Oriental Darkness 水2アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 8.4万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 03/31〜04/03

●本文

『あの時の水月様の気持ち、今なら分かる気がする―‥』

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遥か東に黄金の都あり

かの都は『ジパング』と呼ばれていて、人と妖しの者が共存する平和で不思議な都

しかし―‥今、その平和を打ち崩そうとする者が現れた


※※※


「黒き星が各国に降り立ちました」

空の国の中央塔で祈りを捧げる『星詠姫(ほしよみひめ)』の予言から一週間が経とうとしていた。

予言と同時に火の国、水の国、大地の国、風の国に魔物が降り立ち、各国を支配していた。

それぞれの国には、国を平和に導く『輝玉』があり、魔物は輝玉を奉る奉納殿を拠点としていた。

輝玉は周りの気によって性質を変える不思議な玉で、心清き者が祈りを捧げれば平和をもたらし、心悪しき者の手に渡れば魔物を生み出す恐ろしい物へと姿を変える。

星詠姫はジパングを救うための勇者を選び出した。

果たして彼らはジパングを救えるのか!?


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〜水の章 2〜

「何故、息の根を止めなかったのですか?早いうちに危険因子は潰しておく方が得策だと思われますが」

奉納殿に帰還した後、藍刹主の部下である睡蓮が問いただすように話してきた。

「言ったろ?俺は楽しいのが好きなんだよ。楽しければどんな遠回りだってしてやるぜ?」

藍刹主はクッと楽しそうに残酷な笑みを浮かべて答える。

そんな笑みを浮かべている時の藍刹主に何を言っても無駄だという事が分かっているのか睡蓮はため息混じりに「‥そうですか」と呟く。

「楽しければいい、主のその気持ちには共感できますね」

「澪琵亞、貴方までですか」

「そんなに怒るなって。奴らはどっちにしろこの奉納殿でしか輝玉を解放する事は出来ないんだからよ」

そう、輝玉だけ手にしていても本来の力は解放する事は出来ない。

精々が姫巫女を守る程度の力しか発揮できないだろう。

「奴らが地べたに這い蹲って悔しがる顔を見ながら輝玉を奪いてぇ」

アハハハハハっ、と狂気じみた笑い声をあげながら藍刹主は話した。

「そんなに心配する事もありませんよ、睡蓮。この奉納殿には幾つものトラップがあります、奴らは無傷でここまで辿り着けませんよ」

「‥そうだと良いのですけどね‥」

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●募集事項
◎この話は出演者のみを募集します。
◎この話は一章が前後編完結となり、今回は水の後編です。
※ですが、どなたでも気軽にご参加いただけるようにショート連作になっています。
◎今回の出演者が演じる事が出来るのは以下の通りです。
 ・勇者(必須/何名でも可)
※『火』に参加された方は同じ役の勇者でも構いません。
 ・水の国を支配するボス・藍刹主(必須/男性一名)
 ・澪琵亞(藍刹主の部下/必須/男性一名)
 ・睡蓮(藍刹主の部下/必須/女性一名)
 ・次代の姫巫女(必須/男性一名)
※姫巫女は基本的に性別はどっちでもOKですが、水1で男性が演じていたので今回も男性必須にさせていただきました。
 ・夜刀(前姫巫女に従っていた人物/必須/女性一名)
※何か‥必須ばかりで申し訳ないです(汗)
※必須役柄は埋めてください。
※今回、星詠姫は登場しませんので、演じることが出来ません。


●ジパングの設定
◎ジパングには人間の他に『妖しの者』と呼ばれる天狗や妖狐などが存在します。
星詠姫が選んだ勇者の中に『妖しの者』がいても問題はありません。
◎選ばれた勇者のうち『人間は神通力』を『妖しの者は妖術』を使う事が出来ます。
(一部を除く)
以下に種族設定を書いておきますので、ご参照下さい。

●人間‥扱える術は『神通力』
特に秀でた部分はないが、劣る部分もない種族。

●妖狐‥扱える術は『妖術』
腕力は強くないが、身軽な動きで敵を翻弄させることが出来る。
また、敵を己の虜にして操る事も出来る。
鞭や軽武器を扱うことに長けている。

●天狗‥扱える術は『妖術』
力、防御共に低いが、豊富な知識の持ち主で妖術の威力が高い。
扇子や羽団扇を扱うことに長けている。

●鬼‥扱える術はありません。
力は抜群の種族。
ずば抜けた力の代わりに妖術を使う事が出来ない。
斧などの重武器を扱うことに長けている。

※人間だけは種族以外に職業があり、それによって能力が変わっていきます。

『神通力』『妖術』は参加者の皆様が自由に決めて下さって構いません。

※今回参加したからと言って次回も必ず参加しなければならないという事はありませんので、気軽にご参加下さい。

●今回の参加者

 fa0406 トール・エル(13歳・♂・リス)
 fa0430 伝ノ助(19歳・♂・狸)
 fa4254 氷桜(25歳・♂・狼)
 fa4263 千架(18歳・♂・猫)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)
 fa4579 (22歳・♀・豹)
 fa5176 中善寺 浄太郎(18歳・♂・蛇)
 fa5394 高柳 徹平(20歳・♂・犬)
 fa5498 雅・G・アカツキ(29歳・♂・一角獣)
 fa5574 丙 十哉(24歳・♂・猫)

●リプレイ本文

「ここが奉納殿ですのね」
 奉納殿の入り口手前で立ち止まり、十尾流(トール・エル(fa0406))が呟く。
その時、夜刀(檀(fa4579))だけは複雑な表情をしていた。次代の姫巫女である翠嵐(丙 十哉(fa5574))を奉納殿へ連れてきたという達成感、そして水月の事を考えると素直に喜べないのだ。
「こうしていても始まらない、中へ入ろうか」
 羅佳(雅・G・アカツキ(fa5498))が言い、一行が奉納殿の中へ足を踏み入れた途端‥。
「ようこそ、勇者諸君&エトセトラ!」
 中に入ると同時に叫ばれ、そちらに視線を向けると藍刹主(千架(fa4263))が立っていた。
「ようこそ、イイ場所へ招待してやるぜ♪」
 そう藍刹主は楽しげに呟くと、暴風を巻き起こして一行を最上階へと送り出した。


「‥ここは‥っ」
 最上階へと送られた後、夜刀が立ち上がり拳を強く握り締める。そこは水月が自刃した場所であり、己の無力さを再確認させられる場所でもあった。
「ここは‥どこだべか‥」
 多々良(伝ノ助(fa0430))が周りを見渡しながら夜刀に問いかけようとして、言葉を詰まらせる。何故なら、夜刀が歯噛みし、その瞳から涙を零していたからだ。
「‥これは血の跡‥まさかここが‥?」
 渡(高柳 徹平(fa5394))が呟く。夜刀の態度、そして多量の血痕、これらを見て行き着く先は水月の死。
「ははは、夜刀は懐かしいだろ?お前が最後にいた場所だもんなぁ!」
 頭の中に響いてくるのは藍刹主の声、恐らく能力の一つだろう。
「俺は最下層で待ってるぜ、早く来いよな?」
 高らかに笑いながら藍刹主の声は遠ざかっていった。
「最下層って‥?」
 庚牙(中善寺 浄太郎(fa5176))が問いかけると夜刀は「祈りの間は最下層にあるんだ」と涙の混じった声で答えた。
「翠嵐、お前は後ろにいろ。俺が守るから」
 羅佳の言葉に翠嵐は「‥あぁ‥」と答えるが、己が水の国の『希望』である姫巫女なのだと実感が湧かないでいた。


「澪琵亞(百鬼 レイ(fa4361))、睡蓮(氷桜(fa4254))は途中で丁重に持成してやれや。あいつらが退屈しねぇようにな―‥つか俺が?」
 最下層で藍刹主はクククと笑いながら二人に言い渡す。それに対して二人は「分かりました」と答え、消えていく。


「誰!こんな所でバナナを食ったのは!」
 怒り狂いながらバナナの皮を手に取るのは多々良、どうやら滑ってこけたらしく頭を擦り、少し涙目だ。そして十尾流が何も言わずに横へと移動する、それと同時に鋭い氷槍が何本も襲い掛かってきた。
「十尾流さん!教えてくれてもいいのに!」
 庚牙は氷槍を大斧でなぎ払い、多々良は全て紙一重で避け、渡はお笑い漫画のような変な格好でそれらを避けている。
「‥器用だな」
 翠嵐がボソと呟くと「で、出られない」と変な格好のまま呟く。
「早く行くぞ、こんな罠に引っ掛かっている時間はないんだ」
 夜刀が急かすように叫ぶと十尾流が「ねぇ‥」と話しかける。
「貴方、何でそんなに必死なの?どんなに頑張っても死人は生き返りませんわよ?」
 十尾流の言葉にカッとなったのか「何だと!」と大きな声で叫んだ。その時―‥。
「危ない!」
 羅佳の声が響き、背後から洪水のような水がなだれ込んできた。
「翠嵐!」
 羅佳は翠嵐の手を取り、十尾流はひらりと宙を舞い水を避ける。
「くく、これで勇者とは無様ですね」
「本当に‥」
 水から出て、広い部屋に出ると澪琵亞と睡蓮が待っていた。
「貴方達など藍刹主様の手を煩わせる必要もない。ここで死んでもらいます」
 そう呟き、澪琵亞は幻術を発動させる。それに合わせるかのように睡蓮も水を鞭状へ変化させ、勇者達を攻撃する。
(「ここで殺られる程度なら‥話にならない。こいつらを倒した時こそ‥水月様の信じた勇者に―‥」)
 夜刀は勇者達が本当に希望なら、澪琵亞と睡蓮に倒される事はないはず、ある意味試すような感じで戦線を離脱した。
「ちょ‥何をするんだ!」
 突然襲い掛かってきた多々良に羅佳は翠嵐に攻撃がいかないようにトンファーで防御をする。それを見て澪琵亞は楽しげに下卑た笑みを浮かべている。
「余所見をしている暇がありますか?」
 鉄扇で口元を隠しながら、睡蓮は水の鞭で攻撃する。それを見て翠嵐は苦しげに顔を歪めた。
「俺は何も出来ないのか‥」
 目の前で起きている戦闘に半ば混乱状態に陥った翠嵐を見て羅佳は「しっかりしろ!」と怒鳴りつける。
「姫巫女は国を守る存在だ、選ばれた以上、お前がしっかりしなくてどうするんだ」
「お前に何が分かる!俺には戦える力も、戦術を組む知識もない!不幸ははっきり見えても希望の形なんか分かりゃしないんだ!俺は無力なんだよ!」
 その時、パシンと渇いた音が響く。それは羅佳が翠嵐の頬を叩いた音。
「何かをする前に諦める、それがお前の悪い所だ。不幸な事しか分からないんじゃない。不幸が分かるから希望への道も開けてくるんだろうが」
 羅佳はそれだけ言い残すと戦闘へと戻っていった。翠嵐は叩かれた頬に手を当て、唇を噛み締める。そして輝玉をきつく握り締めた。
「俺のやるべき事は諦める事じゃなく、信じる事‥大丈夫‥アンタ達なら勝てる‥占い師の言う事を信じろよ‥」
 苦戦を強いられている勇者達に言い聞かせるように呟くと同時に輝玉が淡く輝きだし、澪琵亞の幻術を解除した。
「何だと!」
 勝ちを確信していた澪琵亞は驚き「‥こんな事は予定にない!」と蛇へと姿を変え、尻尾で多々良の首を絞める。
「渡!」
 庚牙が叫び、二人は連携技で澪琵亞を攻撃する。敵と直線状に並び、靴底を庚牙へ、剣を敵へ向けて斧の腹で渡を叩き出すというものだ。打ち出された事により威力は倍増し、澪琵亞の腹を剣が貫く。
「‥最後まで予定に、ない事を‥」
 ざぁっと散りながら澪琵亞は悔しそうに呟き、消滅した。
「残るはアンタだけだ」
 羅佳がトンファーを睡蓮に向けながら言う。元々、戦闘に積極的に参加するつもりはなかったが、睡蓮が翠嵐を狙う為、積極的に参加せざるをえなかった。
「私は死なな―‥」
 睡蓮は呟きながら水の鞭で羅佳を攻撃―したはずだった。
「え‥」
 しかし、睡蓮の鞭が貫いているのは自身の体。
「あらあら、間違えて自分を攻撃?間抜けさんね」
 クスと笑いながら呟くのは十尾流、今までの戦闘中に十尾流は妖しい瞳で妖術をかけていたのだ。無念、そういい残して睡蓮は消えた。そして残るは藍刹主一人だけ。


「ここまで来るなんてやるじゃん♪」
 祈りの間で待っていた藍刹主は楽しげに呟き、襲い掛かってくる。
「その姿を見るのも我慢ならねぇだ!」
 そう言って多々良が攻撃を仕掛けると「いいの?」と藍刹主が問いかけてくる。
「操られた緋織って可能性もあるんだぜ?」
 読心能力で攻撃を先読みして、避けながら藍刹主は多々良を惑わせるように呟いた。
「姫巫女と戦うってのも楽しそうですわね」
 十尾流が笑みを浮かべながら呟くと藍刹主は「本当に勇者?」と面白そうに問いかける。
「多々良!騙されちゃ駄目だ!」
 渡が叫ぶが「分かってる!」と怒りを交えた声が響く。
「俺の知ってる緋織様は黙って操られる程弱い人じゃねぇだ。もう迷わねぇぞ‥おめぇは緋織様じゃなく、ただの魔物だ!」
 そう言って炎の槍を突き出す多々良に「騙されないか、残念♪」と藍刹主は呟いた。いつもより炎が増している事から多々良が吹っ切った事が伺える。
「ここからが本番だな!」
 風刃攻撃をしながら高速で移動する藍刹主に勇者達は苦戦を強いられた。
「‥翠嵐、あそこに輝玉を奉る台座がある、そこに輝玉を置いて奉納殿に聖気を戻せば藍刹主の動きも鈍くなるかもしれん」
 羅佳の言葉に翠嵐が「‥やるしかない‥」と言い聞かせるように呟き、藍刹主の背後にある台座目掛けて走り出した。
「はん、そこに行くってのは予想済みだ!」
 藍刹主が向きを変え、翠嵐に攻撃を仕掛けようとしたが夜刀がナイフで足を刺した為に翠嵐の行動を止める事は出来なかった。
「や‥とぉ‥っ」
 ギリと忌々しげに夜刀を睨み、輝玉が台座に置かれると奉納殿を包んでいた邪気が消え、聖気が戻る。
「くそ、面白くねぇな」
 力が抜けていく藍刹主は自分の手を見ながら舌打ち混じりに呟いた。
「‥俺はこの国の希望を見た、ここで俺が強くならなくちゃ‥」
 翠嵐の祈りに輝玉は答え、青い光を放ち藍刹主を包む。
「国を脅かせる魔性の輩よ、滅せよ『輝珠蒼浄』」
 翠嵐が輝玉を掲げながら叫ぶと藍刹主は「ツマンネェ‥な」と自嘲気味に笑いながら呟く。
「悔しくはねぇ‥けど遊べなくなるのはつまんねぇな‥」
 段々と薄れ行く藍刹主の前に十尾流が立ち「貴方よりも長く生きるわたくしの方が楽しむ事に関しては先輩ですわよ、残念でしたわね」と嫌味たっぷりの言葉を向けた。
「俺より強い奴もいる、精々頑張れや‥」
 クスと笑いながら藍刹主は消えていった―‥。


「まだ‥勇者は完全には信じる事は出来ない、だけど‥歩み寄ろうとは思う‥」
 全てが片付いた後、夜刀が小さく呟いた。
「羅佳さんはどうするだ?」
「俺は水の国に残ろうと思う。夜刀と同じように姫巫女の護り手となる」
 羅佳の言葉に「そうか‥」と庚牙が呟く。
「俺も俺を信じる事にした、俺は―‥姫巫女だからな」
 そう言って笑った翠嵐の顔はすっきりとした笑顔だった。
「また、会えるといいな」
 手を振りながら言う翠嵐に「そうだな」と言い残し、水の国を後にした。

END