動物使い 拾弐アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 易しい
報酬 1.4万円
参加人数 7人
サポート 0人
期間 10/01〜10/03

●本文

「これは―――‥全てを終わらせる為の戦い‥」

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「ナギ!」

白の統括府から氷煉が戻り、イザナギの所へと走って向かう。

「やぁ、氷煉、そんな血相を変えてどうしたの?」

イザナギが問いかけると「どういうことなんです?」と氷煉は低い声で呟いた。

「貴方が炯都に施した術式、白の統括府跡にあった書物に載っていました‥あの術式の代償、それは――一時的な能力の低下ではありませんね?」

氷煉の言葉にイザナギはただ黙っており、言葉を返す事はしなかった。

「あの術に必要なもの、それは――‥術者の命、それもすぐに奪われるものではなく‥徐々に奪われていくもの‥答えてください!何故、炯都の為に命を捨てるようなことをしたのですか!」

「‥あの炯都と翡焔――‥似ているんだよ、僕とナミにね‥」

「では、ナミはどうするのです!あの術はナミの為にと考えていたのではないのですか?」

氷煉の言葉に「本当は分かっていたんだ」とイザナギはポツリと呟く。

「ナミが決して戻らないということは分かっていた‥甦らせても優しいナミの事だから‥僕の前から姿を消すだろう、それとも僕を罵るのかな‥何でこんな事をしたって‥」

「それと炯都の為に術を使う事の何の関係があるというのです?」

「‥炯都たちなら‥きっと僕とは違う答えを見つけれる。僕が決して見つける事のできなかった‥皆が幸せになれる方法を‥彼女は面倒臭がって認めないだろうケドね」

イザナギが呟き、氷煉の前から姿を消そうとすると「私はどうなるのです!」と叫ぶ。

「私は貴方の為に生きてきました、貴方が死んだら‥私はどうすればいいのです!」

「氷煉――いや、翡煉‥お前は全てが終わったら白に戻るんだ――僕が戻してあげる、だから僕に囚われず、ナミに囚われず、そして‥黒の事を忘れて幸せになるんだ」

それだけ呟くとイザナギは氷煉の前から姿を消した――‥。

※※

「あんなにストレートに突き放す事もなかったんじゃないのか?」

翠嵐がイザナギに問いかけると「彼女の僕に対する依存が強すぎる‥かつてのナミのようにね、そしてそれは命をも落としかねない」と寂しそうに呟いた。

「翠嵐――‥キミには人形使いとの争いが終わったらキミに黒を託す」

「めんどくせえな、そういうのは嫌なんだよ、俺は」

翠嵐が答えると「嫌なら黒の歴史を終わらせてもいい」とイザナギは決意したように呟いた。

イザナギ、彼の真意を知る者――それは今のところ、一人もいなかった。


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●募集事項
◎映画「動物使い」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回必要な『氷煉』『翠嵐』の二人です。その他は話に沿って好きな役を演じていただいて結構です。

※参加者の都合でツカワレと白の動物使いと二人一組にできない場合もあると思います。
 ですので、今回からは『二人一組』でなくてもOKです。
 ですが、相棒がNPCになると劇中の描写は出演者メインの視点になりますので、ご了承ください。

●動物使いの設定など

◎白の動物使いにはパートナーとなる『ツカワレ』が存在します。

◎『ツカワレ』を演じられる方は自分の戦闘形態になる動物をお書きください。動物の種類はPCの獣人の動物以外でも構いません。
例)羊、山羊などBNOで存在しない獣人でも構いません。

◎白の動物使いとツカワレには絆が存在します。絆が深ければ深いほどツカワレの能力も上がります。

◎白の動物使いは限りなく人に近い存在ですが、人ではありません。

◎ツカワレは普段、人の姿をしていますが限りなく獣に近い存在です。

◎必ず白の動物使いとツカワレは二人一組にしてください。

◎それとツカワレは動物となってますが、別に虫だろうが魚だろうが構いません。

◎ツカワレの方はパートナーと繰り出す必殺技を考えていてください。
例)ツカワレがサンマだった場合→自身を焦がしていい匂いをさせて敵の動きを止める‥など極端な話、こういうのでも構いません。
ですが、必ず描写されるという訳ではありませんので、その辺はご了承下さい。

◎それとツカワレの戦闘時についてなんですが外見は半獣化と思ってください。
(流石に完全に動物になってしまうとお笑いになってしまいそうな気がするので)

◎動物使いとツカワレの絆が最高潮になった時に『超必殺技』が使用可能となります。

◎ツカワレには動物使いは必須ですが、動物使いにツカワレは必須ではありません。
契約を済ませていない動物使い、まだ覚醒していない動物使いなどがいますので。

◎黒の動物使いですが、魔と契約した場合、契約した魔が何らかの理由で消失しない限りは契約は続行になり、次の魔と契約できません。

※ですが、イザナギは黒の動物使いの中で一番強い能力の持ち主で、彼の場合は複数の魔を使役する事が可能です。
複数の魔を使役できる能力ゆえに、彼は黒の中で最強となっています。

※イザナミはイザナギが人工的に作り出した魔です。それ故にイザナギ以外と契約を結ぶことが出来ません。

◎動物使いにも特殊能力はあります、ですがほとんどがツカワレの戦力を上げる能力になります。

◎黒の動物使いが魔を製作する時に必要なのは、己の魔力が満タン状態なのと、魔を生み出す赤い月が出ている事の二つのみです。



※プレイングの書き方※
例)動物使い
配役:白の動物使い
役名:水貴
一人称:私
二人称:〜さん
口調:です、ます、でしょうか?
対となるツカワレ:太郎
(出来れば台詞例も書いておいてほしいです)

例)ツカワレ
配役:ツカワレ
役名:太郎
一人称:俺
二人称:お前
口調:〜だ、〜じゃねぇ?
対となる動物つかい:水貴
(出来れば台詞例も書いておいて欲しいです)

‥‥と上記のようになりますが、あくまで例ですので皆様の書きやすい書き方でOKです。

●今回の参加者

 fa0467 橘・朔耶(20歳・♀・虎)
 fa0612 ヴォルフェ(28歳・♂・狼)
 fa4031 ユフィア・ドール(16歳・♀・犬)
 fa4264 月白・蒼葵(13歳・♀・猫)
 fa4265 月白・緋桜(13歳・♂・猫)
 fa4728 レイス アゲート(26歳・♂・豹)
 fa5757 ベイル・アスト(17歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

「‥‥まるで、統括府の研究施設と同じ空気だな」
 イザナギに阿修羅のいる人形使い拠点の地を教えてもらい、翡焔(ヴォルフェ(fa0612))は偵察に来ていた。
「警備は‥‥大した事はなさそうだが‥‥罠、という事も考えられるか」
 見つかっては厄介なので翡焔は黒の本拠地に戻っていった。


「私は絶対に嫌です!」
 黒の本拠地戻ると、イザナギと氷煉(ユフィア・ドール(fa4031))が言い合い‥と言うより氷煉が一方的にイザナギに詰め寄っていた。
「‥‥何があったんだ?」
 翡焔はイザナギが消えた後、元気のない氷煉を心配しながら炯都(橘・朔耶(fa0467))の所へ向かっていった。
「氷煉とイザナギが何か話していたみたいだけど、どうかしたのか?」
 翡焔が問いかけると、その問いに答えたのは炯都から少し離れた煌夜(ベイル・アスト(fa5757))だった。
「あの、その‥‥生き返らせた秘術‥‥あれはイザナギの命を代償として奪うものだったらしいです‥‥」
 ちらりと炯都を見ながら煌夜は小さく呟いた。
「イザナギは‥‥炯都、さんに‥‥自分達では選ぶ事の出来なかった未来を期待しているみたいです」
 母様ではなく『炯都さん』という言葉に翡焔は少し驚いた顔で炯都と煌夜の顔を見比べた。羅喉を貫き、死に至らしめたのは紛れもなく自分。その罪悪感から煌夜は炯都に対してどういう風に接していいかが分からないのだ。
 そんな煌夜の気持ちを察したのか炯都はフッと笑って「煌夜」と『龍』ではなく、本名で呼ぶ。
「そないに面倒な事を媽媽がやると思うか?」
 それはつまり自分を『母』として扱っていいという合図にも煌夜は思えた。


「いいのか?氷煉をちゃんと納得させないで、時間ないのは分かっているが‥‥後追いしそうだぞ?」
 氷煉との会話の後、イザナギはナミが生前使っていた部屋に一人座っていた。その表情は体中を走る痛みを堪えており、とても険しいものだった。
「‥‥いいんだ、このままじゃ氷煉は僕の為に死ぬ。それに黒はキミに任せていいだろう?」
 その言葉に翠嵐(レイス・アゲート(fa4728))が頭を掻きながら「任せる、ねぇ?」と呟く。
「いきなり言われても困るんだが‥‥第一俺みたいないい加減な奴に仲間がついてくるか?」
 少し考えさせてくれ、と翠嵐は困ったように笑いながら答えた。
(「‥‥俺に人形使いの血が流れてるなんて知ったら‥‥黒を任せるなんて言わないんだろうな」)
 翠嵐が心の中で呟き、フッと笑う。
「一つ、言っておくよ。僕はキミが何者なのかも知っている。その体に流れる血についても知っている。その上で僕はキミに黒を任せたいと判断した」
 イザナギの言葉に、さすがの翠嵐も驚きを隠せない。
「ふふ、気づいていなかったか?キミは阿修羅に似ているんだよ」
「‥‥馬鹿親父と一緒にしないでくれ」
 その時――人形使いの気配を感じ、翠嵐は「敵襲だ、行ってくる」とイザナギを部屋に残し、敵のところへと向かっていく。


「この禍々しい気配は‥‥敵?」
 雛姫(月白・蒼葵(fa4264))が隣にいた白凪(月白・緋桜(fa4265))に向けて話す。
「ミレディを傷つけるもの、許さない」
 二人はミレディ‥つまりレイを傷つける存在を滅する為に現れた敵の方へと走っていった。


「炯都」
 現れた敵の気配に翡焔が炯都と煌夜を見ながら低い声で呟いた。
「僕は、母様の為なら躊躇いはしません。その結果に僕が嫌われようと、それが母様を生かす事に繋がるのなら‥‥僕は、母様のもう一人の姉もこの手で―――」
 倒す、煌夜の口からその言葉が出なかった。
「煌夜、私がお前を嫌うなんてありえへん、九耀大姐も大事な家族やけど‥‥大事なモンが何かは私も知っとるから」
 炯都の言葉に「ありがとう」と呟き、煌夜も戦いへと向かっていった。
「翡焔、九耀大姐と遊んでおいで‥‥」
 炯都は翡焔の能力を解放し、戦闘へと向かった。


「炯都を返してもらう!私に残された最後の家族なんや!」
 襲ってきた敵を見て誰もが「やっぱり」と呟く。やってきた人形使いは雑魚数人、それを率いているのは九耀だった。
「お前が人形使いか‥‥?ならば、我がミレディの為に打ち倒すのみ!」
「そう、ミレディはもう二度と傷つけさせない」
 雛姫、白凪はそう呟きながら人形使いへと攻撃を仕掛けた。
「毎度毎度ご苦労なことだな!」
 翡焔は九耀へと攻撃を仕掛ける。
「ほざけ!私から羅喉だけではなく炯都も奪った罪人どもが!」
 九耀は翡焔に喚き散らしながら攻撃を繰り返す。
「いい加減にしろ!失う痛みを知りながら、何故奪う事でしか物事を進めようとしないんだ!」
 翡焔の攻撃に加わり、煌夜も九耀に攻撃を仕掛ける。
「貴方に母様が唯一の家族であるように、僕にとってもたった一人の母様なんです!それを‥‥奪われるわけにはいきません!」
 煌夜はツカワレの能力を最大にまで引き上げ、九耀を倒すように命ずる。
「龍!!」
 叫んだのは雛姫、煌夜の背後から今にも襲いかかろうとしている人形使いに気がつき、体を張って煌夜を庇った。
「雛姫さん!」
 煌夜は自分の代わりに受けた傷で雛姫が今にも絶命しそうなのを知る。
「貴方が死んでしまったら誰がレイを守るんですか!」
「‥お願いです‥‥どうか、ミレディには俺の事は黙っていてください、もうあの人が泣く姿は見たくないんです‥‥」
 だからお願い、雛姫はそういい残しながら絶命してしまった。
「‥‥ミレディ、ごめんなさい‥‥もう俺には貴女を笑わせてあげることは出来そうにないです‥‥」
 動物使いが死んでしまった事により、白凪にも死期が近づいている。
「さよ、な―――」
 白凪は呟くと同時に塵となって消えてしまった。そして彼らが死んでしまった事により、その遺体から物凄い光が溢れ出し、その場にいた人形使い、九耀以外を全て滅した、
「‥くそぅ、また‥‥また私は炯都を取り戻すことは出来なか――‥‥」
 九耀自身にも多少の深手を負い、帰還するという選択肢しか残されていなかった。
「‥‥九耀大姐――‥‥」
 去っていく九耀を見ながら炯都は複雑そうに呟いた。


「ナギ―――‥」
 人形使いとの戦闘から数時間後、姿を消していた氷煉が黒の本拠地へと戻ってきた。手に一冊の本を持って。
「氷煉?どうしたんだい?」
「答えてください、私は‥‥ナギ、貴方を失ってまでどうやって生きていけばいいのですか?」
 氷煉の言葉に「黒として生きた記憶は消してあげるよ」とイザナギは短く答えた。
「かつて‥‥ツカワレの『翡煉』を捨てて魔に落ちて『氷煉』となり、貴方に拾われたあの時から‥‥私にはもう他の生き方なんて存在しないんです‥‥」
 涙を零しながら呟く氷煉の言葉をイザナギは黙って聞いていた。
「だから‥‥許してくださいとは言いません、私は自分の命より、ナギ‥‥貴方を失う方が何十倍も、何百倍もつらいのです」
 そう呟くと同時に氷煉は白の統括府跡で見つけた禁呪をイザナギに向けて発動した。
「‥‥っ!氷煉!やめろ!この呪は―――」
「イザナミにも怒られました。こんな事をして貴方が喜ぶはずがない、と。でも私はそれでも構わない。だって‥‥これはナギの為にするんじゃないですもの、これは貴方を失いたくないという私のわがままから行うことです‥‥どうか、どうか」
 生きてくださいね、呟き終わり氷煉はその場に倒れた。
「氷煉!」
 イザナギのように完璧に術を覚えてから行わなかった代償だろうか、イザナギと同じ術を使いながらも氷煉は既に絶命している。
「‥‥馬鹿だ、お前は。僕がどんな思いでお前を切り離したか‥‥全く分かっていないっ、僕はもうナミを失った時のような思いはしたくなかった――っ!」
 眠るように目を閉じている氷煉の頬にイザナギの涙が落ち、まるで氷煉が泣いているかのように伝う。
 それを影から見ていたのは翠嵐だった。
「‥‥問題は、山積みなんだが――なんとか‥‥なるか?」
 ふぅ、とため息を吐き「責任は取らないとヤバいよな、うちの馬鹿親父の後始末をさ」と何かを決意したように拳を握り締めて呟く。


「翡煉が――――‥‥?」
 イザナギから氷煉が死に、そして自分に命を与えたと言う事を聞かされ翡焔は驚きで目を見開く。
「‥‥イザナギ、お願いです。どうか最後まで生きてください。それが‥‥翡煉の唯一の望みだから――」
 いい終わり、翡焔は部屋を出た。
「ここまでされたんじゃ、さすがに力を貸してやらなあかんなぁ‥‥」
 炯都は面倒そうに呟き、イザナギは苦笑している。
「今日は‥‥ゆっくり休もう、明日は人形使いとの決戦だから」


 そして、最後の戦いを迎える為に夜が更けていく。


END