山童草紙アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 4Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 11.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/02〜10/04

●本文

「ねぇ、一緒に遊ぼうよ」

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今日は祖母の所へ遊びにやってきた。

夏休みは父方の祖父母の所へ行っていて、母方の祖母の所へ来れなかったから連休を使ってやってきた。

「久しぶりだなぁ‥此処も」

見渡す限り、畑や山、都会のような便利さはないけれど、静かで気持ちが安らぐ。

「そういえば‥昔、山童を見たんだよな‥」

山童――‥それは子供の妖怪で悪戯好きで、だけど害はない。

昔、俺が子供だった頃‥山で迷っていた所を山童に助けてもらった記憶がある。

それを大人たちに話しても「夢を見たんだ」と言われ、誰一人信じてくれる者はいなかった。

「‥もう一度行ってみようかな‥あの場所へ」

もう俺は大人だ、子供の頃のように迷うこともない‥。

俺はもう一度「山童」に会いに行く事にした。


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●募集事項
◎映画「山童草紙」では出演者の皆様を募集しています。
◎必須配役はOPの「俺」と「山童」の二役のみで、他の役は皆様で話し合って作ってください。
◎何か質問がありましたらユリアナに聞いて下さい。
(その際は別スレを立てていただけるとありがたいです)

●今回の参加者

 fa0295 MAKOTO(17歳・♀・虎)
 fa0634 姫乃 舞(15歳・♀・小鳥)
 fa2321 ブリッツ・アスカ(21歳・♀・虎)
 fa2640 角倉・雨神名(15歳・♀・一角獣)
 fa3658 雨宮慶(12歳・♀・アライグマ)
 fa3846 Rickey(20歳・♂・犬)
 fa4287 帯刀橘(8歳・♂・蝙蝠)
 fa4371 雅楽川 陽向(15歳・♀・犬)

●リプレイ本文

「本当に来るのか?」
 明(ブリッツ・アスカ(fa2321))が都会で知り合った友人・祈(MAKOTO(fa0295))に問いかける。
「もちろん、一度田舎って来てみたかったんだよね」
 ワンピースをひらりと翻しながら祈は楽しそうに呟く。彼女は都会生まれの都会育ち、田舎という場所を知らないため、はしゃいでいる部分もあるのだろう。
「それに――明の言う山童(帯刀橘(fa4287))にも興味あったしね」
 明が「そっか」と呟くと「あれーっ!」と聞き覚えのある声が明の耳に入ってきた。
「咲(雅楽川 陽向(fa4371))!」
 咲というのは明の子供の頃から付き合いのある友人だ。悪友とも呼べる存在でもあった。
「ちょうど良かった‥‥最近で山童の噂を聞いてるか?」
「え?もしかして山童に会いに帰ってきたの?」
 咲の言葉に「まぁな」と短く明は言葉を返す。
「昔はよく山に行ってたけど、中学上がったあがりから山に行く時間がめっきり減ったから‥‥山童も寂しがってるかも‥‥」
 咲はシュンとしながら「これ持ってって!」と咲は明にキュウリを押し付けるように渡した。
「何でキュウリ?」
 祈がキュウリと咲を見比べながら問いかけると「確か‥‥山童の好物だった‥‥かな?」と答える。
「疑問系になってんじゃないかよ‥‥」
 そう言いながらも明はキュウリをバッグに直した。
「山童は夏は一緒に川で泳いだりしたけど、冬が近くなると山に戻る筈だから、今頃は山にいるんじゃないかな?」
 咲の言葉に明は簡単な礼を述べ、山童へ会う為に山へと向かって歩き出した。


「昔はこの辺の川でよく咲と一緒に遊んだんだ、もちろん山童もな」
 明が指差した方向には緩やかな流れの川があった。それを見た祈は「へぇ、夏に来た気持ち良さそうだね」と言葉を返す。
「誰?」
 突然声を掛けられ、二人が振り向くとアライグマの妖怪・ジョイ(雨宮慶(fa3658))が此方を蔑むような目で見ていた。
「知り合い?」
 祈が問いかけると「いや?」と明が答える。おそらく明が都会に行った後に現れた妖怪なのだろう。
「なぁ、山童が何処にいるか知らないか?」
 明が問いかけると「知らないわよ」と睨むような目で此方を見る。
「それに知ってたとしても教えてあげる義理なんてないもんね」
 ツンとした口調でジョイは明たちに答える。
「あんまり奥に行くのはやめたほうがいいわよ、暗くなると妖怪も増えるからね」
 どうなってもいいけどね、ジョイはそう呟くと山の奥へと姿を消していった。
「‥‥妖怪ってあんな感じの奴ばっかなの?」
 祈が問いかけると「さぁ‥‥俺人間だしな」と明も苦笑して答えた。それと同時に感じた別の気配。
「こんな山奥へどうしたのかにゃあ?」
 現れたのは猫の姿をした妖怪・猫娘(角倉・雨神名(fa2640))だった。
「あ、アンタも妖怪か?俺たちは山童を探して――」
 明が呟くと同時に猫娘はクンと鼻を鳴らす、そして「うん、悪い人じゃなさそうにゃ」とにっこり笑って山童探しを協力してくれると言った・
「山童くん、今日は何処にいるのかにゃあ?」
「そういえばさっきの妖怪は貴方の知り合い?ちょっと感じの悪い‥‥」
 祈が猫娘に問いかけると「ジョイちゃんにゃ?ジョイちゃんは人間に捨てられてからあんな風になっちゃったのにゃ」と悲しそうな表情で答えた。
「そう‥‥だったんだ」
 人間に捨てられたからあんなにも人間を蔑むような、哀しむような目でジョイは見ていたのだろう。
「う〜ん、今日は何処にいるのかにゃあ‥‥」
 猫娘が山童を探しているとき、背後から木霊(姫乃 舞(fa0634))が明と祈を迷わせるようにする―――のだが『子供』ではない明たちには術は効かなくなっていた。
「やっぱり大きい人間には術が効かないみたい‥‥」
 どうにかして自分に気がついてもらおうと色々な事を試すが『大人』には効かない術しか使えず、木霊はシュンと項垂れる。
「あの人達も私に気づいてくれないのかな?」
 木霊がいる場所からは死角となっていて猫娘がいる事までは気づいていない。その時、明の視線が木霊へと向く。
「‥‥誰だ?」
 木霊はまさか自分に問いかけたとは思わず、周りをキョロキョロと見渡すが、自分以外に誰もいない。
「あ、貴方‥‥私の事が見えるの?」
 木霊は言いながら明たちの前へと降り立つ。そこで初めて猫娘がいる事を知った。
「あ、貴方‥‥妖怪が見えるのね? 私‥寂しくて‥‥だからつい人間を迷わせたりとか悪戯しちゃっているの‥‥」
 そこで「ん?」と明は考え「もしかして俺が迷ったのって‥‥」と木霊に問いかける。
「そうそう、昔も‥‥って貴方があの時のっ?」
 木霊は驚きながら呟き「あの時はごめんなさい」と項垂れながら答えた。
「や。別にいいよ、今更気にもしてないから」
 明の言葉に「お礼に山童に会わせてあげるね」と木霊は笑って答えた。
「会わせてあげるって‥‥何処にいるか知ってるのかにゃ?」
 猫娘が問いかけると「コマちゃん(Rickey(fa3846))に聞けば大丈夫だよ」と木霊は答えた。
「コマちゃん?」
 明が問いかけると「狛犬のコマちゃん、結構それなりに物知りなの」と木霊が答えた。
 結構それなりと言う事は『物知り』ではないと言う事だろうか?


「それでワシのところに来たと言うわけか?」
 山中の神社にいた狛犬のコマちゃんはやってきた四人を交互に見比べながら呟く。
「おお、それにお主はあの時の小僧ではないか? 此処に来るのは久しいのではないか?」
 それでもワシにとっては瞬く間だがの、コマちゃん笑いながら呟く。
「コマちゃん、失礼にゃ、この子は女の子なのにゃ」
 猫娘が言うと「なんと!」とコマちゃんは本気で驚いたと言う顔を見せる。
「小僧ではなく娘だったか! それは失礼したのぅ、俺と言っておったから、すっかり小僧だとばかり思っておったわい」
 けらけらと笑いながらコマちゃんが言うと「ま。否定はしないけどよ‥‥」と少し落ち込み気味で答える。
「それより、山童が何処にいるか知りませんか? あの子は気まぐれだから何処にいるのか分からなくて‥‥」
 木霊がいうと「ふむ」と尻尾を一度振る。
「山童は童子‥‥つまり純粋な心を持つ者にしか見えん妖怪じゃ、見たところ、お主はもう大人になっておるようじゃが‥‥お主が童子の心を忘れていなければ再び会えるじゃろう」
 子供にしか見えないといわれ、明は少し落胆した表情を見せる。
「しかし、一度は会えておるのじゃから大丈夫じゃろう、お主はワシとこうして話す事もできるようじゃしな」
 コマちゃんは尻尾をふりふりさせながらにっこりと微笑む。
「山童はお主との思いでの中にいきておる、きっとお主しか知らぬ場所にいるじゃろ」
 検討を祈る、コマちゃんは尻尾を何度も揺らめかしながら猫娘、木霊と一緒に二人を見送った。


「最近は一緒に遊んでくれる人もいなくて‥‥寂しいですね‥‥」
 山童・空は川の中に足を入れて水を蹴りながら呟く。
「確か‥‥明には草笛を教えてあげたっけ‥‥」
 空が草笛を吹こうとしたとき、聞きなれた草笛の曲が耳に入ってくる。
「‥‥この曲、僕が明に教えた―――‥」
 曲の方を覗いてみると、大人になった明と見知らぬ人間が草笛を吹いている姿があった。

(「この曲を吹いたら、僕はすぐに駆けつけてくるからね」)

 子供だった明と交わした約束、それを覚えていてくれたことが嬉しくて空は瞳から涙を零した。
「明!」
 空が呼ぶと同時に草笛は止む、そして大人びた明が後ろを振り向いた。



 空、話したいことが沢山ある。
 都会でのこと、キミと会わなくなってからのこと。
 けれど、今は言いたい言葉が口から出てこない。
 もしかしたら、見つからないかもなんて思ってた。
 空は昔と変わらないけど、俺は変わってしまったと思っていたから。
 けれど――‥‥
 こうして、空と話をする事が出来て
 俺も変わっていないんだって思えた。
 何から言おう、色々言いたいことがあるけれど、まず最初に。

「久しぶり!」


「明みたいな人間がいれば、きっといつか妖怪と人間が一緒に暮らせる日も夢じゃなくなるかもしれないわね」
 コマちゃんに話しかけるのは、同じく狛犬の妖怪(ユリアナ・マクレイン(fz1039))だった。
「そうじゃの、明のような人間ばかりだったら、わしらもこんな奥地に住む事を強いられることもなかっただろうにの」
 コマちゃんは寂しそうに呟きながら、子供の心を忘れずにいてくれた明の事が嬉しくて空を見上げたのだった。



END