孤島アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
1.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/01〜10/05
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●本文
『何かが狙っている』
そんなフレーズと一緒に渡されたのは、今度撮影開始をする映画の案内。
話の雰囲気的に内容はホラーに分類されるようだ。
リアリティを求めるため、いわくつきの島で撮影をすると書いてある。
監督の名前を見ると、有名でもないが無名とも言いがたい監督だった。
募集欄を見ると、出演者だけではなくスタッフの募集も行っているようだ。
島には古びた洋館が存在し、ロケ中はそこで寝泊りをするとも書いてある。
もちろんロケ開始前にスタッフが赴き、ある程度は掃除をするため洋館内が物凄く汚いということはない。
それと、島の奥深くに洞窟が存在し、映画内の怪物はそこで暮らしているという設定になります。
◎映画の内容は以下の通りです。
出演者は無人島ツアーで断崖絶壁の孤島にやってきた。
ツアー会社の人間は出演者を孤島に送り、本島に帰っていく。
しかし、その島には『山巫女―ヤマメ―』と呼ばれる怪物が存在した。
山巫女は出演者を侵入者だとみなし、皆殺しにしようと襲い掛かってくる。
迎えの船が来るのは三日後、果たして何人が生きて島を脱出できるだろうか…?
簡単に纏めると以下の通りです。
◎出演者は無人島観光ツアーでやってきた。
◎島には山巫女と呼ばれる怪物が存在する。
◎目的は島からの脱出だが、断崖絶壁の孤島。
◎山巫女は出演者を敵とみなし、襲い掛かってくる
◎山巫女は島の奥深くの洞窟に住んでいる。
◎観光ツアーの迎えの船が来るのは三日後………です。
●リプレイ本文
「こんにちは、今回は宜しくお願いします」
丁寧に頭を下げながら挨拶をしたのは楼瀬真緒(fa4591)だった。今回はADとして雑用を任される事になった。
「いいえ、こちらこそ」
返事を返したのはスタイリストの中松百合子(fa2361)。スタッフは先に収録地である孤島に入っており準備をしているのだ。
「監督が貴女をエキストラとして使うって言ってたわ」
中松の言葉に楼瀬は驚きで目を見開く。
「私が?何で?」
「欠員が出たって。それと役名は岬さんだって」
中松は苦笑しながら言う。楼瀬は「ADも大変‥」と呟きメモ帳に記録した。遠くから監督が楼瀬を呼ぶ声に気づき慌てて駆け寄っていく。撮影の事らしく出演者の中に混じれと監督から命令が下された。
シーン1
「パパ、つまんなーい」
不満を顔に出し、仏頂面で言うのは高槻かすみ(谷渡うらら(fa2604))だった。パパと呼ばれた高槻浩二(三田舞夜(fa1402))は娘を必死に宥めながら親馬鹿を見せていた。
「素敵な場所じゃないの」
ねぇ?と言う女性は宗像・紗重(宝野鈴生(fa3579))で、話しかけられた男性は不満そうな顔つきで言葉を返した。
「ねーさんは荷物持ちが欲しかっただけだろ?」
姉の荷物を軽く掲げながら宗像・綾人(リュシアン・シュラール(fa3109))は面白くなさそうに答えた。
「嫌なら来なくても良かったのよ〜?」
意地悪く言う姉に「いえいえ、お供出来て光栄です。お姉様」と皮肉っぽく答えた。
「はーい、ジュンです。宜しくお願いしまーす」
水着姿で案内をするのはジュン(稲川ジュンコ(fa2989))で、観光会社に雇われた案内係だった。
そこで「カット」という言葉が響く。次は夕食のシーンを撮るらしくエキストラが集まってきた。
シーン2
夜も更け、外で夕食を食べていると客の一人が山の方向を指差す。皆も視線を向けると山の天辺あたりに灯があるのが見えた。
「他に客はいなかったよな?」
浩二が言うと他の客は首を縦に振る。人が住んでいるのなら観光会社の方から言われるはず。そして一人の客が見に行こうと騒ぎ始めた。何人かの客も酔いに任せて山の方へと行ってしまう。とりあえず帰ってくるのを待つしかないと他の客は夕食の続きを始めた。
しかし、あれから数時間が経過しても客達は帰ってこない。流石に心配になったのか山の方に探しに行く事にした。
そこで一度撮影が中断され、山の方へと移動するように言い渡される。
「待って。外は寒いでしょうから‥」
中松が渡したのはベンチコート、流石に夜は冷えるだろうと用意していた物だ。皆はそれを受け取り、着込むと山の方へと向かう。洋館に残ったのは楼瀬、谷渡、中松、稲川の四人で出演者が帰ってくる前に晩飯を皆で作る事になった。
「人数が多いからカレーでいいわね」
予め買い揃えていた材料で皆は台所へと移動し料理を開始する。
シーン3
「薄気味悪いわね」
呟くのは沙重、暗いせいか薄気味悪さを倍増しているようにも思えて身震いをした。
「‥何だろう」
綾人が指差したのは大きな石、碑文だった。
「読みにくいな‥まゆら‥?狛神?」
意味の分からない文章に首を傾げつつも沙重は持っていたデジカメで碑文を撮っておく事にした。
「姉さん!」
綾人の言葉に沙重と浩二は慌てて駆け寄る。そこにあった物は古い白骨死体だった。
「何よこれ‥」
同時に何か唸り声のような物が聞こえてきた。唸り声の方に視線を向けると赤い瞳が闇夜に映える生物が立っている。三人は悲鳴をあげながら洋館へと足早に駆けていく。
それこそ、後に全員を恐怖に陥れる山巫女(花鳥風月(fa4203))と呼ばれる者だった。
「皆さんが帰ってきたみたいですね」
中松と谷渡がテーブルにカレーを置き終わった所で皆が帰ってきた。
「美味そうだな」
先に席へと着いたのは三田でカレーを見て素直な感想を述べた。
「俺も撮影じゃなかったら手伝ったんだけど‥」
リュシアンがそう言いながら、差入れ用に作ってきた洋ナシのタルトを取り出した。甘い物が好きな女性陣には喜ばれ「早く食べましょ」と夕食を取り始めた。
「何してるんですか?」
夕食後、楼瀬がパソコンのモニターを睨んでいる三田に問いかけた。
「音楽だよ、こっちが本業だからな。今はパソコンでデータ打ち込みをしてるんだ」
へぇ‥と楼瀬は感心したように呟いた。そこで次の撮影を開始すると声がかかる。中松にメイクをしてもらい、各自で見えないように工夫をする。
シーン4
山から戻ってきた三人が皆に白骨死体の事を説明すると岬が「死にたくない」と叫び、皆が止めるのも聞かずに館から出て行ってしまった。 無我夢中で走り、気がつけば山の方へと足を踏み入れてしまっていた。
「やだ、ここ‥」
どこと続くはずの言葉は岬の口から洩れる事はなかった。目の前に唸りながらこちらを見る赤い目の人物が立っていたのだから。
「死にたくない‥」
岬は必死に懇願するが目の前の人物は鋭い歯を見せると岬の首に齧りついた。
シーン5
「白骨なんて気味が悪い‥」
ジュンは昼間の汗を流そうと山にある滝に来ていた。館の風呂場は水が出なく滝まで水浴びに来たのだ。
「んー、気持ちいい‥」
ふと、水浴びをしているジュンの足に何かが触れる感触がした。何だろうと水の中を見るが真っ暗で何も見えない。気のせいと思った時、ジュンの足首を掴み水の中に引きずり込まれた。慌てて滝から上がろうとするが、足首を掴んでいる人物のせいであがる事が出来ない。暫くの間バシャバシャと暴れるが、突然もとの静けさに戻った。
そして滝の中からはじわじわとあがってくる赤い水、それとジュンが着ていたビキニの胸カップだけが浮いてきた―‥。
シーン6
「パパ、怖い」
洋館の中でいなくなっていく客達に怯えているのかかすみが浩二の腕にギュっとしがみつく。
浩二が大丈夫だと言い掛けた時に、突然洋館の窓ガラスが割られ気味悪い人物が唸りながら近づいてくる。体は返り血で血まみれ。
「逃げるぞ、かすみ!」
浩二はかすみを抱きかかえ、悪いと思いつつも沙重と綾人を囮にして逃げ出す‥がまゆらは何故か浩二達に向かって走り出した。
「パパ!」
かすみの声にハッとすると殴られ激痛が走る。
「かすみ!パパが何とかするから逃げろ!」
浩二はまゆらに向き直り、かすみを逃がす時間稼ぎをしようと試みた。
「パパは?」
「後から行くから!」
父親の言葉を信じてかすみは走り出した。かすみが辿りついた先は古ぼけた家、そこで隠れていると何かがざわつく音が聞こえてきた。何だろうと父親のライターで灯を点けると、そこには沢山の太った鼠達がいた。かすみは叫び声を上げる間もなく飛び掛られ家の中に響くボリボリという嫌な音。
ガタン
突然の音に鼠達は驚き小さな穴から列を作って逃げ出していく。そこに残されたのは汚く食い散らされたかすみの片腕だった‥。
シーン7
沙重と綾人は館の中で見つけた本と撮っていた碑文と合わせてまゆらと呼ばれる者の倒し方を必死に探していた。
「倒すには首を切り落とすか燃やし尽くすだけ、か‥」
綾人が呟く。化物なんていてたまるかと思っていたが、目の前で起きている惨状に化物説を否定できない自分も存在した。
「ウゥ‥」
聞こえてきた声にハッとするとまゆらが窓の外に立っていた。恐らく先程の親子はもう始末してこちらに帰ってきたのだろう。
「俺が戦う」
綾人は壁に掛けられているサーベルを手に取りまゆらへと歩んでいく。だが沙重は「ヒーローにでもなったつもり?!」と喚き、綾人の腕を離そうとはしない。
「戦わなきゃやられるだけなんだよ!姉さんは館を爆破する準備をしてくれ」
綾人の決意は固いらしく沙重は腕を離し台所へと走った。沙重が去ったと同時に館内に入ってくるまゆらに切っ先を向けた。
「先へは行かせない」
綾人はまゆら目掛けて走り出す。まゆらは意外に素早く中々サーベルを突き刺す事が出来なかったが、一瞬の隙をついて胸にサーベルを突きたてた。まゆらは奇声をあげながらよろめき、背後にあった大きな棚にぶつかる‥すると棚が倒れそれの下敷きとなってしまう。暫く様子を見ていたが動く気配がないので脱出しようと背を向けた時鈍い音が響く。胸を見るとまゆらの腕が貫通している。がはっと血を吐き、綾人は床に倒れる。息絶える際に頭を過ぎったのは大好きだった姉の事だった。
シーン8
「よし」
沙重は館全体にガスを充満させて館から脱出を試みる。その途中で見つけたのは弟の血まみれの死体だった。沙重は涙を流すが、綾人の犠牲の為にもまゆらを滅ぼし、生き残らねばと誓い館の外へと走り出した。それから遅れる事数分、館が物凄い爆音と共に炎上した。そして夜明けを待ち、迎えの船に乗り込む。船員は何があったかを聞いてくるが「火事があった」と短く告げられ、それ以上は何も言えなかった。
長い夜が明ける。全てが終わったかのように思えた時、錨を繋ぐ鎖を掴むまゆらの姿があるのを沙重はまだ気がつかなかった。
そこで撮影終了が言い渡される。皆が喜びに騒いでいる中ジュンだけが沈んだ顔をしていた。ジュンは霊感がある。そして人影のような物を見たのだ。もしかしたらこの孤島には本当に何かがいるのかもしれない。
その後、内容を編集していた人物も同じ物が映っていたと言っていたとか‥。