穴だー!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
水貴透子
|
芸能 |
2Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
2万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
09/15〜09/17
|
●本文
何故『穴』に入るのか?それは其処に穴があるからである。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ここに一人の若者がいる。
名前は知らん‥というより興味がない。
その若者は『穴に入りたくて仕方ないうずうず病」という奇病である。
壷の中、ダンボールの中、とにかく「穴」に入りたくて仕方ないのだ。
治療法は見つかっていない。
むしろ「穴に‥(略)」にかかっている病人なんか目の前の若者以外に見た事もない。
一応「未来在る若者」なのだからとカウンセリングを受けたが‥
さて‥どうカウンセリングしようか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
●募集事項
◎映画「穴だー!」では出演者の皆様を募集しています。
◎必須配役は「奇病にかかっている若者」と「カウンセラー」の2役のみです。
◎話の内容も決まっていませんが、出演者の皆様で素敵な話を創っていってください。
◎質問があればユリアナに聞いてください。
(その際は別スレをたてていただけると有難いです)
●リプレイ本文
「はー‥落ち着くー‥」
少し広いトイレ、そして便器の穴にはまりながらしみじみ呟くのは孝(ルーカス・エリオット(fa5345))だった。彼は『穴に入りたくて仕方ないうずうず病』という奇病に悩まされている(ちなみに悩まされているのは周りの人間)のである。彼は今、便器から感じる穴に至福の時間を送っていた(ちなみに指は鼻の穴に入っている)
しかし、トイレの外では孝の弟・晃(カナン 澪野(fa3319))と友人・友実(ブリッツ・アスカ(fa2321))が孝を病院に連れて行こうとスタンバイしていた。
「よし、打ち合わせ通りに行くぞ」
友実の言葉に晃は首を縦に振り、ドアを思い切り開く。もちろん孝はズボンは脱いでいたがパンツ(穴柄)は穿いているので問題なし。
「お兄ちゃん、ほら素敵な穴を見つけたよ」
そう言って晃が孝に見せたのは海水浴必須の浮き輪、それは見事な穴っぷりである。
「穴、穴‥穴だー‥」
「友実ちゃん!今だよ!」
浮き輪に釣られるようにトイレから出てきた所を友実が一本背負いで床に叩きつける。その隙に晃がトイレのドアを閉めて孝が再びトイレに入らないようにした。
「外に行こう、素敵な穴探しの旅だ!」
普通に聞けば怪しい誘い文句なのだが『穴に〜(略)』の患者である孝は怪しむ素振りを見せずに、それどころか「やっと穴の素晴らしさを分かってくれたんだね!」と勇み足で外に出て行く。
少し歩いた所で、工事現場に出くわし其処で働いていたお兄さん(伝ノ助(fa0430))は孝を引きつった表情で見ていた。
「あっ、あんたはあの時の!」
そう、お兄さんは以前孝に工事の邪魔をされ、工事は遅れ、近所に文句を言われ、挙句に減給までされるという悲惨な目にあっていたのだ。
「あの時はあんたのせいで大迷惑かけられたんだからな!此処は絶対に通さん、あっちを迂回してくれ」
工事中という看板を三人の前にドンと置き「絶対に通さない」と言い張って晃と友実は困ったような顔で、孝に穴お菓子(ドーナツ)を与え、何とか通してくれないかと申し出る。
「駄ー目ーだー!その男がどこぞの怪盗ばりのジャンプでまた穴に入るかもしれないからな。頼むからそっちの道から迂回してくれ」
頑として通してくれないお兄さんに友実が病院に行く為だと事情を話す。その際に晃が迷惑かけますと菓子折りを差し出し、それに気分を良くしたお兄さんは道をあける。
「‥奇病を治す為か‥分かった、早めに通り抜けてくれよ」
ため息混じりに呟き、三人は工事現場を無事に通り抜け――るはずもない。
「素敵な穴発見アターック!」
怪盗ばりのジャンプで穴に入ろうとする孝に「させるか!ご迷惑をお掛けしています看板アターック!」
馴染みの看板で穴を守り抜き「俺は戦ったぜ」と満足気に残念がる孝を見送った。
「あれ、でもこの先の病院って‥」
首を傾げお兄さんは「大丈夫か?」という顔で三人の後姿を見ていた。
「よし、このくらい掘ればいいかな」
道端で落とし穴を掘っている少年(メル(fa5775))は満足気に呟き、落とし穴を隠す草を置いて犠牲者を見る為に草むらに隠れる。
「そういえば何処に向かってるだろ?」
孝の疑問に二人はギクリと肩を震わせ「それは‥」と呟くと同時に孝が落とし穴にひゅー‥と音をたてて落ちていった。
「お兄ちゃん!?」
晃が叫ぶと「素敵な穴発見!穴は無償の幸せ!愛だね!」と下で孝は喜んで叫んでいる。
「驚かせるつもりで落とし穴を作ったのに‥喜ばれるなんて‥」
僕も入ってみようかな、と少年は穴の魅力に惹かれ「えいっ」と落とし穴に落ちていった。
「‥‥こんな素晴らしい場所だったなんて!教えてくれてありがとう!お礼に僕も一緒に行くよ!」
奇病拡大に友実と晃は頭痛を覚えた。
「おおおおおっ!」
孝は叫びながら蓋の開いていたマンホールに落ちる(しかし尻でつっかえる)
「晃!この穴は凄いよ!ワニがいる!ワニ!」
は?と孝が穴から出た後に下をみると確かにワニが口をあけて待っている。もし落ちていたら孝は胃袋という名の穴に落ちていたのだろうか。そしてそのワニの首輪には『松戸江ワニ子』という名札がつけられている。
「‥‥松戸江って確か‥」
向かっている病院だよな、友実は冷や汗を流しながら呟く。それからも色々な災難に見舞われていた。ダンボール箱が置いてあり、孝がそれに入ると同時にゴミ収集車がやってきて孝ごと回収しようとしたのだ。そのダンボール箱には松戸江医院という名が確り赤で記されている。
「おや、奇遇ですね」
そう言って話しかけてきたのは孝を理想の相方と信じて疑わない手品師(森ヶ岡 樹(fa3225))だった。彼はいつものように孝宅で盗み聞きをして先回りしていたのだ。
「今日はこれをあげましょう」
そう言って手品師は孝に大量の穴グッズをプレゼントする。しかし穴グッズを大量に持っていて余裕を見せた表情の彼を孝は『穴ライバル』として彼を見ている。
「穴は譲らないよ!」
孝はそう言ってぷいっと顔を背け、ずんずんと先に進んでいってしまう。
「あぁっ!待って!今日こそは手品の魅力を――!」
そう叫ぶが人の波に巻き込まれ、あえなく退場してしまう。
「そういえば‥さっきのワニについて蘇芳先生(千架(fa4263))に電話してみたんだけど‥偶然ですねの一言で終わらされちゃった‥」
そんなこんなで松戸江医院に到着した四人は待合室で大人しく待って――いるはずもない。
「嫌だあああっ!穴がなくちゃ生きていけない!こんな所から帰るうううっ!」
喚き散らす兄に晃は穴グッズで孝の機嫌が直るように色々な手を使う。
「‥こんな事するのは今日だけ、今日だけ、穴グッバイになるんだから、頑張れ僕!僕、やれば出来る子!」
晃は自分に言い聞かせてドーナツや五円玉を孝に見せる。
「どうぞ、お入り下さい」
やがて順番が来て四人はぞろぞろと診察室へと向かっていった。
「穴に〜(略)という奇病なんて‥面白いサンプルです」
クスクスと笑いながら呟く蘇芳に嫌な予感がしたが任せるほかすべはない。
「完全無穴状態にならせば治るかもしれませんね」
そう言って、蘇芳はパチンと指を鳴らすと看護婦に孝に耳栓・轡・鼻栓をするように指示する。そしてそれらを取らないように腕もがっちり縛る。
腕を縛り上げた所で蘇芳の背後と孝の頭の中に花畑が見え始める。ある意味、孝は命の危険にさらされていた。
「暴力は駄目ーっ!」
慌てて晃が止めに入るが「治療です」と冷たく言い放されてしまう。
「‥っつーか、腕だけ縛ればよかったんじゃないのか?」
友実のズバシ!なツッコミに蘇芳の動きが一瞬だけ止まるが「ふっ‥私にカウンセリングを受けている時点で貴方は穴(罠)にはまっているも同然なのです!」と高笑いをしながら叫ぶ。
「ちょおおっと待ったああああっ!」
ガシャーンと派手な回転で窓を突き破りながら入ってきたのは蘇芳に対抗意識を燃やす診療女医・可憐(美角あすか(fa0155))だった。
「お前は見るな」
友実は晃の目を覆いながら呟く。子供の教育に良くない格好を可憐がしているからだろう。
「ねぇ、ボク?どんな悩みがあるのかしら?お姉さんの方が治せると思うけどなぁ?」
背後に『うっふーんv』という文字が書かれた看板を背負いながら可憐は孝に色仕掛けでせまる。
「ちょっと‥うちの患者ですよ、手を出さないで下さい」
「あらあら、ショック療法なんて使う極悪医者がよく言うわ、この患者に必要なのは愛よ!さぁ、私の胸に飛び込んでいらっしゃ――」
「どさくさに紛れて何しやがる!」
友実が飛び蹴りを食らわしながら慌てて孝と可憐を引き離す。
「何するのよ!このデカチチ女!」
お前がそれを言うか!かこーんと二発目が炸裂する。
「そうですよ、こんな面白い患者はショック療法で色々な実験をするに限るんです」
「居直るな!」
蘇芳にもカッコーンとパンチが炸裂する。
「何をするんですか、もういいです、こうなったらみんなで穴に落ちるんです」
ぽちっとな、そう呟きいかにも怪しいスイッチを押すと同時に診察室の床が消え、地下室へと落とされた(ちなみに診察室にいた全員)
「穴だーーーっ!」
喜んだのは少年と孝の二人だけ――‥のはずだったが何故か医者二人も穴の魅力に虜とされていた。
「ほほう、これはなかなか‥」
結論、孝の『穴に〜(略)』は不治の病だと言うことが判明して、病院から帰った晃は閉所恐怖症・暗所恐怖症のほかにデカチチ恐怖症にも見舞われたとか‥。
「穴なんか狭苦しいだけじゃねぇか‥」
「じゃあ、皆も穴にはまる為に練習しよう!まずは浮き輪から!」
そう言って浮き輪を差し出してくる孝に「付き合ってられない」と二人は何度目になるか分からないため息を吐いたのだった。
END