ワンタッチアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
5.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
09/17〜09/19
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●本文
『何故か、此処は犬が出てくる‥無制限に』
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犬小屋、此処にある『スイッチ』を押すと何故か犬が出てくる。
電気を点けようとスイッチを押せば灯りが点くと同時に犬が何処からともなく現れる。
水道の蛇口を捻れば、水は出るが、犬も現れる。
此処で二日ほど暮らしているが、既に犬の数は20を超えている。
ワンワンキャンキャンガウガウワオーン、彼らの鳴き声に僕はおちおち寝る事が出来ない。
こんな部屋早く出てしまえばいいのだけど‥如何せん僕は大の犬好きだ!
こんな素敵な部屋、出て行くわけにはいかない!
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●募集事項
◎映画「ワンタッチ」では出演者の皆様を募集しています。
◎この映画で必要な必須配役は『犬小屋に住む少年』のみです。
◎他の配役は皆様で考えてくださいませ。
※何か質問がありましたらユリアナに聞いてください。
(その際は別スレを立てていただけると有難いです)
●リプレイ本文
「また増えたあああっ!」
朝早く、何処からか鶏の鳴き声が響く中――‥犬小屋に住む少年・航(九条・運(fa0378))の叫び声も響いた。
部屋のスイッチを押せば『今ならお得!』と言わんばかりに犬が一匹登場する。航は犬を飼うのも初めてな訳で慣れないながらも一生懸命世話をしていた。
「航〜!来てあげたわよ!」
ドアのインターホンをばしばし押すのは航の従妹・夢(千音鈴(fa3887))である。もちろん彼女がインターホンを鳴らす度に部屋に犬が出てくるのは言うまでもない。
「夢ネェ‥へるぷみー‥って言うか押すの止めてーっ!」
「何よ‥‥?」
夢は部屋の中に入って目を丸くする。其処には夢の天敵(弱みを見せるのが嫌なので隠している)である犬が入り浸っている。
(「な、何これ!」)
犬が嫌いな彼女は大勢の犬を見て、内心はパニック状態な為かスイッチで増えていく犬を見ても驚く事はしなかった。
「こ、こんなに沢山いたら‥そう!餌、餌が大変でしょ!大変よね!?私が買って来てあげるわっ!」
夢は航の返事を聞く前に部屋から出て行く。
「‥何しに来たんだ?夢ネェ‥」
開けっ放しのドアを閉めようとした時「‥大変そうだね」と隣人の千葉(長瀬 匠(fa5416))がドアから顔を半分だけ覗かせて話しかけてくる。はっきり言って怖い。
「ど、どーも‥」
「今日は沢山の犬に囲まれて食事もままならないキミにプレゼントがあってね」
そう言って千葉は分厚い赤身肉を一口大に切ったものを渡した。
「え!いいの!?今日の夕飯にしよう!ありがとな、千葉さん」
「いやいや、全然気にしないでいいよ‥ふふふふふ」
怪しげな笑みを浮かべて千葉は自分の部屋へと帰っていく。
「変な人かと思ってたけど、意外とイイ人じゃ――」
そこで航は言葉を止める。犬達から注がれた視線(の先は肉)に戸惑ってしまったのだ。
「え?ど、どうしたんだ?」
お前達、そう言いかけたが一斉に飛び掛ってきた犬達によって言葉は口から出る事はなかった。
「やめろ〜〜〜っ、それは俺の夕飯なんだああああっ」
しかし犬達は聞く耳持たずに丁寧に一口大に切られた肉を頬張り、後には皿と匂いだけが残っていた‥。
それをビール片手に向かいの住人・闘大(モヒカン(fa2944))が騒ぎを観戦する野次馬のように見ていたのを航は知らない。
一方、その頃の夢はといえば。
「でも航も一個だけは役に立ったわね♪秋田さん(明石 丹(fa2837))の働くコンビニの近くに引っ越すなんて♪」
これから足りないものがあったら買出しという名目で秋田さんに会いにいけるわ、夢は心の中でガッツポーズをして、コンビニの中へ入っていった。
「いらっしゃいませ」
コンビニの中に入ると秋田がにっこり爽やかスマイルで夢を出迎えた。
「これ下さい♪」
犬の餌をどさっとレジの前に置くと「犬が好きなの?」と秋田から問いかけられ「えぇ、もちろん!」と条件反射で答えてしまう(もちろん、この後大きな後悔をする)
「そういえば、前に航君と一緒にいるのを見たけど、知り合い?」
秋田からの再度の問いかけに『ヤバイ!変な誤解されてたらどうしよう!』と夢は心の中で叫び、解決策として「犬が大好きだから!」という嘘に至ってしまう。
「い、犬の世話が大変みたいで、最近あのこったら妙に痩せてきたような、そうでないような、どうなのかしら」
焦りで何が何やらの状態の夢に対して『結構切羽詰った状態なんだな、航君‥』と苦笑しながら呟いた。
「そうだ、俺はあと少しで上がりなんだけど一緒に航君の所に行かない?渡したい物もあるし」
デートのお誘いだわ!夢は心の中で一人妄想に入り『何をくれるのかしら』と妙な期待すら持っていた。ちなみに秋田が渡したい人物は『航』であり『夢』ではない事を言っておこう。
そしてさらに航はと言うと‥。
「これはどう言う事ですか!兄さん!」
航の前に仁王立ちで立つのは妹・灯(雨宮慶(fa3658))である。彼女は兄の心配をしてやってきたのだが、目の前の惨状に眩暈を覚えていた。
部屋は犬だらけ、そして兄の隣にはバスタオル一枚を巻いた女性・三虎(姫川ミュウ(fa5412))がいる。
「ようやく真人間になったと思っていたのに、コレじゃあ昔と変わりませんよ!?犬の世話で身を崩したり、女に現を抜かして勉学を疎かにしたり!」
不潔ですわーっ、灯はそう叫びながら部屋から出て行った。
「あーぁ、出ていっちゃったねー」
三虎は冷蔵庫の扉を開けて牛乳を取り出し、それを勝手にゴクゴクと飲んでいる。ちなみに格好は未だにバスタオル一枚のまま。彼女は勝手に航の部屋にやってきてはシャワーを浴びて、数匹の犬を連れてバスルームから出てくるのが日課となりつつあった。
彼女は航を男としてみていないわけではないのだが、甲斐性がないという認識があり諸々の行動に一切の躊躇いはない。
「早く服着て出てけよ!」
航が顔を赤くしながら叫ぶと三虎はにやっと笑い「何ならボクと航で新しい家族作ってみる?」と耳元で問いかける。
「‥三虎ぁ‥いい加減にしないと‥マジで襲うぞ?」
「きゃはははっ!顔真っ赤で言っても説得力ないね!」
けたけたと笑いながら三虎は服を着て部屋から出て行った。
「‥はぁ、マジで俺はツイてないのか‥」
犬を抱きしめながら航はため息混じりに呟く。
「よーぅ、邪魔するぞー」
そう言って部屋に入ってきたのは友人・エド(Rickey(fa3846))だった。彼は犬小屋の事は知らないから驚くかと思いきや「可愛いじゃねぇか!」と犬を抱きしめながらにっこりと笑った。
「でもこんなに犬を飼って大丈夫なのか?お前‥」
「や、スイッチ押せば勝手に出て来るんだよ」
そんな馬鹿な、そう言いながらエドがスイッチを押すとポンとチワワが現れる。
「そんな‥‥なんて羨ましい!俺ン所はペット不可だから飼えないんだわ、だから羨ましいけどな」
チワワに噛まれながらエドは「まぁ、お前の犬だからな。ちゃんと責任持てよー」と言いながら部屋から出て行った。
「‥‥なんて無責任な。出したチワワくらい連れてけ」
がく、と項垂れたとき「あけてー」と夢の声が響いた。その声にドアを開けると逆光で顔が見えにくかったが、何処かのヒーローに航は見えていた。
「夢ネェ‥‥と秋田さん?」
そう、ヒーローに見えたのはダンボールを抱えた秋田であり、逆光を浴びて登場という格好良い登場の割りに着ている服はコンビニの制服である。「やっぱりこんな事になってたか‥」とダンボールを抱えた秋田が苦笑しながら呟く。
「あ、はい。これ。俺から」
そう言って秋田はダンボールを航に渡した。ダンボールの中には犬の餌や試供品などがどっさりと入っていた。
「この部屋に住んでいた前の人も餌代に困っててさぁ、結局‥‥‥‥いや、何でもないよ?」
素敵な笑顔で意味深な言葉を残して「また今度犬と遊ばせてよ」と言って帰っていった。
「じゃ、私も帰るから!何か買出しとかあったら行くから遠慮なく言いなさいな♪でも秋田さんのいるコンビニに売ってないのは却下ね」
夢も秋田との距離がぐっと縮まったことでご機嫌なのか爽やか笑顔で帰っていった。
「‥結局何も変わらずか‥でもこいつらを捨てるわけにも行かないしな」
そう言ってダンボールの中から餌を取って犬達に与える。本音を言うと秋田が持って来てくれたダンボールで航は今月を乗り切ることができそうだった。増えていく犬達の餌代として仕送りがほとんどなくなり、仕送りまであと15日、バイト代が出るまであと10日を一万円で乗り切らねばならなかった状況なのだ。
だから、秋田の持って来てくれた餌がなければ犬ではなく、自分が飢え死にしていただろう。
「あ、俺のメシもある!シシャモかあ、美味いんだよな―――」
はっ、とシシャモに集まる視線に慌てて隠そうとした航だったが、時既に遅しでシシャモは大勢の犬に奪われてしまった‥。
「俺のシシャモオオオオオっ!」
「結局、航の生活に解決策は見つからない。
犬を見捨てるか、家賃三万円の犬小屋を出るかをしない限り。
でも大変だと言う本人が何故か楽しそうだからほっとくことにしましょう」
通りすがりのナレーター(ユリアナ・マクレイン(fz1039))はしみじみと語るのだった。
END