私立帝野学園探偵部アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.6万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/06〜10/09
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●本文
『この映画は、映画監督を目指す人物による自主製作映画になります』
渡されたパンフレットの最初の一行にそう書いてあった。
監督などの名前を見ても、確かに聞いた事のない名前。
パンフレットの手書きをコピーした物を見た時点で低予算映画は一目瞭然だった。
話の内容は結構ありがちな感じで、結末を簡単に予想させるような内容に思えた。
以下の内容が今回の映画に関する簡単な説明になります。
「平和な学園に起きた殺人事件、この事件を解決すべく私立帝野学園探偵部が動き出す!」
◎舞台は私立帝野学園(結構有名な進学校)
◎出演者に渡される役は教師や生徒など学校に関する役が多い。
◎生徒役を演じる出演者は『私立帝野学園探偵部』という部活に所属している。
◎事件の発端は一人の女子生徒が殺された事から。
◎殺された女子生徒は数学の教師と仲が良かった。
◎数学教師は若い男性で、女子生徒からは憧れの的のような存在。
◎探偵部は犯人を探し、事件を解決する事が目的。
◎自主製作映画なので、スタッフも急募している。
●リプレイ本文
「撮影を始めるぞ」
カメラを手に話すのはジス(トシハキク(fa0629))だった。今回の撮影ではカメラマンを担当する事になった。
シーン1
私立帝野学園、この学校には珍しい部活があった。その名も『探偵部』である。今、部員達が行っているのは猫探しと文化祭中の校内見回りの二つだった。まず猫探しの方を見てみると‥白田(タブラ・ラサ(fa3802))が不機嫌ながらも目の前の猫を必死に追いかけている。白田の少し後ろをついて走るのは明石(ミミ・フォルネウス(fa4047))、菜原(逢月・遥(fa4374))の二人。
「捕まえたっ」
白田が猫を引きつけ、明石と菜原の二人がけで猫を捕まえた。すると、そこに校内を見回りしていた副部長の凪(百鬼・レイ(fa4361))が偶然通りかかる。
「猫探しが終わったんですか。今日はもう依頼はないので、部室に帰ってていいですよ」
「そんな事してて楽しいのか?お前ら‥」
茶化すように言うのは探偵部顧問である遠坂(金緑石(fa4717))だった。彼は何かにつけて部員達をからかっては楽しんでいた。
そこでジスは撮影中断を言い渡す。
「次の撮影を開始するぞ」
シーン2
文化祭2日目、探偵部は部室にいた。
「昨日の猫探しご苦労様、頑張っているようで何より、探偵は日々口コミですものね」
扇子を口元に当て、微笑むのは探偵部長である柊(夢想・白露(fa4756))、確りしている副部長とは違い、おっとりとした性格だ。
「藤原先生(鶤・(fa3351))なの」
明石が外を見ると、時計塔をバックに女子生徒と写真を撮る数学教師の姿があった。
「‥人気者だな、藤原先生は」
遠坂がそう呟いた瞬間―‥屋上から人が落ちてきた。目の前で起きた出来事に一瞬の沈黙の後、恐怖に染まった学校中から悲鳴が上がった。
「カット」
ジスの声が響き、屋上から落ちてきた『死体』の回収をした。
「毛布を丸めた物か、上手い事を考えるな」
金緑石がそれを見ながら感心した様に呟く。すると「マネキンだと確実に壊れるからな」と最もな意見が返ってくる。
シーン3
「これは自殺と断定しました」
文化祭は急遽中止になり、生徒は各自待機、教師は警察を交えての会議が行われていた。警察は自殺と断定し、会議が終了しようとした時に一人だけ意義を唱えた人物がいた。それは死亡した女子生徒の担任でもあった遠坂だった。
「待ってくれ。自殺と決めるのは早すぎるんじゃ‥」
「遠坂先生、警察が自殺と判断したんだ、それでいいんじゃないのか?」
他の教師も藤原と同じ意見らしく、遠坂は全員から冷たい視線を浴びせられる。結局『自殺』と片付けられたまま会議は終わり、遠坂は部室へと向かった。
「先生、事件はどうなりましたの?」
柊が言うと「自殺だ」と遠坂は短く答えた。
「でも‥副部長がおかしいって言っていました」
菜原が凪に視線を移しながら言う。遠坂は「おかしい?」と聞き返してくる。
「はい、落ちてきた時に見たんですが自殺にしては‥遺体がおかしいんですよ。」
凪は医学の知識に長けている。屋上から落ちてきた時に脈、瞳孔を調べ死亡確認をしていた。そして結論は『自殺にしてはおかしい』という事に到達したのだ。
「‥お前達が本当に自殺だと思えないんなら、こういう時こそ探偵が捜査すんじゃねぇのか?」
遠坂も頭の中では自殺だと思っていない。だからこそ探偵部に動いて欲しいという気持ちもあった。
「‥悪い事、ほっといちゃダメなの‥」
静かな部室に明石の小さな声が響く。
「そうですわね、今こそ探偵部が動く時ですわ」
パシンと扇子を閉じて「皆さん、覚悟はよろしくて?」と不適な笑みを浮かべて柊が問いかけた。
そこで一旦撮影が中断される。次は各所のシーン撮りをするようだ。
「えー‥次はタブラ君のシーンから始めていくぞ」
ジスは台本を読みながら次の撮影の準備をしながら出演者達に声を掛ける。
シーン4
「ここから落ちたのか」
白田は屋上に来て、捜査をしていた。もし本当に自殺でないのなら何かしらの痕跡が残っているだろうと考えたのだ。
「これは‥?」
排水溝の近くで隠れている紐を見つけ白田はそれを手に取る。指紋をつけないようにきちんとハンカチ越しに。何でもないかもしれないと思いながらも白田は紐が気になり、持ち帰ることにした。
そして探偵部の本格的な捜査が始まった。白田、明石、凪、菜原の四人で聞き込みをする事になった。
「‥部長さんがいないの‥」
明石が小さく呟く。そう、柊は「立派な探偵になる為ですわ」とにこやかに部室から送り出された。つまり、彼女は部室でゆっくりと部員が帰ってくるのを待っているだけなのだ。それに対して凪は「部長らしくない」とぶつぶつと独り言を言っている。
「お前達、何をしてるんだ?」
聞き込みをしていると藤原がやってきた。どうやら職員室に向かう途中らしい。
「自殺の件を調べてるんです。納得がいかないもので」
菜原が質問に答えると藤原は「‥そうか」と言葉を返してきた。
「そういえば、先生は仲が良かったんですよね?」
「‥まぁ、仲が良いと言えばそうなるかもな。何でそんな事を?」
藤原が問いかけると「捜査ですよ」と凪は言葉を濁した。その様子を菜原が神妙な顔で見ていた。その聞き込みの中で白田だけが上の空だった。
シーン5
「この紐‥藤原先生が持ってた‥」
聞き込みで藤原に会った時、教科書を纏めていた紐が屋上で見つけた紐と同じ物だった。
藤原の挙動をおかしく思った部員達が、藤原を調べると言い出したが「どうせ何も出てきませんよ」と言って白田は止めさせた。どうせなら自分で解決して皆を驚かせてやりたいと思ったのだ。トリックについてもある程度の予想が出来ていた。この方法なら誰でもアリバイを確保したまま殺人を行う事が出来る。
「何か痕跡がないかな」
紐を見つけた排水溝の近くを見回ってみると紐が擦れた跡などを見つける。これで自分の推理に確信を持ち、皆に教えるために後ろを振り返った時。
「何を見つけたんだい?」
優しく微笑む藤原の姿があった‥。
シーン6
「大体、分かりましたわ」
部員達の調査内容を聞いて柊が呟く。柊も何もしないふりをしていたが、彼女なりに調べていた。別行動で調べて両方が合っていたら確実性があるだろうから。
「これで藤原先生の犯行に間違いなさそうですわね。明石さん、これを全部覚えられるかしら?」
柊は事件内容を纏めたメモを明石に渡す。明石は「が、頑張ってみるの‥」とメモを受け取り覚えるために読み始めた。
「あれ、白田君は?」
菜原が呟き、部室を見るが白田の姿はない。
「まさか‥」
凪が叫び、慌てて屋上へと部員は向かう。途中で遠坂と出会い簡単に説明をして一緒に屋上へと向かう。屋上に着くと白田に襲い掛かっている藤原の姿を見つけた。
「藤原先生!そこまでです」
凪が叫ぶと白田を掴んでいる藤原の手が緩む。
「げほっ、何で?」
白田は部員が何故ここにいるのか分からずに、目を丸くしている。
「貴方と同じ推理にたどり着いたんですよ。証拠、持ってるんでしょう?」
柊が言うと、白田は見つけた紐を差し出した。
「藤原先生、何で‥?」
遠坂はまだ信じられないかのように呟く。仲が良かったはずなのに何故?と。
「何を‥言ってるんだ。俺が犯人のワケないだろ?」
「整理してみましょうか」
柊が扇子をパタンと閉じ、事件についての説明を始める。
「明石さん、お願いね」
明石はおずおずとしながらも頭の中に叩き込んでおいた事件のメモを呟き始める。
「‥トリックなの‥被害者を細くて強い紐で支えられているの。その紐は被害者を中心に、くの字に張ってあって片方の紐のは固定された大きな氷に引っ掛けられて、反対は重石をつけて排水溝の中に繋がってるの‥この時、力を分散させるためにドアノブに紐を引っ掛ける支点にしておくの」
「時間が来ると氷が溶け、被害者は落ちて、紐は重石に引っ張られて排水溝の中。その時間差の間にアリバイを確保しておけば犯人の枠から外れる‥いかがですか?」
菜原がトリックを簡単に纏めた紙を見せながら藤原に詰め寄る。すると藤原は震え始め「違う」と呟く。
「では、貴方が犯人じゃない確実な証拠を見せてください」
「写真を‥」
「推理通りだと、それはアリバイにはならない。本当にあんたが殺したのか?」
遠坂が問いかけると「俺は‥」と言葉にならない言葉を繰り返す。
「悪いとは思いましたけどロッカーの中を拝見させていただきました。そしたら白田君が見つけた紐と同じ物が見つかりましたわ」
柊が紐を見せながら言うと「俺は悪くない!」と突然叫びだした。
「あいつが俺を脅すから‥もう‥おしまいだ‥」
ぶつぶつと呟くと藤原はナイフを取り出して、自分の首に当てた。
「近寄るな‥このまま犯罪者として生きるくらいなら」
手に力を込めかけた所でパシンと渇いた音が響いた。叩いたのは柊、叩かれたのは藤原の手。ナイフがカランと落ちると「探偵として、貴方を死なせる訳にはいきませんの」と冷たく言い放った。
「夢見も悪いですしね」
その後、ジスは映画の編集を始めた。各所にあったBGM,撮影の仕方などを再度チェックする。犯人を若干多く撮影したのは視聴者の気を引くため。撮影の仕方、BGMの選び方、どれも映画を引き立てるものばかりで、低予算ながら映画は好評に終わった。