弱き者、汝の名は‥アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
12/07〜12/11
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●本文
弱き者、汝の名は‥:アンダーシティ・ポリス8
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太陽のかけらが隕石となりて、地球に降り注いだ現象―‥熱砂。
生きる事に絶望した人間達は地下に己たちの世界を切り開いた。
その地下世界を守る警察‥アンダーシティ・ポリス
彼らは今日も地下世界の平和を守るために活動を続ける。
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●話の内容
『あたしはいつも一人だった』
この地下世界に生まれて、バムスを持って生まれた人間は幸せ。
逆に何の能力も持たない人間は、役立たずと罵られ厄介者扱い。
全てがそんな人間ばかりだとは思わない―‥けれど‥。
あたしの周りにはそんな人しかいなかった。
実の親ですらあたしを厄介者だと暴力を振るった。
力があれば、あたしは厄介者ではなくなる―。
力さえあれば―‥。
最初は優しい男の捜査官だった。
ここ、北居住区の街では暴力は当たり前。
全居住区の中で一番栄えてはいるけれど、栄えているという事は治安が悪いという事。
その日も街の奴らがあたしを殴ったり蹴ったりしていた。
「やめないか!」
その男の人はバムスを使って荒くれ者たちを追い払ってくれた。
バムス―‥それさえあれば。
「な、何を‥」
あたしは無意識のうちに優しい男の人の腕を強く握っていた。
すると腕が熱をもったように熱くなった。
「な、なに‥」
呟いたと同時に手から放たれた炎は、優しい男の人が使っていた能力。
「ちから‥あたしの‥あたしのちから‥」
あたしは、気が狂ったかのようにけたたましく大声で笑っていた。
「あははははっ、これで、これであたしは一人じゃなくなる。あたしも皆の仲間にしてもらえる!」
それから少女は何人ものポリスから能力を奪い、今では五つもの能力を所持するまでに至った。
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●募集事項
◎毎度の如くアクション映画になります。
◎この話は出演者のみを募集します。
◎出演者はバムスと呼ばれる特殊能力を持っています。これは参加者の皆様が自由に考えてくださって構いません。
◎全員がバムスを持つ必要性はありませんが、話に大きく関わる役をされる方がバムスなしだとアクションもなしになってしまう可能性が大きいです。
◎今回の主な登場人物は「地下世界警察」「バムスを奪う少女」「スラムの住人」他にも適役がありましたらお書きください。
◎「バムスを奪う少女」を演じられる方を必ず出してください。
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アンポリの世界観
※今更かよ、と思われますが説明してなかったと思い、書かせていただきました。
◎熱砂によって地上に住めなくなり地下へと移り住んでいる。
◎ある程度は復興したものの、未だに荒廃している世界。
◎スラム(居住区)については以下の通りです。
※東居住区‥普通に人が住んでいるスラム。治安は少し悪い。
※南居住区‥ここは現在封鎖中です。
※西居住区‥普通に人が住んでいます。治安はどちらかというと良い方です。
※北居住区‥人が住んではいるものの、治安が悪い。
※上層地区‥どの居住区にも当てはまらない中央地区。治安は良くお金を持っている人間が住んでいる地区です。
※今回の舞台は北居住区になっています。
◎以上がアンポリ世界観についての説明です。
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◎プレイングに書いて欲しいこと。
※役名/バムス/一人称/二人称/口調/
なるべくでいいのですが、プレイングは簡潔に書いてください。
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●リプレイ本文
最近、ポリスの能力が奪われていくという奇怪な事件が起き始めた。犯人はまだ捕まっていなく、奪われた仲間が言うには「女の子だった」と口を揃えた様に言っていた。
「嫌な事件ですねぇ‥」
ドミニカ(ジュディス・アドゥーベ(fa4339))がため息混じりに呟くと、そこに聞き込みから帰ってきたゴドー(片倉・神無(fa3678))がやってきた。続いてレイ(鷹飼・源八朗(fa5082))も疲れた顔で帰ってきた。
「お疲れ様です、ゴドーさん、レイさん」
ドミニカが淹れたての珈琲を渡しながら話しかける。
「何か詳細は掴めたか?」
レンズ(リーベ・レンジ(fa2825))が二人に話しかけると捜査に行っていた二人は首を横に振ってため息を漏らした。
「どの事件も北居住区で起きているな、とりあえず向かうとするか―‥?ドミニカ殿、どうした?」
レンズの言葉にゴドー、レイの二人も視線を移す。すると頭を押さえて蹲るドミニカの姿があった。
(「寂しい‥」)
「‥誰?」
(「あたしの声、聞こえるの?」)
「‥えぇ、貴方は―‥?」
(「あたしは‥ノン(各務・聖(fa4614))」)
「そうですか、私はドミニカ‥」
「おい、大丈夫か?」
ゴドーの声でハッと意識を戻らされ「私は‥」と目を瞬かせる。
「いきなり蹲っていたから驚いたよ、大丈夫?」
レイが手を差し出し、ドミニカはそれを受け取り立ち上がる。そこに西野(西村・哲也(fa4002))が捜査部屋に入ってきた。
「今回の事件に関して重要な手がかりを見つけたんですけど‥」
手がかり?とレンズが問いかけると西野は持っていたファイルの内容を読み始めた。その内容とは北居住区で一人の少女がバムスを使い、人々を苦しめているという事。それだけならどこにでもある事件だ、しかし彼女の場合は―‥。
「暴れ始めた時期が、事件の始まりと一致しているって事か」
ふむ、とレンズが呟き「調べてみる価値はありそうだな」とゴドーが答えた。
(「力があれば‥何でも出来る」)
「あ‥また‥」
(「寂しい‥一人はいや‥」)
「大丈夫、貴方は一人ではありません‥私とこうして話していますもの」
ドミニカが突然話し始めた事に、その場にいたメンバーは怪訝な視線を送る。
「‥どうしたんです?ドミニカさん」
西野が話しかけてくると頭の中に響く声が途絶え、ドミニカは自分に起きた不思議な現象を皆に話した。
「誰かの声が聞こえるとは不思議なものだな」
そう呟くのはレンズ、そして話は能力を奪う『バムス・ヴァンパイア』の話へと戻った。
「とりあえず北居住区に向かうとしないか?」
ゴドーの提案でドミニカ、西野、レイ、ゴドーの四人で北居住区へと調査をしに行く事になった。
「捜査に行くのは構わないが、経費節減を心がけてくれ。最近上司から言われる事が多くてな。それと―‥」
机に置いてあったダーツを手に取り、壁に貼られた地図目掛けて投げる。タン、と小気味良い音を立てて刺さった場所を見ると、北居住区の中でも特別治安の悪い場所だった。
「確実とは言えないが、バムス・ヴァンパイアの出現確率が高い場所だと思う‥っと」
言葉を止めてレンズが足元を見る。
「いかん、下駄の鼻緒が切れる所だった‥」
そう呟くレンズを笑いながら四人は北居住区へと向かった。
「何度来ても慣れない場所ですね」
西野がため息混じりに呟く。北居住区は栄えているがその分、治安も空気も悪い。簡単に言えば荒くれ者のたまり場になっているのだ。
「何か騒ぎがないか?」
ゴドーの言葉に耳を澄ますと確かに悲鳴のようなものが聞こえてくる。四人は慌てて現場に向かう―‥するとそこにはスラムで人を襲うノンの姿があった。
「もう役立たずじゃない!」
そう言って炎を出し、住人を襲う。そこに一人の少年コロナ(パイロ・シルヴァン(fa1772))が自身の能力、レーザーを使いノンを止めようとしている。
「貴方の力、凄いね‥」
あたしに頂戴、そう言ってコロナに襲い掛かろうとする。
「何をしてるんだ!」
「ポリスの人?この人、やっつけて!」
コロナが助けを求めるように叫び、レイがコロナとノンの間に入って止めようとするが‥ノンの五つ目の能力、相手に恐怖を与える能力が発動してレイは「うわぁっ!」と叫びながらその場に座り込んだ。
「ちっ」
レイに襲い掛かろうとするノンを止める為にゴドーがフレミングを使い、ノンの足を掠める。
「邪魔しないで!」
そう叫び、炎を出してノンはメンバーの前から姿を消した。
「待ってください‥」
西野がバムス、レッドアイを発動させてノンの場所を探る。彼の能力はサーモグラフィーのように温度分布を把握する能力で今回のように逃げた犯人の探査などに用いられることが多い。
「彼女は‥あっちです」
西野が指差した先には積み上げられた瓦礫に隠れたノンの姿があった。
「俺が行きます、ゴドーさん‥能力で少女の動きを封じてください」
そう言うと西野はノン目掛けて走り出す。ゴドーもポケットに忍ばせている小銭を取り、ノン目掛けて放つ。しかしテレパシー能力を持っているノンに対して大きな効果は見られなかった。
「何で、邪魔するの‥」
ノンはギリと唇を噛み締めながら奪った能力で西野と戦う。
「貴方は‥自分のしている事が分かっていますか?」
西野は目で相手の様子を伺いながら、徒手で攻撃をしていく。ノンも攻撃を仕掛けてくるが西野のもう一つの能力である絶対防壁を使いながら攻撃を弾いていた。
「西野さん!」
レイも応戦しようと飛び出してくるが何をしていいか分からずに「何をすればいいですか?」などと聞いてくる。とりあえず銃で応戦しようと発砲するが狙いを定め損ねて西野の方へ弾丸が飛んでいく。
「な、何で俺を狙うんですか!」
間一髪で防壁を出し、弾丸が当たる事はなかったがノンの炎が西野を襲う。
「お前は味方を死なせる気か」
ゴドーの言葉にうな垂れるが「お前は格闘戦向きだろうが」という言葉にレイは格闘で応戦する事を決めた。
「力があれば、何でも出来るの!」
その言葉にドミニカは頭の中に響いてきた声の主が頭を過ぎった。
「ドミニカ!避けろっ」
ボーっとしている内に炎が目前までやってきてドミニカは避ける事も叶わなかった―‥がバリアーが展開され、炎が直撃する事はなかった。
(「一人にしないで、一人はいや‥」)
バリアー展開と同時に響いてきた声、流れ込んでくる孤独感に目の前の少女に「‥ノンさん、ですか?」と問いかけた。
「え‥?」
「私です、ドミニカです‥」
その言葉にノンは目を見開き、手から放出していた炎もそれと同時に消える。
「能力があれば‥誰かあたしを必要としてくれると‥」
頭の中とはいえ、目の前にいるのは自分に優しい言葉を掛けてくれたドミニカ、それを知ると同時に逃げるという選択はノンの頭の中から消えうせた。
「バムスは‥飾りじゃない‥覚悟を持って使わなければならない力なんですよ」
西野の厳しい言葉にノンはただ泣きじゃくりながら「ごめんなさい」と繰り返し呟いていた。そして次の瞬間、ノンは意識を失い倒れた。元々は能力を持たない身、それが突然幾つもの能力を扱ってきたのだ。体に相当の負担が掛かっていたに違いない。
「おい、レイ」
ゴドーがレイを呼び、ノンに能力を使うように指示する。レイの能力は身代わり、相手の怪我などを治癒する代わりに自分の体力を激しく消耗する能力だ。
「分かりましたよ‥」
レイは渋々だがノンの怪我を癒す。ノンが受けていた傷は完全に塞がり元の綺麗な肌に戻っていった。
「おわっ」
ノンを癒し、立ち上がろうとするレイだが思いの他体力を削られていて立ち上がる事すらままならない状態だった。
「しかたねぇな」
ゴドーは肩を貸して署まで戻ることにした。ゴドーが西野の前を通り過ぎる時「お前さんにしては熱くなってたな」と煙草を咥えたまま話した。
「‥すみません、少し頭を冷やします」
苦笑交じりに呟く西野は倒れているノンを抱き上げ、ドミニカと共に病院まで歩くことにした。
「あたしがポリスの訓練所に?」
あれから数日後、ドミニカとゴドーはノンが入院する病院に見舞いに来ていた。あの事件以来、奪ったバムスはノンの中から消えて、バムスを奪うという能力も身を潜めた。しかし、いつまた力が暴走するか分からないと判断した上層部はノンを訓練所に入れて能力のコントロールを出来るように訓練をさせたいと決断を下した。
「えぇ、悪い話じゃないと思います。訓練所を出た後はポリスで働けるように手配されますし、どうですか?ノンさん」
ドミニカの提案にノンは暫く考えていたが「入ります」と短く返事を返した。
「そうですか、良かった。じゃあ私は訓練所に入る手続きをしておきますね」
そう言って部屋を出て行こうとしたドミニカをノンは呼び止めた。
「どうしました?」
「あの‥あたし、テレパシー消えたけど‥友達で‥いてくれる‥?」
不安げに話すノンにドミニカはにっこりと笑って「能力があろうとなかろうと私達は友達ですよ」と言って部屋を出て行った。
「良かったな、それにしてもお前さんも運がいいな」
ゴドーの言葉にノンは意味が分からないといった表情を浮かべる。
「俺の能力を奪わなくて良かったなって話だよ」
俺の能力を奪ったら、金が掛かって仕方ないからな、そう言いながらゴドーは遠くない未来に『仲間』になるであろう少女の部屋を後にした。
END