も夢も奪い去った対立団体が憎かった事。だから殺したのだと。
「お父様も逮捕されたわ。私のせいね‥私が‥」
「それは違います。これは僕の勝手な復讐です。お嬢様が気に病む必要はありません」
「私、待ってるから‥だから‥二人とも罪を償って帰ってきて‥」
全てに嘆いていた暗殺者は、もういない。何故なら帰るべき場所と待っていてくれる人がいるのだから‥‥。
END