動物使い 拾参アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 やや難
報酬 1.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/10〜10/12

●本文

「全てが終わるとき、彼らは何を思うのだろう?」

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目の前に重く聳えるのは人形使い達の本拠地であった。

「‥‥準備は、いいかい?」

イザナギが少し険しい表情で問いかける。

「俺はいつでも大丈夫だぜ、血が疼くな‥‥馬鹿親父のせいか」

翠嵐は呟き、自分の胸の辺りに手を置いた。

彼は今まで一緒に戦ってきた仲間に自分が阿修羅の息子であると言う事を話した。

それを話したとき、翠嵐は今まで生きてきた中で一番緊張した時間だったかもしれない。

だけど、仲間たちからの反応は「だから?」だった。

彼らにとって息子であろうが関係はないのだ。阿修羅は阿修羅、翠嵐は翠嵐だろう?そういわれて少しだけ、本当に少しだけだったけど『感動』という言葉を覚えた。

「僕も‥‥氷煉がくれた命、此処で終わらせるわけにはいかない。彼女の望みは――‥‥僕が生きる事だから」

イザナギの言葉に翡焔は少し笑む。

「煌夜、大丈夫ですか?」

今回は「私も同行させて」とレイも一緒にやってきた。もちろん彼女と龍・煌夜がいれば百人力だから誰も反対することはなかった。

「全てを終わらせたら‥‥僕は母様と一緒にダエグで暮らしたい。そのためにも‥‥」

最初は白と黒との戦いだった。

それから人形使いという共通の敵が現れ、白と黒は互いに歩み寄るということを知った。

「全てが終われば、また敵同士だな」

翠嵐の言葉に「そうだな。でも今までとは違う接し方が出来るさ」と翡焔が不敵に笑む。

最終決戦!



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●募集事項
◎映画「動物使い」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回必要な配役は特に存在しません。話に沿って好きな役を演じていただいて結構です。

※参加者の都合でツカワレと白の動物使いと二人一組にできない場合もあると思います。
 ですので、今回からは『二人一組』でなくてもOKです。
 ですが、相棒がNPCになると劇中の描写は出演者メインの視点になりますので、ご了承ください。

●動物使いの設定など

◎白の動物使いにはパートナーとなる『ツカワレ』が存在します。

◎『ツカワレ』を演じられる方は自分の戦闘形態になる動物をお書きください。動物の種類はPCの獣人の動物以外でも構いません。
例)羊、山羊などBNOで存在しない獣人でも構いません。

◎白の動物使いとツカワレには絆が存在します。絆が深ければ深いほどツカワレの能力も上がります。

◎白の動物使いは限りなく人に近い存在ですが、人ではありません。

◎ツカワレは普段、人の姿をしていますが限りなく獣に近い存在です。

◎必ず白の動物使いとツカワレは二人一組にしてください。

◎それとツカワレは動物となってますが、別に虫だろうが魚だろうが構いません。

◎ツカワレの方はパートナーと繰り出す必殺技を考えていてください。
例)ツカワレがサンマだった場合→自身を焦がしていい匂いをさせて敵の動きを止める‥など極端な話、こういうのでも構いません。
ですが、必ず描写されるという訳ではありませんので、その辺はご了承下さい。

◎それとツカワレの戦闘時についてなんですが外見は半獣化と思ってください。
(流石に完全に動物になってしまうとお笑いになってしまいそうな気がするので)

◎動物使いとツカワレの絆が最高潮になった時に『超必殺技』が使用可能となります。

◎ツカワレには動物使いは必須ですが、動物使いにツカワレは必須ではありません。
契約を済ませていない動物使い、まだ覚醒していない動物使いなどがいますので。

◎黒の動物使いですが、魔と契約した場合、契約した魔が何らかの理由で消失しない限りは契約は続行になり、次の魔と契約できません。

※ですが、イザナギは黒の動物使いの中で一番強い能力の持ち主で、彼の場合は複数の魔を使役する事が可能です。
複数の魔を使役できる能力ゆえに、彼は黒の中で最強となっています。

※イザナミはイザナギが人工的に作り出した魔です。それ故にイザナギ以外と契約を結ぶことが出来ません。

◎動物使いにも特殊能力はあります、ですがほとんどがツカワレの戦力を上げる能力になります。

◎黒の動物使いが魔を製作する時に必要なのは、己の魔力が満タン状態なのと、魔を生み出す赤い月が出ている事の二つのみです。



※プレイングの書き方※
例)動物使い
配役:白の動物使い
役名:水貴
一人称:私
二人称:〜さん
口調:です、ます、でしょうか?
対となるツカワレ:太郎
(出来れば台詞例も書いておいてほしいです)

例)ツカワレ
配役:ツカワレ
役名:太郎
一人称:俺
二人称:お前
口調:〜だ、〜じゃねぇ?
対となる動物つかい:水貴
(出来れば台詞例も書いておいて欲しいです)

‥‥と上記のようになりますが、あくまで例ですので皆様の書きやすい書き方でOKです。


●今回の参加者

 fa0467 橘・朔耶(20歳・♀・虎)
 fa0612 ヴォルフェ(28歳・♂・狼)
 fa4031 ユフィア・ドール(16歳・♀・犬)
 fa4487 音楽家(13歳・♂・竜)
 fa4494 悠也(13歳・♂・竜)
 fa4728 レイス アゲート(26歳・♂・豹)
 fa5757 ベイル・アスト(17歳・♂・蝙蝠)
 fa5825 仲間好色(10歳・♂・狼)

●リプレイ本文

「支配も暴力も、所詮は一時的なものでしかない‥‥それを知っていたからこそ、羅喉は」
 翡焔(ヴォルフェ(fa0612))が人形使いの本拠地を眺めながら小さく呟く。
「レイ(ユフィア・ドール(fa4031))、行きましょう、全てを終わらせる為に」
 煌夜(ベイル・アスト(fa5757))がレイに問いかけると「今日この日限りケモノとなりましょう」と静かに答えた。
「悪いな、俺の馬鹿親父が――」
 翠嵐(レイス・アゲート(fa4728))は少しバツの悪い表情で仲間に向けて呟く。
「別に気にしてないよ、ねぇ?風雅(音楽家(fa4487))」
 タカラ(仲間好色(fa5825))がにっこりと笑って翠嵐に言葉を返した。
「灼莉(悠也(fa4494))もそうだよね」
「‥‥今更、気ィつけるような間柄でもないやろ」
 炯都(橘・朔耶(fa0467))もクッと笑いながら本拠地内部へと侵入を始めた――。

 そこで九耀の気配を感じ、炯都は己を武器化し、全てを翡焔に託すことにした。
「宿星の魂刃、闇天に紅煌く斬刀に今ここに覚醒を祈り願う」
 炯都が呟くと同時に斬馬刀へと姿を変え、翡焔が確りと手に持つ。
「久しぶり――だな? えらく早いお出ましじゃねぇか、今まで影でこそこそやってたアンタからは考えられない事だな」
 翠嵐が内部に侵入すると同時に、姿を現した阿修羅と九耀を嘲るように呟く。
「いい加減、自分のしてきた事に責任とらねぇとな?」
「‥‥やはりお前は母親と一緒に消しておくべきだったな、篁嵐」
 母親、という言葉に普段は冷静な翠嵐が怒りに身を任せて攻撃を仕掛ける。それと同時に風雅、灼莉、タカラも攻撃を仕掛けた。
「母様の姉、それでも僕は迷わない、貴女を倒さねば母様が消えてしまうというのなら‥‥貴方を倒すことに‥‥躊躇いはないっ!」
 煌夜もレイとのコンビで阿修羅、そして自身を武器化した九耀に攻撃を仕掛ける。白の最強、そして遺伝子操作で造られた最強のツカワレ、この二人が敵に回るだけで阿修羅にとっては大きな痛手となる。
「篁嵐! お前になら人形使い全てを任せてもいいと思えるほどだったのに、残念だよ」
「その名前で‥‥イイ事なんか一つもなかったぜ、俺の名前は翠嵐だ!」
 得意の風系攻撃で阿修羅を攻撃していく。
「九耀! お前が阿修羅を止めるべきだったんだ、それを――」
 翡焔が斬馬刀を振るいながら叫ぶと『五月蝿い』と言わんばかりの攻撃が返って来る。
「お前がしている事、それは炯都、そして羅喉さえも哀しませる事ばかりじゃないか!」
 その言葉が九耀の一瞬の隙を作り、その隙を見逃さなかった炯都、翡焔、翠嵐、煌夜、レイ、風雅、灼莉、タカラ――全員による総攻撃で九耀が変化した武器は折れ、阿修羅も攻撃を受け止めきれずに致命傷を負ってしまった。
「馬鹿、な子――でも、お前が幸せなんやったら―――認めて、やっても、いいかな」
 九耀はそう言って不敵に笑み、その場に倒れて帰らぬ人となった‥‥。それを見た炯都はすぐさま変化を解き、既に息絶えた九耀を抱きしめる。
「九耀大姐を‥‥殺してまで‥‥それでも私は――」
 顔を俯かせた炯都、彼女の頬を伝うのは涙――。
 その時、地響きと共に建物が崩れ落ち始める。
「崩れるぞ! 早く逃げろ!」
 翠嵐が叫び、他の皆を先に逃がす、翠嵐は逃げる前に阿修羅の遺体に近寄り、彼がいつも身につけていたピアスを「貰ってくぜ」と小さく呟き、本拠地から脱出した。
 しかし――‥‥。
「危ないっ!」
 上から落ちてくる瓦礫から炯都たちを守り、翠嵐は怪我を負ってしまう。
「翠嵐!」
 イザナギが倒れた翠嵐に駆け寄る、しかし彼の怪我は軽いものではなかった。
「此処はもう無理、だ。早く、逃げ――ろ」
 父親のピアスを拳で強く握り締めながら翠嵐は覚悟を決めたように呟く。
「馬鹿なことを言わないで下さい! 此処まできて‥‥これ以上誰かが死んでいくのを見たくはないんです!」
 煌夜が叫び、全員同じ意見なようで険しい顔をしていた。
「馬鹿な奴らだな、さっさと逃げりゃいいのによ」
 クッ、と何処か嘲るような、嬉しさを感じさせるような、そんな表情で翠嵐は呟いた。


 そして、後日‥‥。

「カァムィイイイイッ」
 注射をしようとしている看護士から逃げるようにタカラが己のツカワレを呼ぶ。しかし、叫び空しくプスッと針が己の腕に刺さるのを見ることしかできなかった。
「さて、アンタも死んでないし、黒の引継ぎ話はナシ、でいいよな? 俺、そういうのむかねえからさ」
 翠嵐は長かった髪を切り、隠していた金色の瞳も曝け出す事にした、それは忌まわしかった人形使いの血と向き合って行く事を決めた彼なりの決意の表れだったのかもしれない。
「お父様、私は白と黒とが敵同士でなく生きていける、そんな世界を作ってみたいんです」
 それを必ず見届けてくださいね、レイはイザナギににっこりと微笑みながら言葉を紡いだ。
「そういやアイツらは?」
「アイツら?」
「ダエグの奴らだよ、くそ、何で俺はこんな重症なのにアイツらは軽症でさっさと退院していくんだよ」
 ぶつぶつと文句を言う翠嵐をイザナギとレイは笑いながら見ていた。
「それは、貴方が彼女たちを庇った結果でしょう?」
「庇ったんじゃねーよ、勝手に体が動いたんだ」
「ふふ、体が勝手に動くほど、大切な仲間だと認識していたんだろ?」
 イザナギがからかうように言うと「うるせーなっ! さっさと出てけ!」と布団を乱暴に被りながら叫んだ。


「母様! 何処ですか?」
 煌夜は新生白の統括府の代表長として、そして尚且つダエグの(仮)店長として四苦八苦する日々を送っていた。
「材料費、光熱費、あぁ、もうワケが分からなくなった‥‥」

「何や、えらい騒がしくなったなぁ‥‥」
 店の中で自分を探す煌夜を見ながら、炯都はしんみりと呟いた。
「炯都、息子に仕事全部押し付けるなんて母親として――」
「あかん、これから買出しやわ」
「ちょ、ちょっと待て――‥‥まさか、またサボるわけじゃ‥‥」
 翡焔の言葉に炯都はニヤ〜〜と笑いながら「サボらへんよ」と何かを企んでいるようなことを話す。
「私、これから旅に出るわ、いつか帰ってくるんで宜しく!」
「炯都〜〜〜〜っ!?」
 彼女らしい奔放さで旅に出た後、翡焔は煌夜にそれを話した。
「‥‥そう、ですか、母様と一緒に暮らせないのは残念ですけど‥‥母様が帰ってくるのはこの場所でしかないですから、僕はこの居場所を守りたいです」
 それに待つ楽しみもありますしね、そう言って煌夜は仕事を続け始めたのだった。


 白と黒、今まであった確執があるものの、これからきっと良い方向に向かっていけるだろう。
 互いの危機は、二つが力を合わせたことで回避できたのだから――‥‥。

「ほな、再見〜〜♪」




END