ここより全てへアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
11/14〜11/17
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●本文
ここより全てへ:アンダーシティ・ポリス4
◎この話は『アンダーシティ・ポリス』の続編となります。
ですが、前作との関連性はないので、どなたでもご参加していただけます。
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太陽が砕け、隕石となりて地球に降り注いだ現象『熱砂』
その突然の出来事に人々は絶望し、生きる気力を失いつつあった。
脆弱した世界で『悪』は力を増し、弱肉強食の世界になりつつあった。
人々には『希望』が必要だ。
ゆるぎない『正義』という名の希望が―‥。
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◎募集事項
●前作までの話と同じでアクション映画になります。
●この話は1、2、3の世界よりずっと昔、地上が滅び地下世界に移り住んだ直後の話です。
●出演者は『熱砂』の影響からか『バムス』と呼ばれる特殊能力が存在します。
●今回の話でのラストは『地下世界警察』が設立された所で終わらせてください。
●今回の主な登場人物は『正義感溢れる人物』『弱い者を虐げる悪の人物』『生きる事に無気力になってしまった人物』大きく分けてこの3つになると思います。
●上記以外で適役がありましたら、お書きください。
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◎話の内容
熱砂の影響によって、人々に現れ始めた『バムス』
この能力を使って弱者を虐げる人間が続出し始めた。
生きる事に無気力になってしまった人間に逆らう思考は存在しなかった。
人が人を見捨てる、この荒んだ世界では当たり前の事になっていたのだ‥。
このままでは、せっかく残された世界ですらダメになってしまう。
誰かが『揺るぎない正義』を貫かねばならないのだ―‥。
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●リプレイ本文
「ここも酷いわね‥」
瓦礫の山と化したかつての街を見ながらため息混じりに呟いたのは草加(草壁・蛍(fa3072))だった。それに相槌を打つのはレンズ(リーベ・レンジ(fa2825))。彼らは隣の地区の自警団の団員だった。
「それでこの地区の自警団員はどこにいるんだろうな」
レンズが周りを見渡しながら言う。すると一人の青年、シギ(金緑石(fa4717))を見つけた。
「待て!お前ら!」
そう叫ぶシギの前には逃げる男女の姿、どちらもまだ子供のように見受けられる。
「くそ!今日も逃げられた、ちくしょう!」
叫びながらシギは近くにあった瓦礫を蹴り上げる。
「ちょっと、何があったのよ」
草加が話しかけると「他の地区の自警団か‥」と二人を見やりながら呟いた。
「先程の子供達は‥?」
レンズが問いかけるとシギは忌々しげに放し始めた。彼らの名前はセツ(倉橋・羊(fa3742))とルイ(各務・聖(fa4614))と言って目覚めたばかりのバムスを悪用して人々を傷つけているのだと言う。こういう例ははっきり言って珍しくない。シギも似たような経験があって家族を亡くしている。そのせいもあって悪を異常な程に憎んでいるのだ。
「はぁ、もう逃げられたかな。セツ」
先程の居住区から少し離れた所で二人は立ち止まった。
「‥こんな世界、なくなってしまえば良かったんだ」
橙色に染まっていく空を見上げながらセツはポツリと呟いた。セツは熱砂の後、環境の変化についていけなかった両親が一家無理心中を図り、一人だけ生き残ってしまったのだ。
「なぁ、ルイ‥神様って残酷だよな。中途半端に残すくらいなら全て壊してくれればよかったのに」
クックッと笑いながら呟くセツにルイは何も言わずに苦しそうな表情で見つめていた。ルイは己の能力を恐ろしく感じている。触れる物全てを砂に変えてしまう能力。普段はそれを抑えるために皮手袋を右手に着用していた。
「私、居住区に行って食べる物を盗んでくるよ。お腹すいたでしょ?」
「ちょ、待てって―」
セツの制止も聞かずにルイは先程の居住区へと走り出してしまった。
「今日も一日が終わっていく‥」
瓦礫に背を預け、空を見上げながら呟くのはノット(タブラ・ラサ(fa3802))、彼は特に何をするわけでもなく、ただ毎日を『生きている』だけの存在。お腹が空くとツラいから食べる、眠らないとツラいから眠る、そんな感じで毎日を生きているのだ。特に未来に希望も持たない。持っても無駄だと分かってしまったのだから。
ノットの目覚めた能力は遠見と呼ばれるもので、その名の通り未来でも過去でも見る事が出来る。興味半分で未来を見た事もあったが恐ろしい物を見てしまったため、それがトラウマとなってしまい未来を見る事が出来なくなった。
それでも彼は構わなかった。食料や敵の所在は能力で探知する事ができた。ただ生きていくだけなら何も不自由する事はないのだから。
「えーと、確かこの辺に食べ物の倉庫が‥」
ルイが隠れるようにしながら居住区の中を歩いていく。その中でルイに歩み寄っていく人物が存在した。
「ルイ‥」
それはアジュ(雅楽川・陽向(fa4371))だった。ルイは本来、この居住区に住んでいた。だからアジュとも顔見知りだったのだ。
「アジュちゃん‥元気にしてた?」
その場に座り、話しかけるとアジュは無表情なまま首を縦に振った。彼女は熱砂によって死に逝く知人を見ていくうちに壊れそうになる自分の心を守るために感情を閉ざしたのだ。
「そっか、私もすぐに行かなきゃいけないんだけど‥」
ルイは久々に話す友人に表情を緩め、一時の間アジュと話していた。それを後ろで見ていた人物がいるとも知らずに―‥。
「悲鳴だわ!」
すぐ近くから聞こえてきた悲鳴に草加が一番に気がつく。視線をそちらに向けると先程逃げた筈の少年が能力を使い、暴れまわっている。
「アイツ!また来やがったのか!」
シギは自分の能力を開放し、暴れる人物―‥セツの元へと走っていく。シギの能力は己の腕を奇妙な甲殻が覆う肉体強化の能力。
「自警団‥お前に何の権利があって僕の邪魔をするんだ!偽善者が!」
セツも叫ぶと同時に能力を開放する。するとシギの近くにあった瓦礫が弾けるように壊れた。
「ははっ、僕を止めるんじゃないのか!その気持ち悪い腕で僕を止めてみろよ!ほらぁっ!」
シギの能力は接近戦向きだ、そしてセツの能力には距離は関係ない。セツの攻撃が目前まで迫った時、セツの放った攻撃ごとフッと消えた。
「全く面倒な事になってるわね」
消したのは草加の空間転移という能力。自分の知っている場所にだったらどこへでも対象を転移させる事が出来るのだ。
「これで多少はマシだろう」
呟いてレンズも能力を開放する。彼の能力は確率を上下させて幸運を招き寄せるものだ。だからセツの能力も当たりにくくなるのだ。
そしてレンズは複雑な気持ちで相対する彼らを見ていた。彼らには自分の信じる正義が存在する。正義とは自分の頭を天上から押さえつけてくるような力だ。絶対正義を欲するから争いは絶えないのだ。これがもし相対正義ならセツもシギも上手くやっていけるのではないかと考えずに入られなかった。
「何で、ドイツもコイツも僕の邪魔をする!信じていたルイでさえ僕を裏切った!こんな世界!消えてなくなればいいんだ!」
セツの叫びに呼応するように能力によって家がひび割れ、派手に崩れていく。その家の中にはノットが食料確保の為にいたのだが、危険を察知する事が出来たノットは大急ぎで物陰に隠れ、様子を見ていた。
「‥セツ‥?何してるの‥」
その戦いの真っ最中にルイとアジュが現れる。ルイの左手には二人分の食料が入った袋が持たれている。
「私がセツを裏切ったって‥どういう事?」
「うるさい!そんなに他の奴と一緒にいるのが楽しいのか!」
「違う、違うよ。セツ‥話を聞いて」
「うるさぁぁい!」
その時、聞こえたのはセツの悲痛な絶叫、そして二人の悲鳴だった。
「お‥い‥っ大丈夫か!?」
目の前には肩で息をするセツと瓦礫に埋もれるルイとアジュの姿だった。ルイの方はレンズが引き上げ、大した怪我もなく無事だったのだが‥。
「アジュちゃん!」
アジュは瓦礫をまともに受けてしまったため大怪我をしてしまっている。特に酷いのが潰れてしまっている右目だ。
「あ‥あぁぁぁっ!!」
アジュが痛みのせいか右目を押さえて気が狂ったように悲鳴をあげた。
「アジュちゃん!大丈夫?しっかりして!」
その時ルイは自分の右手を見てハッと我に返った。ルイの右手は色々なものを砂に変えてきた能力を発動する手。しかも抑えるための皮手袋は―‥つけていない。
アジュを砂に変えてしまう、そう思った時‥誰もが予想しなかった事が起きたのだ。アジュに触れた場所が淡く輝き、傷を負ったはず右目が元通りになっていくのだ。
「再生能力だ‥」
ポツリと呟いたのはレンズだった。彼が言うには再生能力の持ち主だと気づかぬうちに力を使い始めてしまい加減が分からずに破壊するまでに至ったのだろうと。
「僕は‥僕は!」
再び攻撃を仕掛けようとしたセツだったが、ルイに気を取られていてシギが攻撃してきているのに気づかずに直撃を食らった。
「う‥」
暫くしてセツが目を覚ます。痛むべきはずの場所に痛みがないので、おかしいと思い視線だけを移動させると自分を治癒するルイがいた。
「僕は‥何を間違えたのかな‥」
「私達の力は‥確かに破壊する事も出来るけど‥救う事も出来るはずよ、きっと‥」
涙を流しながら呟くセツにルイは小さく答えた。
「僕は‥ここを出ようと思う」
治癒が終わり、落ち着きを取り戻した頃にセツが呟く。
「僕が今まで傷つけた分と同じだけ‥人の役に立とうと思う。そしていつか‥僕自身を僕自身が許せる時が来たら戻ってこようと思うんだ」
「‥そっか‥私、待ってるよ、セツの事。いつまでも‥」
「何を難しい顔をしてるのよ」
セツとルイのやり取りを見ているシギに草加が話しかける。
「あのアジュという娘の目も心配する事はない」
「俺は今まで憎しみだけで生きてきた。それを捨てようと決めたんだが、目的が見つからないんだ‥」
「だったら、あたし達の自治区と手を組まない?」
突然の草加の申し出にシギは怪訝そうな顔を見せた。
「こういうご時世なんだから、今回のような事件は珍しくないのよ」
他の自治区にもあるわ、そう付け足した後、まじめな表情になって「でも、こういう事って何処にでもあっちゃいけないのよね」と呟いた。
「何処の自警団もまだまだ小規模なものだ、しかし―」
レンズの言葉の後に「纏まれば真っ当な正義を作る礎にはなるわよ?」と言葉を付け足した。
「‥そう、だな。他の自治区の自警団を纏める‥これからはその目的を持って生きていくのも悪くは無いかもしれないな‥」
新しい自警団作りの為にルイも誘ったのだが「人に迷惑を掛けた事に変わりはありませんから」と言って草加の誘いを断った。そしてアジュも「私も明日から何かが変わるような気がします」と瞳に意志が宿ったように呟いた。
その後、街の片隅で朝日が昇るのを見ていたノット、これから何か変わるか分からない。まだ未来は見えないのだから―‥でも―‥。
この自警団が後にアンダーシティ・ポリスと呼ばれる組織になるのだった。