誰が為に君は泣くアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 2.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/13〜12/16

●本文

誰が為に君は泣く:アンダーシティ・ポリス9


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太陽のかけらが隕石となりて、地球に降り注いだ現象―‥熱砂。
生きる事に絶望した人間達は地下に己たちの世界を切り開いた。
その地下世界を守る警察‥アンダーシティ・ポリス
彼らは今日も地下世界の平和を守るために活動を続ける。

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●話の内容

地下世界警察、それはバムス所持であれば無条件で所属できる。
今のご時世で他人の過去を気にする人間など少ないからだ。
「よぅ、何してんだ?」
資料整理をしていると先輩捜査官のタカが肩を叩きながら問いかけてきた。
「あ、昨日の事件の事を纏めているんです」
後から楽でしょう?とにっこり笑いながらレポート纏めを再開し始めた。
「真面目だねぇ、このポリスの中でお前さんみたいに真面目なのは中々いねぇよな」
「いえ、そんな事ありませんよ」
彼は苦笑しながら答える。
「じゃあ、俺はお先に失礼するけど頑張れよ」
「はい、お疲れ様でした」
彼は先輩捜査官を見送るとペンを机に置いてため息をついた。

「よーぅ、久しぶりだな」
先輩捜査官が去ってから一時間ほどが経過した頃、一人の男が彼の目の前に立った。
「お、お前は‥」
「まさかお前がポリスになってるとはなぁ。キラーのお前が」
キラー、男がその言葉を口にすると彼はギッと鋭い瞳で睨みつける。
「僕は‥もうキラーなんかじゃない!」
「『今』はな、でもお前がどうあっても血塗られた過去は消せやしないよ」
今日はそういう話をしに来たんじゃないんだ、そう言って男は一枚の写真を差し出した。
「‥これは‥」
「コイツを殺して欲しいんだよ」
ふざけるな、そう言い掛けた時、男は彼の一番嫌がる方法を口にした。
「お前、過去を誰にも言ってないんだって?キラーだとバラされたくなければ大人しく俺の言う事を聞くんだな。昔は仲良くやってたろ?」
男は下卑た笑いを見せながら去っていった。
彼は渡された写真をぐしゃりと握り締めながら唇を噛み締めた。
そして―‥彼は自分の過去を皆に知らされない為に今回だけ昔に戻ることに決めた。

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●募集事項
◎毎度の如くアクション映画です。
◎この話は出演者のみを募集しております。
◎出演者はバムスと呼ばれる特殊能力を持っています。これは参加者の皆様が自由に決めてくださって構いません。お好きな能力をお考えください。
◎全員がバムスを持つ必要はありませんが、話に大きく関わる役をされる方がバムスなしだとアクションもなしになる可能性があります。
◎今回の登場人物『地下世界警察』『暗殺を依頼してきた男』『過去にキラーと呼ばれた青年』『暗殺されるかもしれない人物』です。
◎出来れば上記四つの役柄は出して欲しいです。
◎『暗殺されるかもしれない人物』は無理にだす必要はありません。暗殺をする前に止めれば無理に決める役柄ではないからです。
◎『キラー』とは数年前まで世間を騒がせていた殺し屋です。突然姿を消し、それ以来消息不明とされていました。

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アンポリの世界観
※今更かよ、と思われますが説明してなかったと思い、書かせていただきました。

◎熱砂によって地上に住めなくなり地下へと移り住んでいる。
◎ある程度は復興したものの、未だに荒廃している世界。
◎スラム(居住区)については以下の通りです。
※東居住区‥普通に人が住んでいるスラム。治安は少し悪い。
※南居住区‥ここは現在封鎖中です。
※西居住区‥普通に人が住んでいます。治安はどちらかというと良い方です。
※北居住区‥人が住んではいるものの、治安が悪い。
※上層地区‥どの居住区にも当てはまらない中央地区。治安は良くお金を持っている人間が住んでいる地区です。

今回の舞台は東居住区です。

◎以上がアンポリ世界観についての説明です。

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◎プレイングに書いて欲しいこと。
※役名/バムス/一人称/二人称/口調/
なるべくでいいのですが、プレイングは簡潔に書いてください。
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●今回の参加者

 fa2321 ブリッツ・アスカ(21歳・♀・虎)
 fa2825 リーベ・レンジ(39歳・♂・ハムスター)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa4210 小明(11歳・♀・パンダ)
 fa4235 真喜志 武緒(29歳・♂・狸)
 fa4300 因幡 眠兎(18歳・♀・兎)
 fa4578 Iris(25歳・♂・豹)
 fa4614 各務聖(15歳・♀・鷹)

●リプレイ本文

「誰かいるんでしょうか‥」
 ラルム(各務・聖(fa4614))が会議室と書かれた部屋の前を通っていると中から話し声が聞こえてきた。
「これが暗殺対象だ、よろしく頼むぜ‥キラー(Iris(fa4578))」
 扉を開けようとした時に聞こえた『キラー』という言葉にラルムは固まったように手を止めた。キラー、それは数年前まで世間を騒がせていた殺し屋の通り名だ。しかしキラーは忽然と姿を消し、それ以来名前すら出てこなかった。
「誰かいるのか!?」
 扉の向こうの気配に気がつき、シャドー(真喜志・武緒(fa4235))が叫ぶ。ラルムは慌てて見つからないように会議室から離れる。そして皆の元へと向かった。
「‥気のせいか?まぁ、いい、受けてくれるんだろ?」
「‥俺はもうキラーじゃない。それに―‥何で署に堂々とお前は入ってこれる‥?」
 キラーと呼ばれた男、エンジは忌々しげにシャドーを睨みつける。確かに暗殺請負人のシャドーが堂々と署内にいるのは違和感があった。
「こう見えても普段は情報屋をやっててね、ポリスにも知り合いがいるんだよ」
 それより頼んだぜ?半ば強引に暗殺対象の写真を手渡し、エンジの前から去って行った。


「キラーがポリス内部の人間?」
 怪訝そうな顔で答えるのはソニア(ブリッツ・アスカ(fa2321))だった。
「誰かの暗殺話をしていたんです‥」
 ラルムの言葉に草加(草壁・蛍(fa3072))、レンズ(リーベ・レンジ(fa2825))、パティ(因幡・眠兎(fa4300))、そして―‥エンジ、ポリスに所属する全員が「違う」と否定をした。
「おい、証拠もナシに仲間を疑うなんて何考えてんだ!」
 仲間を疑うラルムにソニアは怒りを隠す事が出来ずに食って掛かった。
「落ち着きなさいよ‥でも人の脛を調べて回るような事は感心しないわね」
 草加がちらりとラルムを見ながら呟いた。今のご時世、過去に傷を持つ人間の方が多いのだ。それを探るような真似をするラルムを良く思わないのだろう。
「‥ドア越しに聞いただけですから‥私、調べてみます」
 やはり納得できない部分があるのか、ラルムは独自に調査をする事にした。
「あ、ちょ‥もう仕方ないわねぇ」
署を飛び出していくラルムに草加はため息を吐き、書類整理の仕事を再開した。
「さて、ここで議論していても仕方ない。キラーの居場所を探ってみようか」
 レンズがダーツを手に取り、壁に貼られた地図に向けて投げつけた。しかし―‥結果は誰もが目を疑うような物になった。
「‥‥ここ、だよね?」
 パティが刺さった場所を見ながら小さく呟く。しっかしろよ、ソニアの言葉にもう一度ダーツを投げるが結果は先程と同じ。今いる署内を指している。
「そういえば‥マリー(小明(fa4210))という少女が狙われているという話があったな‥」
「あぁ、そういえば‥。キラーがいたとして、狙っているのはその少女かしら?」
 草加の言葉に皆が頭を悩ませ、結局捜査をする事になった。
「‥エンジ?」
 ボーっとしているエンジに気がつき声を掛けるが返事は無く、三回目の呼びかけでようやくソニアの声に気がついた。
「何か今日はおかしいぞ?大丈夫か?」
「あぁ‥大丈夫だ」
 エンジの様子がいつもと違う事を疑問に思いながらも、ソニアとエンジはマリーがいる東居住区へと足を向けた。


「きゃあっ!」
 マリーは最近、同じ夢をよく見る。自分が殺される夢、マリーは予知という能力を持っていて少し先の未来を夢で見る事が出来る。しかも殺される場所は住んでいるスラム。危険だろうが逃げるわけにはいかない。
「‥マリー、何か、したのかな‥」
 マリーの夢は数日後先を見る、それはつまり自分が殺されるのは近い未来だという事になる。
「‥お外、出よう‥」
 家の中にいても気が滅入るだけだと感じたマリーは外に出る事にした。出た先で一人の男性が立っているのを見つけ、マリーは「こんにちは」と話しかけた。男性‥エンジはマリーを見て驚いたように目を見開いた。
「どうか、しましたか?」
「いや‥」
「あの、一緒に遊んで、くれませんか?」
 少し寂しそうな目を見せるマリーにエンジは「いいよ」と優しく答えた。
「マリー、怖い夢を、見ました‥殺されちゃう、夢です‥」
 その言葉にエンジはギクリとしてマリーを見る。まさか自分を狙っている人間なんて思ってもいないのだろう、涙ながらに「何か、悪い事‥しちゃったのかな」と弱々しく呟いた。


「え?」
 ラルムはその頃東居住区に来ていた。今朝、狙われているかもしれないという通報があった為、狙われている少女の身辺調査にやってきたのだ。しかし矛盾点がある事に気がついた。それは‥誰一人としてマリーが狙われている事を知らないのだ。
「どういう事でしょうか‥誰も知らない話を何故‥署にやってきた人は知っていたのでしょう‥」
 疑問に思ったラルムは通信でレンズへと連絡を取った。
「‥誰も知らない?妙だな‥署に来た男は詳しく話をしていたと聞いたが‥」
 レンズはシャドーの居場所を知るためにダーツを地図へと投げつける。刺さった場所を草加とパティ、そしてラルムに知らせてすぐに向かうようにと指示をする。


 俺は自分の為に、目の前の子を殺めるのか‥?
 マリーと接しているうちに葛藤している自分の心に拍車をかけている事に気がついた。
「‥そろそろ行かなくちゃ、仕事で来てるんでね」
 そう言ってマリーの前から立ち去ると「ばいばい」と言って手を振る姿が視界に入ってきてエンジは心を痛めた。
「‥やっと見つけた自分の居場所‥奪われるわけには、いかないんだ―‥っ」
 そう呟くと、マリーの家の近くに潜み、顔を隠す為に覆面をして震える手を押えるために拳を握り締めた。
「あんたがマリー?」
 マリーがやってくると同時にソニアも一緒にいる事に気がつき、エンジはさっと物陰に身を潜めた。
「はい、貴方は、どちら様ですか?」
「俺はソニア、ポリスだ。あんたが狙われてるって話を聞いて―‥伏せろ!」
 マリーと話している最中、後ろから襲ってくる覆面の男‥エンジに気がつき自身の能力スーパーソニックを使用してマリーを助ける。しかし肩に傷を負い、ぽたぽたと血が滴り地面に染みを作った。
「‥これは‥」
 それからマリーを庇いながら目の前の男と戦闘していくうちに奇妙な感覚がソニアを襲う。それもそうだ、何故ならこんな戦い方をするのはソニアの最も親しい友人しかいないのだから。
「‥止めろ、何でだ‥」
 相手の攻撃を避けながらソニアが呟く。
「もう‥止めろ!エンジ!」
 ソニアの言葉にエンジの動きがピタリと止まり、覆面を外す‥すると顔を苦しげに歪ませたエンジの姿があった。
「何で、何でお前が!俺達は仲間じゃなかったのか!」
「‥仲間だから、この居場所を奪われたくなかった、知られたくなかったんだ」
 エンジはガクリと膝を折り、地面に座り込んだ。


「畜生、あの野郎‥失敗しやがって」
 影からエンジの様子を見ていたシャドーは、すぐさま自宅に戻り荷物を乱暴に纏め始めた。エンジの口から自分の事が露見するのを恐れての行動だった。
「さっさとこんな場所は出て行くに―‥」
 荷物を持って家を出て行こうとした時、目の前には草加、パティ、ラルムの三人のポリスが立っていた。
「あら、お出かけですか?」
 パティが話しかけるが、シャドーは隠し持っていたナイフでパティに襲い掛かるが能力を発動させ、シャドーを殴りつけた。遠距離での戦闘ならパティは不利だが、手の届く近距離でなら負けるはずもない。パティが攻撃をしている最中、ラルムも能力『パフューム』を発動させシャドーに幻覚を見せる。周りは囲まれている、という幻覚を。
「逃げないで下さい‥周りは囲んでありますから‥」
 周りが囲まれているという幻覚に観念したのかシャドーは忌々しげに三人を睨みつける。
「さて、調べはついてるわよ。あんたの能力は無意識下に暗示をかけられるんですってね。じゃあ‥自分に被害がないようにキラー‥エンジにもかけているんでしょ?解いてもらうわよ」
 キラーがエンジだったという事は通信で三人にも話が来ていた、そして何故かエンジがシャドーを殺せないという事も。そこから推理すれば暗示系の能力をかけられている、そう思うのが一番自然な事だった。


「あんた、何でマリーを手にかけなかったの?」
 シャドーが逮捕され、エンジも署に連れて行かれる時に草加が問いかけた。するとエンジはフッと笑みを浮かべ「手にかけたら‥俺はもう『エンジ』でいられなくなりそうだったからな」と寂しげに笑って答えた。
「エンジさんが持っていた良心が最後の最後まで抗い続けて、結果としてマリーさんを助けたんですね」
 パティが連れて行かれるエンジを見ながら小さく呟いた。
「待って、下さい」
 エンジの後を追いかけて、呼び止めるのは狙われていたマリーだった。彼女はエンジに一輪の花を差し出し「また、遊んで、くださいね」と笑いかけながら話していた。その言葉に「‥また‥今度な」とマリーの頭を撫でてやりながら歩いていった。
「まぁ‥大事には至らなかったんだから、大した処罰もないでしょう」
 脛に傷を持ってる奴なんて大勢いるんだから、と草加が呟いた。


 その後、エンジの親友であるソニアが色々な所を駆け回り、エンジの処罰を軽くしてくれるようにと頼んでいたのだとか―‥。



END