夢幻壊廊アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 2.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/22〜02/25

●本文

『影の存在があるからこそ、光の存在が引き立つのだといい加減に分かってほしいわね』

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
●話の内容

「あ〜‥最近つまらないと思わない?」

ここは夢魔が自分達の拠点とする異空間『夢幻壊廊』

そこに数人の夢魔がため息混じりに呟いていた。

「本当だよな、夢喰いはそりゃいいさ。人間と同じ物を食べてれば死ぬ事はないんだからさ」

でも、俺達は違う。

そう男性夢魔は腹が空いているのか、腹を擦りながら呟いた。

「俺達は人間の生気を食わなきゃ死んじまう種族なんだ。食事くらいゆっくりとさせてほしいぜ」

先日も彼らは『食事』の為に人間の夢の中へと足を踏み入れた。

しかし、待ち構えていた夢喰いにボコ殴りにされたのだ。

おかげで彼らは食事をする事も出来ずに、人間の夢の中から退散せざるを得なかった。

「さて、今日こそは飯にありつけるといいな」

そう言って、彼らは『夢幻壊廊』を出て、良い生気を持つ人間を探し始めた。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
●募集事項
◎この話は出演者のみを募集します。登場人物は以下の通りです。
 ・夢魔(必須/何名でも可)
 ・夢喰い(何名でも可ですが、必須ではありません)
※とりあえず、私が思いつくのは以上の二つのみです。ですが、他に適役がありましたら、そちらを演じていただいても結構です。
◎この話は夢幻界廊とは違い、夢魔が中心の話です。
 ですから、登場する夢魔を夢喰いがやっつける必要はありません。
 むしろ、夢喰いをやっつけるという話になってもOKです。
◎夢喰いを演じられる方は『属性』と『属性系統の技』を持つ事が出来ます。
(これは必須ではありませんが、能力ナシの夢喰いは滅多にいませんので、使う使わないにしろ決めていただけているとありがたいです)

※簡単に夢幻説明※
・夢魔は人の生気を奪うことで食料や飲み物を口にしなくても生きていける。
・夢喰いは基本は人間と同じで、食料や飲み物を口にしないと生きて行けない。
・そして、夢喰いは成人してたら仕事をしていて、学生は学校に通っています。


この他に、疑問点などありましたら他の参加者の皆様方と話し合っての設定追加はOKです。


●今回の参加者

 fa0126 かいる(31歳・♂・虎)
 fa0597 仁和 環(27歳・♂・蝙蝠)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa4354 沢渡霧江(25歳・♀・狼)
 fa4578 Iris(25歳・♂・豹)
 fa4579 (22歳・♀・豹)
 fa4961 真紅櫻(16歳・♀・猫)
 fa5345 ルーカス・エリオット(22歳・♂・猫)

●リプレイ本文

「くそ‥腹が減りすぎて痩せそうだ‥」
 腹の足しにもならない焼き鳥を食べ、チューハイを飲みながら呟くのはロックス(かいる(fa0126))、それを見てため息を漏らすのは店長(阿野次 のもじ(fa3092))だった。
「あのね、痩せるのは構わないけど‥ツケ溜まってるわ。少しは稼いできたら?」
 バー『夢幻壊廊』の店長はグラスを磨きながらテーブルで突っ伏すロックスに呟いた。
「そうは言ってもなぁ‥ノイン(仁和 環(fa0597))、お前は最近‥飯にありつけたか?」
 ロックスが問いかけると「まぁ‥適度に?」と答えた。
「くそー‥俺も腹いっぱいになりてぇ‥」
 そう呟くと同時にロックスはガバッと起き上がり「おぉ!グレン(Iris(fa4578))が飯にありつこうとしている!」と叫ぶ。
「店長!ツケといてくれな!ノイン、行こうぜ」
 そう言って夢の中に入ろうとすると、先にノインが行ってしまった。
「団体様でつるむのは性に合わんので、お先に」
 しれっと言いながらノインは『夢幻壊廊』から姿を消した。
「待て!独り占めしようったってそうはいかねぇぞ!」
 ロックスも慌て『夢幻壊廊』を出てグレンの元へと急いだ。
「いってらっしゃーい♪僕はボスに頼まれた仕事があるから行けないけど、楽しんできてね」
 それを見て見送るのはアリス(真紅櫻(fa4961))、アリスは混血児や未覚醒の仲間を探すという役目を与えられ、今回の騒ぎには不参加となったのだ。



「ねぇ〜‥グレン‥お腹すいたよぉー‥」
 ふらふらと歩くのはアサギ(檀(fa4579))という女性夢魔でグレンと瓜二つの容姿を持っていた。
「獲物の目星はつけてるから騒ぐな‥余計に腹が減るから‥」
 空腹だという事を忘れたいのに、こう隣で「腹減った」と言われていれば忘れられるものも忘れられなくなる。
「グレンは私が餓死しちゃってもいいの?食べ物の恨みは怖いんだからぁ〜‥」
 アサギは一応怒っているのだろうが、空腹の為に力が出なくあまり迫力がない。
「お、いたいた。アサギ、あれが獲物だ」
 グレンが指差した方向には一人の青年、アラン(ルーカス・エリオット(fa5345))が殴りあいの喧嘩をしていた。
「おいしそぉ〜‥」
 アランを見てアサギは目をきらきらと輝かせる。それもそうだろう。元気が有り余っている‥つまりは生気が有り余っているアランは夢魔にとっては最高級のご馳走なのだから。
「な、なん‥!」
 アランが突然現れたグレンとアサギに驚き、叫ぼうとするがグレンによって夢の中に誘われてしまう。
「単純で扱いやすいな」
 クッと笑いながらアランの夢の中へとアサギと共に潜り込んだ。
「食べようよ〜、ねぇ〜、グレン〜。食べようよ〜」
 夢の中に入ると同時にアサギが目をうるうるさせながら駄々をこねる。
「さーて、頂くとしますか」
 そう呟き、アランの生気を頂こうとした時―‥「待て!」と叫んで突然夢の中に入ってきたのは夢喰いの古本(沢渡霧江(fa4354))だった。彼女は氷で作り出した武器を構えながら叫ぶが、古本を見てグレンが「あぁっ!」と指差しながら叫んだ。
「お前はこの間の夢喰い!」
 古本は以前、グレンが食事をしようとしていた時に邪魔をしてきた夢喰いだった―‥が肝心の古本はグレンの事を覚えていない。というより敵の事などいちいち覚えていないのだ。
「おい、グレン!」
 そこにやってきたのはロックス。彼も夢喰いにはいつも食事の邪魔をされている事もあり、古本に対して敵意をむき出しにする。
「お、おい夢喰い!今日はこっちがお前をタコ殴りだ!」
 ロックスは能力を使い、古本に襲い掛かるが‥『ぐ〜きゅるるるるる‥』という盛大な腹の虫を鳴かせて古本に攻撃が当たる寸前で座り込んでしまう。
「腹へって力が‥」
 その場を古本が見逃すはずもなく、攻撃を仕掛けようと氷の剣で斬りかかろうとするが突然現れたノインの幻覚に陥り、攻撃を止めざるをえなかった。
「後先考えて動きなよ」
 ため息を吐き、ノインは呆れたようにロックスに話しかけた。
「わりいな。腹減って力が出ねぇんだよ―‥ところで何の幻覚を見せてるんだ?」
 お前の事だ、悪趣味なヤツなんだろ?そう問いかけてくるロックスにノインは不敵な笑みを浮かべて「自分の立場を逆転させてみたのさ」と答えた。
 一方、幻覚を見せられている古本は恐怖に陥っていた。普段の自分が口にしているもの、植物が体に絡みつき、鶏からは嘴、牛には角で体をつつかれる‥というより刺される。
 ようやく自由になったかと思えば、背後から魚が大口を開けて襲ってきて水中に引きずり込まれる。
「うわああああぁっ!」
 古本が恐怖に慄き、座り込む姿を見てノインは腕を組みながら余裕の態度で見ていた。
「あれ、無様な姿だね。夢喰い」
 クスと笑いながら現れたのはアリス。夢の中を移動していると、仲間の気配を感じてやってきたのだ。
「お前達が鳥や魚を食べるように‥僕達が人間を食べて何が悪い!」
 アリスは蹲りながら震える古本に邪笑を浮かべながら叫んだ。
「な、何だよ、これ。い、いやこれは夢だ‥でなきゃ有り得ねぇ‥」
 アランは目の前の状況について行く事が出来ずに一人、納得しようと色々な仮説を立ててみた―‥が突然背後から首を掴まれる。
「‥おなかすいたのぉ‥」
 そう言ってアサギは近くで蹲る古本を衝撃波で遠くへと吹き飛ばして「いただきますなのぉ〜‥」と言って食事にありついた。
 アランは恐怖で叫ぶが、ここは夢の中。アランの声は誰の耳にも届く事ない虚しいものに終わった―‥。


「はぁ〜、お腹いっぱいってこんな幸せだったのね〜。久々のこの感じ‥ほわんほわんなのぉ〜」
 近くには夢魔達に思う存分生気を奪われて倒れているアラン(恐らく生きている)と腹いっぱいになってご満悦状態の夢魔達、そして自分に与えられた役目を果たす事が出来ずに多少イラつき気味のアリス、そしてまだノインの幻覚から覚めない古本の姿があった。
「自分が日ごろ食べている奴らに襲われるのは、どんな気分だった?」
 クッと薄く笑みながらノインが古本に問いかけるが、幻覚から覚めていない古本は答えない。
「文句は言えないよな?‥俺達同様に、お前らも『食ってる』んだから」
 そういい残すと「お先に」と言ってノインはその場から立ち去った。それから数分もしないうちに他の夢魔達も古本とアランを残して、夢の中を後にした。


「はー、いつも今回みたいに行くといいんだけどなぁ」
 ロックスが『夢幻壊廊』でビールを飲みながら豪快に笑う。そこへ店長が近づき「ご苦労様」と呟く。
「貴方達の―‥」
 言いながら店長はテーブルの真ん中に空き瓶を置く。
「――ツケ分は払ってもらったわ」
 その言葉と同時に空き瓶の中にアランから奪った生気が集まってくる。そして当然夢魔達を襲うのは―‥空腹。
「グレン〜、お腹がすいたぁ〜‥っ!」
 まるでコントのような騒ぎを見てアリスは「やかましいわっ!」と夢幻壊廊中に響くほどの大声で怒鳴った。
 こんなにもアリスの機嫌が悪いのは、与えられた役目を果たせなかった事に対して逆ギレをしているだけなのだけど―‥。
「店長!奪った生気を返してくれ!アサギが泣き喚いて余計に腹が減る!」
 グレンとアサギは対の存在、グレンはアサギの、アサギはグレンの五感を同調しあう事が出来るのだが、今のこの状況ではそれが痛い事になっている。互いの空腹も同調してしまい、普通の夢魔よりも多くの空腹感を味わっているのだから。
「おい、ノイン!何でお前はそんな平気そうにしてるんだ、腹が減らないのかよ」
 ロックスが泣き喚く自分の腹を押さえながらノインに問いかけると「俺、ツケないから」と答えた。
「じゃ、俺は移動するよ。店長、ご馳走さん」
 そう言ってノインは支払い分の生気を払い、夢幻壊廊から出て行ってしまう。
 きっと店長は結構性格が悪い方なのかもしれない。
 満腹感のすぐ後に空腹感を与えてくるのだから。
 今後、夢魔達は『夢幻壊廊』でツケは絶対にしないようにしようと心に誓った。
「グレ〜ン、お腹空いたぁ〜‥」
「アサギ、頼むから暫く少しだけ、出来ればずっと大人しくしてくれ。お前の感情に引きずられる‥」


 後日、アランは道端で倒れているのを発見され、病院に運ばれたが過労と栄養不足というだけで終わった。
 しかし、また狙われたら‥という恐怖からか今までのように元気いっぱいに暴れる事はしなくなったという‥。
 そして、夢喰いの古本も命に別状はなく、仲間に保護されたがノインから受けた幻覚が覚めても夢に見るようになってしまったとか‥。


「‥結局、僕だけが一番損しているような気がするんだけど!」
 アリスの叫びを聞く者はなく、それが余計にアリスの怒りを煽ったのだとか―‥。

 
END