LUNA −discoveryアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 やや難
報酬 5.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/28〜08/30

●本文

「今宵は月の出ぬ夜‥月鬼達が最も弱る日である――‥」

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「‥っ‥」

泰牙の体を手に入れた『永遠の炎』は頻繁に起こる頭痛に表情を歪めていた。

「どうしました‥?」

不自然な彼に黒耀が問いかけると「頭の中にもやがかかったような‥」と曖昧な言葉を返してきた。

そして、永遠の炎の覚醒は月宮殿の二人にも話がいっていた‥。

「いい加減本当の事を教えてくれ、一体私達は何なんだ、腐獣は!?何が本当なのか分からない!」

一人の月鬼が叫ぶと「もう限界ですね」と月姫が呟く。

「私達の口からは語れません、全ては己の目で見てくるといいでしょう」

そう言って赤い鏡を取り出し「宜しくお願いします、月下鏡」と呟いた。

「姫様の頼みなら何でも聞かせてもらうぜ」

鏡が突然喋り始め、月下鏡と呼ばれたそれを中心に周りの景色が歪み始めた。

「若き月鬼達よ――私達月鬼がしてしまった償いきれないほどの罪、それを見てくるがいい‥」

月天子の言葉を境に意識がぷっつりと途切れてしまった‥。

「お前も酷なことをするものだね、罪を見て‥正気で戻ってこられるか心配ではないのかい?」

「月天子‥怯えるだけでは前に進めないのです、私はあの子達を‥信じます」

過去へと誘われた月鬼達、そこで知るだろう。

己たちの罪、そして歌の本当の意味を。

歌が指し示すのは――‥。



※※設定※※

月鬼は生まれつき『月天子』か『月姫』―‥どちらかの加護を受けています。

月天子の加護を受けている者は『攻撃系』の能力を持ち

月姫の加護を受けている者は『防御系』の能力を持っています。

同じ加護を受けている者同士は、互いの力を合わせて連携技を使う事が出来ます。
※月姫+月姫
※月天子+月天子はOK。

※月姫+月天子
※月天子+月姫はNG。

相対する能力同士は力が反発しあい、うまく力が絡まらず連携は出来ません。

※能力はそれぞれの系統に反しないのであれば皆様で好きに決めて下さって構いません。

前回までに質問が出たこと(全部掲載はしておりません)

・能力系
◎防御以外の能力(補助・束縛)なども月姫の加護を受けた者が使用可能です。

◎自分以外の存在を腐獣に感染させずに使役する能力は月天子の加護を受けた月鬼が使用可能です。
(その際は使役する存在について詳しく考えていただくことになります)

◎連携技は二人以上でも可能ですが、連携技自体が体力を大幅に消耗するので三人以上と連携しても、上手く能力を扱えない場合があります。

◎連携技を繰り出した場合、術者双方が使う事が出来ます。

・腐獣
◎腐獣の外見は特に決まったものはありません。大きい腐獣から小さな腐獣まで存在します。
(感染した場合は、感染者の姿を維持しており、記憶・知識すべてを所有しています)

◎感染者は腐獣であることを隠す事が出来るが、本能である『破壊活動』を抑える事は無理であり、我慢できなくなった破壊活動で正体がバレる事が多い。

◎自然に生まれた腐獣は知識がないので特殊能力は持っていませんが、感染者は特殊能力を持つ事が出来ます。

◎感染者(人間)は腐獣と人間としての意識を両方持っており、人格が入れ替わる事もある。

◎感染者の遺体は例外なく塵となって消えてしまう。

◎自然に生まれた腐獣は複数行動は滅多にしない。
(仲間だと判別する知性もないので、複数で行動しても仲間割れする事もある)

◎感染者は『使役する』という特殊能力を持たせる事で腐獣を使役する事が出来る。
(ただし感染者は自我があるので使役されることは滅多にない)

・その他

◎普通の人間が持っている『月鬼』『腐獣』に対する認識は、普通の人間が『幽霊』の事を考えている程度。

◎月姫、月天子は法律にまでは介入する事はできない。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
●募集事項
◎映画「LUNA」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な必須配役は『月鬼』のみです。


ユリアナの配役はリアという純血の腐獣になります。
※他に適役がありましたら、そちらを演じていただいても結構です。
※設定などに疑問などを感じたら、NPCユリアナに質問して下さい。
 その際は別スレをたてていただけると有難いです。


●今回の参加者

 fa0467 橘・朔耶(20歳・♀・虎)
 fa0612 ヴォルフェ(28歳・♂・狼)
 fa1420 神楽坂 紫翠(25歳・♂・鴉)
 fa2459 シヅル・ナタス(20歳・♀・兎)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)
 fa3366 月 美鈴(28歳・♀・蝙蝠)
 fa4956 神楽(17歳・♀・豹)
 fa5625 雫紅石(21歳・♂・ハムスター)

●リプレイ本文

「‥思い切った事をしましたね?でも肝心のあの事についてはまだ秘密ですか?」
 月鬼達が過去へと行った後、朔夜(月 美鈴(fa3366))が月姫に向かって呟く。彼女は一族の古文書にて過去の悲劇を知っていた。
「‥今は‥あの子達が無事に帰ってくる事を祈りましょう」


「此処が‥月‥俺達の本当の故郷‥」
 月下鏡によって月へとやってきた朱桜(ヴォルフェ(fa0612))が呟く。見知らぬ筈の異地であるこの場所に懐かしさを感じるのは彼が月鬼である証拠なのだろう。
「俺も‥此処‥見覚えがあるような気がする‥」
 海唄(橘・朔耶(fa0467))も周りを見渡しながら呟く。
「でもあの二人が必死で隠し続けた罪って何なのかしらね?」
 汐音(雫紅石(fa5625))が手を口元に置きながら問いかけるように呟いた。
「隠された真実ってのは大抵誰かにとって都合の悪いもので、後味が悪いと相場が決まっているだけに覚悟が必要だろうな」
 水鏡(シヅル・ナタス(fa2459))がいつもより低い声で呟く、その姿から相当緊張しているのだと見て取れる。
「‥あれ‥リア(ユリアナ・マクレイン(fz1039))じゃないか‥‥?」
 夜光(神楽坂 紫翠(fa1420))が呟きながら指差した方には過去、月で生きていた頃のリアの姿があった。
「隣の人は誰かしら、やけに親しげね」
 氷月(神楽(fa4956))が首を傾げながら呟き「確かに‥この頃のリアは月鬼と上手くやっていたんだな‥」と違和感を覚えながらも朱桜が呟く。
「あそこから誰か見てる‥」
 海唄がリアと月鬼の男性・桂皇(佐渡川ススム(fa3134))を強く見つめる女性の存在に気づく。その女性は二人を見ている‥というよりリアを睨んでいるようにも見えた。
「何かしら‥あの目‥まるで憎んでいるみたい‥」
 汐音の言葉に「確かにそうやね‥」と水鏡も答える。

 それから周りの景色が歪み、次に現れた場所は既に騒ぎが起きている最中だった。
「なぜ貴女がこんな事をするんだ!?貴女も彼女を認め、友になったんじゃなかったのかっ!?」
 叫ぶのは桂皇、叫ばれているのはリアを睨んでいた女性の月鬼だった。
話の内容を聞いていると、女性がリアの悪い噂を故意に流し、月鬼達からリアが狙われているようだった。
 だが‥彼、桂皇はリアを友と認めていたから噂を信じずに、噂を流した月鬼を探していたのだが‥‥探し当てた人物は自分の‥そしてリアの友である筈の彼女だった。
「確かに認めていたわ!でも貴方が‥貴方はリアを――‥」
「理由は一先ず置いて、他の皆にリアの噂は嘘だと告白してくれ、じゃないと‥彼女の命が危ないんだ!」
 桂皇は女性の手を強く握りながら、他の月鬼達の所へ連れて行こうとするが女性はそれを頑なに拒んだ。
リアは月鬼ではない、異形である彼女が妙な噂を流され、それを信じた月鬼達が彼女を無事に生かしておく筈もない。
「嫌よ!」
 桂皇の言う事を聞かない女性に、桂皇が女性の首に武器を向ける。
「頼む。私もこんな事はしたくないんだ!」
 武器を向けた桂皇に「‥貴方に私の気持ちなんか分かりっこないわ!」と叫んで女性は能力で桂皇の腹部を刺した。
「‥‥そんな、何が貴女を‥凶行‥‥に走らせる、の‥‥だ。り――リア‥‥すまな、い」
 此処で桂皇の意識は途絶える。後で分かった事だが、女性は永遠の炎によって負の意識を増幅させられていたのだろう。
「‥‥桂皇‥‥?いや‥嫌よ‥いやあああああっ!」
 女性は我に返り、狂ったかのように叫びだす――しかし次の瞬間、月鬼達が目を見開く事が起き始めた。
「月鬼が――腐獣になっていってる‥‥?」
 氷月が恐怖の為、カタカタと唇を震わせながら消え入りそうな声で呟く。月宮殿の二人が躍起になって隠したかったこと、それは月鬼達の腐獣化だったのだ。
 その後の事は目を背けたくなるほどに悲痛なものだった。自分を唯一信じてくれた友の死、そして裏切り――それがリアを壊れさせていったのだろう。
 リアの暴走により、月鬼の能力を過剰に使用したせいで月は急激に荒廃し、リアを封印した後に地球へと移住した。そして元来、月でしか生きられない月鬼が地球へと移住したせいで短命と化した事も彼らは知った。己の目で見て。
「‥見て、桂皇の能力かしら‥」
 汐音が結晶のようなものを指差し、その結晶から桂皇の声が聞こえ始める。
「我々の罪を背負わせる事になり、すまない‥だが、もし――全てを知った後でも彼女を哀れと思うなら‥止めてやってほしい」
 その言葉を最後に月鬼達は月宮殿へと戻ってきた。

「お帰りなさい」
 朔夜が帰って来た月鬼達を迎え、苦笑混じりに呟く。
「混乱しているみたいね、物事を整理して考えた方がいいわ」
 朔夜の言葉に「‥そうだな」と朱桜が答える。
「無知は‥罪ね、己の罪も知らずに、正義の味方を気取っていたなんて‥」
 氷月も蒼い顔をしたまま呟く。
「あれは‥誰かが悪かったわけじゃないわ‥ただ、ほんの少しだけ皆が相手を信じ切れなかっただけなのよ」
 汐音は過去の出来事に絶望しながらも、心のどこかでは月鬼を信じていたいという気持ちを語る。
「‥うちも最悪の場合を予想していたんやけど‥想像以上にヘビーな話やったな‥」
 けど、と水鏡は言葉を続ける。
「月鬼に償いきれないほどの罪があるのは分かったけど‥だからと言って同情してリアの思いのままにさせるってワケにもいかへんやろ―‥結局の所、うちらがやるべき事は変わらないって事やな」
「そうだな‥しかし‥あれでは誰が本当に被害者で誰が加害者だったのか分からないな?」
 なぁ、海唄、と朱桜が話しかけるが返事はない。
「海唄?」
 朱桜が目にした海唄、しかし彼女は過去を見て絶望し、自我を失いつつあった。
「風花に 燃ゆる灯りゆらゆらと‥
 赤き湖鏡 青き炎焔
 彼の目覚めが 黒き森へ導き誘う
 一つ消えては 時を刻み
 二つ消えては 眠りにつき
 三つ消えては 全てが滅びる」
 海唄がボーッとしながら口ずさむ歌は、彼女が以前に口ずさんでいた歌とは少し違っていた。
「少し休ませましょう」
 朔夜が海唄を連れて寝室へ移動しようとした時、夜光に呼び止められる。
「姉貴は知ってたみたいだな、やけに冷静だ」
「‥冷静?今更、慌てたところで過去は過去だし‥」
「確かにそうだが‥気が重い、相当厄介な事になっていたようだし、こじれたのを元に戻すのは‥苦労するからこれから大変だ」
「そうね、でも此処で打ちのめされても何も変わらないわ、過去は変えられないけれど、まだこれから何とか出来ないとは決まってないもの」
 あたしは忘れない、そして足掻いて見せるわ‥と氷月は決意を秘めた瞳で強く言い放つ。
 その中、一人‥朱桜だけが真剣な顔で考え込んでいた。
「何を考えているの?」
 汐音が問いかけると「分かったかもしれん‥」と短く答えた。
「分かった‥?何が‥?」
「海唄とリアの歌――――‥もしかしたら、歌詞の意味が分かったかもしれん」
 朱桜の言葉に「え?」とその場にいた月鬼達が呟く。
「月天子、悪いが過去の文献を探らせてくれ‥」
 朱桜がそう問いかけると「構わないけど‥月宮殿の最下層、一番奥だよ」と月天子が答え、彼は足早に文献室まで赴いていった。


「風花に 燃ゆる灯りゆらゆらと‥
 赤き湖鏡 青き炎焔
 彼の目覚めが 黒き森へ導き誘う
 一つ消えては 時を刻み
 二つ消えては 眠りにつき
 三つ消えては 全てが滅びる」


「激しく燃える それは全ての命の源
一つ燃えれば 心をなくし
二つ燃えれば 体をなくし
三つ燃えれば 全てをなくす
永遠に燃え続ける炎 銀色の月が輝く時
その灯火 消える」


 この二つの歌が意味するものは―――‥?

 そして、これより数日後、衝撃的な事実が月鬼達をさらに驚かせる事になった。


END