動物使い 弐アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/11〜01/14

●本文

『あの人を奪った世界の全てを―‥僕は憎む』

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目に見えぬ『絆』で結ばれた者達がいる。
片方は限りなく人に近い存在で『動物使い』と呼ばれ、もう片方は人の姿をしてはいるが限りなく獣に近い存在で『ツカワレ』と呼ばれている。
彼らは『魔』と『黒の動物使い』と呼ばれる存在と長きに渡って戦いを繰り返していた。


※※※第二夜※※※

先日、一人の動物使いが死んでしまったと統括府から連絡があった。
死んでしまったのは『菜月』という女性で、優秀な動物使いでもあった。
彼女、菜月は黒の動物使い&魔と交戦中、勝てないと思ったのか統括府へ応援要請を求めてきた。
しかし、動物使い達が到着した時には彼女の亡骸と、それに縋り泣くツカワレの姿があったという。
「それで?私達がわざわざ本部まで呼び出された本当の理由は?」
一人の動物使いが腕を組み、壁に背を預けながら呟いた。
すると統括司令はため息混じりに、そして言いにくそうに話を始めた。
「菜月のツカワレ‥紫皇(しおう)の事だ‥」
紫皇は虎のツカワレで、菜月に命を救われたツカワレでもあると司令は答えた。
「命を救われた?」
「紫皇にとって菜月は二人目の動物使いなんだ。一人目の時も目の前で殺されている‥」
動物使いと契約していないツカワレは、力の源となる『絆』の力が補充できず、徐々に弱って死に至る。紫皇が一人目の動物使いを亡くし、死に掛けていた所を菜月が契約を結び、紫皇は命が助かったのだとか。
「紫皇が‥魔へと変貌しかけている」
司令の言葉に、その場にいた動物使い、ツカワレが目を見開く。
「ツカワレが‥‥‥魔に?」
「あぁ、珍しい事じゃない。動物使いも黒へと変わるケースがある」
「動物使いまで―‥?」
「今、黒側にいる動物使いの大半は、かつての同志だ」
司令が言うには、白に属する者が大きな絶望を味わった時―‥闇へと堕落して黒の動物使い、そして魔へと変わるのだという。
「しかし、紫皇はまだ完璧な魔へと落ちてはいない。どうか‥アイツを助けてやってくれ」


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●募集事項
◎これはアクション映画です。
◎今回の登場人物は『白の動物使い』『ツカワレ』『紫皇』でしょうか。
場合によっては紫皇を使役しようとする『黒の動物使い』の登場もあるかもしれません。
◎白の動物使いとツカワレは必ず組ませてください。どちらかが欠けても戦力としては大幅に能力が激減します。
登場配役
◎菜月は無理に出す必要はありません。
◎白の動物使い(必須)
◎ツカワレ(必須/白の動物使いと同じ人数を出してください)
◎紫皇(必須/男性が好ましいです)
◎黒の動物使い(これは皆様の話し合いによっては登場ナシでもOKです)



●動物使いの設定など
◎白の動物使いにはパートナーとなる『ツカワレ』が存在します。
◎『ツカワレ』を演じられる方は自分の戦闘形態になる動物をお書きください。動物の種類はPCの獣人の動物以外でも構いません。
例)羊、山羊などBNOで存在しない獣人でも構いません。
◎白の動物使いとツカワレには絆が存在します。絆が深ければ深いほどツカワレの能力も上がります。
◎白の動物使いは限りなく人に近い存在ですが、人ではありません。
◎ツカワレは普段、人の姿をしていますが限りなく獣に近い存在です。
◎必ず白の動物使いとツカワレは二人一組にしてください。
◎それとツカワレは動物となってますが、別に虫だろうが魚だろうが構いません。
◎ツカワレの方はパートナーと繰り出す必殺技を考えていてください。
例)ツカワレがサンマだった場合→自身を焦がしていい匂いをさせて敵の動きを止める‥など極端な話、こういうのでも構いません。
◎それとツカワレの戦闘時についてなんですが外見は半獣化と思ってください。
(流石に完全に動物になってしまうとお笑いになってしまいそうな気がするので)
◎動物使いとツカワレの絆が最高潮になった時に『超必殺技』が使用可能となります。



※プレイングの書き方※
例)動物使い
配役:白の動物使い
役名:水貴
一人称:私
二人称:〜さん
口調:です、ます、でしょうか?
対となるツカワレ:太郎
(出来れば台詞例も書いておいてほしいです)

例)ツカワレ
配役:ツカワレ
役名:太郎
一人称:俺
二人称:お前
口調:〜だ、〜じゃねぇ?
対となる動物つかい:水貴
(出来れば台詞例も書いておいて欲しいです)

‥‥と上記のようになりますが、あくまで例ですので皆様の書きやすい書き方でOKです。

対となる動物使い&ツカワレが決まった時点でもいいので、仮プレを提出していてほしいです。
白紙となった場合は相方との連携が出来なくなりますので、ご協力お願いします。

●今回の参加者

 fa0470 橘・月兎(32歳・♂・狼)
 fa0898 シヴェル・マクスウェル(22歳・♀・熊)
 fa1772 パイロ・シルヴァン(11歳・♂・竜)
 fa4031 ユフィア・ドール(16歳・♀・犬)
 fa4713 グリモア(29歳・♂・豹)
 fa4728 レイス アゲート(26歳・♂・豹)
 fa4916 (18歳・♀・蝙蝠)
 fa5280 ケイト・フォーミル(28歳・♀・一角獣)

●リプレイ本文

「‥魔に堕ちかけのツカワレ‥ですか」
 統括府から呼び出されたた響(橘・月兎(fa0470))と咲凪(ユフィア・ドール(fa4031))は互いの顔を見合わせる。彼らは動物使いの中でも『闇狩り』と呼ばれており、闇に堕ちた同志を抹殺してしまう特殊な存在でもあった。
「また‥闇に堕ちた同志がいるんだね‥」
 状況を判断して必要なら紫皇を抹殺しろ、という任務を受けて咲凪は小さく呟いた。
「とりあえず、向かうとしましょうか。咲凪」


「誰も信じられるものか。菜月を助けてくれなかった動物使いもツカワレも‥‥守りきれなかった俺も‥」
 夜の冷たい風を受けて呟くのは紫皇(グリモア(fa4713))、震える体が寒さのせいなのか悲しみのせいなのかは恐らく自分自身にも分かっていないだろう。
「おい!」
 突然話しかけられ、紫皇は少し驚きながら声の方を見上げる。するとそこには翠嵐(レイス・アゲート(fa4728))が立っていた。
「ものすげ〜通行の邪魔なんだが‥」
 しかし翠嵐は紫皇の様子がおかしい事に気づき、紫皇の顔を覗き込んだ。
「‥これは‥堕ちかけているのか?」
「煩い、俺に構うな‥」
 少し苦しみながら話す紫皇に対して翠嵐は「鬱陶しい」と短く呟いた。
「そんなに憎んで、悲しんでいるなら復讐でもしてみるか?力なら‥貸してやる」
 翠嵐の言葉にピクリと反応を返した。
「‥力が欲しい。菜月を見殺しにした奴ら全てに復讐が出来るくらいの力が‥」
「貸したら、高く付くかもしれないが、それでも構わないんだな?」
 翠嵐の問いかけに首を縦に振る紫皇に、残酷な笑みを浮かべた。


「この件はイレン(パイロ・シルヴァン(fa1772))とティラ(シヴェル・マクスウェル(fa0898))にも知らせた方が良いだろうな」
 そう呟くのは京那(ケイト・フォーミル(fa5280))だった。最初に統括府から紫皇の件で依頼を受けたが、菜月の息子であるイレンにも知らせてやるべきだと判断した。
「そうですね‥でないと悲しすぎます‥」
 京那のツカワレである紡(柳(fa4916))も悲しそうに目を伏せて呟いた。


「‥行くのか?」
 ティラの言葉に「もちろんだよ」とイレンが答える。
「僕は母さんを守れなかった紫皇が許せない」
「‥イレン、辛いのは紫皇も一緒だと思う。それに‥紫皇が魔に堕ちるなんて菜月は望まない」
 そう呟き、イレンとティラは紫皇がいるとされる場所へと向かい始めた。


 紫皇がいた場所は、生前の菜月と紫皇がよく訪れた場所。紫皇と菜月が始めて出会った場所だった。
「‥紫皇」
 ティラが呟くと、紫皇の隣に立っていた翠嵐がこちらを振り向く。
「白達かよ?鬱陶しいな、紫皇‥お前の憎んでいた白達だぜ、好きにしろ」
 翠嵐の言葉に俯いていた紫皇がゆっくりと此方を向き、そして襲い掛かってくる。
「紫皇!正気に戻れ!このままじゃ本当に魔に堕ちるぞ!」
 ティラがイレンを庇いつつ戦うが、紫皇は聞く耳を持たずに「煩いっ!」と叫んだ。
「紡!」
 京那が叫ぶと同時にティラと紫皇の間に、紡が割って入り攻撃を受け止めた。そして体勢を整える為に紫皇は一度後退した。暫くの間、互いが動かない状況が続き、それに苛立ちを見せたティラが叫んだ。
「お前は!こんな事が本当に菜月が望んだ事だとでも思っているのか!」
 ティラの言葉に今まで黙っていた翠嵐が「くっ」と鼻で笑う。
「あ〜‥なんか綺麗事言ってやがる。は、そんな言葉なんざ聞き飽きたね。所詮は白も黒も変わりなんてないんだよ。両の手の平は血で真っ赤に染まってるんだからな!」
 そんな言葉に説得力なんかない、そう叫ぶ翠嵐に二組の動物使いはギリと唇を噛み締めた。
 ―‥と、そこに。
「やれやれ、見ていられませんね」
 呆れたように呟いたのは響、その隣に立っているのは咲凪だった。
「咲凪、現在の能力はどんな感じですか?」
「そうね、今は普通かしらね。ただ‥遠距離攻撃より直接攻撃した方が効果あるかもしれないわ」
 元々が直接攻撃型だからね、そう呟いて咲凪は楽しそうに笑む。
「さぁ‥行って遊んでおいで」
 響の言葉を合図に咲凪がツカワレの姿‥黒豹へと変化して紫皇に襲い掛かった。それを見ている響にティラが叫んだ。
「待て!アイツはまだ完全な魔に堕ちてはいない!死なせる気なのか!」
 ティラの言葉に賛同するように京那と紡も納得いかないと響に向かい話しかける。
「‥では、今の状況で紫皇をどうやって救うんです?貴方達の戦いを見ていて思いましたが、紫皇は傷つけたくない、だけど魔に堕ちてほしくない、そんな考えでどうやって助けると言うんですか」
 響の無情とも思える言葉にその場にいた全員が言葉を失った。そして。
「紡‥紫皇とイレン達を守れ。ただし―‥命は掛けなくていい。私はお前の方が大事なんだから」
 京那の言葉に紡は頷き、紫皇とイレンを守る為に変化をして戦闘体勢を取った。
「‥イレン、私はどうすればいい?私はお前に従う」
「僕は‥絆の深さを知りたいんだよ‥。紫皇がああなってしまったのは絆が深かったからなのか、それとも‥絆が浅かったからなのか‥」
 このままティラが戦っても足手まといになるばかりだ。イレンとの絆が安定しない以上は実力も出せない。ツカワレとはそういう生物なのだから。
「響!そっちに行ったわ!」
 突然、咲凪の声が響いた。それと同時に紫皇がイレンへと攻撃を仕掛ける‥がティラによって紫皇の爪がイレンに届く事はなかった。
「お前は‥菜月の息子であるイレンを手に掛けようとするのか!」
「煩い‥煩い煩い煩いんだよっ!」
 ティラの言葉を受け入れたくないのか、紫皇は頭を振る。そして次の標的に選んだのは京那だった。
「京那っ」
 紫皇が自分を襲う為にやってくる、それは分かっているのに京那の中に恐怖心はなかった。何故なら紡が守ってくれるだろうと思っているから。紡は愚かな程に自分を信じる、だったら自分も愚かなほどに紡を信じるべきなのだ。
「お前を信じる!紡!」
 紫皇の爪が届く間際、ピタリと手が止まる。紫皇の頭の中に菜月との思い出がフラッシュバックしてきたのだ。
「‥俺は、一体‥」
 そう呟くも、何かを決意したように再び京那へと襲い掛かろうとする。しかし紡と京那の技『誘迷歌唱』によりリズムを狂わされて攻撃は当たらなかった。
「紫皇!」
 叫ぶと同時に紫皇の頬をティラが殴る。その瞬間、紫皇は笑みを浮かべたが一瞬だった為に誰も気がつく事はなかった。そして紫皇は再びイレンを襲おうとしたがティラの技である怪光線によって攻撃されて、少し離れた場所まで吹き飛ばされた。それを見ていた翠嵐は舌打ちをして「このままじゃ分が悪いな」と呟き、紫皇と自分との契約を解除した。
「待ちなさい!」
 紡が叫ぶも翠嵐は「今度ゆっくり遊んでやるよ、じゃあな」と言葉を返して消えていった。
「‥‥そうか、これがお前の望みなのか‥」
 ティラは遠くで倒れる紫皇を見て悲しそうに表情を歪めた。そして倒れた紫皇に響が問いかけた。
「貴方には選ぶ権利がある。統括府の保護を受け新たな動物使いを選ぶか‥この場で死を選ぶか」
「‥俺は、もう動物使いはいらない‥菜月が死んだ時、俺も死ぬべきだった‥だから」
 俺は生きていたくない、そう呟いて目を伏せた。しかしそれを簡単に納得できないのか響と咲凪以外は言葉を返そうとしない。
「‥貴方達に何が分かるというの?死ななければ救われない、絶望してそこまで追い込まれた子の気持ちが分かるとでも言うの!?」
 叫んだのは咲凪だった。
「‥もう、いいよ。紫皇‥もうゆっくりと眠っていいんだよ‥」
 震える声で呟いたのはイレンだった。きっと彼は最初からわかっていた。紫皇と菜月の間にある絆は今も続いているのだと。
「その選択、確かに承りました」
 響が呟き、視線を咲凪に向けると咲凪は頷いて紫皇を菜月がいるであろう天国へと送った。
「生きていく事だけが最良の結末とは限らないさ‥」
 こうして一人の動物使いが死んだ事によって生まれた悲劇は静かに幕を閉じた。


「京那さん、貴方を失う時は私も彼と同じ道を選びたい‥」
 全てが終わった後、小さく呟く紡に京那は笑みを浮かべて答えた。
「紡、自分はお前と共にある。勿論‥死んだ後もな」


「僕は強くなるよ、ティラを紫皇のようにしない為にも」
 突然イレンが呟いた言葉にティラは驚きながら「何をませたことを言っているんだ」と頭を撫でながら答える。
「‥人と獣、僕らはどちらの天国に行くんだろう‥」
「さぁな‥イレン、今は誰も見ていない。誰も笑いやしないから泣きたい時は泣いておくんだ」
 涙を堪えるイレンにティラが言うと、塞き止められていたものが溢れ出すようにイレンの瞳から涙が零れだした。


「響、貴方が死んだら私は‥貴方を殺害した者を全て抹殺した後に自決するわ」
 紫皇の遺体を背負う響に咲凪がポツリと呟いた。その言葉に響は暫く考え込んで「そうだな‥」と言葉を紡ぎだす。
「俺も咲凪が死んだら動物使いを辞めます。咲凪以外のツカワレはいらないから」



 その後、統括府へと戻った響たちは菜月の墓の傍に埋葬出来るように手続きを取った。きっと今頃、紫皇は菜月と失った最初の動物使いと出会っているだろう。
 そう思わずにはいられなかった‥。


END