クロックアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1.6万円
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参加人数 |
7人
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サポート |
0人
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期間 |
10/11〜10/13
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●本文
「それは、巻き戻しという名の機能がついた‥‥特殊な時計」
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「これをあげるわ」
新装オープンしたアンティークショップ『レイラ』の前で、一人の妖艶な女性が僕・カイに手渡してきたのは、細工の施された箱に入った懐中時計。
「‥‥懐中時計? またレトロなモノですね」
「うふふ、それは貴方の役にたつわ、かならずね」
妖艶に笑み女性は「それ、時を戻せる機能があるのよ」と呟いた。
「時を―――戻せる?」
僕が懐中時計と女性とを交互に見比べながら問いかけると「そうよ」と答えてきた。
「受験生の貴方にはとても必要なものなのではなくて?」
「!」
そう、僕は受験生で大学の推薦をとる為にも今度のテストでは頑張らなければいけない身。
でも―――魔がさした万引きをクラスの落ちこぼれ・健に見つかってから大金ではないものの金をせびられている。
「‥‥それを使えば自分の汚点を消すこともできるわね」
女性は全てを見透かしたかのように呟くと「それはオープン記念にあげるわ」と言って店の中へと戻っていった。
「‥‥これさえあれば、僕の汚点を消せる‥‥」
僕は懐中時計を強く握り締めながら学校へと向かって行った。
「うふふ、言い忘れたわね。時を戻す度に‥‥大きな代償を支払わなければならないと言う事を‥‥」
言い忘れた、そういいながらも女性は悪びれた様子なく学校へ行くカイを見つめていた。
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●募集事項
◎映画「クロック」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な必須配役は『カイ』と『健』の男性二人のみです。
※他の配役は皆様で話し合って決めてくださいませ。
※謎の女性ですが、無理に謎を解き明かす必要はありません。
※何か質問がありましたらNPC『ユリアナ』に聞いてください。
(その際は別スレを立てていただけると有難いです)
●リプレイ本文
「人の欲望は果てしないもの、あの子はどれだけの時間を巻き戻すのかしらね」
レイラ(椎名 硝子(fa4563))は妖艶に笑むと、カイ(ごっつええ兄さん(fa6066))が今後どのように時計を扱うのかを楽しげに考えていた。
「ちょっと来いよ」
カイを呼び出してきたのは健(鳳雛(fa5055))だった。用件など考えることもなく容易に予想する事ができる。
「今週ちょっとピンチでよ、飯代とか出してくれる気ねぇ?」
やっぱり、とカイはため息を健に気づかれないようにもらした。朝、出会った時は健が無視したから助かったと思ったのに、やっぱりこうなるのかと思うと惨めで仕方なかった。
「バラしちまってもいいのか?」
カイが出し渋っていると健はイライラした口調で彼の弱みを呟く。
「‥‥‥‥コレ」
カイは諦めたように財布の中から千円札を二枚ほど渡す。
「あ? 何か間違ってね? 渡すのはこっちだろ」
そう言ってカイの財布を取り上げる。カイはギリ、と唇を噛み締めたまま健を下から睨みつけるような表情を見せた。
「‥‥何? 何か文句あんのかよ」
「‥‥え、べ、別に‥‥」
「こら! そんな所で何してるの!」
大きな声と共に現れたのは女性教師(ユリアナ・マクレイン(fz1039))だった。健は「やべ」と言いながら何処かへと行ってしまう。
「大丈夫? 何かあった?」
教師の言葉にカイは「‥‥いえ」と短く答え、靴箱へと移動した。そしてそこで目に付いたのはレイラから貰った『巻き戻し』の機能がついているという時計。
「‥‥これで朝に戻せたら‥‥」
カイは不安と期待に満ちた表情でネジをまわしてみる、すると――‥‥一瞬回りが暗くなったかと思うと、靴箱ではなくいつもの登校道に立っていた。
「本物、なんだ‥‥これで都合が悪くなったら時間を戻せばいいじゃないか」
それから少し浮上した気持ちで学校に行くと、何か違和感を感じるのだ。
「‥‥健っ‥‥」
目の前から此方にやってくる健に少し怯えた表情を見せ、身構えると健はカイではなく、後ろからやってきていた雨(角倉・雨神名(fa2640))で足を止める。
「よぅ、こないだのことをバラされたくなかったら――分かってるよな?」
健の言葉に雨はビクと肩を揺らし、五千円ほどのお金を渡していた。
(「どういう事? 何で雨が‥‥?」)
それから授業も身に入らなかった、確かにカイは健から逃れることが出来ていた。何故か万引きはカイではなく雨がしたものになっている。
そして‥‥友達達からも暴言などを吐かれ、時を戻す前の世界と何かが違っているのだ。
「おい、雨!」
全ての授業が終わった後、健に呼び出される雨を庇おうと立ち上がると「止めたほうがいい」と同級生のメル(メルトメル(fa6065))から話しかけられる。
「ああいうのは関わらない事が一番だよ、関わったら彼女の運命がそのままそっくり貴方に来ることになる」
メルは当然と言ったように教科書などを鞄に詰め込み、健と雨の二人を無視して教室から出て行った。
「こんなの‥‥納得出来るわけないじゃないか‥‥」
そう言ってカイはネジをまわし『巻き戻し』を行う。
「あら、今日も熱心に勉強しているのね。でも無理はしないでね」
どうやら『昨日の夜』に戻ってしまったようだ。目の前の問題集は昨日終わらせた記憶があるから‥‥。
母親(楼瀬真緒(fa4591))はいつも口癖のように『無理しないでね』という言葉を使う。けれど‥‥その言葉がカイにとって大きなプレッシャーになっているのを母親は知らない。
「大丈夫だよ、もうすぐで終わるから」
言葉を発して始めて何かおかしいことに気づく。声が高すぎるのだ。それに視線も低い。慌ててカイが鏡を見てみると、そこに映っていたのは――‥‥。
「うわあああっ!」
ガタン、と激しい音に母親も「どうしたの!」と慌てて駆けつけてくる。
「お、お母さん、僕、僕の姿が‥‥、こ、子供―――っ」
そう、鏡に映っていたのは紛れもなく子供のカイ(タブラ・ラサ(fa3802))だった。
「カイちゃん? どうしたの? 落ち着いて、ね?」
母親があやすように呟くと「時計‥‥時計がない、時計がないんだ」とぶつぶつ呟く。
「まったく、今日はもう休みなさい、ね?」
母親はカイが子供になっても全く動じることはない。
(「そうか、この世界はそういう設定になっているのか」)
次の日の朝、母親に起され「一緒に出かけますよ」と話しかけられた。
「どうしたの? 不思議そうな顔して‥‥ほら、早く着替えて」
母親に促されるまま着替えて外出する事になった。
そして、外出中に健と雨が仲良く話をしながら歩いている姿を見て、少し複雑なものだったが、心のどこかで安心した事も本当だ。
「カイ君!」
雨がカイを見つけ「ごめんなさいっ、私のせいで‥‥」と泣きながら抱きついてきた。
「‥雨、誰? その子」
健は見覚えのない子供を抱きしめる雨の姿に不審な目で見つつも問いかける。
「‥‥何でもないよ、ね、おねーさん」
カイが巻き戻しした事で、健も恐喝などせず、雨も普通の楽しい生活を送る事になった。
しかし、その平和で楽しい生活の中にカイは存在しない。
「私、貴方の事、絶対に忘れないから―――‥‥」
きっと、雨だけに記憶が残っているのは‥‥時計が起した気まぐれなのだろう。
その様子を水晶で見ていたレイラは「あらあら、だいぶ時計を使いすぎたようね」と楽しげに呟く。
「一体‥‥どれだけの代償を支払ったのかしらね‥‥でもそれが分かってて渡したんだけど」
人間って愚かよね、そういいながらレイラは聞こえてきたベルの音に気づく。
「あら。新しいお客様ね、今度のお客様はどんな物語を見せてくれるのかしら」
END