Melodearアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
4.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/17〜08/19
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●本文
『かつて‥メロディアを出て行った住人がいた‥』
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メロディアは己の分身である楽器を持って生まれてくる。
そしてその楽器を通してしか会話をする事ができない。
メロディアの住人はそれを苦とせずに生きていた。
しかし―‥一人だけその『運命』に逆らった住人が存在した。
「そういえば彼はどうしてるかな‥?」
一人の住人が空を見ながら呟く。
彼―‥だいぶ前に「こんなのが運命だなんて納得できない!」と叫んで出て行った男性がいた。
彼の名を浅葱(あさぎ)と言い、薄い青色のバイオリンで会話する青年だった。
※※
「俺は嫌だ!こんな閉鎖された街でしか暮らせないなんて納得できない!俺は外の世界に行く!」
浅葱はそう言って仲間が止めるのも聞かずにメロディアから出て行った。
あれから数年‥彼はどうしているのだろう‥?
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●募集事項
◎映画「Melodear」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な役柄は以下の通りです。
・浅葱(必須/男性一名)
・メロディアの住人(必須/何名でも可)
※上記二つが必須配役ですが、他にも適役がありましたら其方を演じていただいてもOKです。
※メロディアでは楽器を奏でる事で『会話』をします‥という事で楽器を持参してもいいし、スタッフが用意してもいいので、何の楽器を使用するかをプレイングに書いてください。
●リプレイ本文
「私に出来る事‥何かないかしら‥」
花音(祥月 暁緒(fa5939))はベッドの上で苦しそうに寝ている浅葱(椿(fa2495))を見てつらそうに呟いた。
浅葱はメロディアの住人であり、人間界の生活が分からず途方に暮れていた時を花音に拾われて、彼女の屋敷で世話になっていた。居候の手前、浅葱はバイオリンを披露する機会が多く、それが高じて徐々に表舞台へと上がりそれなりに名の売れたバイオリニストにまでなっていた。
だが‥人間の作った曲は浅葱にとって『言葉』になっていない。ただの音符の羅列でしかないのだ。浅葱の『言葉』を理解する人物もいなく、それはストレスとなって彼の体を蝕んでいったのだ。
「お医者に見せても異常はないと言うし‥やっぱりメロディアに行くのが一番いいのかしら」
花音の言葉に浅葱は『それだけは嫌だ』と紙に書いて、それを彼女に見せた。それを何度も繰り返すうちに花音はピアノを乱暴にバーンと鳴らした。
メロディアの場所、ちゃんと教えなさいよね‥行くまで帰らないから!
そう書いた紙を浅葱に見せて、怒りを露にした表情で彼を見た‥。
「え、そうなの?」
悠里(姫乃 唯(fa1463))は外の人間だがーモニカで会話をする。彼女は生まれつき声が出す事が出来ない代わりにメロディアの言葉を奏でる事が出来る。
「外の世界で‥浅葱さんが辛い思いをしてないといいのですが‥」
ビオラを奏でながら悠里と会話するのは伊織(エルティナ(fa0595))だった。彼女はメロディアでの環境に違和感なく毎日を過ごしている。ほとんどの住人が違和感なく過ごしている事だろう。
「‥メロディアにもいたんだ‥以前の私みたいな人‥」
少し前までの自分を思い出し、苦笑しながら悠里は呟く。
「僕もあんまり覚えてないや‥」
バイオリンを奏でながら話すのはミル(倉瀬 凛(fa5331))、彼は「外の世界ってそんなに魅力的なのかな‥」と森の奥を見ながら呟く。
「確かに閉鎖された街かもしれないけど、僕は住みなれた街と、此処の皆が大好きだけど」
「あれ‥誰か来たみたいだけど、また外の人かな?」
ミルが入り口の方をみながら呟く。
「まぁ‥浅葱さん?浅葱さんじゃない!」
ローザ(椎名 硝子(fa4563))がクラリネットを吹きながら現れた浅葱に駆け寄る。
「浅葱って‥あの有名なバイオリニストの!?奏でる音が人とは違うとは思っていたけど‥メロディアの住人だったなんて‥」
浅葱と花音に駆け寄りながら悠里も驚きを隠せない。
「‥少し体調が悪いみたいね‥休んだ方がいいわ」
ローザはセラピスト・臙脂(藤拓人(fa3354))の所へと連れて行く。
「貴方は‥外の世界の人みたいね‥」
ローザは浅葱の隣で戸惑っている花音に向けて呟く、しかし言葉が通じないことを思い出し、紙に『浅葱さんを連れてきてくれてありがとう』と書いて見せた。
一方、花音は皆に心配される浅葱の姿に寂しいという気持ちとホッとしたような気持ちが混じっていた。
「‥俺、此処を捨てて行ったのに‥」
てっきり皆からは怒られるだろうと予想していた浅葱は、心配してくれる住人達にキョトンとした表情を見せた。
「あの‥大丈夫‥ですか?まだ顔色優れませんけど‥」
悠里がお茶を差し出しながら浅葱に問いかける。
「ありがとう‥」
浅葱はそれを受け取りながら、ぽつりと呟き始めた。
「狭い世界は嫌だとメロディアを出て行ったのに、実際は人間界の方が苦痛だったよ‥自由に音を奏でられない‥狭い世界は俺にとってどっちだったんだろう‥」
運命はきっと自分次第だった‥そう下を俯きながら呟く浅葱に「‥そう」とローザが答える。
「‥浅葱さんも頑張っていたのね。今は少し疲れてしまっているみたいだけど‥ずっと走り続けていると疲れてしまうし、たまにはゆっくり休むといいわ」
臙脂が浅葱に下した診断は『環境の変化によるストレス』で、落ち着いた環境‥つまりはメロディアで長期療養をする事を勧めた。
「でも‥‥」
浅葱は花音をチラリと見ながら呟く。彼女には世話になった、それなのにメロディアの方がいい‥というのは図々しい気がして結論を出す事に戸惑いを感じていた。
「それじゃ、私は帰るわ‥浅葱は残るのよ」
そう書かれた紙を浅葱の前に出す花音、それを見て浅葱は驚いた表情で彼女を見た。
「治療が必要なんだから仕方ないでしょう?でも‥遊びに来るのは歓迎するわ」
そう呟きながら微笑む彼女に浅葱は心から感謝をした。
そして、よろめきながら自分のバイオリンを取り、今自分に出来る最高の演奏を花音のために弾いた。
「きっと‥人はそれぞれ自分に合った居場所があると思うんです」
演奏を聴きながら悠里がポツリと呟く。
「私も自分の世界から逃げていたけれど‥近すぎると見えないけれど、居場所はすぐ傍にあるものなんだって、メロディアの皆に教えてもらいました」
だからきっと浅葱さんの居場所はメロディアだと思います、悠里は笑みながら浅葱に向けて話す。浅葱の演奏は聴いたことはあったが、こんなにも素晴らしい演奏は初めて聴いたのだ。
「私も‥そう思うわ」
伝説のメロディア、その場所に来れたこと、そして浅葱の『本当の演奏』を聴けた今、花音はそう思わずにはいられなかった。
「また‥会いましょうね、浅葱」
花音はそれだけ言い残し、メロディアから出て行った。悠里も帰る時間だったので、花音と一緒に帰ることにした。
「私達は‥生まれ育ったこの世界でしか生きていくことは出来ないの‥それでも、また外の世界に帰りたいというなら‥止めはしないわ」
伊織は浅葱に呟く。
「だけど、勘違いしないでね。外の世界を否定する気はないわ、また行きたくなったら遊びに行っていいと思うわよ」
「そうですよ、遊びに行って疲れたら此処で休んでください、此処―‥メロディアは貴方の故郷なんですから」
ミルが精一杯元気付けようと呟いた言葉に浅葱は一筋に涙を零した。
「やっぱりメロディアは天国だよ‥あんなにも素敵な皆がいるんだもん、自分の居場所を感じることが出来るのって‥素晴らしいことですよね」
悠里は紙に書き、それを花音に見せた。
「そう‥ね、浅葱の居場所はメロディアだった‥私もまたメロディアへ行こうと思うわ‥あんなにも素敵な人たちばかりなんだから」
私も一緒に行きます、悠里はそう書いて花音と別れた。
後日、バイオリニスト・浅葱は忽然と表舞台から姿を消してマスコミを騒がせていた。
けれど、浅葱の行方を知る人物は花音と悠里の二人。
その花音の元に頻繁に訪れる浅葱の姿が悠里によって何度か目撃されていたのだった‥。
END