Oriental Darkness 水アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 9.9万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 03/16〜03/20

●本文

『私の死は犠牲じゃない、次へ繋ぐための希望なのです』

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

遥か東に黄金の都あり

かの都は『ジパング』と呼ばれていて、人と妖しの者が共存する平和で不思議な都

しかし―‥今、その平和を打ち崩そうとする者が現れた


※※※


「黒き星が各国に降り立ちました」

空の国の中央塔で祈りを捧げる『星詠姫(ほしよみひめ)』の予言から一週間が経とうとしていた。

予言と同時に火の国、水の国、大地の国、風の国に魔物が降り立ち、各国を支配していた。

それぞれの国には、国を平和に導く『輝玉』があり、魔物は輝玉を奉る奉納殿を拠点としていた。

輝玉は周りの気によって性質を変える不思議な玉で、心清き者が祈りを捧げれば平和をもたらし、心悪しき者の手に渡れば魔物を生み出す恐ろしい物へと姿を変える。

星詠姫はジパングを救うための勇者を選び出した。

果たして彼らはジパングを救えるのか!?


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

〜水の章〜

「水月(みづき)様!お止め下さい!」

水の国、輝玉を奉る奉納殿の最上階で姫巫女である水月が己の命を絶とうとしていた。

「下がりなさい。夜刀(やと)、わたくしはこの命を捨てます」

呟き、水月は窓を開ける。冷たい風が頬を掠め、水月は目を細めた。

「わたくしが死すれば輝玉は‥次代の姫巫女の所へと向かいます。そうすれば魔物の手に輝玉は渡りません」

護身刀の鞘を捨て、水月は己の首に刀を当てる。

「水月様!」

姫巫女は神聖な存在、自刃などしたら未来永劫、転生する事なく黄泉の国を彷徨う事になるのだ。

「貴方の犠牲で水の国が助かっても僕は嬉しくない!」

夜刀が涙を瞳に浮かべながら叫ぶ。それを聞いて水月は穏やかに笑ってみせた。

「犠牲などではありません。輝玉が行方知れずになれば、いずれ現れる勇者達が水の国を救うための時間稼ぎにもなります」

―私の死は希望へ繋がるのです

水月はにっこりと笑って答えるが、刀を持つ手は小刻みに震えていた。

「貴方が死んだら‥僕は勇者達を許せなくなる。勇者達さえ早く現れたら―‥と」

「夜刀―‥もう時間がないのです。魔物の手に輝玉が渡ってしまったら取り返しがつかない。さよなら、夜刀―‥」

水月は神通力を使い、夜刀を奉納殿の外へと瞬間移動をさせた。

奉納殿を支配する魔物から夜刀を逃がすため、そして―‥今から見せる姿を夜刀に見せないために―‥。

こうして輝玉は水月の死によって行方知れずとなり、魔物たちは総動員で輝玉と次代の姫巫女を探し始めた。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
●募集事項
◎この話は出演者のみを募集します。
◎この話は一章が二話完結となり、今回は前編です。
※ですが、どなたでも参加できるようにショート連作になっています。
◎今回の出演者が演じる事が出来る役柄は以下の通りです。
 ・勇者(必須/何名でも可)
※『火』に参加された方は同じ勇者役でもOKです。
 ・水の国を支配するボス(必須・一名/性別はどっちでもOKです
 ・水の国の次代の姫巫女(必須・一名/男性でもOKです)
 ・夜刀(必須・一名/性別はどっちでもOKです)
 ・ボスキャラに従う手下
 ・水の国の住人
※上記が私が思いついた役柄になります。他にも適役がありましたらそちらを演じていただいても結構です。
※必須役柄だけは必ず埋めてください。
※今回、星詠姫は登場しませんので『星詠姫』は演じることができません。

●ジパングの設定
◎ジパングには人間の他に『妖しの者』と呼ばれる天狗や妖狐などが存在します。
星詠姫が選んだ勇者の中に『妖しの者』がいても問題はありません。
◎選ばれた勇者のうち『人間は神通力』を『妖しの者は妖術』を使う事が出来ます。
(一部を除く)
以下に種族設定を書いておきますので、ご参照下さい。

●人間‥扱える術は『神通力』
特に秀でた部分はないが、劣る部分もない種族。

●妖狐‥扱える術は『妖術』
腕力は強くないが、身軽な動きで敵を翻弄させることが出来る。
また、敵を己の虜にして操る事も出来る。
鞭や軽武器を扱うことに長けている。

●天狗‥扱える術は『妖術』
力、防御共に低いが、豊富な知識の持ち主で妖術の威力が高い。
扇子や羽団扇を扱うことに長けている。

●鬼‥扱える術はありません。
力は抜群の種族。
ずば抜けた力の代わりに妖術を使う事が出来ない。
斧などの重武器を扱うことに長けている。

※人間だけは種族以外に職業があり、それによって能力が変わっていきます。

『神通力』『妖術』は参加者の皆様が自由に決めて下さって構いません。

※今回参加したからと言って次回も必ず参加しなければならないという事はありませんので、気軽にご参加下さい。


●今回の参加者

 fa0406 トール・エル(13歳・♂・リス)
 fa0430 伝ノ助(19歳・♂・狸)
 fa3502 水無月鈴(16歳・♀・小鳥)
 fa4263 千架(18歳・♂・猫)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)
 fa4579 (22歳・♀・豹)
 fa5176 中善寺 浄太郎(18歳・♂・蛇)
 fa5394 高柳 徹平(20歳・♂・犬)
 fa5498 雅・G・アカツキ(29歳・♂・一角獣)
 fa5574 丙 十哉(24歳・♂・猫)

●リプレイ本文

「ここが水の国ですわね、どんなお馬鹿さんに出会えるか楽しみですわ」
 楽しそうに呟くのは十尾流(トール・エル(fa0406))、火の国を救った勇者達は他の国も魔物に支配されている事を聞き、十尾流の重力操作を使って水の国までやってきたのだ。
「も、もう少し優しい移動手段はなかっただか‥?」
 疲れたように言うのは多々良(伝ノ助(fa0430))、渡(高柳 徹平(fa5394))も首を激しく縦に振る。
「‥足のついた状態ってこんなにも幸せな事だったんだ」
 何があったのかは三人にしか分からなかった。

※※


「疲れてない?」
 羅佳(雅・G・アカツキ(fa5498))が翠嵐(丙 十哉(fa5574))に問いかけると「大丈夫」と短い言葉を返した。元々、翠嵐は街に住んでいたのだが姫巫女の死を言い当てた事により街を追われる事となったのだ。
「その光って何なんだろうね?」
 羅佳が翠嵐に問いかける。街を出る際に翠嵐は夢を見たのだ。大きな光が国を救うという夢を。そしてその時に不思議な石を手に入れた。それが輝玉という事には二人は気づいていない。二人で森の中を歩いていると一人の女性・夜刀(檀(fa4579))と出会う。夜刀は翠嵐の持っている輝玉を見て驚き、戸惑った。
「‥それは輝玉、姫巫女の証‥貴方が次代の姫巫女なのか‥」
 夜刀の言葉に意味が分からないのか、翠嵐と羅佳は顔を見合わせて首を傾げる。
「貴方は次代の姫巫女だ、さぁ‥行きましょう!」
 突然現れた夜刀に羅佳は不審な目を向けるが、その必死さに何か事情があるのだろうと思い、問う事はしなかった。
「もう夜か、羅佳‥何処で寝ようか」
 魔物が徘徊する今、下手な所で寝る事は出来ない。どうしたものかと考えている時に「安全な場所がある」と夜刀が呟いた。
「水の加護を受けた神聖な森だから‥」
 夜刀言葉を信じて、二人は森の奥へと進むと最奥に神聖な気に包まれた泉があった。
「へぇ‥こんな所があったんだ。ここなら魔物も近寄れないだろうな」
 翠嵐が呟き、三人は簡単な非常食を食べ早めに寝る事にした。
「流石に疲れたんだな、もう寝てる‥」
 羅佳が寝息をたてる翠嵐を見て呟く。そして自分の腕に浮かぶ勇者の紋を見てため息をもらした。
「?」
 泉の傍からすすり泣くような声が聞こえ、羅佳は声の方へ向かう。
「‥水月様、何故死んでしまったんですか‥」
 涙を流し、夜刀は体を震わせて泣く。その姿はとても弱々しく羅佳は声を掛けずにはいられなかった。
「‥何を泣いてる?」
「‥泣いてなど―‥貴様、その腕は‥」
 夜刀が羅佳の腕の証に気がつき、憎悪に満ちた目で睨みつけてきた。
「貴様、勇者‥」
 紋を見て激昂する夜刀に眉をひそめ、羅佳は低い声で呟いた。
「‥親しい者すら守れない奴に国は守れん。あいつには‥言うな」
 羅佳の言葉を聞いて国より翠嵐の方が大事だ、そう聞こえ夜刀は「‥寝る!」と足早に寝床へと戻っていった。
「‥あんたには未来がある、ヘコむ事はねぇよ‥」
 戻ってきてからも泣く夜刀に翠嵐が呟き、自分も再び夢の中へと戻った。


※※


「‥‥ここはどこだ」
 両拳を握って立ち尽くすのは庚牙(中善寺 浄太郎(fa5176))、現在迷子中である。一時間ほど同じ場所をうろうろとしており、周りからは不審な目で見られていた。
「何をしてるんだ?」
 偶然通りかかった渡達が問いかけると、勇者の紋が共鳴を始める。
「‥‥何だ?」
「共鳴、貴方も勇者でしたの?」
 十尾流が呟くと「‥‥何の事だ?」と不思議そうな顔をした。庚牙に説明する為に三人は近くの茶屋で休憩をする事にした。
「‥成程‥勇者に選ばれたからには‥少しは役に立たんとな‥」
 庚牙は説明を聞いて同行を申し出た。

※※


「何故見逃したのですか?」
 奉納殿を占拠する魔物・藍刹主(千架(fa4263))に進言するのは部下である睡蓮(水無月鈴(fa3502))だった。手っ取り早く水月が生きている時に輝玉を奪う事もせず、挙句に夜刀まで見逃した主の真意が分からなかったのだ。
「あっさり手に入れたら面白くねぇじゃん?俺は楽しみたいんだよ」
 子供独特の無邪気な残酷さを持ち合わせる藍刹主、彼は心底楽しそうに答えた。
「今なら再捕縛も可能ですが‥?」
「あ〜‥止め止め、面白くねぇって」
 主の言葉に「はぁ」とため息をついて睡蓮は「では‥」と言葉を続ける。
「勇者達が向かって来ています。蒼黒主様を倒したほどの実力。私が確かめて参りましょう」
 そう言って出て行こうとする睡蓮を澪琵亞(百鬼 レイ(fa4361))が呼び止めた。
「私も行ってよろしいでしょうか?藍刹主様」
「お〜、行って来い。俺は大人しく留守番してるからよ」
 ひらひらと手を振りながら見送る藍刹主に頭を下げ、二人は奉納殿から出て行った。
「‥なんてな、暇だし俺も行くかぁー‥」
 大きく伸びをして藍刹主もゆっくりと奉納殿を後にした。


※※


「そっちは違う!」
 夜刀の叫び声が森の中に響く。夜刀は勇者達の気を感じ、彼らと出会わないように遠回りで奉納殿を目指していた。
(「水月様も守れなかった勇者に新たな姫巫女が守れるものか」)
 そう心の中で呟いていると「何を逃げ回っているんですの?」と上空から十尾流が問いかける。流石に驚いたのか「うわぁっ」と夜刀が叫ぶ。
「十尾流さん、見つかりましたか?」
 夜刀達の気も勇者達は感じていたのか、先回りをして渡達は待っていた。
「‥何で追われてるんだ、俺達は」
 翠嵐と羅佳は苦笑混じりに呟き、夜刀も諦めたようにその場に座り込んだ。
「水月様を守れなかった勇者達に次代の姫巫女を任せられるものか!」
 夜刀の言葉に十尾流は楽しそうに呟く。
「自殺も人殺しと気がつかない偽善な姫巫女など気に留める必要はありませんのに」
 十尾流の言葉に腹を立てたのか「貴様っ」と掴みかかろうとするが羅佳によって止められる。
「貴様らなどと共に行動などできない!」
 夜刀は叫び、翠嵐と羅佳の腕を掴みさっさと先に進んでしまう。
「ちょっと待ってくんろ!」
 多々良が叫ぶが、夜刀は聞く耳持たずだった。
「‥追うなら早くした方がいいかも。嫌な感じが‥する」
 庚牙の言葉に勇者達は先を進む夜刀達を足早に追っていく。


※※


「まだ死んでもらっては困る‥勇者共が来るまでは、ね」
 庚牙の思った通り、先には魔物が待ち潜んでいた。夜刀と羅佳は翠嵐を守ろうとするが目の前の二人は思った以上に強く、苦戦していた。
「分を弁えろ、下郎共」
 澪琵亞が持っていた杖を振りかざした瞬間、大木が澪琵亞目掛けて飛んでくる。
「‥‥間に合ったようだな」
 大木を投げたのは庚牙、その後ろには多々良達も武器を構えて立っていた。
「澪琵亞、本命が来ましたよ」
 睡蓮が笑みながら言うと「そうですね」と能力を発動させながら澪琵亞が答えた。彼の能力は幻覚、攻撃系ではないものの厄介な能力である事に違いはない。
「私の予定では、貴方達はここで死ぬ事になっています」
 霧の幻覚を使いながら澪琵亞が言う。しかし渡と多々良が攻撃を仕掛け、幻覚を打ち破ると彼は豹変した。
「勝手に‥予定にない事を‥するなぁっ!貴様ら!」
 豹変すると同時に澪琵亞は蛇へと姿を変える。そして本気で攻撃をしようとした時「ちょい待てって」と楽しげな声が聞こえてきた。
「なっ‥」
 現れた藍刹主の姿を見て驚いたのは火の国からやってきた勇者達だった。それもその筈。藍刹主の姿は火の国の姫巫女・緋織にそっくりだったのだから。
「留守番してらっしゃると言っていましたのに‥」
 睡蓮はどこか諦めたように呟く。それに対し「面白ぇ事二人占めは良くねぇじゃん?」と不敵な笑みを浮かべながら答えた。
「澪琵亞も熱くなんなよ」
 藍刹主の言葉に「すみません‥」と呟いた。
「さぁ、楽しませろよ、勇者共!」
 藍刹主は叫ぶと同時に勇者達に襲い掛かってきた。襲い掛かると言ってもまるで遊んでいるかのような攻撃しかしてこない。
「違う、これは緋織様じゃない、緋織様がこんな事をする筈がない!」
 渡が叫び、多々良も我に返ったかのように藍刹主に向かって攻撃をする。
 しかし‥。
「多々良、私に刃を向けるのか‥?」
「‥っ!緋織様!?」
 多々良の心の中を読み取り、藍刹主が緋織を真似た口調で話す、それに惑わされ多々良は攻撃する手を止めてしまった。
「‥なーんてなっ」
 楽しげに笑う藍刹主から蹴りを食らわされ、渡共々壁へと激突させられる。
「お前は戦わないのか?」
 藍刹主が十尾流に問いかけると「ふふ」と妖艶な笑みを浮かべて答える。
「‥魔物が支配する世の中なんて、楽しくなりすぎて、わたくし困ってしまいますわ。でも星詠姫に従うのも面白くないので見学させていただきますわ」
 しかし十尾流は動ける庚牙に妖術をかけ、援護をする。力なら自分の方が強いはず、そう思った庚牙は大斧を振り上げて戦うが更に強い力でねじ伏せられてしまう。
「‥俺が力で負けるなんて‥」
 睡蓮から攻撃を受けた庚牙は地面に伏せる。その瞬間、翠嵐の持っていた輝玉が強く輝き、それに気づいた澪琵亞が攻撃を仕掛けるが光に阻まれて攻撃が届く事はなかった。
「まさか‥本当に俺が姫巫女‥?」
 それを見ていた藍刹主が一言「飽きた、帰る」と呟いた。
「どうせ、また会うしな?‥なぁ、夜刀」
 嘲笑うような言葉に夜刀はギリと唇を噛み締める。
「最高の舞台で待ってるぜー!」
 藍刹主が消えると睡蓮、澪琵亞も水に溶けるかのように消えていった。


●ピンナップ


千架(fa4263
PCシングルピンナップ
武洋