OFFでGO×2アジア・オセアニア

種類 ショートEX
担当 水貴透子
芸能 3Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 5.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/30〜09/01

●本文

『芸能人の休日‥それは一般人が最も気になる事‥‥』

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 ―出演者各位―

このたびは『OFFでGO×2』に出演してくださり、ありがとうございます。

今回も前回同様、出演者の皆様が休日にしている事をしてくだされば結構です。

休日の過ごし方は人それぞれだと思います。

普段の皆様を撮影したいと考えていますので無理に着飾る必要はありません。

それでは、良い番組になるように頑張りましょう。


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●募集事項
◎「OFFでGO×2」では出演者の皆様を募集しています。
◎番組の内容は『芸能人の休みの過ごし方』です。
◎今回もユリアナが同行させていただきます。
◎それぞれの休日の過ごし方ですので、無理に誰かと行動しなければならないという事はありません。
(ユリアナがついていくのは必須です)
◎何か質問があれば、ユリアナに聞いてください。
(その際は別スレを立てていただけると有難いです)

●今回の参加者

 fa0430 伝ノ助(19歳・♂・狸)
 fa0470 橘・月兎(32歳・♂・狼)
 fa1449 尾鷲由香(23歳・♀・鷹)
 fa1521 美森翡翠(11歳・♀・ハムスター)
 fa1683 久遠(27歳・♂・狐)
 fa4031 ユフィア・ドール(16歳・♀・犬)
 fa4961 真紅櫻(16歳・♀・猫)
 fa5538 クロナ(13歳・♂・犬)

●リプレイ本文

●ユリアナ大改造計画!?

「えぇと‥この家で間違いない‥わよね?」
 スタッフから渡された地図を見ながらマンションの前に立つのはユリアナ・マクレイン(fz1039)である。二度目となるオフの過ごし方、今回も彼女が芸能人たちの休日の過ごし方をリポートして行く事になった。
「最初は‥ユフィア・ドールさん(fa4031)と真紅櫻さん(fa4961)のお二人ね」
 言いながらユリアナはインターホンを鳴らして待っていると、直にドアが開けられた。
「いらっしゃい♪」
 中からは二人が顔を出してユリアナを出迎えた。
「とりあえず中に入って、本当は兄と一緒に暮らしているんだけど今日は仕事でいないから、遠慮はいらないしね♪」
 ユフィアはそう言って予め用意していた紅茶を渡す。
「ありがとう、二人は仲がいいのね」
 紅茶を受け取りながら問いかけると「遠縁の親戚なのよ」と真紅櫻が答えた。
「へぇ‥あれ?確かユフィアさんの家は猫と犬を飼ってるって聞いたけど‥?」
 ユリアナが問いかけると「兎ちゃんに預けてきたよ」と真紅櫻も飲み物を飲みながら答えた。
「兎ちゃん?」
「私達二人にとって従兄弟の人、橘・月兎(fa0470)よ。今回の番組に参加しているって聞いたけど‥」
 確かに、とユリアナは思う。明日の取材に彼の名前があったような気がする。
「多分、兎ちゃんは今頃驚いているよ」
 真紅櫻がふふ、と笑いながら呟く。その理由を聞いてみると、真紅櫻はユフィアの飼っている猫&犬を月兎の家まで連れて行き、彼が寝ている間に猫と犬を放し、必要な道具などをそろえ、彼が寝ている間に家を出てきたとの事だ。
 ちなみにこれは全て彼が起きるまで知らない事であり、許可はもちろん取っていない。
「猫5匹に犬1匹―‥大変じゃないのかしら‥?」
 ユリアナが哀れみを込めた口調で呟くと「これが終わったら迎えに行くから大丈夫」という事で話は終わった。
「さて本題に移ろうか、チィ?」
 本題という言葉に真紅櫻が「オッケー」と呟き、奥の部屋から何かを持って来ようとしている。
「え?何?」
「今日はチィと二人でユリアナさんのイメージチェンジ作戦をしようかと思って」
 確かにユリアナは普段着すらスーツ着用で、最近の若者らしからぬ格好なのだが‥。
「大丈夫、人のコーディネート考えるのは趣味みたいなもんだし♪」
 真紅櫻が「だから心配はいらないよ♪」と言いながらユフィアに道具を渡していく。
「お、お手柔らかにね?」
 呟きながらユリアナはユフィアの前に置かれている椅子に座る。そしてユリアナ改造計画は実行に移されていく。
 いつもはきっちり纏められているユリアナの髪はボリュームを出し、ファンデーションも明るめの物を使う。そして顔のラインにブラウンのパウダーを使い、目元には紫色の物を使う。そして際立たせるように唇と爪は赤いもので飾る。
「服はこれを着てね♪」
 メイクの後、真紅櫻がユリアナに渡したのは‥黒くて可愛い―――。
「ご、ゴスロリ!?」
 そう、綺麗な人形などが着ていそうな黒いレースたっぷりあしらわれた俗に言うゴスロリドレス。
「さ、流石にコレは――」
「駄目駄目、着てもらわないと困るのよね、写真撮って送らなきゃいけない人がいるから」
 写真まで撮られ、それをバラまかれるのか‥ユリアナは少し泣きそうになったがここまで来れば着ないわけにはいかない。
「分かった‥着るわ‥」
 これは仕事よ、仕事なのよ、一人ぶつぶつ言いながらユリアナは隣の部屋まで行き、ゴスロリドレスを着ることになった。
 それからユリアナが部屋から出てきたのは数十分後、着替え自体は直に終わっていたのだろうが、恥ずかしさの為に中々出てこられなかったのだろう。
「似合ってるじゃない、ねぇ?チィ」
「うんうん!という事で撮影会!」
 真紅櫻がカメラと携帯電話を取り出してユリアナの写真を撮り始めた。
「ええっ!嘘!何で写真!?」
「えっと、ユウの兄と兎ちゃんともう一人に送るから♪」
 楽しげに答える真紅櫻にユリアナは軽い眩暈を覚えたのだとか‥。結局逆らう事も出来ずに写真を撮られ、そのまま郵送&送信されてしまった。
「さて、ユリアナさんも疲れただろうし甘い物でも食べに行こうか」
 真紅櫻の呟きに「美味しい所知ってるよ♪」とユフィアもユリアナを連れて外に出かける。
「‥‥‥‥‥‥もしかして、私――このまま外に出るの!?」
 あああああ、とユリアナの声は二人には聞こえない(聞かない)為、無理矢理引きずっていく。
「明日は兎ちゃんに宜しくね♪」
 甘味処で甘い物満喫したあと、ユリアナは次の出演者の所へと行く事になり、二人と別れたのだった‥。
「あの写真‥明日橘さんには忘れてもらいましょう」


●お寝坊さんな役者・伝ノ助さん(fa0430)
「良かった‥まだ昼を少し過ぎたくらいだわ」
 ユフィアたちと別れ、ゴスロリ服だけを着替えたユリアナは次の出演者・伝ノ助の所へと急ぎ足で向かった。
「それにしても‥インターホン鳴らし続けているのに出てこないわね‥」
 そう呟きながらユリアナは事前に渡された合鍵をバッグから取り出して鍵穴に差し込む。彼は寝起きがすこぶる悪く、目覚ましや電話などでは起きないと合鍵を渡された時に言っていたのを思い出す。
「お邪魔‥しまーす‥」
 ユリアナはこそっと部屋の中に入ると、甚平姿で寝る伝ノ助を発見する。
「伝ノ助さん、ユリアナですけど‥起きてください」
 伝ノ助の体を揺さぶりながら話しかけるが「んー‥‥にーこさん‥」と誰かとユリアナを勘違いしている。
「ユリアナですけど、起きてください」
「‥もう少し寝かせてくださいやし‥‥ってユリアナさん!?」
 思い描いていた人と違って驚いたのか伝ノ助は飛び起きて「すいやせん!」と隣の部屋まで走っていった。
「着替えたり、猫の世話してきやすんで寛いでいて下さいやし!」
 ばたばたと走り回る伝ノ助に「慌てなくてもいいわよ」と苦笑しながら走り回る伝ノ助の姿を見ていた。
 それから十分程度待っていると、落ち着いたのか伝ノ助がお茶を差し出しながら「待たせてすいやせん」と呟いた。
「猫を飼っているのね、可愛い」
「あ、妹の飼い猫でやす、家賃浮かせる為に妹と二人で暮らしてるんで」
「そうなの?でもさっき起こしに行った時に見たけど‥部屋が凄い事になってるわね」
 彼の自室には芝居研究用のビデオや本、趣味のCDなどの私物が所々に積み上げられていたのだ。
「ちょっと触れれば雪崩が起きそうだったわね」
 思い出したように笑うユリアナに「うっ‥」と伝ノ助は言葉に詰まる。
「じゃ、じゃあご飯でも食べに行きやしょうか」
 伝ノ助の言葉に「そういえばお昼食べてなかったわ‥」と思い出したように呟く。

 外出時の伝ノ助の服装は伊達眼鏡こそしているものの変装らしい変装はしていない。普段着とあまり変わりはないように見受けられる。
「ここ入りやしょう!」
 伝ノ助が指差した所は『30分までに食べきればタダ!』という看板が掲げられたラーメン屋である。
「‥見かけによらず結構な大食い‥なのかしら」
 伝ノ助が店に入ると同時にユリアナが呟き、続いて店に入る。
「結構ユリアナさんもいける口でやすね」
 ぺろりと巨大ラーメンを食べ終わり、もう少しで食べ終わりそうなユリアナを見ながら話しかけた。
「この辺は『○○分以内に食べ終われば‥』って店が多いんでやすよ、次はお好み焼きに行きやしょう!」
 それから伝ノ助はユリアナがギブアップするまで、ラーメンから始まり、お好み焼き、餃子、パフェと店を何軒もはしごしていた。
「よ、よくあんなに食べられるわね‥」
「こういう時に沢山食べてエネルギー補給しときやせんと!」
 まだまだ食べれるといった感じの伝ノ助に「‥凄いわ」としか言いようのないユリアナだった‥。
「これからは電車で人間観察に行く予定なんですが‥ユリアナさんは他にも取材があるんすよね、頑張ってくださいやしー」
 そう言って電車に乗る伝ノ助と別れ、ユリアナは次の取材の人物の所へと向かい始める。


●勉強熱心アーティスト・クロナさん(fa5538)
「三時前‥何とか今日の予定は崩さずにすむわね」
 そう言ってユリアナは、クロナの所へとやってきた。
「ユリアナさん、今回は宜しくお願いします」
 クロナは丁寧に頭を下げて挨拶をしてくる、ユリアナも「此方こそ宜しくね」とにっこりと笑って頭を下げる。
「えと‥クロは此方、日本にいる時ですが横浜にあるオカーサンのお知り合いのお家でお世話になっています」
「そうなの?」
「はい、縁側で胡弓のオカーサンの国の曲を演奏していますです」
 そう言ってクロナはユリアナを縁側まで案内する。
「お仕事でも胡弓を使っているの?」
「いえ、お仕事でのメインはキーボードなのです」
 クロナは苦笑しながら答える。日の当たる縁側に座りながら聴くクロナの胡弓はとても心地良いものに思え、気分が安らいだ。
「‥終わりです、どうでしたか?」
 胡弓を横に置き、クロナは感想をユリアナに聞いてくる。
「凄く良かったわ、私自身は音楽に詳しくないのだけど良かったと心から思うわ」
 ユリアナの言葉にクロナは「クロ、嬉しいです」とはにかむように笑って答えた。
「ユリアナさん、まだお時間ありますですか?」
「えぇ、次の取材はもう少し遅くなってからだから大丈夫よ」
「じゃあ、お散歩に行きませんか?」
 そうね、お付き合いするわ、ユリアナはそう答えてクロナと一緒に街へと歩き出した。
 街は晩御飯の買出しをする主婦が多く、そしてストリートミュージシャンもちらほらと見かけられた。
「ユリアナさん、ちょっとクロ、見てくるです」
「え?」
 ユリアナの返事を待たずにクロナはストリートミュージシャンの所へと走っていってしまう。
 クロナは若いが、音楽に属する人間だ。そして若さゆえの勉強熱心さからかミュージシャンを見ると勉強の為に見学するのだとスタッフが言っていたのを思い出す。
「こんな様子じゃ完全な休日なんてクロナさんにはなさそうね」
 ストリートミュージシャンを熱心に見学するクロナを見て、ユリアナは苦笑混じりに呟く。
 クロナが見学しているストリートミュージシャンはノリの良い歌を歌っていて、聞いた事のない曲だからきっとオリジナルなのだろう。
「素敵な曲ね」
「はい、クロもこういう感じの曲、大好きです」
 好き、そう言いながらきっとクロナの中では『勉強』の二文字が頭を支配しているのだろう。
「勉強熱心は良い事だと思うけど、休むときは休んだ方がいいわよ?」
 ユリアナの言葉に「はい、でもこれがクロですから」とにっこり笑って答えられ、ユリアナは次の言葉が出なかった。
「ユリアナさん、今日はありがとうございました、今日は楽しかったです」
「此方こそ、楽しかったわ。頑張って素敵なアーティストになってね」
 ユリアナはそういい残し、クロナと別れ、次の取材の場所へと歩き出した。


●癒し系子役・美森翡翠(fa1521)の休日
「次は癒し系子役で有名な翡翠さんの所ね」
 自分より遥かに年下の子供に『さん付け』はどうかと思ったが、これが性分なので仕方がない‥とユリアナは自分に言い聞かせた。
 最初、取材の話の時に翡翠から言われた事――それは翡翠の両親は出来るだけ顔を映さないで欲しいという事。
「あ、いらっしゃいませですの」
 翡翠の自宅前までやってくると、母親と一緒に庭に水を撒いている翡翠の姿があった。
「こんにちは、今日は宜しくね‥今日は何をする予定かしら?」
 翡翠の予定は夕方を希望していた、何故なら先ほどまで補講があったらしいのだ。仕事をしているせいで出席日数が危なかったらしい。
「今日は‥近くの川原で花火大会があるんです、先日の台風で延期になっていたんです、普通のお休みとは少し違いますけど、ユリアナさんも一緒にどうですか?」
 翡翠の申し出に「是非ご一緒したいわ」と答える。
「じゃあ、浴衣に着替えてきますの、少し待っていてくださいね」
 翡翠はそう言ってぱたぱたと可愛らしい走り方で奥へと走っていった。
「ユリアナさん、これをどうぞ」
 翡翠の母親から差し出されたのは葛餅と畑で取れたまくわうりを切って冷やしたものだった。
「この葛餅は娘と一緒に作ったんです、これを食べて寛いでいてくださいね」
 母親はそう言うと翡翠の着付けを手伝う為に奥の部屋へと向かっていく。
 それから数十分後、朝顔柄の可愛い浴衣を着て、髪の毛をお団子にしている翡翠が出てきた。
「わぁ、可愛いわ!朝顔の浴衣もよく似合ってる、それに‥お団子にするだけで結構雰囲気が変わって見えるのね」
 仕事では髪を流している事が多いからか、ぱっと見ただけでは翡翠と分からないほどだった。
「えへへ、ありがとうございますですの」
「そういえば、普段の休みはどう過ごしているの?」
「普段はお母さんと一緒にお菓子や料理を作ったり、庭をいじっている事が多いですの。TVに出る人でも料理が出来ない人っているでしょう?」
 翡翠の問いに「そういえばそうね‥私も得意というほどではないけど‥」とユリアナは答える。
「お仕事は大事だけど、お勉強もしっかりして、一人で生活できる基本知識はきちんと身につけてないと駄目‥ってお父さんにもお母さんにも言われてますですの」
 まだ13歳の翡翠だが、言っている事は大人以上に確りしたものだった。それに驚いてユリアナも「素敵なご両親ね」と呟く。
「あとは家族と一緒に行動する事が多いかな。旅行とか外食したり‥」
 両親の事を話す翡翠は凄く楽しそうで、見ているこちらまで顔が緩むほどだった。
 それから、翡翠の父親が運転する車で会場近くまで移動して屋台が並ぶ道を歩き始める。
「お店やっぱり多いね」
 翡翠は並ぶ屋台をキョロキョロと見渡して楽しそうに呟く。
「たこ焼き食べたいな。あと‥カキ氷とわたあめ、あと林檎飴」
 次々と食べたい物を言う翡翠に両親とユリアナはクスと笑みを零す。どんなに大人びた事を言っても、やはり子供なのだと実感させられる。
 色々と食べ物を買った後、花火がよく見れる場所まで移動して、九時になると同時に上がり始めた花火を見上げる
「綺麗ねー‥」
 家族と一緒に花火を見上げる翡翠を見て、ユリアナも小さく笑う。
「今日はご協力ありがとう、私はこのまま帰るわね」
「あ、もう帰っちゃうですか?」
「えぇ、明日も取材だから‥またお仕事でご一緒したときは宜しくね」
 ユリアナは言い残し、一日目の取材を終えたのだった。


●引きこもりさん、橘・月兎の休日

 取材二日目の最初は、昨日取材したユフィアと真紅櫻の従兄弟である人物だった。
「そういえば猫を大量に預けたとか言ってたけど‥引き取りに来てるのかしら‥」
 インターホンを鳴らしながらユリアナは小さく呟く。
「どちらさまですか?」
「えっと、ユリアナです、今日は休日の取材でお伺いしました」
「あぁ‥昨日は大変だったみたいですね‥」
 月兎はユリアナを自室に招きながら呟く。何故かその目は哀れみすら込めているように見えるのは気のせいだろうか?
「いえ、楽しかったで――――す?」
 部屋の中を見てユリアナは唖然とする。確か月兎の家には犬が一匹と聞いている。
 それなのに―――‥。
「な、何で猫や犬がこんなに‥?」
「ああ‥昨日チィが放っていったようで、引き取りに来ないんですよね」
 あぁ、やっぱり‥ユリアナは何となくそんな予感がしていたので驚きも最小限で済んだ。
「ソファにでもかけていてください、珈琲でいいですか?」
「え、えぇ‥気を使わせてしまってごめんなさ――いいっ!」
 ソファにかけながら答えると、猫達がいっせいにユリアナの膝の上に乗ってくる。一匹だったら「まぁ、可愛い」で済まされるのだが‥5匹同時にやってこられると結構ツライものがある。
「た、橘さん!やっぱり私もお手伝いするわ!」
 猫達を苦労して床に放し、ユリアナは月兎の所まで急ぎ足で向かう。
「おや、俺がしますからいいですよ?」
「いえ、手伝うわ、手伝わせてちょうだ―――いいい!?」
 ふと、顔に影を感じ、上を見ると冷蔵庫や食器棚の上から猫達が見事なダイブを見せる。
「気をつけてくださいね」
 月兎は流石に慣れているのか、猫達を簡単に避ける――しかしユリアナは見事にぶち当たられている。
「うぅ‥」
 結局、調理場にいても役に立たないことが判明し、ユリアナは大人しくソファ(膝に猫を乗せて)座っている事にした。
「どうぞ」
 手馴れた手つきで珈琲を渡してくる月兎に「ありがとう」と答え、ユリアナはそれを受け取る。
「随分慣れているみたいだけど‥もしかして自炊しているの?」
「えぇ、普段から自炊しています、今日の為に前日から煮込んだテールスープを作っているので、一緒に食べてくれると嬉しいです」
「わ、本当に?嬉しい!ぜひ食べたいわ」
 では用意してきますね、月兎は調理場へと向かっていく。
「凄いわね、料理なんて出来ない人かと思ってたわ」
 何気に酷い事を言いながらユリアナは料理が運ばれてくるのを待っていた。そして数分後、戻ってきた月兎はトレーにテールスープ、サラダ、ヨーグルト、その他にも合う料理を運んできていた。
「うわぁ、凄いわね」
「あ、サラダとヨーグルトは猫達が食べようとするので気をつけてくださいね」
 言いながら月兎はサラダ皿を上にあげ、猫達が食べないようにした。
「美味しい!」
 テールスープを一口、口に運び、ユリアナは感嘆しながら呟く。
「そうですか?それは良かったです」
 それからユリアナは月兎の作った料理を食べ、次の人の取材の時間になるまで色々な話をしていた。
「あ、もうこんな時間なのね、次の人の所に行かなきゃ‥」
 ユリアナが時計を見て慌てたように呟く。
「今日は楽しかったです、またご一緒できたらしましょう」
「此方こそ、それでは取材頑張ってくださいね」
 ありがとう、ユリアナは言葉を残して次の取材場所のところへ向かった。


●アクションスター・尾鷲由香(fa1449)の休日

「ごめんなさい、待ったかしら?」
 息を切らしながらユリアナが走って向かった先に立っていたのは由香だった。
「構わないよ、それよりOFFの取材、あたしなんかでいいのか?」
 由香は最初、スタントマンから始まったのだが今では有名なアクションスターとなっていた。
「あたしなんかって‥貴女は有名なアクションスターじゃない、謙遜する必要はないわよ?」
「そうか?」
「そうよ?あ、そういえば午前中はどうやって過ごしていたか教えてもらえる?」
 ユリアナの言葉に「そうだなぁ‥」と由香は考えこみ「格闘三昧だな」と答えた。
「格闘三昧?」
「そう、早朝ロードワークして、そのまま公園で禅を組んで‥朝って空気が澄んでるから気持ちいいぜ?あとはテコンドー等の型の練習だな」
「へぇ、体を鍛えているのね、凄いわ」
「そ、そうか?後は自分のジムの雑務をこなしてきたな」
 由香の休日はきっと体が休まることはないのだろう。
「これからは何をするの?」
「映画を見に行こうと思ってるんだ、付き合わないか?」
 映画?とユリアナが問いかけると「派手なアクションやいぶし銀の渋い映画だよ」と由香は答える。
「い、いぶし銀?」
「あぁ、演技やアクションの参考にする為にな」
 芸能人の休日って、体が休まることはないのかしら‥ユリアナは心の中でそう思いながら由香の話を聞き続ける。
「私も一応女優だし、演技勉強の為にご一緒させてもらうわね」
 そう言って二人は映画館へと入っていった。
「はー、やっぱり凄いな、そう思わないか?」
「そうね、今までこういう映画は見た事なかったけど、意外と面白いものなのね」
 最初は抵抗があったユリアナだったが、話のテンポの良さなどにすっかり嵌っていた。
「だろ?見た目で結構嫌がる人とかいるみたいだけどな、こういう映画の方が意外と面白いモンなんだよ」
 映画を見終わった後、昼食を食べる為に公園へと足を向ける。
「もしかして‥ご飯はそれだけなの?」
 由香が取り出した弁当箱から出てきたのは塩茹でしたブロッコリーと鶏肉だけだった。
「あぁ、いつもこんな感じだな。妹に美味しい料理を食べさせてあげたいけど料理が苦手なんだ」
 苦笑しながら由香が呟く。
「ちなみに何も予定がない時は妹と一緒に過ごすことが多いな、可愛いんだぜ?」
 妹の事を話す由香は表情が緩んでいる。
「飯を食ったら着ぐるみボランティアに行くが、ユリアナも飛び入りで参加できるか?」
 由香のボランティアという言葉にユリアナは目を丸くしている。
「あぁ、幼稚園や児童養護施設の慰問ボランティアだな」
 へえ、とユリアナは感心したように呟く。
 その後、向かった幼稚園で由香はくまの着ぐるみ、ユリアナは兎の着ぐるみで幼稚園の子供達と遊んでいた。
 それが終わったのは1時間後、午後3時半くらいだった。
「さて、あたしはこれから軽くロードワークいってマッサージとサウナ、イメージトレーニングって流れになるな、夜にはマニアックな格闘・武道ビデオ鑑賞か」
「凄いわね、幼稚園で疲れたりしなかったの?」
「んー‥あたしはやっぱり笑顔を見るのが好き‥だから疲れない、かな?子供達の笑顔見ると疲れも吹っ飛ぶぜ」
 そう笑って言う由香は本音なのか、表情から嘘は見えない。
「やっぱりえらいのね、凄いわ」
「はは、あたしなんてまだまださ、ユリアナもまだ仕事があるんだろ?頑張れよ」
 由香はそれだけ言うと、軽く走って別れた。


●家を継がないんだから苛めてしまいましょう
「ええと‥大丈夫?」
 最後の取材者・久遠(fa1683)の自宅を訪ねた所、今にも倒れそうな久遠の姿を発見した。
「大丈夫ですよ?確か今日は休日の過ごし方という事でしたね‥‥そうですねぇ‥そもそも私には休日なんてないのと同じですね」
 ははは、と渇いた笑いを見せながら呟く久遠、凄くつらそうだ‥。
「休日は実家に帰り‥というかお婆様に呼び出され、日本舞踊のお弟子さんの稽古をつけてますよ」
「結構大変そうなのね‥」
「結構‥いや、かなりハードです」
 ため息混じりに呟く久遠の姿を見て「重症だわ‥」とユリアナは久遠に聞こえない程度の小さな声で呟いた。
「でも実家と離れてるんだから、帰らないっていう方法もあるんじゃないかしら?」
 ユリアナの提案に「それだけはしてはいけません」と首を激しく横に振りながら答えた。
「そんな事をしてしまった日には、私自身が無事かどうか‥」
 久遠の言い方はとても冗談には聞こえない、それほどまでに『お婆様』は怖いのだろう。
「確かに家を継がずに芸能界に足を踏み入れた私が悪いのでしょうが‥コノママデハ過労死シテシマイマス。タマニハ休ミ下サイ、オ婆様」
 何故最後の部分だけが変な喋りなのだろうというツッコミはさておき、確かに彼に『休日』は存在しないようだ。
「毎日お仕事、休日は稽古付けなんて休まるときがないんじゃない?部外者の私が言うことでもないかもしれないけど、無理は駄目だと思うわ」
「はは、大丈夫ですよ。結構抜け出して休んでたりしますから」
 抜け出さないと休みにならないのか、ユリアナは何処か間違っている彼の認識に深くツッコミを入れることが出来なかった。
「抜け出す先は此処ですね」
 久遠が見せたのは京都ガイドマップ、真ん中あたりに紹介されている甘味処によく行くのだと言う。
「まぁ、男の私が甘味というのは変わっているのでしょうが、此処の栗羊羹と抹茶が大好きでしてー」
 よほど、その店が好きなのか色々と説明をしてくれたが、行ったことのないユリアナにはさっぱり分からなかった。
「でも私も一度は行ってみたいかも、甘味は好きなのよ」
 ユリアナの言葉に「是非行きましょう、今度案内しますよ」とにこにこ爽やか笑顔で言われた。
「そろそろ戻らないと‥」
 時計を気にしながら久遠が呟く。
「あら?今日は許可を貰ってお休みを頂いたと聞いたのだけど‥」
「えぇ、今日は夜からなんです」
 それは休みとは言わないわ、ユリアナは心の中でツッコミを入れた。
「ではユリアナさん、今回はありがとうございました、そのうち何かお仕事ご一緒できるといいですね」
「そうね、お仕事ご一緒出来る日を楽しみにしているわ」
 そう言って久遠を見送り、ユリアナも自宅へと帰っていったのだった‥。


 さて、芸能人の休日の様子をお送りする番組『OFFでGO!』の第二弾はいかがでしたか?
 休日と言っても色々な過ごし方があります、きっと意外だと思った方もいるのではないでしょうか?
 それでは、今回はこの辺で失礼します―――‥‥。


END