鳥籠のカナリヤたちアジア・オセアニア
種類 |
ショートEX
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
8.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/13〜08/16
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●本文
『鳥籠‥それは巨大な実験施設だった――‥』
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そこには沢山の人間がいた。
いや―‥人間というよりは実験体と言った方が正しいのだろうか。
いつのまにか連れてこられ、いつのまにか人が減っていく。
きっといなくなった実験体は‥生きてはいないのだろう。
鳥籠と呼ばれる巨大な実験施設の中で、私達はいつ自分の番が来るのかを怯えていた。
「此処から‥逃げよう」
一人の仲間が呟いた。
「無理だよ」
別の仲間が言う。
「けれどいつか死んでしまうんだ、このまま黙って死ぬのを待つのか!?」
「でも外の世界なんて‥いけるかも分からないのに‥」
けれど、此処で死ぬよりはマシだ。
自分の意思で死ぬ場所くらい決めたい、彼はそう言った。
「幸いにも僕達には、研究者達とは違う能力がある」
そう、鳥籠の実験体全て『カナリヤ』と呼ばれていて特別な能力があった。
「此処から出て、自由を掴みに行こう!」
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●募集事項
◎映画「鳥籠のカナリヤたち」では出演者の皆様を募集しています。
◎この話では『カナリヤ』だけが必須配役になります。
◎この話の最終目的は『鳥籠からの脱出』です。
◎それ以外は皆様で話を決めていただくことになります。
◎何か質問があったら『ユリアナ』に聞いてやってください。
(その際は別スレを立てていただけると幸いです)
●リプレイ本文
●始まり―――カナリヤ達の日常
此処は『鳥籠』と呼ばれる『カナリヤ』と呼ばれる実験体を研究する為だけに創られた特別な実験島である。
カナリヤ達の能力を駆使出来るようになれば大きな『兵器』となる、その為に過酷な実験を受けてこの世を去ったカナリヤ達も少なくはない。
そして今日も―――‥。
「実験体13は死んだか」
実験室で命を落としたカナリヤを研究員・ユリ(ユリアナ・マクレイン(fz1039))は冷ややかに見下ろした。
「やれやれ、この程度の実験で死ぬとはな‥役立たずめ」
ユリはそう呟くと後始末を別の研究員に任せて実験室を後にした。
「やはり、あの企画を実行に移すしかないか」
ユリの呟きは誰の耳にも届く事はなく、静寂に消えていった‥。
●終わらない地獄
今日も実験から帰ってきて、傷ついた体を自分で手当てする。
カナリヤ達は限定されたエリアなら自由に歩きまわれることが出来る。以前は常に監視下におき、自由に歩きまわれる事も出来なかったのだが、数年前に一人のカナリヤがストレスのせいで能力を暴走させたことがある。その時は数十名の研究員が巻き添えとなって死んでしまったのだ。
それからカナリヤ達に多少の自由を認める規律が出来た‥というワケだ。
「もう‥嫌だよ‥‥」
かごめ(ベス(fa0877))は包帯を手に巻きながら震える声で呟く。彼女の特殊能力は未来予知というものである。しかしはっきりと視れるのは一瞬先程度くらいで、おぼろげではっきりしないものならば少し先のビジョンを視る事も出来る。
「‥此処から出たい‥出たいよ‥」
かごめは震えながら呟く。彼女は鳥籠に存在するカナリヤの中で古株的存在にあたる。そして今までも脱走は繰り返していたが、全て未遂に終わっていた。
そして、かごめは何時しか、あるビジョンを繰り返し見るようになった‥。それは『皆で鳥籠を脱出する』というビジョンだった。
このビジョンを信じて、脱走を一時中断して仲間内で綿密な計画を練っていたのだ。
「ナグ(ルーカス・エリオット(fa5345))と満空流(桐沢カナ(fa1077))はまだ実験中かな‥」
帰ってきていない仲間のベッドを見てかごめは小さく呟く。
いつになったらこの地獄のような日々から抜け出す事が出来るのだろう?
●脱走劇―――なかまたち
「はい、これで今日の実験は終わり」
鳥籠の管理研究員・子規(真喜志 武緒(fa4235))がカナリヤ達に首輪を渡していく。彼の持っている首輪には、カナリヤの能力を制御する役割がある。
しかし、上層部はカナリヤの能力をコントロールして兵器として使用したいという願望があり、傍目からも酷い実験を毎日のように繰り返している。
「はい、制御装置はつけたから真っ直ぐ部屋に帰りなさい」
子規がナグと満空流に言うと、二人は疲れたような顔で首を縦に振り、就寝室へと向かっていった。
「‥‥お偉いさんは‥甘すぎる」
子規が呟いた言葉の意味は―――この後に知る事になる。
「もう‥嫌だよ‥」
帰ってきた仲間達にかごめは消え入りそうな声で呟いた。
「此処から逃げよう!何処かに連れて行かれて帰ってこられなくなるなんて嫌だよ!あたし達は籠の鳥じゃない!人間なんだよ?皆で力を合わせれば、きっと出来るよ!」
かごめの言葉に「それ、私も、思う」と槐(祥月 暁緒(fa5939))も同感の意を示した。
「此処、窮屈」
槐は窓にある鉄格子を見ながら呟く。彼女はわりと最近連れて来られたカナリヤなので、外の事を忘れる事など出来ないのだろう。
「あ‥れ」
呟いたのは満空流で「制御装置、外れてる‥」と自分の首の制御装置を取る。
「ほら、見て‥外れたよ?」
微笑みながら満空流は首輪を外して仲間たちに見せる。
「そういえば‥ナグは?」
満空流と一緒に実験室に行ったナグの姿が見えず、満空流に問いかける。
「何かおかしいから師匠の所に行ってくるって言ってたよ」
師匠、ナグがそう呼ぶのは雲雀(檀(fa4579))という女性のカナリヤだった。行動力もあり、積極的なカナリヤだ。消極的な性格のナグは、自分にないものを持つ雲雀に憧れているのだろうと誰かが言っていた。
「ししょう‥」
これ、と普段は抑えられている冷気が指先から零れているのをナグは雲雀に見せた。
「もしかして‥能力制御装置が働いていないんじゃ‥」
自分の首輪に触れ、ナグが呟くと「おーっほっほっほっほっほっほ‥げふ」と雲雀が高笑いをはじめ、咽てしまう。
「し、ししょう、大丈夫!?」
慌ててナグは雲雀の背中を擦りながら雲雀が呼吸を整えるのを待った。
そして、その時にかごめが雲雀の就寝室に入ってくる。
「満空流の能力制御装置が動いてないみたいなんだけど‥‥‥」
かごめの言葉に再び雲雀の高笑いが響く。
「あらま、じゃあこの期に逃げなきゃ、此処での生活を抜けて外に行きましょう、ふふ、ふふふ、おーっほっほっほっほっほっほ!げふ‥」
「ししょう!咽るから高笑いは控えめに‥」
「わ、分かったわ‥気をつけるけれど‥高笑いせずにはいられないのよ!おーっほっほっほっほっほ‥‥げふ」
あぁ、もう‥ナグは言いながら雲雀の背中を擦る。
「お外に行くんだよね?」
満空流が少し遠慮がちに呟く。そして「そう」と槐が短く答えると「そっかぁ‥」とはにかむように笑った。
「満空流はお外を見た事がないんだ‥お外には何があるのかな」
見た事のない外に焦がれながら呟く満空流に「でも」と槐が言葉を制止する。
「見つかる、危険、閉じ込められるかも」
槐の言葉にシンと部屋に静寂が広がる。
もし、この人数で脱走を図ろうとして‥成功した時は問題ない‥しかし失敗したときは一生監禁生活を送らねばならないかもしれない。これは大きなカケなのだ。
「皆はどうするの?」
満空流が仲間を見比べながら問いかける。
「私は行くわよ、おーっほっほっほっほ!」
「此処、窮屈、出る」
「私は怯えながら暮らすのはもう‥嫌だよ」
「僕も‥」
仲間たちは危険だと知りながらも外へ出る決意を示す。
「皆が行くなら、満空流も行くー」
そして、カナリヤ達は鳥籠から出て、自由に空を羽ばたく為に動き出した――‥。
●脱走劇―――決行
「あの‥具合が悪いんだけど‥」
ナグが就寝室前でカナリヤ達を監視員に呟くと「待ってろ」と鍵を開けて、就寝室内に入ってくる。
「ごめんなさいっ!」
ぽか、と監視員を殴って気絶させて、腰から下げている鍵束を奪う。
「今の所、制御装置が働いてないのはナグと満空流だけだね、皆の制御装置を無効にしなきゃ、とてもじゃないけど脱出なんてできないかな‥」
鳥籠の警備システムは能力ナシで脱出できるほど甘いものではない。
「確か‥実験室の近くに制御室があって‥個別に識別制御されてた‥よね」
とりあえずメンバーを二つに分け、一つは制御室方面に行き、もう一つは脱出路を確保する為に動くことにした。
「あたしと満空流、槐が制御室方面に向かうね、ナグたちは脱出路確保をお願い」
●脱走劇―――制御室
「カナリヤ達が脱走を図ったらしい、優秀なカナリヤもいたから惜しいが‥見つけ次第処分しろ」
上層部から逃げ出したカナリヤ達の名前を聞かされて子規は驚きで目を見開いた、何故なら‥元恋人の雲雀の名前も書いてあったから‥。
「‥射殺される前に‥探さないと‥」
子規は拳を強く握り締め、低い声で呟き、施設内を高笑いしながら逃げているであろう雲雀を探しに出かけた。
「A−2に一人‥違う、これは彼女じゃない‥」
子規もカナリヤであり、能力は強化聴力の持ち主である。一度聞いた音は忘れられない、音から芳香を割り出せるなどの使い方がある。そして雲雀と別れた原因も自分の能力だった。雲雀は高笑いをやめられない、その高笑いに子規は耳鳴りや頭痛に悩まされ、雲雀と別れ、研究所に与したのだ。彼女の高笑いを止める研究と偽り、その実では力を制御する研究を。
「追っ手、来てる」
施設内に騒がしく響く警報、この調子じゃきっと警備員が武装して出ている事だろう。
「あ!壁が‥」
通路を塞ぐように天井から壁がゴゴゴと地鳴りのような音をたてながら降りてくる。
「満空流、何とかならないの‥?」
今から走っても間に合わない、かと言って退路にも壁が降りてきているので戻るわけにもいかない。唯一能力を使える満空流に問いかけると「これ壊したら先に進めるんだよね」と壁の前に立ち、直径一メートルほどの炎の塊を作り出す。
そしてそれを爆発させると壁は跡形もなく砕け散った。
「相変わらず強力な能力だね」
かごめが満空流に言うと「そうかな?満空流はわかんないや」と苦笑しながら答えた。
「先、制御室、早く、行く」
槐は呟くと一人先に行き、制御室へと入っていく。
「やはり先に此処を目掛けてきたか!」
中には数人の研究員がおり、槐に銃を向ける。
「槐!」
満空流が炎を研究員に向けて放ち、槐が撃たれるのを阻止した。
「一人で行くと危ないよ‥」
かごめもホッとしたように槐に駆け寄った。
「迂闊、ごめん」
槐は呟きながら制御室の機械を操り始める。彼女の能力はマシンテレパスであり、その能力を持つに相応しいほど機械の扱いに長けている。
「すご‥」
キーボードを見ずに正確に打つ槐を見てかごめは感心したように呟いた。
「仲間、制御、消える」
呟くと同時に槐とかごめの首に静電気のようなものが走った。
「制御、消えた」
槐は首輪を引きちぎり、その場に捨てると「脱出」と外に出る為に走り出した。
●脱走劇――現れては消えて
「あれ?お兄さん達が騒がしいね」
就寝室から外を覗くのはセイ(月見里 神楽(fa2122))だった。そしていつもは部屋の前にいる監視員がいない事に気づき、セイは首を傾げた。
「あ――れ?」
ふいに能力が使えることに気づき、ふわりと浮いてみせる。
「きゃあっ♪出来た!」
空中に浮くことが成功して、セイは大喜びで叫ぶ。同室のカナリヤ達は実験の為にまだ帰ってきていない、今なら外に出られると感じたセイは「いってきまーす♪」と楽しげに呟いて就寝室を後にした。
「あ」
就寝室から出ると同時に研究員の一人と鉢合わせてしまう。
「な――」
ヤバイと感じたセイは自分の能力『空間転移』を使ってその場から逃げだし、十メートル先でまた現れる。
「待て!」
研究員が追いかけてくるが、それを鬼ごっこのつもりで大喜びしながらセイは現れては消えて、を繰り返していた。
「此方B班、カナリヤが脱走しようとしている!至急応援を頼む!」
「鬼さん増えるの?」
フッと研究員の前までやってきたセイが問いかけると「うわあっ!」と研究員は腰を抜かしてしまう。
後日談になるが、この時のセイの行動が陽動になり、脱走チームは助かっていたのだと知る。
●脱走劇――捕らわれの雲雀
「捕まると思っているの?私は雲雀よ!おーっほっほっほ!!」
高笑いをしながら走る雲雀に「少し静かにしましょうよ‥」と苦労性の弟子・ナグが呟く。
「大丈夫よ!私は雲雀だもの!おーっほっほっほ!」
高笑いをしながらありえないほどの速さでダッシュして走る雲雀。
「え‥あれ?し、ししょ‥」
気がつけば雲雀は師匠ダッシュ(ナグ命名)でナグと離れ離れになってしまい、彼はショボンとその辺をうろうろとしている。
「ししょう、捕まってないといいけど‥」
あの高笑いなら研究員に見つかるのも時間の問題だと感じたナグは雲雀を探す為に走り出す。
「ちょっとおおおおっ!どういう事なのよぉっ!これは!」
研究員に捕らえられた雲雀は叫びながら「納得できない」と喚き叫ぶ。彼女の能力『馬鹿力』を発揮しようにも制御効果のあるロープで縛られている為に能力を発動する事ができない。
「なんで助けに来ないの!もう早く来なさいよーっ!弟子――っ」
「わぁっ!」
雲雀を探している最中でナグは研究員である子規と遭遇する。
やばい、職員だ‥とナグは少し怯えた顔で子規を見るが、その時に雲雀の高笑いが響いてきて「ししょう‥!」と叫ぶ。
「この高笑いは‥?!あっちか!」
雲雀の高笑いは聞こえるものの施設が入り組んでおり場所を特定することができない。ナグが苦悶の表情でうろうろしていると「こっちだ」と子規がナグの手を引っ張りながら雲雀に向かう。
「何で―――‥?」
ナグが問いかけると「雲雀に死んで欲しくないからさ」とそれだけしか答えなかった。
「ちょっとおおっ!私は雲雀よ!こんな事していいと‥」
「黙ってろ、お前の声は耳に響く」
研究員が雲雀に黙るように呟くと同時に子規が「ご苦労様」と呟きながら研究員の鳩尾を殴る。突然の事に対処しきれなかった研究員は子規の攻撃をくらい、意識を失ってその場に倒れた。
「ししょう!」
ナグが「良かった」と言いながら雲雀のロープを解く。
「久しぶりね、助けるのが遅いのよ!でも‥来たから許してあげるわ、おーっほっほっほ!」
「うっ‥相変わらず‥」
雲雀が高笑いをするたびに子規に頭痛を与え、彼は苦笑いしながら彼女の手をとる。
「ししょう‥この人とは‥?」
ナグが問いかけると「元恋人なのよ」と雲雀はさらりと答える。
「あれ、じゃあ‥この人が子規さん」
彼女達を見て、付き合っていた頃を想像したのかナグは顔を真っ赤にして茹蛸状態になる。
(「高笑い生活再び‥なのかな?」)
そう心の中でナグは呟くと、こっそりと子規を応援していた。
「そういえばどうして此処にいるのよ」
雲雀が子規に問いかけると、彼は表情を暗くしながら呟いた。
「君に‥というより君たち脱走組に処分命令が出た‥命に代えても‥外に逃がす」
処分命令、覚悟していたけれど実際に言われたら身が震える。
「それに――‥この脱走劇は仕組まれたもの、君たちの本当の力を図る為だ‥」
自分達で脱走を決意したと思っていたが、実は仕組まれたものだと聞かされ雲雀とナグは驚きの表情を見せた。
「このままでは逃げられない、島の周囲は首輪と同じ力で覆われている、それを何とかしなくては‥」
しかし、どうやって‥?とナグが呟き、子規は黙り込んでしまう。
「私が行こうか?」
突然現れたのはセイ、空中に浮きながらにっこりと此方に笑顔を見せている。
「確か‥きみは‥」
子規には見覚えがあった、空間転移という能力を持つカナリヤで上層部からは今後はスパイ行為で役に立つだろうと言っているのを聞いた事がある。
「確かに君の力なら‥この中の誰よりも確実に出来るだろうね‥」
任せていいかい?子規がセイに問いかけると「もちろん、いってきま〜す♪」と言い残してその場から消えた。
「僕達は島を出る為の準備をしよう、今は使われていない脱出用の船がある‥!」
●脱走劇――島から出る為に
「立ち入り禁止区域、此処かなぁ」
天井付近を浮いている為、下を歩いている研究員たちはセイに気づかない。
「あれ―――‥」
隣の部屋で仰々しい装置の点検をしている研究員がいた。
「あれ、何だろう‥」
その装置の所へ行くまでに扉が多くあり、装置の重大さを醸し出している。
「あ」
ふと、研究員と目がばっちり合う。ヤバイと感じたセイは研究員に向かってにっこりと笑って能力を使ってパッと消える。
「カナリヤだ!逃げ出したカナリヤが近くにいるぞ!」
研究員は部屋を空けて、そのままセイを探しに出て行ってしまった。
「‥‥‥‥らっきー」
隣の小部屋に転移して隠れていたセイは立ち入り禁止部屋に戻り、装置の所まで転移をする。
「島周囲‥これかな」
セイは近くにあった警棒で装置を数度殴りつける。殴られた装置はバチバチと火花を散らし、その効果をなくした。
「これで大丈夫なのかなー‥」
●脱走劇―――合流
「あ!無事だったんだね」
子規の案内で船の所まで行く途中でかごめたちと合流した。
「味方、増えた、いいけど」
子規を見つめながら槐が小さく呟く。
「とりあえずは此処から出ないといけないわね、おーっほっほっほ!」
雲雀が高笑いをすると「追っ手、見つかる――黙れ?」と低い声で槐が呟いた。
「まあまあ‥船の所までもうすぐだから」
少し、待つ――槐が呟くとエレベーターやロック扉に手をかざした。
「何をしてるの?」
満空流が問いかけると「少し、黙る」と答えた。それから三分ほどが経った頃「終わった」と短い言葉を槐が呟いた。
「パス、変えた、追っ手、別ルート」
槐はロック扉を指差しながら不敵な笑みを浮かべながら答えた。彼女の能力・マシンテレパスは自在に機器操作が可能なのだ。
「でも全部は別ルートに出来なかったみたいね、おーっほっほっほ!」
雲雀が後ろから追いかけてくる追っ手を指差しながら高笑いをした。
「船着場に行ってて!あたしが囮になるから!」
かごめが仲間たちに叫ぶと「危ないよ」と止めるが「あたしにしか出来ないの」と言って走り去ってしまった。
「彼女は少し先の未来を見れたんだったね‥とりあえずは任せよう‥最後帰ってこなかったら‥僕が行く」
子規は唇を噛み締めながらつらそうに呟いた。
●終幕――自由の空へ羽ばたくカナリヤ
「あたしの能力は未来予知、だから何処に研究員が来るのかが分かる‥失敗するわけにはいかない」
かごめは未来予知を駆使しながら研究員をおびき出していく。
「ほら、こっちだよ!」
かごめはなるべく派手に動き、研究員達の前に姿を現す。躍起になってカナリヤ達を捕まえようとしているため、囮だという事は気づいていないようだ。
「そろそろいいかな‥‥」
ある程度、研究員をひきつけた所で、エレベーターへと逃げ込む。
「確か‥ロックは槐がパスを変えてくれたから入り込めば‥」
そう、槐がパスを変えてくれたおかげで新しいパスは脱走を図ったメンバーのみしか知らない事になるのだ。
「今までどーもお世話になりました!さよなら!」
かごめはエレベーターに入り込み、扉を閉めながらかごめは叫んだ。
「船着場まで行けば‥外に出られる‥外に‥」
「かごめはまだ来ないの?」
船着場でいつでも出航できる準備は出来ているのだが、肝心のかごめがいないため出航できない状態が続いているのだ。
「何してるの?」
セイがパッと現れてナグに問いかける。
「かごめさんが来たら舟で鳥籠を出るんだケド‥」
「じゃあ私も行く、外は楽しそうだから♪」
セイがにっこりと笑って答えたときに「みんなーっ!」と大きく手を振って此方へやってくるかごめの姿があった。
「船、槐、動かす」
「僕がサポートするよ」
機器操作できる槐が船を操縦し、子規が彼女についてサポートする。操縦室へ向かう子規の服の袖をキュ、と掴むのは雲雀。
一度は去ってしまった愛する人がまた去っていくのでは‥と不安なのだろう。
「大丈夫、皆で脱出できたら色々な所に行こう」
「一緒に?」
「もちろん」
子規の言葉を聞いて雲雀は「おーっほっほっほっほ」と高笑いをする。
「元サヤ、良かった、結婚?」
ナグから二人の事は聞いていたので、からかうように槐が呟いた。
●そして‥
「どれくらいで着くのかな」
かごめが見渡す限りの大海原を見ながら呟く。鳥籠の中では味わえない自由な空気が感じられた。
「満空流‥って寝てるね」
満空流は海を見てすぐに「これが‥お外?これからはココで遊ぶんだね」と満面の笑みで呟き、海風に髪を靡かせながら寝入ってしまった。
「外、窮屈、違う」
槐も青い空を見ながら微笑を浮かべ、呟いた。
「これから‥自由が‥待ってるんだ‥」
見るもの全てが新鮮なのか、ナグは落ち着きなく色々なものを見ている。
「追っ手は来ないかしらね」
雲雀が呟くと「大丈夫だよ、ししょう」とナグが答える。船を出港させる前、船着場を氷の壁で遮断したり、地面をカチコチに凍らせたりなど、すぐに追いかけて来れないようにしていたのだ。
今まで自由を知らなかったカナリヤたち。
それゆえにこれから苦労もするだろう。
全てを自分でしていかねばならないのだから。
だけど、彼らは知るだろう。
生きる事の素晴らしさ、自由の幸せを―――。
END