アナザーアジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
水貴透子
|
芸能 |
2Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
やや難
|
報酬 |
2.2万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
09/15〜09/17
|
●本文
突然連れて来られた異空間、彼らはどうやって脱出する?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「何なのよ、此処は‥」
真っ暗な場所で一人の女性が呟く。
昨日は普通に眠った筈だ‥もちろん自分の部屋で。
だけど、目が覚めたら真っ暗な場所に投げるように寝かされていた。
真っ暗な中で視界は悪い筈なのに、何故か自分以外の人間は見ることができた。
いや、見るというより、感じていると言った方が正しいのかもしれない‥。
そしてそれと同時に感じること――‥。
此処にいては危険だと、誰かが自分に訴えかけているような気がしてならない。
そして、連れられて来た人間達は『此処から出る』為に策を考え始めた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
●募集事項
◎映画「アナザー」では出演者の皆様を募集しています。
◎ジャンル的に言えば「ホラー」に部類されるほうかと思います。
◎出演する役、話の内容、全てを皆様にお任せする事になります。
◎何か質問があればユリアナに聞いてください。
(その際は別スレをたてていただけると有難いです)
●リプレイ本文
「‥ひっ、な、なに?此処‥」
真暗な中で怯えながら呟くのは若菜(桐沢カナ(fa1077))だった。しかし感じる気配は他にも数名あり「‥誰か、いるの?」と問いかけてみる。するとライターの火を点けながら「どうやら‥俺だけじゃなさそうみたいだな」と弘毅(榛原 瑛(fa5470))が呟く。
そのライターの火によって見えた顔は冬華(桜 美琴(fa3369))、天音(宝野鈴生(fa3579))、カリン(敷島ポーレット(fa3611))、悠(レイス・アゲート(fa4728))、そして双子の正樹(Iris(fa4578))と美樹(檀(fa4579))だった。
「どうやら‥これで全員のようですね」
悠が呟き「此処、何処なんでしょ、困りましたね」と言いながらにこにこしている。
「‥誰かに攫われた‥とか」
天音がポツリと呟く、その言葉に「なるほど‥何処か真暗な場所に閉じ込められているのかも‥」と正樹は言葉を返した。
「冗談、私は大学で論文を書いている最中に居眠りをしていただけなのよ?これが誘拐なら他にも沢山人はいたんだし、攫われるなんてありえないわ」
言いながらカリンはそっと手で床に触れてみる。
「床は‥よく分からない材質ね‥。揺れている感覚はないし船で運ばれているわけではなさそうよ」
「正樹!」
彼を呼ぶのは双子妹・美樹、わけもわからない場所に連れて来られているせいか信頼出来る者が傍にいないと落ち着かないようだ。そして、今の彼女の行動で「‥変ね」とカリンが呟いた。
「何が変なんだ?」
弘毅が問いかけると「今の彼女、結構大きな声で叫んでいたのに反響がないのよ、どれだけ広いのかしら?‥それとも壁の材質が特殊なものなのかしら」と一人ぶつぶつと呟いている。
結果、今いる場所がまともな場所でない事は確かである。
「で、でも普通に人がいてよかった‥一人だったらと思うと‥怖くて」
若菜が怯えながらも少しの安堵感を見せる。
「もしかしてこの中にさぁ‥後ろめたい事やってきた人いるんじゃない?だからこんな所に連れて来られているんだって、復讐よ、復讐」
若菜の言葉にその場の空気がざわりと変わる。
「そんな人を疑うのは良くないよ、此処から出るには皆で協力するしかないだろうし」
正樹の言葉に若菜は下を俯き、言葉を噤む。
「あ――‥」
ちらとらとライターの火がチラつき始め、オイル切れなのかふっと火が消えてしまう。
「くそっ!」
弘毅は舌打を共に呟きながら役に立たなくなったライターを思い切り投げた――のだが、壁に当たる音も何もしない。この場所は広いのかと言う事に弘毅はぞっと鳥肌が立った。
(「さて、脱出できるかお手並みを見せて、もらおうか‥精々俺の暇潰し程度には頑張ってくれよ」)
心の中で呟きながら冷たい笑みを見せるのは悠だった‥。
「え、あ‥火が‥火が消えちゃったじゃない!早く点けてよ!早く!はやく!」
火が消えると同時にパニックになるのは若菜、実は彼女の過去には恋愛関係のトラブルで人を一人死に至らしめている、死体は廃墟に隠し、まだ見つかっていない。その事実が彼女を恐怖に陥れていたのだ。
今、彼女は罪悪感から自らが死に至らしめてしまった友達の幻影を見ていた。
「あ、あはは‥ゴメン、そんなつもりじゃなかったのよ!」
突然叫び始めた若菜に「ちょ‥どうしたのよ」と冬華が若菜に問いかける。しかしパニック状態の若菜に冬華の言葉は届かない。
「だって、ちょっと押したらアンタが勝手に後ろに倒れたんじゃん!じ、事故だってば、わ、わ、私のせいじゃない‥やめて、やめて、ヤメテーーーッ!」
その絶叫と共に若菜の声はピタリと止まり、周りの人間に恐怖を与えた。
「ちょ‥っと今の子は‥何処にいったのよ、ねぇ、悪戯ならやめてよ?」
冬華が若菜に問いかけるが返事はない。その時初めて此処にいる全員が悟った、自らが危険な場所にいるのだと言う事に。
「どうなるのよ!私達!」
叫びながら冬華は弘毅にしがみ付く。
「おい、しっかりしろ」
がたがたと震える冬華に弘毅は安心するように抱きしめてやる。
「落ち着け、まず――‥どうにかして此処から出る方法を考えるんだ」
「でも‥一つだけいいですか?普通、どんなに暗くても目が慣れてくるはず‥それなのに‥考えたくはないけど‥此処って現実じゃ‥」
天音は言いかけて言葉を止める、自分でも信じられない話だからだ。でもこんな異質な現象は『普通』ではない所なら説明がつくのだ。
「正樹‥」
震えながら自分の服の袖を掴む美樹に「大丈夫だよ、何とかして出よう」と落ち着かせるように言葉を返した。
しかし、彼の内心はいらいらしていた。消えていく人、そして次は自分かも知れないという恐怖感――それが彼を苦しめている。
「‥‥美樹?」
突然、触れている筈の美樹の姿を感じない。その事でざっと全身の血の気が引き「美樹!何処だ!美樹!」と叫び始める。自分の半身への依存は表に出している美樹より内に秘めた正樹の方が強いものなのだ。
そんな彼に話しかけるものがあった。
「何言って‥るんだ?俺俺俺は変なんかじゃなああああいっ!」
彼に話しかけているのは‥異質な空間に漂う闇。
美樹が消えた‥この現実が彼の間違いなのだ――‥何故なら消えたのは‥。
「正樹!正樹!何処!?私を置いて何処に!?」
皆が美樹を落ち着かせようと宥める中、美樹はそれらを振り切って狂ったように泣き叫ぶ。
そう、消えたのは美樹ではなく、美樹を探す正樹の方だった。
「嫌!正樹――――っ!」
彼女の恐怖心が最高潮まで高まった時、若菜・正樹を飲み込んだ闇が美樹をも飲み込もうとする。
「や‥正樹っ!」
正樹の名を叫んだ時、目の前が少し明るくなり、その中に正樹が美樹を助けようと手を伸ばしていた。彼自身の思考は既に闇に飲み込まれていたが、妹を護る意識だけはまだ残っていたのだ。
「こっち‥だ」
正樹の案内に残された天音・美樹・冬華・弘毅の四人は光の方へと向かって走り出す。
「俺はこんな所で死んでしまうわけには行かない!無実の罪で失脚させられ、自らの命を断ってしまったアイツのためにも!」
弘毅は叫びながら走る。彼はエンジニアで明日は最新製品の発表日、これは彼が亡くしてしまった友人が作り上げたものだ。それを発表する事で弘毅は助けられなかっ友人に罪滅ぼしができると信じている。
「‥そうね、私も‥受け入れなくちゃ‥」
冬華は誰かに拒絶されるのが怖くて恋人を最近振った、大好きな彼に拒絶されるのが怖かったから、それなら自分から別れようと考えての事だ。
「‥自分を信じて、相手を信じなくちゃ‥何も変わらないんだわ」
冬華が呟くと同時に弘毅は足で何かを踏んでしまったことに気づく。それを拾い上げてみると先ほど投げてしまったライターだった。
「‥良かったよ、これが見つかって。これは大事な友人の形見だからな」
俺も向き合わなきゃ駄目だな、そう呟き二人はまた走り出す。そんな二人を見て唇を噛み締めるのは天音だった。彼女はシンガーソングライターで過去にスランプに陥ったことがあり、その時にドラッグに手を出してしまっていた。
だが、すぐにやめることが出来たので禁断症状などは出ていないが、罪も暴かれていない。
「‥此処から出る事が出来たら‥けじめをつけよう‥そうでないと良い曲なんて創れないから‥」
そして四人は正樹の案内によって闇から出る事が出来た――‥のだが‥。
「良かった。出られたわ、正樹!正樹――――?」
美樹が後ろを振り向くが自分の探し人はいない。出る間際に「先に行くね」という言葉を聞いたから先に脱出しているものだとばかり思っていた。
しかし、現実は正樹を置いて出てきてしまったのだ。
「いやああっ!正樹!正樹ぃぃっ!」
美樹は叫びながら再び闇の中へ行こうとするが、肝心の出口は消えており、闇の中に行く事は‥もうできないのだ。
「脱出できたのは‥これだけ‥」
天音は半分になってしまったメンバーを見て呟く。カリンも皆が脱出する前に学者肌で探求心に火がついたのか色々な事をしていた。
その中の一つ、闇に自分の血を与えてしまったことで闇を刺激し、思い出したくない過去をフラッシュバックさせながら消えていったのだ‥。
「今回は‥戻る奴と堕ちる奴の時間は結構離れていたな、まぁ‥此方としては楽しめたがな?ククク‥さて、次の来客はいつになるかな?」
悠、彼もまた闇に飲み込まれた一人なのだが、彼は闇を受け入れた為に闇の中を彷徨うことになった。無限にも続く闇の中、たまに迷い込んできた人間をからかっては暇を潰していたのだ。
悠は呟いた後、また闇を彷徨い始める。
それを後ろから見ていた女性(ユリアナ・マクレイン(fz1039))は「今回は仲間が沢山出来て嬉しかったわ‥」と妖しげに笑い、闇の中へ消えていった。
貴方は人に言えない事はないですか?
もし、あるのなら気をつけた方がいい。
闇が貴方を狙っているのかもしれないから――‥。
END