黒バスは彷徨うアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/04〜12/09

●本文

『そのバスは走る、乗った者を全て死者の国に導くために―‥』

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●話の内容

「ねぇ、黒バスって知ってる?」
「黒バス?あの乗った奴をあの世に連れて行くってバス?迷信だろ?」


最近、学生の間で噂になっている事がある。
それは「バス」だった。
もちろん普通のバスではなく、車体も窓も真っ黒に塗りつぶされたバス。
それは乗った者を死者の国に連れて行くバスだと伝えられている。
窓を真っ黒に塗りつぶすのは死者が生者の国に未練を持たぬようにだと。
そこで数人の人間が黒バスが実在するかを確かめる為にバス停にやってきた。
噂どおりなら午前二時に、そのバスはやってくるのだという。
「本当に来た!」
一人の女性が怯えるような表情を見せて呟く。
メンバーはそのバスに乗り、一番後ろの席へと座った。
「‥今の見た?運転手、骸骨だったわ。ヤバイよ、降りようよっ」
好奇心が恐怖に摩り替わる頃、メンバーはバスを降りようと入り口に向かったが―‥。
「もう扉は閉めた、大人しく席についていろ」
骸骨姿の運転手が言い、メンバーはバスから降りる事が出来なくなった。

さぁ、如何にして黒バスから逃れるか?
このままだと確実に死者の国に連れていかれてしまうぞ?


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●募集事項
◎これはホラー映画になります。
◎この話では出演者のみを募集いたします。
◎舞台は狭いバスの中、行動が限定されますがバスから無事に降りてください。
◎あまり騒がしくしていると、骸骨運転手から殺されてしまいますよ?
◎バスに乗っている間、生きてはいますが、限りなく死に近い状態です。
◎運転手の斧で攻撃をされると、魂が消滅してしまい死者の国にすらいけません。


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●今回の参加者

 fa0155 美角あすか(20歳・♀・牛)
 fa2459 シヅル・ナタス(20歳・♀・兎)
 fa3571 武田信希(8歳・♂・トカゲ)
 fa4254 氷桜(25歳・♂・狼)
 fa4563 椎名 硝子(26歳・♀・豹)
 fa4622 ミレル・マクスウェル(14歳・♀・リス)
 fa4909 葉月 珪(22歳・♀・猫)
 fa5113 豊田せりか(16歳・♀・犬)

●リプレイ本文

「‥‥本日のご乗車ありがとうございます。終点に着くまで大人しくしていて下さい」
 そう運転席からマイクを使って話すのは黒バスの運転手カロン(氷桜(fa4254))、骸骨の面を被っているせいか不気味さが増している。乗客は全部で静流(シヅル・ナタス(fa2459))、大馬(武田・信希(fa3571))、鈴花(椎名・硝子(fa4563))、そして興味半分でやってきた文(美角・あすか(fa0155))、レイ(ミレル・マクスウェル(fa4622))、華月(葉月・珪(fa4909))、可憐(豊田・せりか(fa5113))の合計で七人が乗車していた。
「何だ、骸骨かと思ったらお面だわ」
 ほら、と指差しながら大きな声で笑うのは文だった。そこで再びマイクのスイッチが入り「‥‥車内ではお静かにお願いします」と言う運転手の声がバス内に響いた。
「怒られちゃった」
 そう言うものの文に反省の色はなく、再び大きな声で話し始めた。
「あまり騒がない方がいいわよ‥」
 言われたでしょ?と文を諌めるのは可憐だった。その言葉にレイも「静かにしてないと何されるか分かんないよ〜?」と悪戯っぽく笑いながら話した。
「何よ、別にいいじゃない。こんな陰気な中でずっと黙ってられないわよ。ねぇ?」
 華月の方を振り向いて話すと「少し声の音を下げた方がいいかもしれませんね」と苦笑混じりに答えた。
「何よ〜、華月まで‥」
 文がそう呟いた瞬間だった。カロンはいきなりバスを急停止させた。突然の出来事に乗客は座席から転がり落ちそうになってしまう。
「ちょっと!ちゃんと運転してよね!」
 打った頭を擦りながら文が言うと、目の前に斧を持ったカロンの姿があった。
「ちょ‥っと‥何を‥」
「‥お客様は私の注意も聞かずに騒ぎ立てましたね。営業妨害と見なし処分させていただきます」
 そう言ってカロンは斧を振り上げる。文は恐怖のあまり座席から落ちて、斧を免れる‥しかしそれは命を数秒ほど長めるだけで根本的な解決にはなっていなかった。
「やめて!騒いだのはあたしだけじゃないじゃない!ほ、ほら‥他の皆だって話してたし‥」
「‥一番騒いでいたのはお客様です」
 嫌だ、そう言って文は一番後ろの座席まで走っていくが、カロンの投げた斧を頭に食らい、黒い煙のようになって消えてしまった。
「え‥‥文が‥消えちゃった‥」
 目の前の出来事を信じられないかのように呟いたのはレイだった。
「文さん!な‥何故、文さんは何故消えてしまったのですか!」
 続いて文が消えた場所へふらふらと歩み寄るのは華月、カロンは投げた斧を取りに行き、チラと華月を見やる。華月は恐怖に震えながらもカロンを睨みつけていた。
「‥‥これはポールアックスと言い、魂を消滅させる事が出来る斧です。先程のお客様のように消えたくないのでしたら大人しく座席に座ってお待ち下さい」
 そこで華月、レイ、可憐の三人は自分達がとんでもない場所に来てしまっている事を実感した。華月はレイ達の所に戻り、涙を流した。
「大人しくしていればいいのに‥どうせ皆死ぬんだから」
 聞こえてきた声にレイ達が視線を向けると通路を挟んだ向こうに座っている鈴花が視界に入ってきた。彼女も生者だったのだが相次ぐ不幸に生きる気力を失くし、自棄になってバスに乗り込んだのだと言う。
「どうにかして逃げないと‥」
 文が消えてしまった事でパニックに陥ったレイはどうしようとオロオロするばかりだった。そして元より怖がりで引っ込み思案な可憐も涙を流しながら「いや、嫌‥」と今にも暴れそうな半狂乱状態に陥っていた。
「お姉さん、暴れない方がいいよ。さっきの人の二の舞になるから」
 そう可憐に言うのは後部座席に座っていた大馬、彼は幼くして死んでしまった為、やや達観気味になっているようだ。大馬の忠告に可憐は自分を落ち着かせようと何度も深呼吸を繰り返した。
「こんにちは、この席に座ってもいい?」
 ニコニコと笑いながら判仕掛けてきたのは静流、その顔を見て可憐が「あ‥」と呟いた。
「可憐さん?どうしたの?」
 華月が問いかけると「この人‥この前死刑になった通り魔です‥」と震えながら答えた。
「おや?私を知ってるのか?それは光栄だね。そう、私は十人以上殺した犯罪者。死人が乗っていてもおかしくないだろう?だってこれは黒バスなんだから」
 そう楽しげに笑うさまが余計に恐怖心を煽り立てる。
「そう怖がる事はないよ。良い事を教えてあげようと思ってね」
「‥良い事?」
 レイが眉間に皺を寄せながら言うと「そう、君達が助かる方法だ」と答えた。
「君達は私のように死んではいない。だから―‥バスから降りる事が出来れば生きて帰れるかもね」
 そう言うと静流は最初に座っていた運転席に近い座席へと戻っていった。
「バスを無事に降りられたら、生きて帰れるんですね‥」
 可憐が呟く。しかし言うのは簡単だが、実行するとなれば話は別だ。騒いだだけで文を消滅させるようなカロンが、素直に下車を許してくれるはずもないのだから。
「お姉さん達、何を考えてるか知らないけど‥無駄な事は止めた方がいいよ。僕は何人もの人が消滅させられる所を見てきたんだから‥。諦めて終点に着くのを待とうよ」
 大馬が言うと「諦めたくないの」とレイが答えた。
「‥私にも絶対希望を捨てないって言ってた時期があったわね‥」
 レイ達の会話を聞いていた鈴花がポツリと呟く。だけどその呟きは誰にも聞かれる事なかった。
「それで‥華月さんが思いついた方法って何ですか?」
 カロンに脱出作戦を聞かれないように三人は顔を近づけ、小さな声で話し合いを始めた。
「レイさん達は出来るだけ最前列に行って下さい。その後、私が運転手を引きつけます。その間に逃げて下さい」
 貴方も行きましょう、華月が鈴花に向かって言うと、彼女は驚いたような表情を見せた。
「何をしたって‥無駄よ。このバスからは降りられないわ」
 鈴花はため息をつき、諦めた口調で呟いた。
「た、確かに‥無理ですよね」
 可憐が呟き、レイと華月が「何を言い出すの?」と言うと「違います‥」と可憐は首を横に振った。
「私が無理と言っているのは鈴花さんにです‥最初から諦めていたら何も出来ないから‥」
 可憐の言葉に鈴花はハッとしたような顔で三人を見上げた。
「私達は諦めない。こんな所に興味半分で来たのは後悔してるけど‥死にたくない」
 でも‥とレイは華月はチラと見ながら言葉に詰まった。
「囮は私がなる。華月と可憐が先に逃げて」
 レイの提案に華月はゆっくりと首を横に振って「言い出したのは私ですから」と呟いた。
「後から必ず私も追いかけます」
 その三人の様子を見ていた静流はクスと笑い、すぐ前にいるカロンに「ねぇ‥」と話しかけた。
「‥お客様、運転中に話しかけないでもらえますか?」
 すぐ後ろから話しかけられているためかマイクは使わずに言葉を返す。
「細かい事は気にしなくていいじゃないか。それより‥後ろの三人、何か企んでいるみたいだよ?」
 静流の言葉にミラーで後ろを見る。確かに座席は沢山空いているのに三人で固まって何やら話している。
「‥‥ご忠告をありがとうございます。お客様もきちんと座席に座ってください。でないと私は貴方を処分しなくてはならなくなりますので」
 怖い怖い、そう呟きながら静流は席へついた。それからすぐの事だった。華月が大きな声で話し始めたのは。
「‥‥お客様、お静かに願います」
 しかし華月はカロンの注意を聞く事なく、大声を上げ続けた。そしてバスは文の時と同じように急停止をして、カロンが斧を持ち華月の所へと歩み寄ってくる。カロンが後ろまで来たのを確認すると、華月はレイ達に目で『逃げろ』と合図をした。可憐は一時逃げるのを躊躇ったが、もしここで捕まれば華月が囮になった意味が無くなる、そう思ったレイは可憐の腕を掴み出口へと急いだ。しかし‥。
「ドアが開かない!」
 レイが叫ぶと同時に鈴花が運転席へと走り、出入り口を開くスイッチを押した。
「私は諦めてしまったけれど‥貴方達だけは逃がさなくちゃって思ったの」
 一緒に行こうとレイが叫びかけたその時、カロンが持っていた斧を鈴花目掛けて投げつけた。
「鈴花さん!」
 鈴花が黒い煙のように消えると、レイと可憐は唇を噛み締めながらバスの外へと逃げた。残った華月が必ず追いついてくると信じて。ふとバスを見ると静流が手を振っているのが見えた。
「‥‥お客様、貴方は私の営業妨害をしたばかりではなく、他のお客様も逃がしてしまいました。処分します」
 斧を取りに行き、カロンは出口を閉じて華月の所へと戻ってくる。
「ごめんなさい、約束‥守れそうにないです‥私‥死んじゃいますから‥」
「逃げても、きっと無駄だよ」
 華月が消えていく様を見ながらポツリと呟いたのは大馬だった。


 それからレイと可憐はどこをどう歩いたのか、気がついた時には病院にいた。看護婦の話を聞くと山奥で二人一緒に倒れていたそうだ。
「私達‥助かったんでしょうか」
「そう、みたいだね‥華月‥」
 目が覚めた時、二人は華月の携帯電話に電話をかけたが、繋がる事はなかった。きっとあのままカロンに―‥。
「華月さん‥」
 ぐす、と可憐が鼻をすすり涙を堪えている。その時、病室のドアをノックする音が二人の耳に入ってきた。
「はい、どうぞ?」
 ギィ、と扉が開きそこから覗かせた顔は―‥。


「‥‥お迎えにあがりました、お客様」


END