Oriental Darkness 光アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
7万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
08/15〜08/18
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●本文
『あれから一年が過ぎ、世界は緩やかに変化していっていた‥』
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星詠姫・妃沙羅を倒して、世界は当面の危機から逃れることが出来た。
しかし‥それは同時に世界の安寧を祈る人物を倒した事から世界は荒廃へと向かいつつあった。
「しかし緋織様は一体‥」
あれからちょうど一年目の今日、火の国の姫巫女である緋織にかつての勇者達は呼ばれ、火の奉納殿に来ていた。
「妃沙羅様は望まぬと思うが、慰霊式を行いたい」
「猛‥緋織様‥」
「誰だ‥猛獣姫と言おうとしたのは‥というか言っただろ、今」
緋織の黒い気に勇者達は怯えながらも「そ、それで話の続きは!?」と一人の勇者が促す。
「慰霊式‥という儀式染みたものではなく、一年という時間が私達の世界をどう変えたか妃沙羅様に報告したのだ‥」
緋織は俯きながら呟き「他の国の姫巫女も来れるものは呼んでおいた」と言葉を続ける。
あれから一年、世界はどのように変わっていったのだろうか‥?
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●募集事項
◎映画「Oriental Darkness」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な配役は以下の通りです。
・緋織(必須/一名)
・勇者(必須)
●ジパングの設定
◎ジパングには人間の他に『妖しの者』と呼ばれる天狗や妖狐などが存在します。
星詠姫が選んだ勇者の中に『妖しの者』がいても問題はありません。
◎選ばれた勇者のうち『人間は神通力』を『妖しの者は妖術』を使う事が出来ます。
(一部を除く)
以下に種族設定を書いておきますので、ご参照下さい。
●人間‥扱える術は『神通力』
特に秀でた部分はないが、劣る部分もない種族。
●妖狐‥扱える術は『妖術』
腕力は強くないが、身軽な動きで敵を翻弄させることが出来る。
また、敵を己の虜にして操る事も出来る。
鞭や軽武器を扱うことに長けている。
●天狗‥扱える術は『妖術』
力、防御共に低いが、豊富な知識の持ち主で妖術の威力が高い。
扇子や羽団扇を扱うことに長けている。
●鬼‥扱える術はありません。
力は抜群の種族。
ずば抜けた力の代わりに妖術を使う事が出来ない。
斧などの重武器を扱うことに長けている。
●花人‥扱える術は妖術
体の中に幾つもの植物が植わっており、補助系の術を得意とする種族。
回復役に最適な種族です。
植物の蔓などで攻撃するため、武器を装備する事ができません。
(風の章から追加の種族です)
※人間だけは種族以外に職業があり、それによって能力が変わっていきます。
『神通力』『妖術』は参加者の皆様が自由に決めて下さって構いません。
※ただ今回は戦闘ありかどうかは参加された方に一任します。
●リプレイ本文
緋織(千架(fa4263))が妃沙羅の慰霊式を行う事を決めたのは少し前に遡る。風来坊(九条・運(fa0378))と名乗る竜神と出会った事が切っ掛けだった。
彼はジパングに残っている同族の名残を感じ、形見の品だけでも竜神界へ持って帰ってやろうと考えていたらしい。妃沙羅の形見を持ち帰る前に彼女が守ったジパングの変化を知らせたいと緋織は申し出た。
そして、風来坊には包み隠さずジパングの民が妃沙羅にした仕打ちを語り、申し訳なかったと緋織は心から頭を下げたのだった。
「面白い事をするのですね‥もちろん貴方も行きますわよね?」
十尾流(トール・エル(fa0406))は貴莉恵(真紅櫻(fa4961))を重力操作で星の国へと強引に連れてきた。貴莉恵は輝玉を通して緋織から誘われており、行くつもりだったことを十尾流は知らない。
「十尾流さん、お久しぶり」
そう言って話しかけるのは紗由羅(豊浦 あやね(fa3371))だった。隣には雷丸(帯刀橘(fa4287))も立っている。
「今回、渡さん(高柳 徹平(fa5394))は一緒じゃないんやね」
紗由羅が十尾流に問いかけると「今回は来れないと連絡があったらしいですわ」と答える。
「皆、久しぶりだな」
話しかけられ、視線を声の方へ向けるが‥はっきり言って誰だか分からない。こんな人が仲間にいただろうか?と思うほど。
「えぇと‥初めまして‥?」
紗由羅が曖昧に話しかけると「‥私だ‥颯(桜 美琴(fa3369))だ‥」と彼女は呟く。名前を聞いて、その場にどよめきが広がる。
「一応‥正装してきたのだが‥私だけか?」
他の勇者達を見ると普段着で来ており、正装しているのは颯のみである。
「颯さん?一瞬誰だか分からなかったよ」
あはは、と笑いながら話しかけるのは然(ティタネス(fa3251))、そう言う彼女の服装は田舎の農民丸出しな格好である。
「儀式染みた事はしないと言っただろう」
苦笑しながら現れたのは緋織、隣には付き人(桐谷蛍火(fa0320))も立っている。
「よく私だと分かったな」
他の勇者ですら分からなかったというのに、と颯は言葉を付け足しながら緋織に問いかける。
「ふふん、私を甘く見ないことだな」
「まぁ‥息災なようで何よりだ‥もうじゅ‥ゴホン、緋織殿」
ひゅ、と風を切る音がしたかと思うと、颯の顔すれすれの所、壁に緋織の足がめり込む。
「猛獣姫言うた奴、飛び蹴り」
飛び蹴りというより、足が壁にめり込んでますよ‥というツッコミを入れる勇気ある勇者はいなかった。
「さて、始めるか」
どん、と酒を手に持ち不敵に笑む緋織をよそに唖然とする勇者達。
「言っただろう、儀式染みたものにするつもりはないと‥それに妃沙羅様も辛気臭いよりは良かろう」
そう言って、場所を移してそれぞれの国の状況を話してもらう事にした。
「あたしが報告できるのは‥火の国と言うよりは村の事がほとんどになるんだけど‥」
然は呟きながら村の様子を話して行く。土地が痩せてきて作物の実りがいまいちだったり、井戸の水が枯れてきたりしているらしい。
「でも、痩せた土地でも育つ作物を植えているし、井戸ももう少し深く掘ってみようって話もある、小川から水路を引いたりしてもいいかな」
然が話し終わると「聞こえますか?」と渡の声がそれぞれの頭の中に響いてくる。
「この能力は前に発現していたんですけど、使う機会がなかったものですから‥僕が旅先で見た事を報告しますね」
渡は各国を転々としていて色々な場所を見て歩いている。その彼が見た事は海が荒れて漁が難しくなったり、餌が取りづらい為か野生動物が人里へ降りてくることも少なくはないらしい。
「水の国は翠嵐は巫女としての自覚が出てきて落ち着いてきた、部下に恵まれ、夜刀とも良い関係を築きつつある」
国の方は‥と颯は持って来たメモを見ながら言葉を続ける。
「荒廃は若干進んでいるが、今の所大きな被害はない‥何かあれば私が現地へ飛ばされるのだ‥」
天狗使いが荒いぞ‥ため息混じりに颯は呟いた。
「風の国は‥聖辰様は祈り三昧の日々を過ごしています」
雷丸が呟き「風の国も水と同様に大きな被害は出てない」と紗由羅が答える。彼女は姫巫女も妃沙羅と同様に犠牲なのではないか、という思いのまま此処へ赴いた。
だが、他の国の状況、姫巫女の事を聞く限り『犠牲』ではないのだと悟る。自分達が自分の意思でこの世界を守ると言う意思の下に動いているのだと感じたのだ。
「この大地にいつの日か再生を‥輝玉や姫巫女の祈りの下にやない、そんな物を必要としないぐらいに‥」
それまではこの世界に生きる全てが姫巫女を支える、紗由羅は呟くと満足そうに息を吐いた。
「さて、土の国じゃが‥一見は平和そうに見えるが大地が痩せ始め、農作物が実りにくくなった――妃沙羅殿の力がどれだけ偉大だったかを思い知らされる」
貴莉恵の言葉に皆が不安そうに表情を揺らし、口を閉ざした。
「あら、貴方達が妃沙羅を解放したのでしょう?わたくしがあんなに反対したのに一人の犠牲で世界を救う方がずっと楽だったかしら」
十尾流が挑発的な言葉を呟くと「十尾流!」と緋織が叫ぶ。しかし、十尾流の言葉が真意でない事に緋織はすぐに気がついた。十尾流の言葉の中には『後悔せずに自分の信じた道を貫け』という意味が混じっていた。
「一人の力は限りあるし、一人が背負うべきでもない‥‥そうだろう?妃沙羅様」
墓を見つめながら緋織が呟く。
「ひ、緋織様!あれは――!?」
付き人が空を指差しながら叫ぶ。
「人間、お前達の心をよく見せてもらった――妃沙羅のような事はよく‥とまではいかないがあることだ、お前達が遥か昔の民のような気持ちであったら滅ぼしてやろうと思っていたが‥」
ばさ、と龍の翼を広げながら風来坊は妃沙羅の墓から形見を取る。
「骸は異郷に朽ちるとも、せめて魂は龍の国へ‥」
雷丸は一筋の涙を零しながら呟く。
「今度こそ真の別れだ‥妃沙羅様‥」
「さらばだ、猛獣と呼ばれし姫巫女。在るべき未来の為に二度と会わぬ事を祈るぞ」
そう不敵に笑むと風来坊は天を破って消えていった‥。
「だから猛獣じゃないって言ってるであろうが!」
さすがは緋織、相手が竜神とあっても食って掛かった。
「そういえば緋織様からも何か報告があるとか‥」
渡が念話で問いかけると「あぁ‥」と思い出したように緋織は話し始めた。
「私は祈りをやめた」
緋織の言葉に勇者達は驚きで目を見開く。
「正確には漠然としたものに祈るのではなく、民の心へ向けての祈りに変えた――緩やかに変化はある。だが民も精一杯頑張っている」
私も時々、地を耕したりとな‥と姫巫女とは思えぬ行動に、しかし緋織らしい行動に勇者達から笑みがこぼれる。
「さて‥お酒も沢山飲みましたし――この世界に飽きたので、そろそろ眠らせていただきますわ」
十尾流が酒を飲み干すと短く呟く。
「今度起きた時にわたくしにとってつまらない世界であればいいですわね」
そう言うと十尾流は十本の尾を出して全妖力でその場にいる全員に『美しい世界』の幻覚を見せた。
まるで‥このような世界を創ってみろといわんばかりに。
「それでは、皆さん‥ごきげんよう」
十尾流はそれだけ言い残すと何処かへと飛び去ってしまう。
「‥それでは私も戻るとしようか」
貴莉恵は立ち上がると緋織に向かって呟く。
「私は土の国を守っていきましょう‥私が亡き妃沙羅様に出来る事はそれくらいしかないのでな」
お前も頑張れよ、そういい残して貴莉恵も土の国へと戻っていった。
「緋織様、そろそろ我々も火の国へ戻りましょう」
付き人が緋織に呟くと「そうだな‥」と名残惜しそうに言葉を返す。
「じゃああたしも一緒に帰るよ、同じ国だしね」
然がそう言って「皆、これから頑張ろう」と言い残して、三人で火の国へと戻っていった。
「僕も頼まれていた魔物たちの残党退治をしにいかねば‥ジパングが良い世界になるといいですね」
渡もそう言って念話を切る。
「颯さんはずっと水の国にいてはるんですか?」
「いつかは旅に出る予定だが‥翠嵐を見ていると奴を思い出す‥はて、何故だろうな」
慈しむように呟き「達者で」と颯も水の国へと帰っていった。
「竜神が形見の品を国へ持ち帰ってくれた‥これで永遠の孤独ではなくなりましたね、妃沙羅様も」
雷丸が呟くと「そやね」と紗由羅が空を見上げながら小さく言葉を返した。
「うちらも帰ろう、うちらの国へ――」
荒廃していく世界
それはきっと簡単には元に戻りはしない。
出来る出来ないの問題ではないのだ。
やるか、やらないか――。
そしていつか努力が報われるときが‥きっと来るはず――‥。
END