夢幻界廊 肆アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
2.6万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
02/14〜02/17
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●本文
『もう、聞きたくないのに‥誰か、この声を止めて!』
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●夢幻界 肆: 彼女を覆う闇
その『声』が聞こえ始めたのは、事故に遭って学校に行き始めた時だった。
「おはよう〜♪大したことなくて良かったじゃん♪」
そうだね、と言葉を返そうとした時に頭の中に直接『声』が響いてきた。
『意外と元気じゃん、つまんない〜』
「え?」
私が聞いた言葉を信じられずに聞きなおすと「どうかした?」と普通に返事してきた。
それからだ、私に『人の心の声』が聞こえるようになったのは‥。
そして、その頃から夢の中に綺麗な女の人が現れるようになった。
「人の心って醜いでしょう?口から出る言葉と心で言う言葉が異なるのだから」
その綺麗な女の人は「ずぅっと眠っていたら?」と笑みながら呟いた。
「あんな醜い人の中で、貴方みたいな純粋な子が生きていけるのかしら?」
眠って楽に生きれば?と楽しげに呟かれる。
最初はその誘いも断っていたけれど、私に対する悪口などを耳にする事が多くなり、絶えられなくなっていた。
「もう‥いや‥」
私は現実で生きる事を拒否して、眠りにつくことを選んだ。
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●募集事項
◎この話は出演者のみを募集事項します。
◎登場人物は以下の通りです。
・夢喰い(必須/何名でも可)
・OPの『私』
・OPの女性夢魔(必須/女性一名)
・夢魔(必須/何名でも可)
とりあえず、私が思いつくのは上記の役柄のみですが、他にも適役がありましたら他の参加者の皆様と話し合っての役柄追加はOKです。
◎これはアクション映画です。
・夢喰いを演じられる方は『属性』と『属性系統の技』を持たせてください。
(これは必須ではありません)
・属性や技については参加者の皆様が自由に考えてくださって結構です。
・夢魔は魔法のような技が使えます。それも参加者の皆様が決めて下さって結構です。
◎夢喰いには表の顔があります。
例)教師や学生、店の店員など
◎夢喰いだからと言って、何もしないで生活できるというわけではありません。夢喰い活動は『ボランティア』に近いものがあるので、自分の生活は自分で守る必要があります。
◎逆に夢魔は人の生気さえあれば、食べ物、飲み物を口にしなくても生きていけるので夢魔で仕事をしたりしている者は滅多にいません。
※夢喰いの仲介所:1話からの継続でペットショップ『夢猫』を仲介所にします。
●リプレイ本文
「まだ完全に覚醒していなければ助けられるが‥‥本家からは殺せ‥か」
本家からの電話を切って、雄哉(七瀬・聖夜(fa1610))はため息混じりに呟いた。
「何か問題でもあったのか?」
夢猫の地下で雄哉に出された珈琲を飲みながら久樹(橘・月兎(fa0470))が問いかけた。あまり良い話ではない事は雄哉の顔を見れば分かる。
「‥また混血児が‥」
雄哉の言葉に芙蓉(紅雪(fa0607))と久樹は驚いたように目を丸く見開いた。
「また、混血児?いったいどうなってるの?」
「同じ地区で、この短期間に二人もの混血児が出るなんて‥」
二人はそれぞれ思った事を静かに口にする。そしてそこで「そういえば‥」と柚香(ユフィア・ドール(fa4031))が思い出したように呟いた。
「それと関係があるかは分からないんだけど、最近‥夢魔が活発に動いてない?」
柚香の言葉に「確かに‥」と芙蓉が呟く。夢魔の気配がここ数日の間、途切れる事がないのだ。気配を感じるだけで、明確な場所は分からないのだが‥。その時、カランと何かが落ちる音がして、皆はそちらへと視線を向けた。
「‥何だよ、それ‥」
そこに立っていたのは健一(金緑石(fa4717))、夢喰いと覚醒した後、夢猫で下働きをしつつ夢喰い見習いとして他の夢喰いに指導を受けていた。
「‥混血児だから‥殺さなきゃって何だよ!」
そう叫ぶ健一の頭に浮かぶのは、助けられなかった‥大好きだった友人の最後の顔、自分がしっかりしていれば助けられたかもしれない友人、詩織。
「こんなの俺は認めない!おかしいじゃないか!絶対に俺が助ける!じゃなきゃ‥何の為の能力か分からないじゃないか!」
そう叫んで健一は夢猫から出て行ってしまった。
「‥やはりこの前の事件が彼の心に大きな傷を作ってしまっているんですね」
健一が落としたままにした箒を片付けながら雄哉が悲しそうな顔で呟く。
「もう、嫌‥」
そう咲(☆島☆キララ(fa4137))が頭を抱えた時に「人の心って醜いでしょう?」と綺麗な女性の声が咲の耳に聞こえてくる。
「‥貴方はいつも夢の中に出てくる人‥」
目の前の女性、紫雨(月 美鈴(fa3366))に咲が話しかける。
「口から出る言葉、心で思う言葉は違う‥そんな中で貴方みたいな純粋な子が生きていけるのかしら?」
楽に生きたら?そう呟く紫雨の言葉に吸い寄せられるように眠りに落ち、夢魔としての咲の人格が目覚める。だが、人の生気を食らっていないせいか頭に靄がかかったように上手く働かない。
「読心系とはまた変わったタイプだね。どうだい?僕達と一緒に来ないかい?」
そう言って咲に近づくのは紫雨と同じ夢魔の隠者(K・ケイ(fa4786))、混血児がいるという連絡を受けてやってきたのだ。
「何だか‥眠い‥」
目覚めたばかりの咲が目を擦りながら呟く。
「それはまだ半覚醒状態だからだよ、君みたいな純粋な子がこんな汚い世界で生きて行けるのか不安だ、覚醒して僕達と一緒に行こうよ」
その為には一人分の生気が必要になるけど、そう隠者は優しく呟く。それは一種の洗脳にも近いものがあった。
「人間の生気を吸えば‥もっと楽になるんだね」
咲はクスと笑みながら二人に問いかける。
「えぇ、アリス(真紅櫻(fa4961))が獲物の近くにいるんじゃないかしら?」
「じゃあ、早く行こう!」
楽しげに言う咲を見て二人は冷たい笑みを浮かべた。
「死なせはしない、絶対に殺させるものか!」
夢猫を出て健一は、咲と呼ばれた混血児を探して走り回っていた。前のような悲しい結末にはさせない、そう心の中で叫びながら。
「健一!」
後ろから聞こえた声に健一が振り向くと、久樹、芙蓉、雄哉、柚香の四人が追いかけてきていた。
「全く‥誰も俺達が本家と同じ意見だなんて言っていないだろ」
久樹が呆れたように呟き「本当にそそっかしいんだから」と柚香も呟いた。
「出来れば僕達も助けたいとは思っているんですよ」
「人間の生気を奪い殺していなければいいのだけど」
雄哉と芙蓉の言葉に健一が「‥間に合わせてみせるさ」と言って咲の捜索を開始しようとした―‥その時、向こう側から幾人もの夢魔の気配を感じて夢喰い達は身構える。
「おはよう、気分はどうだい?」
アリスが咲に問いかけると「‥眠いわ」という短い返事が返ってくる。
「それはまだ人間の生気を奪っていないからだね。でも仲間が増えて僕、嬉しいな」
咲を連れてきた紫雨と隠者に向かってアリスが言うと「そうね」と言葉を返す。
「あっちに人間がいるから、生気を奪えばいいよ」
「でも‥邪魔が入りそうだね」
隠者の言葉に呟くのは夢魔のプリンス(皇 流星(fa5450))でふわりと宙に浮く。そして向かう先は夢喰い達がいる場所。
「あははっ、夢喰いみーつけた」
そう言って襲い掛かろうとするプリンスに向かって飛び出したのは雄哉だった。
「この男の相手は僕に任せてください、貴方達は他の夢魔を」
「僕と戦おうというの?面白いよ、お前」
プリンスは地面に降り立ち、空手の構えで雄哉を挑発する。
「人の心配してる余裕が‥あるの!?」
アリスが火球を久樹に放ちながら叫ぶ。
「いつもいっつもどうして邪魔するんだか!」
久樹に次々と火球を投げつけるも簡単に避けられてしまい「ムカつく!」と叫ぶ。
「人間を襲えば、楽になる‥楽に‥」
咲はうわ言のように呟き、向こう側にいる人間に襲い掛かろうとした―‥が健一と芙蓉が咲を止めた。
「邪魔しないで!私は楽になりたいのよ!」
叫んだ瞬間、咲の頭の中に『駄目、殺しちゃいけない』と話しかけてくる人物がいた。
「嫌、何で、今頃―‥何で!」
突然、咲が叫んで体を引きずりながらどこかへと走っていってしまう。それを健一が追おうとしたが芙蓉に止められる。
「まずは目の前の敵よ、錯乱したあの状態じゃ人は襲えないでしょう。だから夢魔を倒すのが先決よ」
そう言って芙蓉は能力を発動させて隠者達に放った。それと同時に健一が隠者に向かって力任せに殴りかかった。
「ふぅ、やっと本調子に戻ったわね。治るのが遅かったのは年のせいかしら‥」
紫雨は幾つもの氷を掌に出現してため息混じりに呟く。その時、紫雨の頬を柚香の矢が掠める。
「一人だけ相手がいないのもつまらないでしょう、私が相手してあげる」
そう不敵に笑う柚香を一瞥して仲間達を見る。すると夢魔側が分が悪いのが分かる。
「分が悪いわね?今度の時はお相手してあげるわ。その時までオアズケよ」
そう言って紫雨はふわりと浮いてアリス達の所へと行ってしまう。
「何!?」
雄哉が驚いたように叫ぶ。それもそのはずだ。自分の攻撃は確かに目の前のプリンスに当たった―‥それなのにダメージを受けたのは近くにいた自分と健一の方だった。
「僕の攻撃を跳ね返した‥?」
「ボクの能力は『鏡』って言って好きな相手に痛みを移せるんだよ」
「なるほど‥チョット分が悪いな‥」
攻撃をわざわざ健一に移したのは雄哉を挑発する為だろう。
「ツマンナイなぁ‥弱すぎだよ、キミ。今度会う時までにもっと強くなっててね」
そう言ってプリンスは雄哉の上を飛んで他の夢魔の所へと行ってしまった。
「‥逃げるのか‥」
「何とでも」
「健一!大丈夫!?」
プリンスに受けたダメージで健一は膝をつく。そして隠者は「‥これは隠しておきたかったんだけどね」と呟き、手の上に巨大な火球が現れる。
「本当はこれを出すつもりはなかった、だけど君達が蜂型自動兵器を壊してくれたからね、仕方ない‥能力発動‥魔術師!」
そう叫ぶと同時に火球はその大きさを増していく。
「早く逃げないと黒コゲだぞ‥なんせ核爆発まで操れるんだからな!」
少し隠者の本性が見えた、その時「引き上げよ」と言って紫雨が割り込んでくる。
「アリスも引き上げるわよ」
久樹の攻撃を受ける寸前で紫雨が呟く。その言葉に反応したのか瞬時に紫雨の所まで飛んでいく。
「姉様!またあいつらに邪魔された!悔しいっ!」
「はいはい、いい子だから」
駄々をこねるアリスに紫雨は苦笑を漏らす。
「咲の事は諦めることにするわ。だけど次は容赦しないわよ、覚悟なさいね」
そう言って紫雨を含む全員の夢魔はその場から消えた。
その後、少し向こうの茂みで倒れている咲を見つけた。どうやら主人格と夢魔の人格が反発し合って意識を失ったのだろう。
「良かった‥まだ完全に夢魔として覚醒はしていないようだな‥」
久樹の言葉に芙蓉が「これなら封印できるわね」と呟くと「覚醒していないのなら助けましょう」と雄哉も言葉を返した。その後、夢喰いの能力として咲の記憶と能力を封じる様を健一はぼんやりと見ていた。
「‥今度は助けられたからな」
呟いた後、安心からか健一はガクリと膝を折る。
翌日、命令に逆らった夢喰い達に本家からの苦情が殺到した。
「何で必要ないのに混血児ってだけの人間を殺さなくちゃいけないのよ!」
夢猫に帰ってきて電話をしながら柚香が叫ぶ。その相手は夢喰い本家の現・当主。
「そういえば、本家って表の顔で何をしているんでしょうね」
雄哉が珈琲を入れて、皆に渡しながら思い出したように呟いた。
「あれ‥知らなかった?日本屈指の一流企業よ?
芙蓉の言葉に全員が飲みかけの珈琲を吹き出しかけた。
「それが一流企業の会長である叔父様の言う事なの?」
柚香は叫びながら乱暴に電話を切った。
その後、柚香を宥めるのに全員が苦労したとか‥。
END