ここから出してアジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
水貴透子
|
芸能 |
3Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
難しい
|
報酬 |
10.4万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
03/06〜03/10
|
●本文
『ここから出して、精神的に耐えられそうにありません』
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
それは突然の出来事だった。
目が覚めると、薄暗く狭い部屋に私は倒れていた。
周りを見渡すと、私の他に何人も人が倒れている。
上、下、横、全てがコンクリートで固められた狭苦しい部屋。
出入り口を探すが見つからない。
そして、その中に『それ』はあった。
「何、これ」
近寄って見てみると―‥『それ』は俗に言う――‥。
ふ ん ど し
「いや、意味分からんから」
私は『ふんどし』に対して小さなツッコミを入れるが、ふんどしは何も言わない。
いや、返事を返されても怖いのだけど‥という更なるツッコミは置いておこう。
「ん?」
ふんどしの中に隠れるようにあった一枚の紙を見つけ、私は手に取った。
『正しき者が、ふんどしを正しく着用せよ。さすれば道は開かれん』
「何でふんどしなんだよ」
誰もツッコミ返しをしてくれないから寂しいのだけれど、条件反射のように言葉が口から出るのだ。
とりあえず、この『ふんどし』がこの部屋からの脱出する鍵を握っている事には間違いなさそうなのだが―‥?
「さて、どうしたものか‥」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
●募集事項
◎この話は映画で、出演者のみを募集します。
◎今回の映画で必要な役柄は以下の通りです。
・OPの『私』(必須/一名/性別はどちらでもOKです)
・部屋に倒れているその他の人(必須/何名でも可)
・ふんどしを着用する人(上の役柄の中から一人)
※上記以外でも適役がありましたら、そちらを演じていただいても構いません
◎今回の話は出入り口のない部屋から、ふんどし着用して脱出!という流れです。
◎ふんどし着用の方は、なるべく男性がいいかと‥。
(イケメンでもよし!オジサマでもよし!お子様も可愛らしくてよし!です)
◎特にそれ以外の設定は考えていませんので、他の参加者の皆様と話し合っての設定追加はOKです。
●リプレイ本文
「とりあえず‥何なのかしら、この状況」
そう呟くのはエリー(アイリス・エリオット(fa5508))、最初に目が覚めた人物だ。
「‥一体‥これはどういう事だ‥?」
頭を押さえながら起き上がるのはモヒカン(モヒカン(fa2944))、彼も何故自分がここにいるのか分かっていないようだ。
「っていうか、何で褌?」
海(海鈴(fa3651))が床に置かれている褌を指差しながら最もな疑問を口にした。
「正しき者が‥って褌をつければここから出れるって事なのかな?それにしても‥」
武田(武田信希(fa3571))は興味津々に褌を手に取り、満遍なく調べている。周りが驚いている中、一人‥シメオン(タブラ・ラサ(fa3802))、彼は近くの壁を軽く叩き「‥ただの悪い夢だといいんだけど‥」とげんなりした様子で呟いた。
※※
「で、誰が着るんだ?」
藤田(中善寺 浄太郎(fa5176))の言葉にその場にいた全員が黙り込む。それもそうだろう、褌には興味がある=着てもOK!という事にはならないのだから。
「え‥着なきゃ駄目なの?」
驚きながら問いかけてくるのは雪(七瀬紫音(fa5302))、彼女は今回、このような事になった事の事情を少しは知っているのだけれど、まさか褌が出てくるとは思ってもいなかった。
「えーと‥とりあえず着てみまーす!」
海が手を挙げて褌を手に取る。そして着用しようとしたのだが―‥。
「‥‥これってどうやって着るの?」
海の言葉に藤田がため息をもらし「こっちに来てみろ」と海を呼び寄せる。
「あ、ありがとです!えぇと‥こうやって‥こうかな‥」
海は藤田から教えられた通りに下着の上から褌をつける。
「できた!‥けど、なんも起きないねぇ‥」
そう海が呟いた瞬間だった。
「ブッブー、ハズレ!」
突然、褌が喋り始めたのだ。その事に皆が驚いたのだが、全員が心の中で同じ事を思っていた。
(「そんな所で喋りだすなよ!」)
しかし恥ずかしさの為、心の中だけに留めておき、それを言う事はなかった。
「喋った!?褌のくせに!?」
海が驚いて叫ぶが、その言葉が褌の怒りに触れたのか「シャベッチャワルイデスカ」と言う。それと同時にブザーが鳴り、どこからともなく金タライが落下してくる。
「だ、大丈夫?」
雪が心配そうに海に話しかける。そこで、出入り口のない所から金タライが落ちてきた事を誰も不思議に思わない。それほど混乱している―‥という事にしておこう。
「僕じゃ駄目だったみたいだから、はい」
そう言いながら海は雪へと褌を渡す。それを反射的に受け取り「え?」と褌と海とを交互に見る。
「え?じゃなくて次は雪さんの番、とりあえず皆、着てみればいいじゃん」
ナイスアイデア!と思う者はいなく、全員が「余計な事を‥」と呟いたとか。
正直な話、雪は高額バイトでここに来ていた。条件に『男性が望ましい』とあったが、高額バイトのためなら!と思い、ここまでやってきたのだ。
「‥う、うぅぅ‥」
結局、雪は高額バイトの誘惑に勝てずに褌を服の上から着用する―‥が、やはり何も起きず「ハズレ〜」と褌が馬鹿にしたように話しかけてくる。
その次の犠牲者という名のチャレンジャー(無理矢理)はエリーだった。
「えっ、わ、私!?むむむ無理よ!着方分からないし!」
エリーはそう答え、褌着用の宿命から逃げようとしたが海が藤田を指差す。つまり着方を知っている人がいる、と伝えたいのだろう。
「ふ、褌って男性下着でしょ?女が着る時点で正しい着用にならないんじゃないかしら‥」
エリーの言葉に「確かに、そうかもな」とモヒカンが呟き、褌はシメオンの手に渡った。その時、雪が「早く言ってよ‥」と寂しそうに呟いたのは気のせいではないだろう。
「‥これ、何?」
最近、日本にやってきたシメオンは褌そのものを知らないのか、珍しそうに褌を持っている。上手く説明ができない状況で「あ、分かった」とシメオンが自信ありげに呟く。
「相撲レスラーのユニフォームだっけ」
全然違う、そう思ったが説明をするのも面倒なので「それそれ!」と適当に言葉を返しておくことに皆は決めた。
「えー‥と」
シメオンは先程、褌をつけた人物達の見よう見まねで着用してみるが上手く着用できない。藤田が手伝ってやりながらも褌を着用するが「チガイマース」と憎たらしい返事が返ってきて、シメオンは再びため息をついた。
「え、次はうちの番なんだ‥?」
武田が渡された褌をジッと見つめ、何か不審な点はないかと調べ始める‥だが、特に異常な所は見られない。
「早く着てくれよ」
藤田のせっつく言葉に「わ、分かってる!」と武田が言葉を返す。
しかし羞恥心が先に立つ武田は「うがーっ」とキレて褌を引き裂こうとした。
「それを破いたら出られなくなるかもしれないですよ」
エリーの言葉に武田はピタリと行動を止め、泣く泣く褌を着用する羽目になった。しかし当然の事ながら褌は無反応。自分を引き裂こうとした罰のつもりなのか落ちてきた金タライの数が多いような気がする。
その後もモヒカン、藤田が褌を着用するが『正解』の二文字が褌から語られることはなかった。
※※
「なぁ、思ったんだが‥」
全員が褌を着用したが、状況に全く変わりが見られない中、藤田が思い出したように呟いた。
「服の上とか下着の上からだから駄目なんじゃないか?直に褌を着用すればいいのかも‥」
げっ、全員がそう呟き互いの視線で役目を押し付けあう。
「そ、それはさすがに無理!いくらなんでも直は嫌あっ!」
雪が叫び、エリーも同じくといったような表情で藤田を見る。その時、雪は心の中で「バイト代さん、さよなら‥」と呟いていた。
互いに褌直着用権を押し付けあって一時間ほどが経過し、結局最初に褌を着用した海が着ける事になった。
「‥恥ずかしいから、皆には向こう向いてて欲しいなぁー‥」
海が照れたように呟くと、エリーが「生着替えだし、見られたら恥ずかしいわね」と苦笑しながら皆に後ろを向くように促す。
パパパパパーン!パンパカパーン!
「アナタ、スバラシーイ。パーフェクト☆☆☆」
出口ヲ開放シマス、褌がそう喋ると前の壁が音をたてながら動き、空の青が視界に入ってきた。
「やー、諸君。良かったなー」
藤田の微妙な態度に疑問を感じたモヒカンが「何か、知っているんだな?」と低い声で問いかける。
「知ってるっていうか、俺が黒幕で、これの提案者なんだ。気づかなかった?」
あははは〜、と陽気に笑う藤田に殺意が芽生えたが海の「どうなってるのさ!」という叫びによって我に返らされた。
「これは後継者を決めるイベント。いわくつきの褌を納得させたら次期後継者、というワケ。ちなみにここにいる全員、雪さん以外は親戚なんだぞ?」
えぇぇっ!?次から次へと予想もしていない言葉を吐き出す藤田に皆は驚きで叫ぶ。
「まぁ、今後とも宜しくな。さて。褌後継者」
藤田はそう言うと褌姿の海をちらりと見る。そして「プッ」と笑いを吐き出した。
「後継者には色々と勉強&修行してもらわなきゃならないからなぁ、しっかり覚えような」
ふんどし後継者!笑いを堪えきれずに言う藤田は海を抱えてその場を去ろうとする。
「ちょ、待て!待て待て待て!勉強?修行!?放してくださいよっ!僕は行きたくない!嫌だあああああぁっ!」
叫びながらも連れられていく海を見て全員「自分じゃなくて良かった」と思ったそうな‥。
そして、シメオンは―‥。
「あの人たち、一応僕の親戚なのか‥」
親戚、その事を知った瞬間が一番シメオンが疲れた瞬間だったとか‥。
※※
「もう嫌だーーぁっ」
あれから勉強&修行の毎日を送らされる海は、毎回逃げようとするが褌に追いかけられて捕まえられるため、逃げる事もできなくなっていた。
「良かったなー、褌もお前を気に入っているみたいだぞー」
果てしなく棒読みでうらやましそうに藤田が言う。しかしそれはからかっているようにしか聞こえない。
‥実際にからかっているだけなのだけれど。
こうして、一人の犠牲者によって脱出不可能な部屋から見事に脱出して見せた皆さんに拍手!
そして、頑張れ!ふんどし後継者!
●打ち上げ●
「この褌、どうしようか」
撮影に使っていた褌を手に取りながら、監督が呟く。
「誰かにプレゼントしようか?映画公開記念に」
そう言って参加者に褌を渡そうとするが、当然の如く全員から拒否られる。
後に残されたのは、寂しそうに風に舞う褌の姿だけだったとか―‥というと勿体ないので誰かの荷物に入れておこうかなとたくらむ監督でした。
しかし、荷物に入れる前に見つかり、自分で持ち帰る羽目に‥。
END