destinyアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 8.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/19〜01/23

●本文

※destiny※

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街は朝と夜、二つの顔を持つ。
朝は静かで爽やかな街も、夜になれば一転してネオンが輝く街へと姿を変える。
その中、一軒だけ雰囲気の違う店があった。
『destiny』
店の前に置かれた看板には英語で書かれている。
『貴方と今夜出会えた運命に乾杯』
ザーッと引きそうな程クサイ台詞が書かれているその店は―‥。

高級ホストクラブ

だった。
destinyに来るために家財を投げ打ってまで来る女性が殺到するほど。
「いらっしゃいませ」
クラブの前でうろついていると、中から長い髪が特徴的な女性、ユリアナが出てきた。
ユリアナが言うには、現在はサービス月間中らしく初回利用のみ無料という太っ腹サービスをしているらしいのだ。
「ぜひ楽しんでいってくださいね」
半ば無理やりユリアナから店内へと案内された。

今夜、貴方達はどう過ごす?

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●募集事項
◎これは映画で出演者のみを募集します。募集役柄については以下の通りです。
 ・destinyに在籍するホスト
(何名でもOKですが、演じる方の中から一人ナンバー1ホストを一人出してください)
 ・ユリアナから無理やりに案内された女性
(何名でも可)
※ユリアナはNPCが演じますので、ユリアナ役は出さないで下さい)
 ・バーテン、専属ピアニストなど
私が思いつく役柄は上記のみですが、他にも適役がありましたらそちらを演じてくださっても構いません。
◎自由度が高いので話作りが難しいかもしれませんが、頑張ってください!(ぉぃ

※私が決めた設定等は上記のみです。何か疑問点などありましたら他の参加者の皆様と話し合って、設定追加するのはOKです。

●今回の参加者

 fa0467 橘・朔耶(20歳・♀・虎)
 fa0597 仁和 環(27歳・♂・蝙蝠)
 fa0612 ヴォルフェ(28歳・♂・狼)
 fa1276 玖條 響(18歳・♂・竜)
 fa2044 蘇芳蒼緋(23歳・♂・一角獣)
 fa2150 エレーヌ・桜井(19歳・♀・兎)
 fa2495 椿(20歳・♂・小鳥)
 fa4360 日向翔悟(20歳・♂・狼)

●リプレイ本文

 悪趣味に輝くネオンの中、茜(エレーヌ・桜井(fa2150))は会社の新年会を終えて一人歩いていた。二次会にも誘われたが「用事があるから」と嘘をついて断った。
「あたし‥何でこの会社で働いているんだろ‥」
 やりたい事もさせてもらえない会社にいる価値があるのか。そう思っているとホストクラブの客引きに捕まってしまい、店の中まで連れて行かれた。


「一名様、ご案内です」
 客引きとして店頭に立っていたユリアナ(ユリアナ・マクレイン(fz1039))はホスト達に声を掛ける。最初に茜に近づいてきたのは空(玖條 響(fa1276))だった。彼は店で二番人気のホストなのだが、ナンバーワンを狙っているせいか客が来たら積極的に行動する。
「初めての子?隣、座ってもいいかな?」
 にっこりと笑むその姿は流石にホストだけあって女性慣れしている印象を茜に与えた。店内は綺麗なピアノが流れており、音の方を見ると優しく穏やかに演奏する銀(仁和 環(fa0597))が視界に入ってきた。
「飲み物をどうぞ」
 茜の前にドリンクを差し出してきたのはバーテンの椚瀬(ヴォルフェ(fa0612))だった。最初に飲むドリンクという事でアルコール度が低く、口当たりの良いドリンクを持ってきた。
「いらっしゃいませ♪destinyへようこそ。俺は椿(椿(fa2495))、よろしくネ」
 茜の左側に座り、椿がにっこりと微笑みながらおしぼりを渡してきた。そこに別のホスト、翔(日向翔悟(fa4360))がやってきた。
「これはお美しい方がお出でですね。僕は翔、この店に在籍するホストの一人です」
 にっこりと笑みながら翔は茜の手の甲に軽く口付ける。
「出た、ドン引きの翔クンだ」
 椿が笑いながら言うと「ウルサイ」と少し照れたように翔が言葉を返した。
「ところで貴方のお名前は?僕に教えていただけませんか?」
 にっこりと笑いながら聞いてくる翔だが、会社の男連中を思い出し素直に本名を明かす事を躊躇った。そして口から出た名前は「緑です」だった。
「へぇ♪緑ちゃんかぁ。良い名前だね」
 偽名だったが名前をほめられるという事は嬉しかった。本名を明かせばよかった、と茜は少しだけ後悔した。
 その後、どうせ来たのなら楽しまなくちゃ!という思いが増していき、茜はどんどん飲んでいく。
「私はやりたい事があるの、その為に会社に入ったのに‥。与えられる仕事といえばお茶組、コピー、接客‥どれも私のやりたい事には程遠いわ‥」
 それに、と茜はグラスを握り締めながら小さく呟いた。
「私、地味でお世辞でも綺麗なんて言えないから‥会社の綺麗な子たちと比べられるの」
「ん〜‥眼鏡とか化粧とか‥もっと頑張れば可愛くなると思うんだけどな」
 空が茜の顔に触れようとしながら言うと、流石に茜も驚いたのかバッと後ろに後ずさった。
「わ、大丈夫?驚かせちゃったかな‥」
 困ったように空が笑うと店のナンバーワンである愁(蘇芳蒼緋(fa2044))が空を呼んでいる声が聞こえてきた。
「あ、呼ばれてる。また後でね、楽しんでいって」
 それと同時に椚瀬も椿に「トイレ掃除をお願いします」と告げる。
「あ、そうだった」
 思い出したように椿が呟くと、席を立ち「またネ」と笑いながら離れていく。
「貴方が来店されてから、店の中が華やかになりましたね」
 翔が茜の髪に触れようとすると茜が大げさに反応して「わ、私トイレに行ってきます!」と言って顔を赤くしながら走っていってしまった。


「はぁ‥」
 赤く染まる顔を冷やすようにトイレ内の空気が頬を掠める。―‥というところで。
「きゃああっ」
「‥‥うわっ、お客さん?」
 何でここに、と呟くと同時に思い当たる事があるのか入り口をすぐに椿は見に行った。
「ああああっ、プレート掛け忘れてる!」
 叫んだと同時に椿の腕が花瓶に当たってしまい、倒れ、茜の服をびっしょりと濡らしてしまった。
「ああああっ‥」
「何事ですか?」
 椿の悲鳴を聞いてやってきたのかオーナーのサウダーデ(橘・咲耶(fa0467))がやってくる。そして状況を見てわかったのか「申し訳ありません、お客様」と茜に寄っていく。
「すぐに服をご用意しますので、こちらへ」
 そう言ってサウダーデは茜を連れ出し、別の化粧室へと向かわせた。


「‥何か騒がしいみたいですが、彼がまた何か‥?」
 首を傾げながら銀が呟くと「そうみたいだ」と翔が短く答える。その時にサウダーデから渡された服に身を包んだ茜がやってきた。それはシンプルで華やかではないものの質の良いワンピースドレスだった。
「これ‥いいんですか‥?高そうですけど‥」
「構いませんよ。当店からの謝罪の気持ち、としてお受け取り下さい」
 サウダーデの言葉に「ありがとうございます」と照れたように礼をいい、席に戻る。すると正座をして茜を待つ椿の姿があった。
「うぅ‥またやってしまった‥。ゴメンナサイ」
 シュンとうな垂れる椿に「気にしなくてもいいですよ」と答え、席に座る。
「何か違和感あるかも‥私‥」
 綺麗に磨かれたテーブルに映る自分の姿を見て茜が言うと「そんな事ないよ?」と椿が答えた。
「その服、緑さんによく似合ってると思うけど?」
 さすがホスト、口が上手いなぁと思っていると「お世辞じゃないからね?」と茜の心を見透かしたようなフォローが入った。
「俺、お世辞が下手だから言えないよ?」
「そうそう、だから客が滅多につかないんだよな」
 翔が笑いながら言うと「それは内緒!」と椿が顔を赤くしながら叫んだ。
「多分、俺ってホストに向いてないのかも。でも頑張るからいいんだ」
 ニカッと笑って言う椿が茜に眩しく映り「頑張って‥」と言葉を返した。そこにやってきたのはナンバーワンホストの愁だった。
「先程は椿が失礼しました、初めまして。俺は愁、よろしく」
 流石ナンバーワンと言われるだけあって軽く笑んだ顔でさえサマになる。
「そういえば先程会社の事で悩んでるとお話されてましたよね?」
 テーブルが近かった為に聞こえてしまったのだろう、茜は恥ずかしく思いながらも首を縦に振った。
「そうですか、ちょっと待っててくださいね」
 そう言って愁はピアノを弾いている銀の所まで行く、少し二人で話した後に銀が愁に連れられてやってきた。
「こちらはピアニストの銀さんです」
 愁が紹介をすると「宜しくお願いします」と礼儀正しく挨拶をしてきた。その時、銀に対して何か違和感のような物を感じてしまい「あの、目‥」と呟いてしまった。後から失礼な事を聞いてしまったと後悔してしまう。
「あぁ‥俺、全然見えてないんです。昔―‥事故で。流石に俺も突っ込んできた車には勝てなくて」
 へら、と笑い事ではない事を笑いながら言う銀に茜は少しだけ驚いた。
「それでも‥事故で失ったのが手じゃなく目だと知った時‥ホッとしたんです。その時、俺はやっぱりピアノが好きなんだって思いました」
 彼の話を聞いていると、この店に来る前‥事故で目が見えなくなる前までは楽しむ為じゃなく、食べていく為にピアノを弾いていて苦痛だったと言う。自分と同じだ、銀の話を聞いていて茜はそう思った。
「いつか、実のなる時は来ますよ。俺にだって来たんですから」
 ね?そう穏やかに言う銀に涙が出てきて「ありがとう」と茜は自然と呟いていた。
「じゃ、俺はピアノに戻りますね」
 そう言って銀が立ち、ピアノの所まで行くのまでは良かった―‥次の瞬間。

 ――ゴーン――‥と勢いよくピアノに突っ込んでしまったのだ。

「大丈夫ですか!銀さん」
 慌てて愁と翔が叫ぶが、銀はピアノの傷や音を調べて「大丈夫です!」と叫び返した。
「「お前だ!!」」
 そうツッコミを二人が入れて「しーちゃん!大丈夫!?」と椿も駆け寄るが。

 ――ゴゴーン――‥と勢いよくピアノに突っ込んでしまう。銀より痛そうなのは気のせいだろう。

「全く‥お前もか‥」
 愁が呆れたように呟くと椚瀬に手当てをしてやるように話した。
「分かりました。その前に―‥」
 椚瀬が茜の所まで行くとグラスを置いた。
「味は保障します」
 呟いて出したのは先程のような冷たいカクテルではなく、白い湯気の出る温かいカクテルだった。それを飲んでいると空が帰ってきた。
「そうだ、空。占いでもしてやったらどうだ?」
 愁の言葉に「そうですね」と呟き、空はカードを手にした。
「‥魔術師の正位置。欲しい物を手に入れる、夢を叶える、その為には声を出し、行動を起こす事。今は頑張って前に進んでって意味だね」
 それから暫くの間、雑談を交わして茜は帰っていった。最後に「私‥本当は茜って言うの」と言葉を残して。
 きっと彼女はもうこの店には来ない。来る必要がないのだから。destiny、そこは個性的なホストが存在する店。必要な時は店から客を呼ぶ不思議な店なのだ。


―ご来店、ありがとうございました―




〜打ち上げ〜

「環さん!隅っこ行って、ほら写真撮らせてくれるって言ったじゃないですか」
 撮影終了時に玖條さんがカメラを片手に仁和さんに言い寄る。
「えぇ!ほ、本気?!」
「サインも書いてくれるって言いましたよね?」
 う、嘘ぉ‥そう思いながら玖條さんの迫力に負けて隅っこ写真(サイン付)を渡す事になったのだった。
「‥お、お腹空いたヨ〜‥」
 椿さんの凄いお腹の音と悲痛な叫びによって、撮影は無事に終了しましたとさ♪


END