夢幻界廊 陸アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 2.6万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 03/14〜03/17

●本文

『夢喰い達よ、次代の当主を助けるために夢幻界回廊を通り、幻界へと赴け―‥』

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「は?」

突然の本家からの連絡、それを聞いた夢喰い達は驚きで間抜けな声を発した。

「次代の夢喰い当主候補の漣(さざなみ)が幻界で行方不明になった」

漣とは現当主の娘であり、強大な力を持つ夢喰いでもあった。

「夢喰い達の能力が消えた原因、それは漣にあると本家は予想している」

恐らく夢喰い当主関連で、能力が消えた事は予想していた。

だが、次代の当主が行方不明になっているとは夢にも思わなかったのだ。

「先日渡した筒を使えば幻界へと向かう事が出来る。だが、今の幻界は夢魔も蔓延る危険な区域となっている」

そんな中を助けに行けというのか、思わず口から出そうになって夢喰いの青年は慌てて口を手で隠した。

「今回は防御系の筒を使う夢喰いも同行した方がいいだろう」

こうして、夢喰い達は人間の見る夢の奥の奥に存在する幻界へと向かうことになった。

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●募集事項
◎これはアクション映画で出演者のみを募集します。
◎今回の話に必要な役柄は以下の通りです。
 ・夢喰い(必須/何名でも可)
 ・夢魔(必須/何名でも可)
 ・漣(必須/女性一名)
※とりあえず必須役柄は上記の三つのみです。このほかにも適役がありましたら、そちらを演じていただいても結構です。
◎今回は漣を助けることによって夢喰いの『属性』と『能力』が復活します。ですので話の後半で能力を使いたい夢喰いの方はプレイングに『属性』と『能力』をお書き下さい。
※基本的に参加者の皆様が決めていただいて構いませんが、能力は決めた属性系統のものにしてください。
◎夢喰いには表の顔があります。
 例)教師や学生、店員など
◎逆に夢魔は人の生気さえあれば生きていけるので、表の顔を持つ夢魔はほぼいません。
◎前回から登場している『筒』ですが、能力の使えない夢喰いに配布された武器です。自分の思うとおりの武器になります。
◎今回から『筒』に防御系の力が備わりました。
◎防御系、攻撃系、どちらかにしか筒は変化しませんが、防御系の筒を使う夢喰いが一人はいたほうがいいとおもいます。

※夢喰いの仲介所:毎回「夢猫」が仲介所になっていますので今回も「夢猫」を仲介所とします。

●今回の参加者

 fa0470 橘・月兎(32歳・♂・狼)
 fa1609 七瀬・瀬名(18歳・♀・猫)
 fa3366 月 美鈴(28歳・♀・蝙蝠)
 fa4031 ユフィア・ドール(16歳・♀・犬)
 fa4930 マモル・ランスロット(20歳・♂・豹)
 fa4961 真紅櫻(16歳・♀・猫)
 fa5030 ルナティア(17歳・♀・蝙蝠)
 fa5257 レーヴァ(18歳・♀・獅子)
 fa5450 皇 流星(18歳・♂・一角獣)
 fa5470 榛原 瑛(26歳・♂・猫)

●リプレイ本文

「久樹ちゃん(橘・月兎(fa0470))、見つけたわよ」
 学校が終わり、帰宅しようとしていた時に柚香(ユフィア・ドール(fa4031))が門前で待ち伏せしていた。
「緊急事態よ」
「あぁ‥何かあったのか?」
「とにかく着いてきて」
 半ば柚香に引きずられるように久樹は夢猫へと連行された。


「漣さん(ルナティア(fa5030))が幻界に行ったまま行方が分からなくなったそうなんです」
 状況を説明するのは夢猫の店主・瑞希(七瀬・瀬名(fa1609))、本家から連絡を受けた彼女はすぐさま夢喰い達へと報せたのだ。
「最近、構ってやれなかった俺の責任でもある‥」
 そう悔やむように呟くのは柚香と漣の従兄弟でもある八重樫(榛原 瑛(fa5470))だった。
「とりあえず、幻界に行った方がいいんじゃないか?」
 前回の傷が完治していないのか結那(レーヴァ(fa5257))は包帯が至る所に巻かれていた。
「傷は大丈夫なのか?」
 久樹が問いかけると「大丈夫だ」と結那は言葉を返した。
「今回は私も行くね。少しでも人手は多い方がいいでしょ?」
 瑞希も自分の筒を手に持ち、幻界への準備を始める。
「恐らく幻界には夢魔もいるだろう、気を引き締めていけ」
 久樹の言葉に夢喰い達は漣がいる幻界へと向かっていった。


「ここは‥」
 漣は広い幻界の中、ポツリと呟いた。そこらにある夢の穴を通れば現実世界へ戻る事も可能なのだが、どこに通じる夢か分からない為、幻界から抜け出せずにいた。
「‥おや、珍しい所に夢喰いの匂いがしたと思えば‥」
 暫く歩いた所で夢魔・インクス(マモル・ランスロット(fa4930))と出会う。彼は夢喰いの匂いを嗅ぎ付けてやってきたのだ。
「あら、抜け駆け?」
 クス、と笑いながらインクスの後ろに立つのは紫雨(月 美鈴(fa3366))、ようやく本調子に戻り暇潰しに幻界へと来ていた。
「‥貴方達は夢魔‥?」
 漣が手に持っていた夢心をギュっと握り締め、震える声で呟く。
「日ごろの恨み、晴らさせてもらうぜ」
 そう叫び、インクスが漣に攻撃を仕掛けようとする―がそれは何かによって阻まれてしまった。
「‥誰?」
 紫雨は人の気配がする方へ視線を向けると全身を覆ったフード付マントを羽織っている人物・詩織(真紅櫻(fa4961))が立っていた。
「‥何をしているの。ここは貴方達が入って来ていいような場所じゃないわ」
 そう呟くと同時に詩織は離れていた漣を一瞬で自分の所へと瞬間移動させた。
「悪いけど無駄な戦いは避けたいの、さよなら」
 漣の腕を掴、呟くと詩織は夢魔二人の前から姿を消した。


「ここなら暫くは安全ね、どうして貴方はここに?」
 詩織が問いかけると漣は「‥私‥」と涙の混じった言葉で話し始めた。
「私は夢喰いの時期当主、それは分かってるわ。小さな頃から言い聞かされてきた事だから‥でもそれが決定してしまった数年前から大好きだった従兄弟が構ってくれなくなった」
 それが悲しかったの、漣は夢心を両手で握り締めながら呟く。
「寂しくて誰にも分かってもらえなくて‥苦しかったの‥」
 漣の言葉を聞いていた詩織は「‥そうだったんだ」と小さな声で答える。
「大切だから離れた‥そうも考えられるんじゃない?」
 詩織が呟くとちらりと別な方を見る。そして目を閉じる。それと同時に幻界に入ってきていた夢喰い達がその場に突然現れた。
「なっ‥」
 驚いたのは柚香、広い幻界の中をどうやって漣を探そうとしていた矢先に突然目の前に現れるのだから。
「柚香、亨君‥」
 気まずいような、会えて嬉しいような、漣は複雑な感情を交えて二人の名を呟く。すると柚香が「言いたい事は山ほどあるけど、まずは此処を出ましょう」と短く呟く。
 それと同時に大量の水が夢喰い達を襲ってきた。
「危ないっ!」
 一番早くに気づいた瑞希が筒を鉄扇に変え、水を風圧で吹き飛ばす。
「気づかれたか」
「あの男の夢魔はあたしが行く!」
 そう叫んで結那は青龍刀を持ち、インクスへと目掛け走っていく。
「私も行くわ、万全じゃない結那さん一人では危ないから」
 瑞希も鉄扇の防御能力を用いて結那と共にインクスを倒しに行く。
「女二人か、ちょうどいい」
 インクスは挑発するように嘲笑う。彼は女性をいたぶるのが好みで、戦う相手が女である事に喜びを感じていた。
「女だと思って‥馬鹿にするなよ!」
 結那が青龍刀でインクスに攻撃を仕掛けるが、怪我をしているせいか攻撃は簡単に避けられてしまう。
「結那さん、大丈夫?無理はしないで!」
 攻撃を仕掛ける結那、結那に向かって来る攻撃を鉄扇で防御する瑞希、一見バランスが良いように見えるが、状況は二人の方が不利だ。何故なら結那は怪我をしているせいでインクスに攻撃を当てる事が出来ない。そのうち瑞希も疲れ鉄扇を使えなくなるだろう。そうなったらインクスの一人勝ちになってしまうのだから。
「うあっ!」
 インクスの水が結那に直撃し、結那は地面に叩きつけられてしまう。途中で自身の能力が戻っている事に気づき、使おうとするが意識が朦朧として集中できない。もう駄目だ、そう思った時に意外な人物が二人を‥いや、結那を助けた。
 その人物は―‥。
「キミ!ボクの子猫ちゃんを勝手に苛めるんじゃない!」
 そう、インクスと同じ夢魔・プリンス(皇 流星(fa5450))だった。彼は地面に伏している結那に近寄ると持っていたハンカチでソッと血を拭う。
「夢喰いを助ける夢魔なんて聞いた事ねぇ、一緒に死んじまいな!」
 インクスは叫び、今までよりも強力な技で三人を襲う。
「勝手な事をするなと言っているだろう!」
 プリンスは叫ぶと、両手を伸ばし、インクスの攻撃全てを受ける形になった。
「インクス!‥‥っ」
 紫雨が叫ぶ、そしてその時初めて自分の体が動かない事を知る。
「あいつらの戦いはいい囮になった。おかげでこうやって能力で動きを封じる事が出来たからな」
「夢心が近くにあるから能力が使えるってワケね‥筒と同時に能力発動なんて、一歩間違えば廃人でしょうに」
 久樹は筒の防御シールドを発動させたまま、能力で紫雨の動きを封じていた。未熟な夢喰いが同じ行動を取れば廃人になるだろう。筒と能力、元々は反発しあう性質に作られているのだから。
「でも、上位夢魔をナメないでね。陽炎!」
 紫雨が叫ぶと、地中から土蛇が現れる。この土蛇は紫雨が魅了した使い魔的存在の蛇だ。蛇を久樹に襲い掛からせ、それと同時に久樹は能力と筒を解除してしまう。
「‥また、会いましょうね」
 そう妖艶な笑みを浮かべると、紫雨はインクスの元へと行ってしまった。


「いつもの能力が使えたらな」
 プリンスは自嘲気味に呟く。彼ら王家の夢魔の弱点は自分の為以外に能力を使えないこと。自らのみを存続させるという王家のみに伝わる能力だからだ。
「何で、お前はあたしを庇うんだ!意味分からないよ」
「こういうシチュエーションに弱いんだろ‥?女ってのは」
 うっ、と苦しそうに呟きながらプリンスは弱々しく笑って見せた。
「くそ‥邪魔をしやがって!」
 腹をたてたインクスが三人に襲い掛かろうとすると、八重樫の槍がブン、と空気を裂きながらインクスの腹に命中した。それでも踏みとどまるインクスに八重樫は蹴りを入れ、隙が出来た所でもう一度、槍を振り回した。
「いい加減諦めろって言うんだよ」
「随分と痛めつけてくれちゃって。インクス、貸しにしておくけど‥情けない姿ねぇ‥」
 紫雨は楽しそうに笑いながら、インクスとプリンスと一緒に幻界から消えていった。


「何を考えてるのよ、こんな事をして喜ぶのは本家の馬鹿達くらいよ!」
 夢魔達が退散した後、柚香による漣への説教が始まった。漣は言い訳もする事なく「ごめんなさい」と涙を流しながら呟いている。
「‥それくらいにしたら?彼女の気持ちも聞いてあげて」
 詩織の言葉に柚香は「‥漣の気持ち?」と不思議そうな顔で答える。
「‥私‥亨君や柚香が構ってくれなくなって寂しかったの、だから構ってほしくて‥」
 俯きながら呟く漣に柚香は次の言葉が出なかった。
「私が漣から離れたのは、小鳥遊家の私と関わって漣が悪く言われていると気づいたからよ、私のせいで漣が悪く言われるのが嫌だったから‥だから‥」
「お前に何かあったら、誰かが哀しんで済む話じゃないんだ」
 八重樫も漣の頭に手を置きながら呟く。
「漣、柚香、お前達二人とも、俺の可愛い従妹である事は変わらないんだからな」
 八重樫の言葉に「‥うん、ありがとう‥ごめんなさい‥」と漣は呟き、謝罪とお礼を言った。
「さっさと出よう、でないとまた夢魔が現れるかもしれないからな」
 そう言って幻界を出ようとした時‥。
「!」
 突然聞こえた懐かしい声に久樹は勢い良く後ろを振り返るが、そこには誰もいない。
 仲間にその事を言う事なく、久樹達は夢心を所定の位置に戻すために本家へと出向いた。本家に着くと同時に色々な人間が漣を叱り、責めたてるような言葉を次々と口にしていた。
「漣の気持ちを悟ってやってください。彼女は‥まだ十代の子供なのですよ?」
 本家のお偉方に久樹が言うと、気まずそうに互いの顔を見合わせ、その場からいなくなった。
「‥漣、次に同じ事したらコブラツイストだからね?」
 そう笑う柚香の顔が恐ろしく怖かった。
 そして瑞希も珈琲を淹れようとしたら、全員から激しく拒否られて落ち込んだとか‥。
「‥私の淹れる珈琲、美味しいのに‥」

END