ハウリングアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 11/26〜11/30

●本文

ハウリング:アンダーシティ・ポリス6

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太陽のかけらが隕石となりて、地球に降り注いだ現象―‥熱砂。
生きる事に絶望した人間達は地下に己たちの世界を切り開いた。
その地下世界を守る警察‥アンダーシティ・ポリス
彼らは今日も地下世界の平和を守るために活動を続ける。

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●話の内容

―その声は全てに絶望した声、その声は全てを狂わせる‥―

一週間前、スラム東居住区にて一人の人間が殺された。
殺したのはスラムに住む人間、殺されたのはアンポリ捜査官の大事な人。
その次の日から捜査官は出勤をしなくなり、大切な人を殺した人間を探すために独自の捜査を始めた。
そして、その頃からだ。
東居住区で奇妙な噂が流れ始めた。
夜になると「声」が聞こえるのだと。
その「声」を聞くと自分が自分でなくなってしまう感覚に陥ってしまうこと。

それは―‥大切な人を亡くし、全てに絶望した捜査官の嘆きの声だった。

「今日、集まってもらったのは‥予想できるだろう?アイツの事だ。これは私個人としての頼みだ。アイツを‥助けてやってくれ」



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◎募集事項
●今回も例の如くアクション映画です。
●この話は出演者のみを募集します。
●出演者は「バムス」と呼ばれる特殊能力を持っています。もちろんバムスを持たさなくても大丈夫です。ですが、話に大きく関わる方がバムスなしだとアクションなしになってしまう可能性がありますので話に大きく関わる役をされる方は出来るだけバムスを持たせてください。
●今回の主な登場人物は『地下世界警察』『大切な人を殺された捜査官(バムス:ハウリング)』『捜査官の大切な人』『スラムの住人』などでしょうか。他にも適役がありますしたらお書きください。

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●今回の参加者

 fa2122 月見里 神楽(12歳・♀・猫)
 fa2657 DESPAIRER(24歳・♀・蝙蝠)
 fa2825 リーベ・レンジ(39歳・♂・ハムスター)
 fa2910 イルゼ・クヴァンツ(24歳・♀・狼)
 fa4360 日向翔悟(20歳・♂・狼)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)
 fa5139 正輝 草紙(22歳・♂・狼)
 fa5149 桐間玲次(17歳・♂・猫)

●リプレイ本文

「響子さん(DESPAIRER(fa2657))が東居住区を騒がせているハウリング‥?」
 上司から聞かされた言葉に六堂(正輝・草紙(fa5139))、彼女と仲が良かった訳ではないが、優秀な捜査官だという事は聞き及んでいた。
「確か‥妹さんを先日亡くされていましたね」
 思い出したように呟くのはキリー(百鬼・レイ(fa4361))、それに相槌をうつのはレンズ(リーベ・レンジ(fa2825))だった。
「それで響子の妹を殺した犯人は捕まってないですよね?」
 レンズに問いかけるのは周防(日向・翔悟(fa4360))、今回の事件で呼び出されたのは四人の捜査員だった。
「やはり妹君の事が原因なんじゃないかね」
 レンズが呟くと片付けるべき事件が二つある事に気がつく。
「ここは二手に分かれて捜査していくのが賢明ですね」
 キリーが呟き、雛(月見里・神楽(fa2122))の事件を周防に任せて、響子の方をキリーと六堂で引きうける事になった。
「妹君の事は闇雲に捜査しても分からんだろう」
 レンズが呟き、ダーツを取り出す。そして壁に投影された全居住区の地図に背中を向けて持っていたダーツを投げつけた。
「‥これは東居住区の奥にある小さな村だな」
 俺はここに向かおう、そう言って周防は署か出て行った。
「さて、自分達も響子さんの所に行きますか」
「そうだな」



「しかしハウリングの能力に対抗するにはどうしたらいいんだろうな」
 六堂の言葉にキリーは唸りながら考え「いい事思いつきましたよ」とある物を用意しながら答えてきた。
「耳栓か、存外いい考えかもしれないな」
 そう言って六堂は耳栓をつけるが、すぐに外してキリーに返してきた。
「確かにハウリングの影響もないかもしれないが、他の音も遮断するから意味がない」
 良い考えだと思ったのに、と肩を落としながら耳栓をポケットに直す。
「貴様ら、誰の断りを得てここにいる」
 スラム街に入ったところで一人の男、キリエ(桐間・玲次(fa5149))に話しかけられる。手にはパイプのような物を持ち地面に引きずりながら、こちらへと向かってきている。
「六堂さん、ここは自分に任せてください」
 キリーが一歩先に歩み、キリエの前に立つ。相手は気は荒いが無関係の一般人。目つきなどがおかしいのはハウリングの影響を受けているからと考えて間違いないだろう。
「自分の能力なら傷つける事なく、この場を打開できますから」
 そう言ってキリーは愛用している二丁拳銃をキリエに向ける。
「声が、声が煩いんだよ。くそぅ、イライラする、うあぁぁっ!」
 一人でぶつぶつ言いながらキリエは鉄パイプを振り被って、キリーに向かって猛進してくる。キリーは向かってくるキリエに躊躇う事なく発砲する。しかしそれは自分の能力‥バレット・ソーサラーで何とか出来ると確信しているからこそ出来た行動だ。
「うっ‥が‥」
 キリーの能力によって威力を極端に減少させたおかげでキリエはかすり傷一つ負う事なく気絶するだけで済んだ。
「上手い物だな」
 感心したように六堂が呟いた時、キリーが血相を変えて「六堂さん、あれ!」と向こうを指差しながら叫んだ。その指の先には探していた捜査官、響子の姿があった。
「響子さん!」
 キリーが叫び、近寄るが響子は逃げる事も隠れる事もせずに虚ろな瞳で二人を見やる。
「‥何のつもりか知りませんが、邪魔をしないでもらえますか?」
 私には目的があるんです、そう言って立ち去ろうとした響子の腕をキリーが掴む。すると何かの衝撃を感じてキリーは少し離れた壁に叩きつけられる。
「キリーっ!」
 六堂がキリーを起こすと「衝撃波が‥」と苦しそうに呟いた。
「そうか‥ハウリングは後から身についたバムス、最初から持っていたのは‥ソニックブームだったな」
「‥貴方も私の邪魔をするのですか。では同じポリスの仲間だとしても手加減はしません」



「確かレンズさんの言う場所はこの辺だったよな」
 ダーツによって示されたスラム街に来ているのは周防、いくら場所が特定されたからと言っても住む人間が多い事には変わりがない。どこから探そうかと思案していると一人の少女、イル(イルゼ・クヴァンツ(fa2910))が視界に入ってきた。
「なぁ、この辺で起きた殺人事件について調べているんだが‥」
 周防が話しかけるとイルはビクッと肩を大げさに震わせながら「知らない、私は知らない!」と言ってその場から逃げていってしまう。
「やれやれ、ポリスだと言うだけで嫌われるモンだな」
 頭を掻きながら呟くが、他の住人と比べるとイルの態度はどこか違うものを感じた。他の住人達は明らかに嫌悪を顔に出しているのだが、イルの場合は嫌悪というより怯えているような感じにも思えた。
「とりあえず、話を聞いてみるか‥」
 イルが逃げていった先を目指して周防は歩き出した。
 一方その頃、イルは大きな木の下で蹲って怯えていた。
「もう駄目‥探しに来てる、そう時間が立たないうちに私の事も‥」
 肩を震わせ、怯えるイル。
「あ、いたいた。ちょっと話を聞かせてくれないか?」
「あ、貴方は‥」
 木に背中を預けて平静を装って話そうとするが、言葉が震えて上手く言葉に出来ない。
「この前の殺人事件―‥」
「止めて!私は殺したいなんて思ってなかったわ!」
 ナイフを取り出し、震える手で周防に向ける。こんな事をしても能力を持っているポリスにとっては意味がない事などイルは理解していた。
「お前が殺したのか?」
「お腹が空いてたの、ただそれだけだったのに‥あの子が騒ぐから‥」
 そう叫びながらナイフの向きを変えて自身の喉を突き刺した。
「あの日、から‥声が、やまないの‥ご、めんな、さ‥」



「何で私の邪魔をするんですか!雛を殺した奴を殺したいだけなのに!」
 衝撃波を何度も繰り出しながら響子は叫ぶ。その時「その必要はないぜ」と言ってやってきたのは周防、腕には一人の少女が抱えられている。
「この子が、あんたの妹を殺した人間だ」
 そう言って地面に横たえてやる。響子はふらふらと歩み寄ってきて「何ですか、これ‥」と涙混じりに呟く。
「私の恨み言も言えてない!何で勝手に死んでるのよ!」
 うわぁぁっと泣き叫び、地面に膝をつく響子に六堂が苦しそうに呟いた。
「大事な人を失った悲しみはよく分かる。あんたの悲痛な思いが誰にも届かなかった悔しさも重々承知している。だけど、関係のない奴にまで怒りをぶつけるのは勘弁してくれ」
「どうしたらいいの、私は‥」
「署に戻って俺の所に来ればいい。俺はカウンセラーという役職にもいるんだ。あんたみたいに心に傷を負った人を救うために」
 そうね、と呟いた後、響子はふらりと倒れてしまう。まるで張り詰めていた糸が切れてしまったかのように。その夢の中で響子は大事な雛の夢を見た。

「お姉ちゃん、遅いよーっ」
 そういえばこの日は雛の誕生日でプレゼントを何にしようと考えていたら、すっかり遅くなってしまったのだ。
「ごめんなさいね、ほら、今日は誕生日でしょう。プレゼントよ」
 そう言って響子が渡したのは白いスノゥベアー。それを見た雛は今までの怒りが嘘かのように満面の笑みで笑い「わぁっ、可愛い!」と言って抱きしめる。
「ありがとう!お姉ちゃん!名前は何にしようかなぁ」
 ぬいぐるみを見つめながら唸る雛に響子も笑みがこぼれる。そして数分が経った頃「決めた!」と言ってぬいぐるみを高く掲げた。
「ネージュ君、この子は今日から私のお友達、ネージュ君よ」
 ありがとう、そう言って雛はぬいぐるみを抱きしめながら部屋へと帰っていった。結局その数日後に雛は死んでしまい、血に塗れたぬいぐるみが現場に残されていた。


「目が覚めましたか?」
 目が覚めるとそこは白い部屋、そこには見覚えがあった。ここは―‥。
「署の医務室‥?」
「そうです、もう少し横になっていた方がいいですよ」
 結構本気で攻撃しましたから、と言ってバツが悪そうに医務室を出て行った。
「そうか、私―‥雛‥助けてあげられなくてごめんね‥」
 そう呟くと「気にしないで、お姉ちゃん」という雛の声が聞こえたような気がして響子は涙を流した。


「おや、ここで何をしているのかね?」
 署に戻ってきて六堂は今回の事件をいろいろ覚えるために資料室にいた。そこにレンズが茶を持ってきて「ありがとう」と言いながら六堂はそれを受け取った。
「お、また確率を無視して茶柱がたっている。やれやれ、これじゃありがたみがないな」
「俺は‥様々な事柄を覚えられる。人の痛みも嘆きも苦しみも‥それ故に近い未来ではなくても今回の響子が俺になるんではないかと思う日がある」
「ほぅ‥能力故の苦しみだな、しかし今回の事件とチミは違うのではないかね?」
 どういう事だ?と問いかけると「これから起きる事など誰にも分からんという事だよ」と言って資料室から出て行った。
「起きてしまった事は仕方がない、だけど‥俺はまだ何もおきていない。起きないためにするようにも、歩いていくんだろうな。俺は‥」




END