輝く楽園アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 3.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/05〜04/08

●本文

「進むか戻るか、それはそれぞれの自由―‥」

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

※アンダーシティ・ポリス 最終回 : 輝く楽園 ※


「これはどういう事だ‥?」

先日、地上へ調査に行った捜査員が持ち帰ったカメラを現像して写真にすると

自分の目を疑うような事実がしっかりと残されていた。

「これは‥人?」

写真の隅っこ、小さくしか写っていないが、確かにこれは人間だ。

「まさか‥熱砂からどれくらいの月日が流れていると思ってい?熱砂直後は生き残りがいたとしても、今まで生きてこられるような環境ではなかったはずだ」

確かに、上司の言う通りだ。

だからこそ、人間は熱砂の影響を受けない地下に自分達の新しい世界を切り開いたのだから。

「隅に小さく、しかもぼけているから男性なのか、女性なのか分からないな」

そこで提案されたのが『地上に再調査』という事だった。

「しかし―‥問題が一つある」

上司の真面目な顔に、捜査員達は「問題?」と聞き返す。

「連結門の開閉エネルギーがあと一回分しか残っていない。地上にお前達が戦ってきたバケモノがいる以上、連結門を開けたままにはできない」

「そのエネルギーはどれくらいで溜まるんです?」

捜査員の言葉に上司は「‥‥30年か40年で一回分の開閉エネルギーが溜まる」と答えた。

「つまり―‥行くのはいいけど、戻って来れないというわけね」

調査内容は通信機を使えば、連結門で戻らなくとも送る事はできる。

しかし―‥調査の為に生きていけるのかも分からない地上へ放りだされることになるのだ。

「‥今回は無理にとは言わん、行きたいと志願する者だけ明日の朝、連結門前に来てくれ」

上司は捜査員達に言い残し、その場を去っていった。

地上へ再調査を求められたが、戻ってこれる保障はない。

どちらかといえば確実に戻って来れないと言った方が正しいだろう。

さぁ、どうする?

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
●募集事項
◎これはアクション映画で出演者のみを募集します。
◎今回の話に必要な役柄は以下の通りです。
 ・地下世界警察の捜査員。
 ・写真に写っていた地上に住んでいると思われる人間
◎地下世界警察の捜査員は『バムス』と呼ばれる特殊能力を持っています。
(これは参加者の皆様が自由に考えていただいて結構です)
◎前回の話に参加されてない方も大歓迎です。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
◎プレイングに書いて欲しいこと。
※役名/バムス/一人称/二人称/口調/

●今回の参加者

 fa0295 MAKOTO(17歳・♀・虎)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa2321 ブリッツ・アスカ(21歳・♀・虎)
 fa2825 リーベ・レンジ(39歳・♂・ハムスター)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3846 Rickey(20歳・♂・犬)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)
 fa4614 各務聖(15歳・♀・鷹)

●リプレイ本文

「発つ鳥跡を残さず‥ってね」
 草加(草壁 蛍(fa3072))はそう言いながら、自分が借りていた金を全て返済し、貸していた金は悪徳金融並の方法で回収した。そして私財の大半で地上生活に必要な物を買い揃え、残った金で歓楽街や水楼館で飲み食いしていた。その行動は地下世界への未練を断ち切るようにも見えた。
「他の皆はどうしているのかしらね」
 草加はため息混じりに呟き、飲み食いを再開した。


「ソニアさん(ブリッツ・アスカ(fa2321))も地上へ行くんですか?」
 リュックに荷物を詰めながら問うのはキリー(百鬼 レイ(fa4361))、彼は地上へ赴いた後に自給自足を覚悟しているのか保存食や野菜の種がぎっしりと詰め込んでいる。
「あぁ、前回は行きそびれたけど、俺も地上ってヤツを見てみたい。それに俺がいるといないとじゃ調査の進み具合が違ってくるぜ?」
 確かにソニアの能力は調査に役立つだろう。しかし地下へ戻って来れない話を彼女は聞いているのだろうか‥。
「地下へ戻れない話は聞いています?」
「‥あぁ、どっちにしても後悔するんなら俺は行く、お前もそうなんだろ?」
 ソニアは荷物を指差しながらキリーに話した。
「明日は早いんだ、早めに寝ろよ」
 そう言ってソニアは自室へと戻って行った。キリーは「そうですね‥」と呟き、愛用の銃を握り締めた。


 翌日、連結門の前に現れた捜査員は―‥草加、ソニア、キリー、レンズ(リーベ・レンジ(fa2825))、ジェイムズ(Rickey(fa3846))の5人だった。以外と志願者が多い事に上司は驚きつつも「‥神のご加護を」と呟きながら連結門を開いた。
 長い通路を通り抜けるとガコンと鈍い音をたてながら門は閉じていく。
「‥これで後戻りは出来ないんだな」
 閉まっていく門を見ながらレンズが呟く。その言葉が全員の胸に重く突き刺さった。それから地上へ出るまで誰も言葉を発そうとはしなかった。
「‥へぇ、これが空か‥」
 地上へ出て最初に呟いたのはソニアだった。地下とは違う開放感のある空に何処か心地良さそうにも見えた。
「さて、調査を始めようか!」
 沈む気持ちを吹き飛ばすかのようにジェイムズが叫び、調査を始めるように促す。


「この前見た人間らしい影、見えなくなっちゃったね‥。やっぱり見間違いだったのかな」
 私達、これからどうなるんだろう‥不安げに呟くのはノゾミ(姫乃 唯(fa1463))、彼女と行動を共にするのはユウヒ(MAKOTO(fa0295))、アイ(各務聖(fa4614))、地下世界とは別のコロニーからやってきた捜査員達だった。彼女達も調査に来て、自分達の世界に帰れずに途方にくれていた。
「向こうも警戒して隠れてるのかも。私が調べてくるよ」
「待って、一人じゃ危ないよ!私とアイも行く」
 三人は以前見た人影を探しに外へと出て行く事にした。
「でも私達以外に人がいるなんて‥信じられないよね。こんな所で生きていけるとも思えないし‥」
 ユウヒが荒廃した世界を見ながらため息混じりに呟く。
「そうですね―‥危ない!」
 突然アイが叫び、二人を突き飛ばす。それと同時に怪物の爪が地面に突き刺さる。
「逃げ場はない‥戦うしか‥」
 ユウヒが呟き、能力『超身体能力』を使い怪物目掛けて走り出す。アイも『翼』を使い「こっちを向きなさい!」と羽で援護攻撃をする。しかし決定打を打つ事が出来ずに苦戦をしているとノゾミが怪物の攻撃を受けてしまう。
「ノゾミさん!」
 アイが慌てて駆け寄る、致命傷は受けてはいないものの軽い傷ではすまされなかった。
「大丈夫‥癒しの光で治癒能力をあげてるから、大した事はないよ」
 しかし、このまま行けば三人に訪れるのは死―‥怪物を倒せるだけの能力を持つ人間がいないのだから。
「このままじゃ皆が危ない‥。私にも戦える力があったら―‥」
 怪物と戦うユウヒとアイを見て、ノゾミは悔しそうに拳を握り締めた。


「おい、あれは人間じゃないか?」
 レンズが遠くで怪物と交戦している人間を見つけて呟く。
「待ってろ、俺が調べてくる」
 ソニアが『スーパーソニック』で怪物の所まで行くと確かに三人の人間が襲われていた。ソニアは信号弾のような物を発砲して仲間達に合図を送る。そして能力を最大にして超音速パンチを怪物に繰り出した。
「人‥やっぱり見間違いじゃなかったんだね!」
 ノゾミは涙目になりながらアイに問う。
「凄い‥あの怪物に‥」
「お嬢さん達、大丈夫ですかーっ!俺が来たからにはもう大丈夫ですよ!」
 ジェイムズは叫び、能力『マジックアロー』を怪物に向けて放つ。決定打にはならないまでも怪物の足止めには十分な威力だった。
「皆!トドメは私のメギドでするわ、時間稼ぎをよろしく!」
 草加はそう言い放ち、能力解放の為に精神を集中させる。
「伏せていてください!」
 キリーは愛用の銃を構え、能力『バレットソーサラー』を使いながら怪物に発砲する。
「あ!」
 その際にキリーが所持していた通信機が壊れてしまう。あちゃー‥と思いながらも、まずは怪物を倒す事が最優先だと考え、キリーはスペアの弾丸を詰め込みながら再度発砲する。
「任せたぞ!草加」
 ソニアが言うと、草加は待ってましたと言わんばかりに手を怪物に向けて「一欠片すら残さず滅びなさい!」と叫びながらメギドを発動させた。
 その戦いぶりを見ていた三人は「凄い‥」の一言しか言う言葉がなかった。


「あぁ〜!通信機が!上司に怒られる〜‥」
 戦闘後、無惨な姿となった通信機を身ながらジェイムズが嘆いていた。
「どうせ上司には二度と会わないだろ、別に構わないじゃねぇか」
 嘆くジェイムズを見て、ソニアが呆れたようにため息混じりに呟いた。
「あ、あのすみません‥」
 大げさに嘆くジェイムズにアイが謝罪すると「んー‥いいよ。それよりキミ達が無事でよかった」と笑って答えた。
「遅くなりましたが、助けていただいてありがとうございます‥あの貴方達は‥?」
 アイが問いかけると「地下世界警察の人間だ」とレンズが答える。
「地下世界警察?じゃあ地上に住んでいる人間じゃないんだね」
 ユウヒが問い、その答えにノゾミが少しがっかりしたような表情を見せた。
「私達の他にも生きて暮らしている人がいたんだね」
 ノゾミの言葉に「他にも世界があるのですか?」とキリーが問いかけた。
「えぇ、私達はそっちの捜査員なんです。でも帰れなくなって‥」
「俺達と同じってワケか‥」
 ソニアがぽつりと呟く。
「お互いの世界にはもう戻れない、このまま地上で生きていけるかも分からないが、皆で協力して人が住めるような世界にしよう」
 突然言い出したのはレンズ、その言葉に全員少し考えたが「そうだね‥」とノゾミが呟く。
「私達はここで暮らしていくしかないんだものね。皆で協力して‥ここに『輝く楽園』を作ろう」
 ノゾミは先に天国へと旅立ってしまった仲間、そして今―‥頼もしい新たな仲間の前で決意したように凛とした表情で話した。
「そうね、住めば都と言うしね、せっかくだから大都市くらいにはしてやりましょう」
 草加も地下から持ってきた缶ビールや飲み物を全員に渡して誓いの乾杯をした。
「とりあえず‥お役にたてるか分かりませんが、私に出来る事を頑張りたいと思います」
 アイも渡されたジュースを飲み、決意したように呟いた。
「今日は始まりの日!保存食しかないけどぱーっと騒ぎましょう!」
 キリーはリュックから保存食を取り出し、全員に配る。その日、キリーは別のコロニーからやってきた三人と共通する娯楽や芸能の話で盛り上がっていった。
 彼らは何を得たわけでもない。
 これからの生活に光が見えたわけでもない。
 生き残れるかも分からない世界の中で、やらなければならない事は沢山ある。
 しかし、何故か8人は苦とは思わなかった。
 何故なら、一人ではないからだ。
 一緒に笑いを、悲しみを、怒りを分かち合う仲間がいるから生きていける、そう思わずにはいられなかった。
「きっと‥きっと大丈夫。だって私達が生きる先には無限の可能性が広がっているんですから‥」
 アイは広い空を見上げながら笑って話してみせた。


※※※


「地下世界か‥懐かしいな」
 錆びた連結門の前でキリーが立ち、呟く。あれからどのくらいの月日が流れたのだろう?
 あれから様々な苦労があったが、彼らは今、生きている。
「レンズさんを見ていると自分も若いような気がしますよ」
 数十年前と変わらない姿のレンズを見て苦笑する。
「草加殿達は?」
「相変わらず、怪物退治していますよ」
 元気ですから、キリーは笑いを堪えながら小さく呟く。

 ―ギ‥ギギィ

 レンズとキリーが他愛ない雑談を交わしている時、地下世界へと繋がる連結門が鈍い音をさせながら動き始めた。
「ここは―‥」
 現れたのは若い数人の男女、おそらく地下世界警察の捜査員達だろう。
 彼らが見たものは、少人数の元捜査員達―‥。
 そして彼らの見た世界は―――‥。



THE END