夢幻界廊 漆アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
03/30〜04/02
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●本文
『夢喰い、夢魔‥どっちで生きていくべきなんだろう?』
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「何、あの子‥」
それは、偶然一人の夢魔が見つけた少女だった。
仲間の匂いもする、しかし天敵である夢喰いの匂いもするのだ。
普通、夢喰いの能力と夢魔の能力をあわせ持つ存在などあり得ない。
それから暫く、夢魔はその子の様子を見ていた。
父親は人間、母親も人間、血の匂いを嗅ぎ取る限り三人は実の親子。
しかし、その子である少女は夢喰いと夢魔の能力を持っている。
夢魔としての覚醒をしていないのは、体の中に眠る夢喰いの能力が制御の役割をしているからだろう。
「面白いわね、夢喰い達との戦いに役立ちそう」
クス、と笑うと夢魔は少女へと近づいていった。
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●募集事項
◎これはアクション映画で、出演者のみを募集します。
◎今回の話に必要な役柄は以下の通りです。
・夢喰い(必須/何名でも可)
・夢魔(必須/何名でも可)
・OPの少女(必須/女性一名)
※とりあえず、必須役柄は上記の三つです。他にも適役がありましたらそちらを演じていただいても結構です。
◎夢喰いには『属性』と『属性系統に技』が一つあります。それらは参加された皆様が決める事ができるのですが『技』は必ず属性系統のものにしてください。
◎夢喰いには表の顔があります。夢喰いと言えど特殊な能力を持った『普通の人間』と変わりありません。生活をしていくのに仕事をしたり、学生だったら学校に通っていたりとしています。
◎逆に夢魔は人の生気をさえあれば生きていけるので、表の顔を持つ夢魔はほとんど存在しません。
※夢喰いの仲介所:毎回『夢猫』になっていますので今回も『夢猫』になります。
●リプレイ本文
「‥何で俺が店番を‥」
ため息混じりに呟くのは久樹(橘・月兎(fa0470))、本家に出向いた雄哉(七瀬・聖夜(fa1610))に頼まれて店番をしていたのだ。
そして遠慮がちに「あのぅ‥」と扉を開ける汐(各務聖(fa4614))が夢猫に入ってきた。
「今回の事で夢猫に行くように言われたんですけど‥」
今回の事?と久樹が問いかけようとした時に雄哉が戻ってきた。
「雄哉、今回の事件ってどういう事だ?」
久樹が問うと雄哉は「実は‥」と話し始めた。
<夢幻壊廊>
「いたた‥」
ベッドで痛みに顔を歪めながらプリンス(皇 流星(fa5450))が呟いた。
「これが痛みなのかぁ‥」
「あ‥気がつかれましたか‥」
大丈夫ですか?と困ったように問いかけてくるのは静音(仙道 愛歌(fa2772))だった。
「心配を掛けないでください‥亡くなった女王様に何とお詫びすればいいか‥」
静音は瞳を潤ませながら小さな声で呟いた。
「ボクならもう大丈夫だから‥」
そう言ってベッドから立ち上がり、プリンスは外へ出ようとする。
「プリンス様、待って‥待ってください!」
傷を押して出かけようとするプリンスを止めようとする静音だったが、それを振り切って出て行ってしまい、静音は「あのオンナは‥許せない」と低い声で呟いたのだった。
<夢猫>
「‥つまり両方の能力を持っている人物がいるというワケか‥」
雄哉の説明が終わり、久樹は納得したように呟く。
「どういう事なんだ‥普通はあり得ないだろう」
結那(レーヴァ(fa5257))が手を口元にあてながら言うが「夢喰いと夢魔の違いって何だろう‥」と悲しげに呟いた。
「夢魔ならさっさと殺しちゃえばいいのよ」
クッと冷たい笑みを浮かべながら呟くのは清十郎(結城丈治(fa2605))だった。
「とにかく、本人の様子を見ない事にはどうしようもないな‥」
「じゃあ、久樹さんは夢猫に残っていてもらっていいですか?」
構わないが、何故だ?と久樹が問いかけると「本家から連絡が入るかもしれないので」と短く答えた。
「分かった、何かあったら携帯に連絡を頼む。すぐに向かうから」
そう言う久樹を夢猫に残し、他の夢喰い達は問題の人物を探す事になった。
<公園>
「‥好きに暴れなさいな」
突然現れた紫雨(月 美鈴(fa3366))は輝夜(紅雪(fa0607))に問いかける。
「な、に‥?貴方は‥」
「夢魔の本性を思い出しなさいな」
紫雨の声を聞くたびに輝夜は自分の体がドクンと脈打つのが分かる。反応してはいけない、すると自分が自分でなくなってしまう、そう思っているのに体は勝手に反応していく。
「嫌だ、嫌、嫌――――‥」
輝夜はその場に膝折れ、意識が薄れていくのを感じていた。
「さて、ここからは別行動で探しましょうか」
雄哉の言葉に夢喰い達はそれぞれ別行動を取る事になった。
「アイツは‥」
アリス(真紅櫻(fa4961))の視線の先には雄哉、アリスは夢幻壊廊で両方の能力を持つ輝夜の話を聞き、たまたま目に入った雄哉へと襲い掛かる。
「夢魔!」
アリスが繰り出した火球を避け、雄哉は上空で攻撃を仕掛けてくるアリスに向かって叫んだ。
「さぁ、何の情報を手に入れたんだよ、教えてもらおうか!」
火球を次々に投げつけながらアリスは叫ぶ。
「情報‥何の事ですか、僕たちは混血児の救済を‥」
雄哉の言葉にアリスはピタリと攻撃をやめ、ストンと地面に降り立つ。
「情報もない?役に立たないな‥ん?この気配は‥」
言葉を止め、アリスは遠くを見ながら呟く。そして舌打ちをして「今はお前と戦うより僕にはやる事ができた」と言って再び宙を舞い、消えていった。
「くそ‥怪我さえなければ‥」
清十郎の攻撃を受けて、地面に膝をつくのはプリンス。毒の属性を持つ清十郎の攻撃は怪我をしている今、とても分が悪かった。
「アンタの能力は知ってるわ、でもね眠ってても使えるのかしら?」
そう言って清十郎は眠り毒を放出しながら呟く。流石のプリンスも毒を避けきる事はできずに段々と力が抜け「ね、眠い‥」と呟きながらその場に倒れてしまう。
「さて、どうしようかしらね」
楽しげに言う清十郎が止めを刺そうとした時に「待て!」と言いながら結那が清十郎を攻撃する。
「な、何よ、アンタ夢喰いのくせに夢魔を庇うの?」
「悪いな、こいつには借りがあるんでね!」
結那はプリンスを抱えながらその場を去る。そして安全な場所まで運ぶと「借りは返したからな」と小さく呟き、その場を去っていった。
「何で‥何で夢魔として覚醒しているんですか?」
輝夜を一番に発見したのは汐だった。しかし彼女は夢魔として覚醒しており、問答無用で汐に攻撃を仕掛けてくる。
「待って、私の話を聞いて下さい!」
何とか輝夜を正気に戻そうと説得を試みるが、相手にしてもらえず汐は念の能力を使いカード操作で防戦一方だった。カードを駆使して輝夜に攻撃を仕掛けるが中々当てる事が出来ずに防戦のみになっているのだ。
「姉様!プリンスがこっちに来ている筈なんだけど」
途中で割り込んできたアリスに紫雨は「そうなの?こっちには来てないけど‥」と首を傾げながら呟く。
「姉様!」
汐の放ったカードが紫雨を狙い、紫雨を庇ったアリスの腕を傷つける。それを見た紫雨は「‥覚悟は出来ていて?」とゆらりと汐に近づいてくる。氷の吹雪が辺り一面を覆い、汐に襲い掛かる。カードで防げない攻撃に、もう駄目だと諦めかけた時に現れたのは雄哉で、紫雨の体に電流を流して動けなくする。
「姉様!何しているのさ!仲間なら僕たちを援護しろよ!」
アリスが輝夜に叫び、攻撃を仕掛けようとした時にプリンスが割り込んできた。
「あの子はどこ?隠しても自分の為にならないよ?」
雄哉の首を羽交い絞めにしてプリンスは結那の居場所を聞き出そうとする。
「‥あの馬鹿」
ち、とアリスが舌打ちをしてプリンスを止めようとした時に輝夜がプリンスに能力『鍵』を使い、プリンスの能力全てを封印して「邪魔だ、若造が」と低い声で呟く。そして鳩尾にきつい一撃を食らわせる。
「こんなガキが時期王とはな‥」
完全に夢魔と化した輝夜に汐は「間に合わなかった‥」と悲しげに呟いた。
「とりあえずは退くぞ、夢喰い諸君、無駄な労力ご苦労だったな」
あははは、と輝夜は笑いながら夢幻壊廊へと姿を消していった。
「とりあえず私達も帰るわよ、帰ったら手当てをしてあげるわ」
紫雨はアリスの怪我を心配しながら消えて「よくもやったな、次を覚えてろよ!」と汐に言葉を投げかけながらアリスも夢幻壊廊へと帰っていった。
「結局‥誰も救えなかったんですね。私達は‥」
ぽたり、と地面を濡らすのは汐の涙。助けたいと必死になっていただけに彼女はショックを隠すことが出来なかったのだ。
<夢猫>
「そうか‥そんな事が‥」
夢猫に帰ってからも汐は泣き止む事なく、夢喰い達を困惑させていた。
「気にしなくてもいいだろう‥世の中、こういう事もある」
「夢魔として覚醒しなければ本家に処遇を聞いても良かったんですけど‥」
汐と久樹に珈琲を差し出しながら、雄哉が呟く。
「‥ありがとうございます」
汐は珈琲を受け取りながら一口飲み「美味しい」と呟いた。
「お気に召していただけたなら幸いですね」
でも汐の中では何故夢魔との争いを続けなければならないのか分からない自分との葛藤が続いていた。
<夢幻壊廊>
「‥法王も戯言を抜かしているようだな、こんなガキを後継者にしているとは」
夢幻壊廊に帰った後、輝夜が王に向かってきつい口調で呟いた。
「‥無礼でしょう、王に向かってプリンス様の悪口など‥」
静音が輝夜の言葉にむっとしたのか、表情を険しくしながら呟く。
「それに関してはボクも同感だよ、ねぇ‥ボス。マジでコレが跡継ぎのままでいいの?」
コレ、とプリンスを指差しながらアリスは忌々しげに問いかける。
「一体ボクが何を―‥」
「お前、いい加減にしないと‥いくら王の後継者でも消すよ?夢喰いに現を抜かしている後継者なんて夢魔は求めていないんだからさ」
アリスはきっと睨みつけながら言うと、プリンスも迫力負けしたのか「ボクは先に休む事にするよ」とその場を去っていった。
「まぁまぁ、怒りを静めて。アリス、怪我の手当てもしなくちゃいけないでしょう」
紫雨の言葉に「‥ん、分かった、姉様」とまだふくれっ面のままだが大人しく紫雨の後をついていくことにした。
「仲間割れとは、先が思いやられるな‥」
夢魔の王はため息混じりに呟いた。
この直後の出来事になる、夢幻壊廊が突然消失するという事件が起きたのは―‥。
END