LUNA −futureアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
5.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
09/13〜09/15
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●本文
「≪彼≫に残された人間としての人格――それが全てを希望へと導く」
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永遠の炎が≪それ≫に気づいたのは突然だった。
腐獣としての≪泰牙≫の意識も薄れ始めているというのに、何故か≪人間≫としての意識は薄れる気配はない。
それどころか、人間の≪泰牙≫の意識は日に日に強くなりつつあるのだ。
「どういう‥事だ‥」
眩暈のする頭を押さえて、永遠の炎が呟く。
「そろそろ潮時か、姫」
黒耀の言葉は永遠の炎の耳に届く事はなかった‥。
「姫、眠りより覚める時間です――‥泰牙はよく働いてくれた、姫の為に」
黒耀が能力を使い、リアを甦らせた――‥。
「お前一人に任せてごめんね?」
「いえ、姫の為ならば――‥」
「ありがとう、私が歩く道は滅びの道、それでもお前はついてくるの?」
今更でしょう、黒耀は少し笑みを浮かべて答えた。
※※設定※※
月鬼は生まれつき『月天子』か『月姫』―‥どちらかの加護を受けています。
月天子の加護を受けている者は『攻撃系』の能力を持ち
月姫の加護を受けている者は『防御系』の能力を持っています。
同じ加護を受けている者同士は、互いの力を合わせて連携技を使う事が出来ます。
※月姫+月姫
※月天子+月天子はOK。
※月姫+月天子
※月天子+月姫はNG。
相対する能力同士は力が反発しあい、うまく力が絡まらず連携は出来ません。
※能力はそれぞれの系統に反しないのであれば皆様で好きに決めて下さって構いません。
前回までに質問が出たこと(全部掲載はしておりません)
・能力系
◎防御以外の能力(補助・束縛)なども月姫の加護を受けた者が使用可能です。
◎自分以外の存在を腐獣に感染させずに使役する能力は月天子の加護を受けた月鬼が使用可能です。
(その際は使役する存在について詳しく考えていただくことになります)
◎連携技は二人以上でも可能ですが、連携技自体が体力を大幅に消耗するので三人以上と連携しても、上手く能力を扱えない場合があります。
◎連携技を繰り出した場合、術者双方が使う事が出来ます。
・腐獣
◎腐獣の外見は特に決まったものはありません。大きい腐獣から小さな腐獣まで存在します。
(感染した場合は、感染者の姿を維持しており、記憶・知識すべてを所有しています)
◎感染者は腐獣であることを隠す事が出来るが、本能である『破壊活動』を抑える事は無理であり、我慢できなくなった破壊活動で正体がバレる事が多い。
◎自然に生まれた腐獣は知識がないので特殊能力は持っていませんが、感染者は特殊能力を持つ事が出来ます。
◎感染者(人間)は腐獣と人間としての意識を両方持っており、人格が入れ替わる事もある。
◎感染者の遺体は例外なく塵となって消えてしまう。
◎自然に生まれた腐獣は複数行動は滅多にしない。
(仲間だと判別する知性もないので、複数で行動しても仲間割れする事もある)
◎感染者は『使役する』という特殊能力を持たせる事で腐獣を使役する事が出来る。
(ただし感染者は自我があるので使役されることは滅多にない)
・その他
◎普通の人間が持っている『月鬼』『腐獣』に対する認識は、普通の人間が『幽霊』の事を考えている程度。
◎月姫、月天子は法律にまでは介入する事はできない。
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●募集事項
◎映画「LUNA」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な必須配役は以下の通りです。
・泰牙(男性一名)
・黒耀(男性一名9
:月鬼(何名でも可)
ユリアナの配役はリアという純血の腐獣になります。
※他に適役がありましたら、そちらを演じていただいても結構です。
※設定などに疑問などを感じたら、NPCユリアナに質問して下さい。
その際は別スレをたてていただけると有難いです。
●リプレイ本文
「まだ‥眠り続けているのか‥」
朱櫻(ヴォルフェ(fa0612))は眠り続ける海唄(橘・朔耶(fa0467))を見ながらため息を吐き、そして文献室へと戻っていった。彼はここ数日文献室に篭っていたが大した手がかりは見つからない。
「せめて‥海唄の奴が歌っていた方が分かれば確実なんだろうが‥」
何度目になるか分からないため息を吐き、天井を仰ぐ。朔夜(月 美鈴(fa3366))は永遠の炎が過去に出没していないかを調べると言って何処かへと行ってしまった。
「お兄ちゃん、これ‥養護施設で見つけた前の施設長の日記よ」
琥珀(ユフィア・ドール(fa4031))が日記を朱櫻に手渡し、過去に月で起きた事について聞かされた。
「な‥によ――それ‥それじゃ‥どっちが悪だか分からないじゃないの‥」
琥珀は体をよろめかせながら呟く、そしてそれと同時に湧き上がる怒りという名の衝動。
「ちょ―――何処に行く気なん?」
水鏡(シヅル・ナタス(fa2459))が今にも月姫と月天子の所へ乗り込もうとする琥珀を慌てたように止めに入る。
「決まってるわ!二人の所に行って話を聞くのよ!」
「待ってください、この気配は―――」
月宮殿の入り口付近を見ながら呟くのは楓(美森翡翠(fa1521))だった。彼女は永遠の炎関連で人手がいるからと言って月姫から呼ばれた月鬼だった。
そして、感じた気配に琥珀は立ち上がり、戦闘体勢を取って正面玄関を目指した。
そして――今から数時間前――。
「私を―――殺めるというのですか?」
目の前の黒耀(ベイル・アスト(fa5757))に問いかけるのは泰牙(天霧 浮谷(fa1024))‥もちろん永遠の炎としての人格だった。
「貴方は以前、私に問いかけましたね。永遠の炎としての能力を十分に発揮する事ができないと――‥理由は簡単です。人にも腐獣にもなりきれない存在が、如何して永遠の炎として確立する事が出来ましょうか?」
泰牙の問いかけをまるで嘲笑うかのように呟く黒耀に「私を謀ろうとは‥さすが純腐獣の考える事は奇抜ですね」と泰牙は黒耀の後ろに立つリア(ユリアナ・マクレイン(fz1039))に視線を送りながら答えた。そして、それと同時に黒耀と泰牙は戦闘を始めた。
「今までよく姫の思惑通りに‥。故にその体だけは助けてあげましょう――あぁ、それと月ではよくも姫の居場所を奪ってくださいましたね」
黒耀は泰牙に「礼だ、受け取るが良い」と髪の毛を引っ張り、首を持ち上げ、憎悪と憤怒を込めて泰牙の胸を貫いた。
「‥ねぇ、月宮殿まで行きましょう、それも一緒にね」
リアは泰牙を指差しながら空間を裂き、月宮殿へと歩んでいった。
「懐かしいわ―――‥お前もそう思うでしょう?玄夜」
リアは黒耀を『玄夜』と呼び「ふふ、そんな顔しないで、冗談よ」と表情を崩しながら呟いた。
「‥何で、リアが此処にいるのよ――死んだ筈じゃ‥」
リアの姿を見て、その場にいた月鬼は驚きで目を見開く。それもそうだろう。リアは死んだという話を聞いていたのだから。
「‥全て貴女の思惑通りに進んでいるようで気味が悪いわね」
呟きながら姿を現したのは朔夜、そして水鏡も「‥うちかてただ時間が過ぎるのを待っていたわけやない‥」と自らの手をナイフで切る。ぼたぼたと流れ落ちる血液が次第に凝固していき、緋色の美しい剣へと姿を変えた。
「それは――‥?」
楓の問いかけに「うちの一族に伝わる秘伝や」と答える。自らの血液を必要とするこの技は水鏡自身の体も傷つける諸刃の剣なのだ。
「‥ふん、何だその面持ちは。過去の罪でも垣間見たか?」
黒耀の言葉に月鬼は激しく動揺する。
「如何して‥貴方がそれを――‥?」
琥珀の言葉に「せや、何で腐獣がその話を知っとるんや!」と水鏡も叫ぶ。
「如何して、か‥‥知りたくば月宮殿の二人に聞け」
「あの二人は汚いのよ、自分達に都合の悪い事は全て隠している、貴方達は月の過去を見ただけで全てを知ったつもりでいるのかしら」
リアの意味深な言葉に「え‥?」と朔夜が訝しげな目で見た。
「これ、あげるわ。もういらないから」
そう言ってリアが呟くと黒耀は担いでいた泰牙を月鬼達の前に投げ渡した。
「‥泰牙?」
それじゃ、ごきげんよう――そう言って去ろうとする二人に「待て!」と水鏡が斬りつけようと飛び掛った。
「‥これで二度目の命拾いだ、次は――ないと思え」
水鏡の頬を掠めたように黒耀は隠し持っていた鋭い短刀を引っ込める。
「黒耀、帰るわよ――月鬼の皆さん、永遠の炎――それが何なのかを聞いてみなさい、あの二人にね」
けらけらと笑いながら二人は月宮殿を去っていった。
「‥月姫たちがまだ‥何かを隠している――?」
琥珀が呟く間、楓は腐獣達によって壊された宮殿の修復に取り掛かった。
「戦闘終了後の回復完了、有機・無機物は問わない、私に修復できないものは――何もない」
楓が話し終わると崩れかけたドア、柱、全てが元通りに修復されていた。
「うーん‥此処、何処だ?」
あれから数時間後、意識を失っていた泰牙が目を覚ました。起き上がろうとする彼を琥珀が「動かないで、腐獣」と布衣術で自由を奪う。
「また腐獣かよ‥そんなあだ名、認めるわけないだろ!」
月鬼から色々と事実を聞かされた後、彼が叫んだ言葉がそれだった。
「大体、俺はそんな特別扱いされるような人間じゃないんだよ、俺は普通の平凡な不幸少年なんだよ!‥‥言ってて泣けてきた‥」
がくりと項垂れながら言う泰牙が嘘を言っているとは思えず、琥珀は首を傾げた。
「お兄ちゃん達はどうなっているのかしら‥」
「これ――‥どういう事だ?」
二人の悪しき魂が集まり、炎という形を成した
生きる意志強きゆえに激しく燃える炎
一つの炎は二人の魂が心を削り生み出し
二つの炎は二人が体を削って生み出し
三つ目は二人の命を削って生み出された
鈍色の月が輝く時
全ての力を併せ持つ者が
二人の命と共に その炎消していく
その罪深き二人 月鬼を導くものなり
二人の罪は消えない
二人の母なる大地 月を犠牲にしても
そして悪しき気から生み出された獣
これは全て二人が生み出したと言えよう
泰牙は楓が多少の記憶を消し、元の人間界へと送り出していった。
残された月鬼達は衝撃的事実を朱櫻から聞かされることになる。
「皆‥聞いてくれ、全ての元凶、それはリアではなく――‥」
彼の言葉を遮るように扉を開いて現れたのは、眠り続けていた海唄だった。
「なぁ‥変な夢を見ていたんだ」
海唄の言葉に「夢?」と水鏡が問いかける。それに答えるように海唄は話し始めた。
「わが子に歌と手を、一人に声と頭を、最後に意味と目を残してって母さんが言っていた‥それは確かに――‥リアを封印している場面で」
海唄の言葉に「え?」と朔夜が首をかしげる。
「あ、そういえば貴方もお疲れだったわね、何か手がかりを見つけたんでしょう?さっき言葉を止めていたから‥」
朔夜の言葉に「実は」と朱櫻が重い口を開き始めた。
「以前、海唄が歌っていた歌の全文、それと訳のようなものが書かれたものを見つけた‥恐らく‥いや、確実に月宮殿の二人が永遠の炎を生み出している」
その言葉と同時に「‥其処からは私が話します」と紅い着物を翻しながら月姫が現れた。
「永遠の炎、それは私と月天子が生み出したものです、残酷で無邪気な‥子供だった私達が生み出したものなのです‥」
月姫は泣き崩れながら話す。
「‥それに玄夜――‥いえ、今は黒耀と名乗っているのですね‥彼にも‥決して許されないことをしてしまった‥」
「黒耀が‥月鬼?」
確かに彼は月の過去の事を知っていた、そして月宮殿の二人に聞け、とも――。
「一体‥彼に何をしたんだ――‥?」
「それは‥私の口からはいえません‥それに‥腐獣の原初は‥月鬼が始まりだったのよ‥」
次々に今まで聞かされることのなかった事実という名の真実に月鬼はただ驚くばかりだった。
「私達を殺めても永遠の炎は消えない、けれど‥永遠の炎消えるとき、私達の命も終わります」
「‥月鬼達は今頃真実を聞かされている頃かしらね」
リアが永遠の炎を封じた玉を見ながら楽しそうに呟く。
「ねぇ、最後にもう一度だけ聞くわね――貴方はこのまま私についてきていいの?解放して欲しいなら‥解放してあげるわよ」
「姫、何度も言わせないで下さい、私は姫と共に歩めるなら破滅への道だろうが何だろうが構わないのです」
黒耀の言葉に「そう、ありがとう」とリアは満足気に呟き、眠る為に瞳を閉じた。
そして、リアが眠ったのを確認すると――。
「怖いのは私です、貴方にとって私は取り替える事の出来る駒に過ぎないのでしょう?きっと‥貴方は私すら簡単に切り離せるのでしょうね‥」
黒耀の呟きはリアに届く事なく、静寂の闇に飲み込まれていった。
END