翠星‥夜空に消えた君へアジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
水貴透子
|
芸能 |
1Lv以上
|
獣人 |
フリー
|
難度 |
普通
|
報酬 |
0.2万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
11/02〜11/05
|
●本文
『あの時、確かに僕らは彼女と存在していた』
今回、撮影するのは『感動系』の映画です。
以下に大まかな話の内容と、募集概要を書いているので、ご参照ください。
※※※内容※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
身を裂くような冷たい風が吹く真冬。
その日に一人の少女が、この世から他界した。
名前を『翠(スイ)』と言い、星が好きな少女だった。
「私、死ぬの怖くないかも。だって星になるんだから」
そうおどけて言っていた彼女だったが、強がりなのだという事は皆知っていた。
誰だって望んで死にたいとは思わないのだから。
ある日、彼女と一つの約束をした。
「翠が治ったら、皆で星を見に行こう」
だけど、彼女は星を見に行くことなく逝ってしまった。
そして彼女と仲の良かった僕等は、果たされる事のなかった翠との約束を果たしに星を見に出かけるのだった。
今年は『翠星』という珍しい流星が流れる年、翠星は心から願う者の願いを一つだけ叶えるのだと言い伝えられている。
翠星、それがもたらす結末は‥?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※募集概要&追記※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
●出演者&スタッフを募集しています。
●出来たらでいいのですが『翠』役を演じる方を出してください。無理な場合は結構です。
●翠星は『死人を生き返らせる』という願いは叶えられません。会いたい、話をしたい程度の願いを叶える力しかありません。
●出演者は『翠』と仲の良かった友人などを演じていただきたいです。友人だけではなく、仲が良ければ何でも結構です。
●ラストは感動的に終わらせたいと思います。
●出演者は他界した『翠』の代わりに星を見に行くのが目的。
その他に良い案がありましたら、書いてくださいませ。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
経験地傾向:容姿・芝居
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
●リプレイ本文
「こら!走り回るな!熱があがるだろ」
走り回る子供達を見て廉条(真鳥・華月(fa1069))が叫ぶ。それでも走る事を止めない子供達にため息を一つ零した。
「あんまり悪い子だと先生に苦いお薬を出してもらうぞ?それとも痛いお注射がいいか?」
廉条が眼鏡を光らせながら言うと、子供達は本気にしたのか慌てて部屋へと戻っていった。いつもコレくらい素直だったらいいのに、そう思いながら仕事を再開する。
「あの子、亡くなったって聞かされたっけ」
廉条の頭を過ぎったのは一人の少女の存在だった。先天性の心臓疾患で長くは生きられないと言われていた少女、周りに心配を掛けまいと無理して笑っているのが一目瞭然だった。
「もうすぐ‥翠星の日か」
何か一つだけ願いを叶えてくれるという奇跡の星。願わくは皆が元気で退院していって欲しい、廉条は青く澄み渡る空を見上げながら小さく呟いた。
「本日はお忙しい中をありがとうございます」
丁寧に頭を下げるのは珊瑚(那由多(fa4832))だった。隣には娘の晶(橘・朔耶(fa0467))も立っていて母と同じように丁寧に頭を下げている。今日は一年前に他界した水里・翠(真紅櫻(fa4961))の一年忌の法要だった。翠と親しかった人物が集まって涙を流している。
「お母様、お姉様、おはようございます」
そう言って挨拶をしてきたのは翠の担任でもあった椎名(椎名・硝子(fa4563))だった。「おはようございます、先生も来てくださったんですね、ケホッ」
そう言って咳き込む珊瑚を見て晶は慌てて「母さんは奥で休んでて、後は僕がしておくから」と言いながら珊瑚を奥の部屋へと行くように促した。
「お母様、具合が良くないのね」
椎名が言うと晶は首を縦に振った。翠が他界してから、珊瑚は責任を感じているのか体調を崩しがちになっていた。
「私は先に席に着かせていただくわね」
椎名は言い残すと席へと向かって歩き出した。それから一周忌の法要が終り、翠と縁ある人物だけを晶が呼び止めた。
「翠ちゃんと約束していた星?‥」
呟いたのは病院で翠と同室だった篠宮(各務・聖(fa4614))だった。
「うん、元気になったら見に行こうって約束してたんだけど‥約束を果たせないまま翠は‥‥だから」
「翠ちゃんの変わりに碧(角倉・雨神名(fa2640))たちが見に行くんだね」
集まった人物に反対者はいなく皆の都合の合う、次の土曜日に行こうという事になった。
「綺麗ね、晶」
夜空を見上げながら言うのは珊瑚だった。晶は「そうだね」と短く言葉を返した。椎名も碧も篠原も‥この場にいる誰もが翠を思い涙が出そうになるのを堪えていた。
「そういえば‥翠星は願いを一つ叶えてくれるんだって聞いたよ」
重苦しい沈黙に耐え切れなかったのか、碧が小さく呟いた。
―‥願い、その言葉で全員が思ったのは翠の事だった。理由はそれぞれだったが、翠と話したい―‥そう全員が願った時、翠星が奇跡を起こした。目の前が眩く輝いたかと思うと、その光の中心に立っていたのは‥翠だった。
「す‥い‥?」
珊瑚が呟きながらふらふらと歩み寄る。
「久しぶりだね、ママ」
翠は生前と変わりない笑みで答える。その笑顔に珊瑚は涙を零し、その場に座り込んだ。「ごめんなさい、貴方は私を恨んでいるでしょうね‥」
珊瑚が口元に手を当てて呟くと「ママを恨む?何で?」と翠がキョトンとした表情で問いかけてきた。
「病気を理由に貴方の世話を晶にやらせていたし、丈夫に産んでやれなかった罪悪感で貴方を向き合って話もしなかった駄目な母親だったもの‥」
珊瑚の言葉に翠は座り込み「そんな事ない‥」と呟いた。
「私はママに感謝してる、長く生きられなかったけれど私、幸せだったから‥だから‥そんなに自分を責めないで、ママ」
そう言い終わると、次に翠に近づいてきたのは篠宮だった。篠宮は翠と病気こそ違うが、命に関わる危険な病気だった。翠が死んでしまうとは知らずに『星になれる』という言葉に苛立ちを感じ、酷い言葉を投げかけて別れたのだった。それから一年経って謝ろうと病院を訪れた時、聞かされたのは翠が死んでしまったという残酷な事実だった。
「葵ちゃん‥」
「‥翠ちゃん、ごめん。ごめんね‥。翠ちゃんが言った言葉、諦めていたからこそ言えたんだね‥知らなくて‥ごめん。もっと一杯話したかったな‥」
グス、と鼻を啜りながら言うと「いいよ、もう」と言葉が聞こえてきた。
「私は葵ちゃんを嫌ってなんかないよ。ただ仲直りしたかったの」
「翠ちゃん‥もう少し待ってて、翠ちゃんの所にもうすぐ行くから‥そしたら今度こそ友達になって‥一杯話そうね‥」
篠宮はそう遠くない自分の未来を思いながらにっこりと笑み、涙を流しながら笑って見せた。
「うん‥葵ちゃんと話せる日を楽しみにしてる。だけど‥ゆっくり来てね」
「翠さん‥」
声の方に視線を向けると、そこに立っていたのは椎名だった。手には渡すことの出来なかった卒業証書が持たれている。
「これ‥本当は法要の時に渡したかったのだけど、渡しそびれちゃって‥」
椎名が渡そうとすると「先生、ここで私の卒業式をしてください」と翠から言われる。突然の申し出に驚いたが「‥そうね」と呟いて、翠だけの卒業式をする事になった。
「水里・翠、この者は中学三年の過程を‥終え、ここに‥卒業する事を、認める‥」
最後の方は涙のせいで上手く言葉が紡げなかったが、翠は満足そうに卒業証書を受け取った。
「翠さん‥‥先生ね、翠さんの担任でいられた事、誇りに思ってるの‥ありがとう」
そう椎名が言うと「私も先生が担任の先生で良かったと思ってるよ‥」と翠も泣きそうな声で呟いた。
「翠ちゃんっ」
翠の前に駆け寄ってきたのは同級生の碧だった。碧も体が弱く、症状は軽いものだったけれど翠と同じ病気だった。
「碧ね、翠ちゃんにもう一度会いたいって思ってたの、ぐすっ」
泣きながら「碧は翠ちゃんの元気になれなかったの?」と問いかけた。生前、翠の病気が治る事を応援していて「碧の元気を分けてあげるから、一緒に元気になろうね」と話していた。それにも関わらず翠は他界してしまい、碧は自分の元気を分けてあげられなかったのだと自分を責めていた。そのせいか翠が他界してから体調を崩しがちになっていた。
「翠ちゃん!碧、翠ちゃんの元気になれなかったのかなぁ‥」
そう呟いてしょんぼりする碧に翠は首を横に振って「そんな事ない」と言った。
「私、碧ちゃんから沢山の元気を貰ったよ?だからそんなに思いつめないで‥碧ちゃんは自分の病気をちゃんと治さなきゃ」
翠の言葉に碧は涙を拭い「‥うんっ」と笑顔で答えた。
「翠ちゃん、ありがとう。いつか‥いつかまた会おうね‥」
碧が言うと、返事は無かったが翠はにっこりと笑って碧を見ていた。
「お姉ちゃん‥」
最後に待っていたのは、入院中に翠の世話をしていた晶だった。
「ごめんね、私のせいで友達とも遊べなかったりして‥」
翠が少し俯きながら言うと「何を言ってるんだ!」と晶が少し大きめの声で叫んだ。
「僕は翠のお姉ちゃんなんだ、家族の為に何かをするのは当たり前じゃないか、お姉ちゃん、そう言う風に言われるのが一番嫌いだよ」
そう言って晶は手を伸ばす。翠は黄泉の国の人間、触れることも叶わなかったけれど翠には晶の手の暖かさが分かるような気がした。
「また何時か‥僕の所に帰っておいで‥‥今度は僕の子供として‥‥待ってるから」
「‥うん、ありがとう‥お姉ちゃん‥」
それから少しの間、翠と星を見ていた‥すると突然、翠の姿がスゥッと薄くなっていくのが分かった。
「‥皆、もう時間みたい。ありがとう‥‥またね‥」
そう言って消えていく翠の表情は満面の笑みだった。皆が涙を溜め、翠を見送る。やがて光が散り、跡に残されたのは夜の闇と静寂のみだった。
「皆さん、翠の為に本当にありがとうございました‥」
丁寧に頭を下げ、礼を述べるのは珊瑚だった。この時、夜空を一つの流れ星が流れた。まるで翠が別れを告げるかのように‥‥。
後日談だが、翠と再開してから碧と珊瑚の体調が少しずつだが、回復に向かっているとの事を人づてで聞いた―。
END