失われし楽園の果てアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 3.1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/05〜03/09

●本文

『きっと地上は美しい所、そう夢見ていた―‥』


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「ここが‥地上?」

地下世界と地上を繋ぐ連結門を通ってやってきた、捜査員達の第一声がそれだった。

荒れ果てた荒野、緑のかけらもなく、お世辞にも美しいとは言えぬ場所。

「ここが―‥地上‥もっと綺麗な場所だと思っていた」

一人の青年が落胆を隠しきれずに呟くと「危ない!」という別な捜査員の声が耳に入ってきた。

現れたのは大きな体を持っていてグロテスクなバケモノ。

「な、によ。これは―‥」

鋭い牙と爪を持っていて、いくら捜査員達がバムスを持っているからとは言っても確実に勝てる相手という保証はない。

一時撤退するのが得策だと思われ、連結門に戻ろうとしたがもう一匹のバケモノが現れて連結門の前に座り込んでしまった。

「こっちに洞窟がある!」

男性捜査員の言葉に、全員がその洞窟へと逃げ込む。人一人がかろうじて通れるくらいの入り口なため、バケモノはどうしたものかといった感じで入り口の前をうろうろとしている。

「まだ‥地下世界が天国に感じるわね」

女性捜査員の言葉に答えるものはなく、静かな静寂のみが洞窟内に広がっていた。

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●募集事項
◎これはアクション映画で出演者のみを募集します。
◎今回の話に必要な役柄は以下の通りです。
 ・地下世界警察の捜査員
※‥しか思いつきません!他に適役がありましたらそちらを演じていただいても結構です。
※ですが、地上に住んでいる人間はいませんので『調査に同行する人間』という設定にしてください。
◎地下世界警察の捜査員は『バムス』と呼ばれる特殊能力を持っています。
(これは参加者の皆様が自由に考えていただいて結構です)
◎前回の話に参加されてない方も大歓迎です。
◎前回・今回に参加されたからと言って絶対に参加しなければならないという事はありません。
お気軽にご参加下さい。
※次の『輝く楽園』でアンポリは最終回になります。

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◎プレイングに書いて欲しいこと。
※役名/バムス/一人称/二人称/口調/
なるべくでいいのですが、プレイングは簡潔に書いてください。
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●今回の参加者

 fa1077 桐沢カナ(18歳・♀・狐)
 fa2825 リーベ・レンジ(39歳・♂・ハムスター)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa4300 因幡 眠兎(18歳・♀・兎)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)
 fa4371 雅楽川 陽向(15歳・♀・犬)
 fa4578 Iris(25歳・♂・豹)
 fa4614 各務聖(15歳・♀・鷹)

●リプレイ本文

「まだうろうろしてますよ〜」
 私達を食べちゃうつもりなんでしょうか、危機感を感じさせずに微笑みながら呟くのはステラ(桐沢カナ(fa1077))だった。
「地上‥もうちょっと良い所かと思ってたのになぁ‥」
 キリー(百鬼 レイ(fa4361))が小さく愚痴を零す。それに対して草加(草壁 蛍(fa3072))も「同感ね」と言葉を返す。
「不毛の荒野だとか乾いた大地、水一滴無しとかそういうのは覚悟していたけど、これは予想外ね」
 草加が怪物を見ながらため息混じりに呟く。
「とりあえず‥アレを倒さないと‥調査どころか地下にも帰れませんね‥」
 ラルム(各務聖(fa4614))が涙の混じった声で呟くと「確かにね」とエール(雅楽川 陽向(fa4371))が答える。
「でも、あんな怪物を倒す方法なんて‥」
 エンジ(Iris(fa4578))が考え込む素振りを見せながら呟く。
「あー‥もう考えるのは苦手だから止めよ」
 頭が痛くなる、そう言うのはパティ(因幡 眠兎(fa4300))、こうしてどうするのか結局決まらないまま時間だけが過ぎていく。


「‥‥で!どうするのよ」
 あれから一時間ほどが過ぎただろうか、何も決まらない状態に草加が多少イラついた口調で沈黙を破った。
「地下から持ってきた食料もながくはもたない、早く決断をするべきだな」
 ステラは「まともな食べ物はなさそうですしね」と笑みを浮かべたまま答え、エンジの言葉に「決断?」とキリーが問いかけてくる。
「‥あの怪物に喰われる決断、もしくは倒して地下へ帰る決断のどちらかだ」
「エンジ、嫌な事を言うね‥」
 エールは対して気にした様子もなく答える。キリーは「喰われたくはないですよ!」と焦ったように答えた。
「‥となると倒すしかないですね」
 ラルムが呟くと「頑張ろうね、みんな」とステラが呟いた。


「さて、問題はどうやって倒すか‥よね?」
 怪物を倒そう、そこまで話が進んだのは良かった。しかし見る限り、まともな攻撃では倒せそうにないのも事実。
「私のメギドを使おうかと思ってるんだけど、どうかしら?」
 草加の言葉に捜査員全員が驚いた表情を見せた。それもそうだろう、今まで草加の能力は『強力だが、操作不能』という風に聞いていたのだから。
「く、草加さん‥?自棄になっちゃ駄目ですよ?」
 キリーが恐る恐る言うと「何気に酷い事を言うわね」と睨みながら草加が答える。
「確か操作不能って聞いてますけど‥」
 ステラが問いかけると「何とか操作可能になったのよ」と自信ありげに草加は答える。
「でも発動するまでに時間掛かるかもしれないから、時間稼ぎを宜しく」
 草加のその言葉に「私が囮になるよ」とパティが手を挙げながら呟いた。
「あ、じゃあ私もお手伝いします」
 ラルムも囮希望で手を挙げたとき、エールが驚いたように「ラルムも?」と問いかけてくる。
「アレに効果があるかは分かりませんが‥少しでも攻撃を避けられるようにパフュームで幻覚を作ろうかと思うんです。流石に私が囮として出てもパティさんの邪魔になりそうですし‥」
 ラルムは苦笑しながらエールに言葉を返すと「なるほど」と納得したように呟いた。
「じゃあ、僕がホワイトアウトで怪物の目をあちらに向けるな」
 エンジの提案に「お願いね」と草加が話しかける。
「僕にも何か役に立てるのなら、それだけで嬉しいですから」
 過去の事件を気にしてかエンジは寂しそうに笑う。それを見たエールがバシとエンジの頭を軽く叩いた。
「アンタが何者でも、今は私達の仲間でしょ。そんなネガティブにならなくてもいいんじゃないの?」
 エールの言葉に一瞬キョトンとした表情を見せたエンジだったが、すぐに表情を戻し「ありがとうございます」と照れて赤くなる顔を背けながら呟いた。
「さ、行くよ!」
 パティが叫ぶと同時にエンジと共に洞窟を出る―‥がステラも一緒に洞窟を出て行ってしまう。
「ステラさん!?」
 キリーが叫ぶと「私の能力も役にたつかもしれないですから」と叫び、パティの所へと走っていってしまった。
「草加さん、止めは宜しく頼みますね」
 キリーも怪物から距離を置いた所へと走り、エンジたちが所定の位置まで行くのを待つ。
「おい、こっちだ!」
 ホワイトアウトで姿を消していたエンジが能力を解除して、姿を現す。怪物はエンジ目掛けて走ってきて、鋭い爪でエンジを切り裂く―‥だが切り裂いた瞬間にエンジは煙のように消えてしまった。
「パティさん、エンジさん!今です」
 煙のように消えたエンジはラルムが展開した能力が見せた幻、実際の二人は怪物の背後に立っていた。
「今だ!」
 攻撃態勢を取る二人を見て、キリーが能力を発動して怪物の足を狙って撃つ。
「キリー!気をつけろ!コイツはでかいが動きも早い!」
 エンジの言葉に「え?」とキリーは呟き、それと同時に怪物の爪を受けてしまう。
「キリーさん!」
 ステラが叫び、キッと怪物を睨みつけ「貴方の力、頂きます!」と叫び、エナジードレインを展開して怪物からエネルギーを奪い、傷を負ったキリーへと還元する。
「皆!避けてぇっ!」
 パティが叫ぶと同時に能力、超身体能力を開放して怪物に殴りかかる。鉄拳で殴られた怪物は少し呻きながらふらふらとした足取りになり、そこで草加が叫んだ。
「塵一つ残さずに消滅させてやる!」
 そう叫び、草加の能力『メギド』が発動された。生体原子を消滅させる能力だけあって、怪物は一瞬のうちに消えてなくなった。
 それを見ていたエンジは「この人だけは怒らせてはならない‥」と本人に聞こえぬくらいの小さな声で呟いたとか‥。



「あの怪物って何だったんでしょう‥まさか人の成れの果て‥とかじゃないですよね?」
 草加が怪物を消滅させた後、ステラが怪物だったモノを見ながら呟く。
「さぁ‥それにこいつらの体を維持するだけの資源があるのかも疑問だな、こんな荒野に」
 エンジも呟き「あ」と思い出したようにカメラを取り出す。
「エンジさん?何してるんですか?」
 消滅したとはいえ、怪物の成れの果ての写真を撮りだしたエンジを不思議に思ったのかラルムが話しかける。
「一応『生物』だしな‥。誰か大きさの比較対象で一緒に写ってくれ」
 エンジが振り向きながら言うと、全員が手でバツ印を作っていた。
「‥や、誰か写ってくれないと調査にならないし‥」
 エンジが困りながら呟くと「いい考えがあるわ」と言って草加がカメラを取り上げる。
「はーい、もうちょい右に行って、あ!そこでいいわ」
 結局、怪物と一緒に写るのは自分に回ってきたエンジはため息を漏らした。
(「これも過去の償いと思えば‥!」)
 いや、それは何か違うと思うぞ、エンジ君‥。
「あ!これ何でしょうかね」
 キリーが見つけ、捜査員達に見せたのは『飛行機の玩具』だった。地下世界には飛行機というものもないため、キリーにはそれが不思議な物にしか思えなかったのだ。
「それは確か‥飛行機とかいう乗り物だったと思います。本で見たことがあります」
 ラルムの言葉に「へぇ‥」と呟き、気に入ったのか手放そうとしない。
「エンジ、カメラを貸して」
 エールがカメラを取り上げると、ソラ高く舞い上がり、青空の写真を撮ったり、空からの風景を撮ったりしていた。
「向こうには山‥それに湖もある」
 そちらの写真も撮りながら地下にはないもの全てに新鮮さを覚えていた。
「‥空を飛ぶのがこんなに気持ち良いものなんて‥知らなかったな」
 エールは呟くと、仲間達のところへ戻りカメラを返す‥とラルムが色々なものを触っているのを見つけ「何をしてるの?」と問いかけた。
「少しでも幻覚が立体的に見えるように触って覚えておきたいんです」
 ラルムは楽しそうに言葉を返した。
「でも‥空がこんなに青いものだなんて想像もしてなかったです」
 ステラが空を見上げながら呟く。
「でも‥今回地上に来て思ったけど、地上で人が暮らすのは無理なんじゃないかしら」
 草加が小さく呟く。
 確かに、バムスを持っている捜査員達でさえ現れた怪物に苦労して勝利した。これがバムスを持たない人間だったら普通にエサとして喰われていただろう。
「とりあえず、結果を報告に戻りましょう」
 ステラの言葉にそれぞれ帰還準備を始め、連結門へと向かいだした。


 今回持ち帰った情報の中で、捜査員達、そして地下世界に住む人間を驚愕させるものがしっかりと残されていた。
 それは―‥‥。



END