LUNA −hopeアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 5.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/15〜10/17

●本文

「私は――何を信じればいい? 何を信じれば救われる? 」

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「何で黙ってた!」

言葉と同時に朱櫻は強く壁にたたきつけられた。

それと同時に海唄の拳がずきずきと痛む。

事の始まりは泰牙の部屋の前で倒れていた朱櫻を発見したことだった。

その時は月姫が回復に当たったのだが‥‥。

「彼に寿命が近づいているわ」

予想もしなかった月姫の言葉に月鬼達は絶句した。

正確には予想しなかったわけではない、信じたくなかったのだ。

誰も自分の知り合いが死ぬだなんて信じたくないのだ。

「リアに‥‥血を分けてもらえば、月鬼として死ぬ事はない」

誰かが呟いた言葉に「ふざけるな!」とリアに対して言った言葉と同じ言葉を投げかけた。

「俺は腐獣になってまで生きたいとはおもわない、思いたくない」

朱櫻の言葉に皆は黙って俯くしかできなかった。

「永遠の炎を消すとき、それは‥‥リアの封印に使った術式を使えば何とかなるかもしれません、一時しのぎにはなるかも‥‥」

リアの封印は絶対に解けないように月鬼達が苦心して編み出した術だ。

もちろん、それを永遠の炎に使っても解けないとは限らない。

だが、一時しのぎにはなるだろうと月姫が呟いた。

「僕の考えとしては、永遠の炎を消すヒント、それは泰牙とリア、そして海唄の夢にあると思う」

月天子が少し複雑そうな顔で答えた。


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●募集事項
◎映画「LUNA」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な必須配役は特にありません。
◎何か質問がありましたら、ユリアナに聞いてください。
(その際は別スレをたてていただけると有難いです)
ユリアナの配役はリアという純血の腐獣になります。

●今回の参加者

 fa0467 橘・朔耶(20歳・♀・虎)
 fa0612 ヴォルフェ(28歳・♂・狼)
 fa1024 天霧 浮谷(21歳・♂・兎)
 fa1420 神楽坂 紫翠(25歳・♂・鴉)
 fa2459 シヅル・ナタス(20歳・♀・兎)
 fa3366 月 美鈴(28歳・♀・蝙蝠)
 fa4031 ユフィア・ドール(16歳・♀・犬)
 fa5757 ベイル・アスト(17歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

「悪かったな、お前も体調戻ってないのにさ」
 朱櫻(ヴォルフェ(fa0612))が海唄(橘・朔耶(fa0467))に申し訳なさそうに呟くと「気にするなって」と答えた。
 月宮殿から出て、海唄は朱櫻の妻に電話して「帰宅させる」と言ったのだが‥‥さすがの彼女も朱櫻に寿命が近づいている事は言わなかった――言えなかったのだ。
「これからどうするんだ?」
「俺はとりあえず、リア(ユリアナ・マクレイン(fz1039))を探す、お前は色々調べて疲れたろ、ゆっくり休め」
「そうよ、お義姉ちゃんからゆっくり怒られなさい」
 琥珀(ユフィア・ドール(fa4031))が楽しそうに言うと、朱櫻はそれを想像したのか「冗談にならないって」と苦笑気味に答えた。

「そういえば‥‥親ってね、子供に何かを託す為か子供を利用する為に子供を作るんだって」
 朱櫻の自宅から戻る途中、琥珀がポツリと呟く。
「リアの両親は何の為にリアを作ったのかな?」
 確かに、と海唄も思う。
「それに――月宮殿の二人はどんな気持ちで永遠の炎を生み出したんだろう」
 海唄の言葉に琥珀は答える事はしなかった。
 そして―‥‥話が急転するのはこれから直のことだった。


「冗談じゃない‥‥俺が教祖にでもなったら、世界は終わりだってのに」
 はぁ、とため息を吐きながら呟くのは泰牙(天霧 浮谷(fa1024))だった。彼は少し前に朔夜(月 美鈴(fa3366))から言われた言葉にショックを受けずにいられなかった。

「全てがうまく収まるには――どうやら貴方には死んでもらう必要があるみたい」

 さも当たり前のように言われ、泰牙は少しの恐怖を感じていた。
「生贄になってくれって言われて‥‥ほいほいOK出す奴がいるかよ!」
 少し大きめの声で呟き、泰牙は月宮殿から脱出する為に行動を起こし始めたのだった。


 その頃、泰牙の部屋より少し離れた所で夜光(神楽坂 紫翠(fa1420))が文献を見ながら小さく呟く。
「二人の命消える時=永遠の炎も消える――これ、誰かの命を犠牲にする事じゃ‥‥ないよな?」
「さぁ‥‥わからないわ、それに銀色の月=満月かしら‥‥どうも嫌な感じが強くなってきているような気がするわ、外れてほしいけど」
 きっと無理ね、苦笑しながら呟く朔夜に「姉貴の直感はよく当たるからな」と夜光はため息を吐いた。


「死ぬ事に関して後悔は残らないんやけど、これが味わえなくなるんは未練たっぷりやなぁ」
 酒の瓶を揺らしながら呟く水鏡(シヅル・ナタス(fa2459))だった。朱櫻に寿命が近づいているのと同時に彼女もまた、寿命が近づいていた。
 ただ、朱櫻と比べれば進行状況はまだ軽いほうなのだが‥‥。
「死ぬにしても――全てを終わらせてからや」
 酒を置き、水鏡は立ち上がると、リアを探すために動き出した。


「な――んで?」
 久しぶりの自宅、久しぶりに作る妻への手料理、久しぶりに心休まる時間だと思っていた。
 しかし、海唄や琥珀が帰っていってから数十分が経った頃、腐獣が襲ってきたのだ。朱櫻も月鬼として様々な腐獣と戦ってきた、それなりに相手の強さは分かるほどに。
「残念だったな、お前は俺には勝てねぇよ」
 目の前の腐獣はニィと下卑た笑みを浮かべながら低い声で呟く。
「この体も結構ガタが来てるんでな――お前の体を貰う事にしよう」
 言い終わるのが早いか、腐獣は朱櫻の体を奪う為に首を強く握ってくる。
「うっ‥‥あ‥‥に、げ――」
 普段の朱櫻ならきっと勝つ事はできなくとも、体を奪われるなどされなかっただろう。しかし、今は寿命で体が弱っている、愛する妻さえ守れない事をひしひしと感じた朱櫻は震える妻に『逃げろ』と繰り返し呟く。
「‥‥へぇ、そんなにこの女が大事か、それなら――」
 腐獣は笑うと、朱櫻の体を奪い取り、彼の妻を―――‥‥朱櫻の月鬼としての能力、影で攻撃した。
「―――――っ!!!」
 体を奪われ、自由が利かなくなった体、だが確実に『自分の手』で妻を殺してしまった事に朱桜は絶叫した。



「いつも見つかりやすい所にいるよね」
 琥珀が目の前にいるリアと黒耀(ベイル・アスト(fa5757))に問いかける。
「アンタはいつも『救われたい』って顔をしてた、けど!自分から動こうともしない馬鹿が救われる‥‥幸せになれるはずがないだろうが!」
 海唄の言葉に反論してきたのは、リアではなく黒耀だった。
「姫は‥‥純血を理由に全てから否定された‥‥人は無論、月鬼は愚か、腐獣にさえ‥‥姫の‥‥彼女の敵が、彼女の前で救いや幸せなどという言葉を易々と使うな!」
 黒耀が攻撃を仕掛け、琥珀と海唄、そして合流した水鏡も黒耀とリアに向けて攻撃をする。
「待て」
 しかし、聞き覚えのある声に戦いは一時中断を迎えることになった。
「な――んで?」
 呟いたのは琥珀、驚くのも無理はない――朱櫻の姿をした腐獣が現れたのだから。
「ふむ、結構この体は使いやすいな、馴染みもいい」
 拳を握ったり放したりを繰り返し、呟くと同時に「久しぶりだな、リア」と不敵な笑みを浮かべながら話しかける。
「‥‥誰? 私は貴方なんて――」
「親の気配も忘れたか? 所詮は失敗作だな」
 朱櫻の言葉にその場にいた全員が驚きに目を見開く。
「俺の名はガルダ、事実上――リアの父親になるな」
「‥‥そんな事はどうでもいい、何で、何でお前が『その姿』をしているんだ」
 海唄が低い声で問いかけると「貰ったに決まっているだろう」と当たり前のようにガルダが答えた。
「最初は抵抗していたけどな、この男が大事にしている女を殺したら絶望したのか、大人しくなったな」
 胸の辺りに手を当ててガルダが答え「さて、リア。漸くお前を使うときが来た」とリアの方に向き直った。
「姫に、触るな!」
 黒耀がリアの前に立ちはだかるが、ガルダはため息混じりに「じゃまだ」と影の能力で黒耀を攻撃した。
「私を使うって‥‥私は永遠の炎を―――」
「くくく‥‥何を思い違いしていやがるんだ? お前は所詮永遠の炎の肉体にする為だけに奴が作った存在だよ、それ以上でもそれ以下でもない」
「貴様ああああっ!」
 朱櫻の事、そしてリアの本当の存在理由を聞いた後で海唄が怒りに身を任せて攻撃するが「小ざかしい」と炎をかき消し、影で反撃をした。
「人に裏切られ、人を裏切り、そんな私に似合いの末路ね」
 呟くリアは絶望しきって、今までのリアと全く違う存在に思えた。
「ひ、め――」
「黒耀、永遠の炎を、解放しなさい」
 一言ずつ言い聞かせるようにリアが呟いた後、黒耀は永遠の炎を解放する。
 たとえ、それがリアに最悪の事態を招かせることになっても『彼女の願い』なら聞かないわけにはいかないのだ。
「月鬼達‥‥」
 リアが永遠の炎に体を乗っ取られる間際、何かを呟いたのだが、それは爆音によりかき消されてしまった。
「あは、あははっ! ガルダ、よくやったね、漸く体、実体を持つ事ができた!」
 狂ったように笑い出す永遠の炎に月鬼達はゾッとする何かを感じていた。
「最初に月宮殿の奴らを血祭りだ、じゃあな、月鬼」
「待ちなさい! お兄ちゃんを‥‥お義姉ちゃんを‥‥」
 琥珀はショールでガルダたちを捕まえようとするが、ガルダの能力で逆に生気を奪われ、悲鳴をあげながら気を失ってしまう。
「ここで殺しても面白くないな、どうせなら決着は月宮殿でつけようぜ、なぁ?」
 そう言い残し、まるでその場にいる者達を『見逃してやる』と言った口調で消えて行ったのだった。


「何処へ行く」
 夜光が逃げ出そうとする泰牙を見つけ、目の前に立ちはだかる。
「言っとくけど、俺は生贄になんか――」
 泰牙が言っている途中で、夜光は今まで永遠の炎に関わって死んでいった月鬼達の記事を彼に見せた。
「はっきり言ってお前の中には腐獣の人格が潜んでいる、だから――」
 説明の苦手な夜光が必死に説明している姿を見て「‥分かったよ」と泰牙は諦めたように呟く。
「‥‥つくづく運のない男だったなぁ‥‥俺」
 寂しそうに呟き、夜光は掛ける言葉が見つからなかった。


「どうして――‥‥こんな事まで‥‥」
 ガルダたちが姿を消した後、海唄たちは朱櫻の自宅へと赴いていた。
 そして、そこでの惨状に絶句する。
 家の中は激しく荒らされていて、リビングには血まみれで倒れている朱櫻の妻、慌てて駆け寄ったが既に息はない。
「どうして‥‥私から奪っていくの? アイツの言う通りおとなしくしていたのに!」
「‥‥琥珀、アイツって誰だ?」


 朱櫻の腐獣化、そして永遠の炎の覚醒により、全ては破滅へと導かれ――月鬼達の物語も終曲へと向かい始める。


END