夢幻界廊 参アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
2.6万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
01/16〜01/19
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●本文
『それは突然気づいたんだ―‥愚鈍な人間など守る価値がないという事に―』
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●夢幻界廊 参:全てを否定し、彼は何を得る?
俺は彼女が大好きだった。
夢魔から彼女を守れた時、夢喰いである自分を誇りに思えた。
だけど―‥夢魔を倒す俺の姿を見て、彼女が呟いた言葉は―‥
『バケモノ‥』
たった一言だった。
怯えた目で、夢魔を見ていた恐怖の表情で俺を見た。
その時、俺の中で何かがプツリと音を立てて何かが弾けた。
考えてみれば夢喰いも夢魔と同じ異形の者だ。
気がついた時、俺を『バケモノ』と呼んだ彼女の亡骸を抱えながら、けたたましく笑っていた。
「皆、皆‥滅ぼしてやる、無能な人間も、それらを守る夢喰いも―!」
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●募集事項
◎この話は出演者のみを募集します。
◎登場人物は以下の通りです。
・夢喰い(必須/何名でも可)
・OPの夢喰い(必須/男性一名様)
・夢魔(必須/何名でも可)
とりあえず、私が思いつくのは上記の役ですが他にも適役がありましたら、そちらを演じてくださっても結構です。
◎これはアクション映画です。
・夢喰いを演じられる方は『属性』と『属性系統の技』を持たせてください。
・属性などは必須ではありません。必要ないという方は持たせなくても結構です。
・属性などは出演者の皆様が自由に決めて下さって結構です。
◎夢喰いには表の顔があります。
例)教師&店員など
・夢喰いだからといって仕事をしなくてもいいという事はありません。社会人は仕事を学生は学校に行って生活をしています。
・逆に夢魔は人の生気さえあれば生きていけるので夢魔で仕事をしている人はあまりいません。
※夢喰いの仲介所:一話、二話共に「夢猫」が仲介所になっていますので
今回も「夢猫」を仲介所とします。
※OPの夢喰いをどうするかは参加者の皆様にお任せします。
倒すもよし、逃がすもよしです。
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●リプレイ本文
「調べてきました」
悠(加羅(fa4478))が夢喰い本家に渡したのは一人の夢喰いの情報。報道記者である悠にとって調べる事は簡単な事だった。ご苦労、そう言われて下がろうとした時に現場へ赴くようにと指示を渡される。
「了解しました」
そう頭を下げると現場へ向かう為に足を動かし始めた。
「一般人に危害ですか‥」
夢喰いの仲介所となっている『夢猫』に本家からの連絡を受けて雄哉(七瀬・聖夜(fa1610))が小さく呟いた。本家が言うにはヨハン(室賀亜辺流(fa5272))という夢喰いが恋人を殺害した後、関係のない一般人に危害を加え始めたと言うのだ。
「分かりました。動ける夢喰いを集めて、直ちに処置に向かいます」
雄哉はそれだけ言うと電話を切り「今回は貴方も現場に出てもらいますよ」とソファに座っている遥香(悠奈(fa2726))に視線を向けた。
「どうしても‥行かなきゃ‥駄目?」
本家からの連絡を受けている最中も乗り気ではなかったのか嫌な顔をしていた。
「‥あの一件以来、現場に出たくない気持ちは分かりますが今は非常事態なんです」
雄哉の穏やかで、そして厳しい言葉に遥香は「‥はぁい‥」と言葉を返した。
「そいつ、馬鹿じゃないの。身勝手にも程があるわ!」
夢猫から連絡を受けた柚香(ユフィア・ドール(fa4031))は怒りを露にして叫んだ。
「柚香、落ち着け。興奮した所で何も始まらん」
柚香を宥めるように言うのは久樹(橘・月兎(fa0470))だった。彼も夢猫から連絡を受けてヨハン捜索をしていた所、同じように捜索している柚香と出会った。身勝手な理由で人を殺めたヨハンに対する怒りは久樹も同じように感じていた。
「マジでめんどくせぇ、元仲間だか何だか知らないけど俺だって暇じゃねぇんだよ‥」
ぶつぶつと文句を言いながら歩いているのは翔(レイス・アゲート(fa4728))だった。ちょうどその時に悠と合流し、一緒にヨハンを探す事になった。
「お前さんも真面目だな。本家から言われたモン、全部調べた上に現場に出ろ、か」
めんどくさいねぇ、と頭の後ろで手を組みながら翔が呟くと「仕事だから」という短い言葉が悠から返ってきた。
「む〜‥姉様の具合は良くならないし‥つまんな〜い!」
暗い公園のベンチに座り、叫ぶのはアリス(真紅櫻(fa4961))だった。いつも一緒に行動している夢魔が負傷しており、現在は療養中のためアリスは一人でぶらぶらとするハメになったのだ。
「お‥?」
そこで一人の怪しい人物を見かける。それは夢喰いが探しているヨハンという夢喰いの男性だった―‥が何やら様子がおかしい。気配が夢喰いのソレよりも夢魔側に近いものがあるのだ。
「面白いモノ見っけ。他の皆に教えてあげよっかな♪」
良い暇つぶしを見つけた、そう楽しげに呟くとアリスは仲間の所へと向かった。
「何か面白い事ないかしらねぇ‥インクス(マモル・ランスロット(fa4930))」
「そんな事、俺に言うな。フィリエル(ビスタ・メーベルナッハ(fa0748))」
はぁ、とため息をつくとアリスがやってきて「面白い事があるよ♪」と邪笑を浮かべながら呟いた。
「貴様ら!俺の邪魔をするな!」
公園にいたカップルを殺めようとすると悠と翔が真っ先に駆けつけてきた。
「あ〜‥狂い始めてやがる。手間取りそうだな‥」
「まだ他の夢喰いも来てないみたいだし、俺達で何とかしなきゃいけないのか‥仕方ない」
たまには攻撃系になってみるか、そう呟きながら笑み、糸の強度を強くしてヨハンに攻撃を開始する。
「何で邪魔をするんだ!」
ヨハンが『剣の奇跡』を発動させて幾多もの剣を繰り出して、翔と悠に襲い掛かる。
「ちぃっ」
翔が『石』を発動させて剣を防ぐ石の壁を作り上げる。
「二人だけじゃ流石にきついか‥」
悠が呟くが、他の夢喰いが到着するまで、何としても凌がねばならない。
「あ〜、もう始まってる」
クスと笑みを含んだ声が聞こえたかと思うと、アリスとインクスが上空から降りてきた。
「げっ、こんな時に夢魔まで!どんどん厄介事が増えてきやがる」
よぉ、とインクスはヨハンに近づき「仲間にならないか?」と声を掛けた。その言葉に悠と翔は驚きで目を見開く。天敵である夢喰いを仲間にしようなんて考えを起こす夢魔がいるとは思わなかったからだ。
待て、と悠が言いかけた時、後ろの噴水の水が湧き上がり襲い掛かる。
「黙ってろ、俺はコイツと話してんだよ」
翔はインクスがヨハンと話している間に朧を使用し攻撃が当たりにくくした。そこに他の夢喰い達が到着する。
「もう始まっていましたか、遥香‥僕から離れてはいけませんよ?」
「は、はい」
本格的な実戦に赴いたのは初めてなせいか、遥香の体は小さく震えていた。
「貴方の相手は僕です」
そう言ってインクスに向けて電撃を放つ。
「あ!アンタは姉様を傷つけた時にいた奴だね!許さない!」
手の平に火球を繰り出して久樹に向けて放つ。しかしそれは柚香の放った矢によって相殺されてしまう。
「ふふ、そう簡単にはやられないわよ」
フィリエルが呟くと幻覚を使い、夢喰い達を混乱させようと能力を発動させた。
「おい!どこに攻撃してるんだ!」
悠が叫ぶと、翔を襲っていた幻覚が消える。翔はヨハンに攻撃を向けたつもりが幻覚のせいで悠へと攻撃を仕掛けていた。
「あ、あれ」
その様子を見ながらフィリエルは楽しそうに笑う。
「ち、相手が電撃でさえなければ‥」
流石に水と電撃は相性が悪いのか、インクスに決定打を許さない―‥とその時、後ろで震えている遥香が視界に入り、ニッと笑う。
「遥香!」
遥香の背後の水溜りが氷柱のような物に姿を変え、襲い掛かる。
「いや、来ないでぇっ!」
目を伏せて蹲るが一向に痛みが来ない。恐る恐る目を開けると自分を庇う雄哉の姿があった。
「大丈夫、ですか?」
痛い筈なのに遥香を心配させないようにと笑いながら問いかける。そして庇った事を驚いたインクスに向けて動けなくなる程の電撃を与えた。
「これで、暫くは動けないでしょう」
「インクス!僕の仲間を傷つけたな、許さない!」
それはお互い様だろう、と呟く久樹に余計腹をたてたのかアリスは力を振り絞って大きな火球を作り出した。
「久樹、お前の役目は結界だろ、させないよ」
立場的に不利になった夢魔が逃げ出さないように結界を作ろうとするが、アリスがそれに気づいて大火球を久樹に向けて放った。そこで柚香が深呼吸をして矢を作り始める。
「あの巨大な火球を止められるのか?」
「止められる止められないじゃないよ、止める、のよ」
そう言って柚香は何本もの矢を大火球に向けて放った。
「そんな脆弱な矢で僕の火球が壊せるもの―‥か?」
「一本だけならね。だけど同じ箇所を攻撃すれば破壊しやすくなるでしょ」
柚香が言い終わると同時に大火球は大きな音をたてて壊れてしまった。
「‥俺は‥俺?いや‥僕は―‥」
戦いの最中で自分を取り戻しつつあるヨハンに気がついたのかフィリエルはヨハンの隣に立ち、彼にとって最も辛かった記憶の幻覚を見せる。
「これで終わられちゃつまらないわ。さぁ‥」
フィリエルが呟くと、ヨハンが絶叫のような叫び声をあげた。
「お前!」
悠の糸により拘束されたフィリエルは慌てる様子もなく「どうしようかしら」と呟いた。
「僕にはもう止められない!この憎しみを誰に向けていいのか―‥」
ヨハンが叫びながら攻撃をしてくる。それに対して久樹が「甘えるな」と彼の頬を叩いた。
「これから、お前は自分の手で壊した者が何なのかを身をもって思い知る事になるよ。そして気づくんだ。自分の過ちに」
久樹が言うと、ヨハンはガクンと膝を折り、その場に座り込んだ。
「面白い見世物だったわ。また楽しませて頂戴ね」
そう言って空から見下ろすのは拘束したはずのフィリエルだった。幻覚を見せて拘束から逃れたのだ。その横にはインクスとアリスも立っている。
「じゃあな、決着はこの次という事にしておいてやるよ」
「くやしい〜!姉様を傷つけた奴もたのにぃっ!」
そう言って夢魔三人は夜闇に消えて言った。
「何も言う事はありません、僕を‥殺してください」
憑き物が落ちたかのように大人しくなったヨハンが呟いた第一声がそれだった。
「‥遥香、彼を癒してあげなさい」
雄哉の言葉に「‥でも」と何かに恐れるかのように呟く遥香に「貴方も立派な夢喰いですよ」と優しい言葉をかけた。それで決心したのか『癒し』の能力をヨハンに施す。遥香が使うのは体も癒すが心も癒す術。その術によって少しでもヨハンが立ち直ってくれたらいいという思いを込めて、自分に出来る最高の術を施した。
「私も頑張るから‥貴方も頑張って、自分の罪に押しつぶされないで‥」
「立派でしたよ、遥香」
「‥私もお姉ちゃんみたいになれるかな‥」
夜空を見上げながら呟く遥香に「なれますよ」と雄哉は返した。
そして、ヨハンの処分は柚香の祖父、先代夢喰い当主の力を借りて処刑だけは免れるように頼み込んだおかげで本家の中で監視下に置かれての生活という事で治まった。
「これ、一つ貸しね」
楽しげに言う柚香に久樹はため息混じりに呟いた。
「彼は‥今から発狂しそうな程の地獄を味わうんだ。死刑にしてくれと頼みたくなるほどにな」
己の最愛の人を殺め、自分は生きている。
それを地獄と呼ばずに何と呼ぶ―‥?
END