ブラッディア2アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 1.6万円
参加人数 7人
サポート 0人
期間 10/19〜10/21

●本文

「私はバケモノだけど、人として生きたいの」

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永久の時を生きる‥‥不死人

不死人が選んだものだけに血を与え、伴侶となった者‥‥ブラッディア。

今回の登場人物は不死人のチェリア。

彼女は自分が不死人だと気づいておらず、回りの人間からは『バケモノ』と言われ続けていた。

「‥‥確かに、年をとらないなんておかしいものね、はは‥‥」

チェリアは涙を殺しながら小さな声で呟く。

「でも‥‥ずっと一人は寂しいよ‥‥」

彼女はずっと一人で生きてきた。

友達と呼べるものも存在せず、数年置きに住みかを移動し、それを繰り返しているのだ。

「だ、れ?」

「お前、不死人だろう? 永遠の命を与える血を持つ者――」

彼の名はヨシュアといい、私と友達になってくれるというのだ。

「友達になってやるよ、そのかわり―――‥‥」

お前の血を寄越せ―‥‥

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●募集事項
◎映画「ブラッディア」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話の必須配役は以下の通りです。
 ・OPの『ヨシュア』/必須/男性一名
 ・OPの『チェリア』/必須/女性一名
※上記以外の配役は出演される皆様で決めて下さって構いません。
※何か質問がある場合はNPC『ユリアナ』に聞いてやってください。
(その際は別スレッドをたてていただけると有難いです)


●今回の参加者

 fa0612 ヴォルフェ(28歳・♂・狼)
 fa2837 明石 丹(26歳・♂・狼)
 fa3319 カナン 澪野(12歳・♂・ハムスター)
 fa4579 (22歳・♀・豹)
 fa4961 真紅櫻(16歳・♀・猫)
 fa5407 瑛樹(25歳・♂・豹)
 fa5470 榛原 瑛(26歳・♂・猫)

●リプレイ本文

「血を寄越せ」
 確かに目の前のヨシュア(明石 丹(fa2837))は、私・チェリア(檀(fa4579))に離してきた。長く生きる、それはとても苦しいものそれを何故ヨシュアが望むのか‥‥それがチェリアには分からなかった。
「は、離して――っ!」
 チェリアはヨシュアの手を振り払い、家路へと急ぐ。
「次までに答えを出せ! 逃げればお前が普通ではないと、この街はおろか先々で触れ回るぞ!」
 狂気染みた笑い声を上げながら叫ぶヨシュアにチェリアは怯えたように走っていた。


「あ‥‥」
 家に帰る途中、花屋の前でチェリアは足を止めた。植物が生き生きとしているのが嬉しくなり、チェリアは表情を綻ばせた。
「いらっしゃいませ‥‥あぁ、チェリアさんでしたか。今日は何をお求めですか?」
 店から出てきたのはフェリクス(瑛樹(fa5407))だった。
「やっぱりフェリクスさんのお店のお花は皆、生き生きとしていていいですね」
 チェリアの言葉にフェリクスは顔を少し赤く染めながら「ありがとうございます」と答えた。しかし、チェリアにいつものような元気さは見られない。
「良ければお茶でも飲んでいきませんか?」
 フェリクスが誘うが、チェリアは少し困ったように笑み「すみません‥‥」と断ってきた。
「そうですか、気にしないで下さい――貴女の育てる植物達、素敵です、また‥‥来てくださいね」
 心の中では盛大な涙の滝を流し、フェリクスは帰ろうとするチェリアに話しかけたのだった。


「リカルド(榛原 瑛(fa5470))!父さん達の仇が討てるぞ。俺はブラッディアになる」
 家に帰ってくる早々、興奮しながら喚く兄・ヨシュアにリカルドは眉根を寄せて怪訝そうな表情を見せた。
「何を言ってるんだ、とりあえず落ち着けよ」
 リカルドの言葉に「落ち着いてられないよ、仇が討てるんだぞ」と嬉々としながら話す。二人の育ての親は、殺された瞬間を目にはしていないものの、殺害され、表向きは過去を乗り越えたように装い、心の中では復讐に燃えていた。


「キミがチェリア? 僕は夜羅(真紅櫻(fa4961))、宜しくね」
 突然、チェリアの自宅を訪れたのは黒猫を連れた少女だった。
「何か困ってるみたいだね、不死人について」
 不死人、聞き慣れない言葉にチェリアは首を傾げる。
「本当に何も知らないんだね、不死人、そしてブラッディアの事――」
 夜羅はため息混じりに呟き、簡単だが不死人についての事を説明した。
「不死人―――私はそういうものなんですか―――‥‥やっぱり普通じゃないんですね」
「そういう言い方は良くないよ、僕だって不死人なんだからさ、とりあえず近くに不死人とブラッディアの知り合いがいるから。話は通しておくから何かあったら尋ねてみればいいよ」
 夜羅はそう言いながら知り合いの家までの地図を置き、チェリアの家から出て行った。その後、夜羅は知り合い――維苳(ヴォルフェ(fa0612))とユリ(ユリアナ・マクレイン(fz1039))の所へと向かった。
「相変わらず一ヶ所に安住する事を知らない奴だな」
 維苳が呟くと「維苳ちゃんにだけは言われたくないね」とため息と一緒に言葉を返す。
「仕方ないだろ、ユリが此処がいいって言うんだから――それより用件は何だ?」
「隣町の新人不死人、チェリアって言うんだけど‥‥誰も何も教えてないみたいで何も知らないんだ。出来たら助けてやってよ」
 夜羅の言葉に維苳は驚きながら「不死人がいるのは知ってたが‥‥今まで誰も教育係りがいなかったのか」と苦笑する。
「まぁ‥‥必要なら力も貸すし、何でも教えてやる。俺はほんの少し長く生きているだけだがな」


「あれ? お兄ちゃん、何してるの?」
 家の中でどんよりと暗雲を背負っている兄・フェリクスに弟のシリス(カナン 澪野(fa3319))が問いかける。
(「まぁ‥‥どうせチェリアさん絡みなんだろうけど‥‥」)
 フェリクスがチェリアに対して好意を持っているのは知っている。そして見ていてもどかしくなるのも事実だ。
「元気なかったからさぁ‥‥お茶に誘ったんだけど――見事に断られちゃってさ」
 へへへ、と死人のような顔で呟くフェリクスにシリルはため息をつきながら話しかける。
「チェリアさんは‥‥優しい人だから‥‥何かワケがあるんだよ」
「おい、誰もいないのか」
 突然、店に誰か現れ「すみません、今行きます」とフェリクスが慌てて店先に出る。
(「‥‥誰だろう、見た事ない人だけど‥‥」)
 シリルは店の奥から客――ヨシュアを見ていたが、今まで見た事ない人、そして怖そうな人という事で少し怯えていた。
「シリル、鋏持って来て」
 兄から呼ばれ、シリルは仕方なく鋏を持ってフェリクスに渡す。
「あ、僕も後で花を貰うね。チェリアさんの所に持って行こうかな、最近会ってないし‥‥」
 チェリア、その名前が出てきた時、ヨシュアの表情が変わる。
「お前、あの女の男か?」
「おおおおお、俺!? 違いますよっ!」
 顔を赤くして両手で否定するフェリクスだが、その仕草は『大好きなんです』といっているのと同じように見える。
「お兄さんは? チェリアさんの知り合いですか?」
 シリルが問いかけると、ヨシュアは暫く考え込み「俺はあの女の『お友達』だ」と答えた。
 そして、花を買って帰ったヨシュアを見ながら「友達と言う割には‥‥彼女を物のように言うんだな‥‥」とフェリクスは呟く――だが。
「‥‥友達なんて‥‥嘘だと思う‥‥そんな人、見た事ないもん」
「そうか?」
「お兄ちゃん、僕に出来る事だったら何でも言ってね、僕、頑張るから」
「あ、あぁ‥‥」
 いきなり変なことを言い出す弟に『?』を頭の上に浮かべながらフェリクスは小さく頷いた。


「さぁ‥‥血を寄越せ」
 再びやってきたヨシュアにチェリアは下を俯く。
「兄さん、止めろよ‥‥」
 リカルドが止めに入ると「どうせ俺はもう先がない、急がなきゃならないんだ」と自棄になったように呟いた。
「先がないなんていうな!」
 声を荒げるリカルドに「どういう事なの‥‥」とチェリアが問いかける。
「俺達は‥‥孤児院で育ち、育ての親を殺された――その復讐の為に生きてきた――けれどもう‥‥俺に残された時間は少ない」
 どういう事? チェリアが視線だけでリカルドに問いかけると「病気なんだ」と短く答える。
「残された時間がない、それが分かった時‥‥姿の変わらない女の事を聞いた、俺はそれを利用使用と思った。復讐を果たすためなら、孤独になろうが構わない」
 ヨシュアの言葉にチェリアは「今すぐでないと駄目なの?」と問いかける。
「え?」
「出会ったばかりでお互いがお互いのこと、何も知らない。もう少し知ってから、もう少し仲良くなってからでは‥‥いけないの?」
 チェリアからの思わぬ言葉にヨシュア、リカルドは目を瞬かせる。
「あなたが本当に私の血が必要な時が来たら‥‥その時は迷わず分かつわ」
 だからもう少し待って、チェリアの言葉にヨシュアは涙が出そうになる。
(「俺は―――自分の事しか考えてなかった。なのにこの女は―‥‥」)
「そう、だな。約束の『友達』から始めるか――」
 ヨシュアが呟き、焦ってばかりいた兄が少し変わり始めている事にリカルドも安堵のため息を吐く。
 その時――玄関に人の気配を感じ、チェリアが外に出ると、そこにはフェリクスとシリルの二人立っていた。
「あ、さっきの話、聞こえてきて‥‥」
 その言葉を聞いてチェリアは少し落胆したような表情で「化物って分かってしまったのね」と悲しそうに呟く。
「貴女は化物なんかじゃありません、ちゃんと『生きて』いるじゃないですか」
 フェリクスの言葉にチェリアは目を丸くする。今までそう言ってくれる人が誰もいなかった為に慣れていないのだ。
「‥‥そう、ありがとう―――」
 そう呟きながら笑うチェリアは本当に綺麗だった。


 その様子を影から見ていた維苳は「俺の出番はなさそうだな」と呟き、ユリのところへと戻る。
「お帰り」
「新しい『仲間』が出来たみたいだよ‥‥ユリ、君も会って友達になりたいかい?」
 それから維苳がチェリアに会いに行くのは、これより数日後のこと――。



END