LUNA −heavenアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 4Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 11.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/05〜10/07

●本文

『永遠の炎が消える時、月姫と月天子の命も消える‥‥それすなわち―――』

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 二人の悪しき魂が集まり、炎という形を成した
 生きる意志強きゆえに激しく燃える炎
 一つの炎は二人の魂が心を削り生み出し
 二つの炎は二人が体を削って生み出し
 三つ目は二人の命を削って生み出された
 鈍色の月が輝く時
 全ての力を併せ持つ者が
 二人の命と共に その炎消していく
 その罪深き二人 月鬼を導くものなり
 二人の罪は消えない
 二人の母なる大地 月を犠牲にしても
 そして悪しき気から生み出された獣
 これは全て二人が生み出したと言えよう

※※

「きもちわる‥‥」

月姫の話を聞いた後、海唄が小さく呟く。

「そうね、確かに気持ちの良い話ではなかったもの‥‥具合悪くなるのも無理ないわ」

朔夜も海唄に言葉を返しながら呟く。海唄を心配しているように見える彼女も顔色が悪いのはきっと気のせいではないだろう。

「一つ‥‥いいか?永遠の炎が消え、月姫と月天子が消えた後――俺達はどうなるんだ?」

朱櫻が思い出したように呟く。

月鬼は月姫、月天子、必ずどちらかの加護を受けていて、そのおかげで能力を使う事ができる。

だが‥‥もし二人がいなくなった後は?

「うちらはどうなるんやろ?」

水鏡も呟き、視線だけを月姫に向けた。

「恐らく‥‥死ぬもの、能力を失い、ただの人になるもの――このどちらかに分かれるでしょう」

月姫の言葉に月鬼達は青ざめた顔で互いの顔を見合わせた。

「生きるか死ぬか、まるでゲームのような話だ――それにこの文を見てくれ」

朱櫻が呟き『鈍色の月が輝く時』から先の文章を指した。

「全ての力を併せ持つ者って――まさか?」

「恐らく‥‥泰牙――」

海唄の夢の内容、そして文献から知る事のできた真実、これが重なり合うとき物語は終局を迎える‥‥。


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●募集事項
◎映画「LUNA」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な必須配役は特にありません。
◎何か質問がありましたら、ユリアナに聞いてください。
(その際は別スレをたてていただけると有難いです)
ユリアナの配役はリアという純血の腐獣になります。

●今回の参加者

 fa0467 橘・朔耶(20歳・♀・虎)
 fa0612 ヴォルフェ(28歳・♂・狼)
 fa1024 天霧 浮谷(21歳・♂・兎)
 fa1420 神楽坂 紫翠(25歳・♂・鴉)
 fa2459 シヅル・ナタス(20歳・♀・兎)
 fa2640 角倉・雨神名(15歳・♀・一角獣)
 fa3366 月 美鈴(28歳・♀・蝙蝠)
 fa5757 ベイル・アスト(17歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

「どうせ生物なんて生きているなら何時かは死ぬモンだろ?」
 月姫の話を聞いた後、朱櫻(ヴォルフェ(fa0612))は興味なさげに自分が調べた結果を元に泰牙(天霧 浮谷(fa1024))の元へと向かう――のだが、ガクンと自分の膝が折れるのを感じ、床に膝をついた。
「‥‥‥っ‥‥」
 少し驚いたような、悟ったような、そんな顔をして店を出て行った。


「ショックが大きいな、確かに月姫&月天子の加護は受けているが‥‥永遠の炎が無くなるとそんな事になるとは‥‥」
 夜光(神楽坂 紫翠(fa1420))がため息混じりに呟く。
「まったくよね‥‥永遠の炎を作ったのが月宮殿の二人だと言う事だけでも驚いているのに‥‥」
 朔夜(月 美鈴(fa3366))は呟く。そう、永遠の炎が消えると月鬼の存在そのものが危ういという事に気づかされた。
「私もあるいは‥‥あの舞い散る木の葉のように‥‥」
 風花(角倉・雨神名(fa2640))が外にある木を見ながら小さく呟いた。
「でも‥‥月鬼という生物である以上、いつ死ぬかなんて覚悟しとった事やん」
 グラスに残っていた酒を飲み干し、水鏡(シヅル・ナタス(fa2459))は立ち上がり、外へと出ようとする。
「何処に行くんだ?」
 海唄(橘・朔耶(fa0467))が問いかけると「全てのキーパーソンは泰牙にあるんや」と泰牙を探しに出て行ってしまった。


「姫――覚えていますか?」
 隠れ家として黒耀(ベイル・アスト(fa5757))が用意した家の中で眠るリア(ユリアナ・マクレイン(fz1039))に問いかける。
「あの時も‥‥こんな雨の日でしたね」
 外を見ながら黒耀は呟く、そして思い浮かぶのはリアと出会った日の事。
「私がまだ月鬼で、初めて会ったあの日――あの日もこんな土砂降りでした」
 彼が玄夜という名の月鬼だった頃、とても優秀な月鬼だった。そしてその優秀さゆえに月宮殿から彼らの罪を聞かされた、それほどに黒耀は信頼されていたのだ。
 しかし‥‥彼は真実に絶望し、月宮殿から失踪した。ちょうどその日がリアの封印が解けた日だったというのは彼にとって大きな運命だったのかもしれない。
「貴方も全てに絶望してるの?」
 雨に濡れながら彼女は問いかけてくる。そしてその問いに彼は首を縦に振る事で返事をした。
 その日、玄夜という月鬼は消え――リアの血を受けて黒耀という名の腐獣が誕生したのだった。


(「貴女に嫌われているのは判っている、どうか元の貴女に戻って‥‥必ず幸せにおなりなさい」)
 夢の中で海風‥‥海唄の母親がリアに当てた伝言。それを言おうとした時に月姫からの衝撃的な話をされ、複雑な気持ちでそれを聞いていた。
「ちょっと行ってくる」
 海唄の言葉に風花も「私も行きます」と立ち上がった。いきなりな話を聞かされて彼女も大人しくはできないのだろう。


「なぁ‥‥いい加減オカルト宗教勧誘は飽きたんだけど」
 泰牙が面倒そうに呟く、彼の前には朱櫻、水鏡が立っている。
「悪いが、そういう事に反論している暇はないんだ。事情は簡単に説明してやるから大人しくついて来い」
 人気のない公園、そこで朱櫻が現在の月鬼の状況、そして泰牙という存在が如何に重要な存在なのかを話した。
(「‥‥俺って宗教団体の教祖になれと言われてるんだろーか」)
 その時、頭の中にキィンと耳鳴りのような音が響いた。それに気づいて「くそっ‥‥いいから、悪い子は寝てろって‥‥」と自分の中にいるもう一人の自分に言い聞かせる。
「‥‥何や、腐獣の意識を抑えられるまでになってるやんか」
 水鏡が多少驚いたような顔で泰牙を見る、その時に感じた気配に月鬼二人は眉をひそめた。
「朱櫻!水鏡!リアが来るぞ!」
 海唄がリアの気配を追ってやってきたのか、風花と一緒にやってくる。
「‥‥全く見苦しい奴らね、全てを聞いた後でも月鬼として生きるの? 何なら彼のように血を分けてあげてもいいわよ?」
 ちらりと黒耀を見ながらリアが問いかけると「ふざけるな」と朱櫻が短く答える。
「‥‥そう――黒耀、まずは泰牙を殺って、もうイラナイ」
 リアが呟くと同時に「了解」と答え、泰牙に向かって攻撃を開始する。
「姫、私は貴女の為なら如何なる事も成し遂げてみせましょう」
 その攻撃を朱櫻、水鏡が止め、風花が黒耀の動きを止めようと能力を使う。そして海唄はリアに向かって攻撃をする。
「何故だ!何故、お前はリアの為に其処までするんや!」
 水鏡が黒耀に攻撃しながら問いかけると「姫のためだ」と短く答える。
「姫が望むなら天候さえも変え、太陽すら落としてみせる‥‥為るべくして為るのではなく、為ると定められたものにしかなれない運命を破壊する事も」
 黒耀は能力を使い、雨を雪に変えて月鬼達を攻撃する。天候的に黒耀が有利な状況の為、為すすべもない‥‥そう思った時だった。
「悪いな」
 水鏡が己の血で作り出した紅い水晶のような剣、それで黒耀を貫く。
「たとえ、死ぬと決められた運命でも、変えられない運命だとしても、簡単に殺られるワケにはいかんのや」
 水鏡は黒耀から剣を引き抜く。
「‥‥あっちはどないなっとるんやろな」
 水鏡はリアと海唄を見ながら小さく呟いた。


「貴女は‥‥何故誰も信じない?何故‥‥あれほどまでに貴女を信頼している黒耀がやられても平然な顔でいられるんだ?」
 黒耀が水鏡の剣で貫かれた時、リアの表情に変わりはなかった。
「彼と同じように貴女に幸せになってほしいと願っていた者がいた、海風――俺の母だ」
 海風という名前を聞いた途端、今まで冷静だったリアの纏う空気がざわりと揺らめく。
「幸せに? そんなのは嘘に決まってるわ! 私が幸せになんて‥‥なれると本気で思っているの!?」
「君がどう思おうと構わない、だけど‥‥貴女を想っていた存在がいたという事を知っててほしかっただけだよ」
 呟きながら海唄はリアに背中を向け、朱櫻たちに「帰ろう」と呟く。
「ま―――っ」
 リアの言葉を最後まで聞く事なく、泰牙を連れて何処かへと行ってしまった。
 残されたのはリアと黒耀のみ。
「ひ、め――?」
 口から血を流しながら呻くように黒耀がリアに近づく。
「‥‥お前は私に何を求めるの? 何故、私の傍にいるの?」
 リアの問いかけに「‥‥‥‥」と黒耀は何かを答えることができなかった。
 全てに絶望したあの日から彼に残されたのは罪と孤独な女性の存在のみ。黒耀は言わない。リアのような存在こそ護りたい者だという事を。
 黒耀はリアに惹かれているが、月鬼の罪の意識からか、配下に甘んじてただ傍にいられるだけでいいと心の中で思っていたのだ。


「久しぶりにこの術、使うわね」
 朔夜は呟きながら「負担も大きいけど‥‥いくわよ」と術式を開始する。それは夜光に施されていた封印を解除する術。夜光の能力の大きさからか、術を発動すると同時に指が刃物で切られたかのように裂ける。
 それと同時に十本の色の異なる鎖が現れ、朔夜の指から滴る血が魔方陣に紋様を施した。
「この者に巻きついている鎖よ、姿を現せ‥‥」
 1の錠から10の錠まで消滅すると「全ての物よ、あるべき姿に戻れ」と夜光が呟いた。同時に眩いくらいの光を発し、術式は終了した。
「姉貴も頑丈に封印してくれたよな?」
 夜光が呟くと「仕方ないでしょう?」と疲れた顔を見せながら答えた。
「それより‥‥調子はどう?」
 問いかけると、夜行は手を握ったり放したりを繰り返す、そして。
「ん、何とか大丈夫そうだ」
 そう答えた。
「これで何とかなると想うけど‥‥甘いかしらね」
 朔夜は外の雨音を聞きながら小さく呟いたのだった。


「ちょっと放せよ! こんな所まで連れてきて、今更逃げねぇよ!」
 泰牙は掴まれていた腕を強引に振り払うと、キッと強く睨む。
「とりあえず、此処いろ。何かあったら呼びに来る」
 パシン、と障子を閉めると「けっ」と泰牙が僅かな抵抗を見せた。
 そして‥‥崩れ落ちる体。
「あ〜‥‥やっぱりな‥‥近いとは思っていたが‥‥」
 咳き込みながら朱櫻は呟き、己の掌を染める真紅に半ば諦めたような表情で呟いた。
「せめて‥‥全てが終わるまで戦えるだけの体力が持ってくれればいいんだが‥‥」
 そう呟いた朱櫻が意識を失う前に脳裏にうかんだのは‥‥家できっと怒りながら自分を待っているであろう最愛の人の顔だった。



END