give☆me 2ndアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
04/06〜04/09
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●本文
『そこはお金では買えないモノを代価に、逃げたいモノから必ず逃がしてくれる
だけど、よく考えなさい。
その払う代価は、もしかしたら貴方の一生を左右するモノかもしれないのだから
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●話の内容
何で、こんな事になっちゃったのかな‥。
事の始まりは、自分が犯した罪からだった。
万引き―‥
塾、習い事、煩い親、全てが煩わしくなって、一度だけと心に決めて万引きをしてしまったのだ。
「あっれー、優等生ってば何してんのさ」
ハッと気がついた時に、後ろに立っていたのは同じクラスの『飯村』という男子生徒だった。
この飯村という男、はっきり言って良い噂を聞かない男だ。
学校内で堂々と煙草は吸う、暴力事件で停学には何度もなる、数日前には担任を殴り倒して病院送りにした。
「成績&運動神経抜群の優等生も人間なんだなぁ」
飯村はニヤニヤと笑いながら他にも何か言っていたが僕の頭の中はそれどころではなかった。
「さて、優等生クン。バラされたくなかったら‥‥‥分かるよな?」
この日から僕の生活はガラッと変わってしまった。
「ねぇ‥母さん、お金‥貰えないかな」
「また?一昨日もあげたばかりじゃないの‥」
「新しい参考書が出てさ、本屋で見たら分かりやすくて欲しくなっちゃったんだ」
参考書、その言葉に母親は「まぁ、そうなの」といいながら財布から一万円を差し出してきた。
「お勉強、頑張ってね」
その言葉に後ろめたさを感じながら僕は「‥はい‥」と答える。
それが一ヶ月ほど続いた頃、流石に母親が不審に思い始めたのかお金を出し渋るようになってきた。
いっその事、飯村を殺してしまえば楽になれるだろうか、そう思った時だった。
「おにーさん、そんなサイテーな奴を殺しても、おにーさんが犯罪者になるだけだよ」
突然現れた少年・白神 透はにっこりと笑みながら僕に話しかけてきた。
「それよりもさ、そのサイテーな男から逃がしてあげようか?」
「逃がす‥?無理だ‥僕は遠くに逃げるような度胸はない‥」
「あはは、違うよ。サイテー男を消して、逃がしてあげようか?って言ってるんだ」
この少年は何を言っているんだろう、笑いながら言ってはいるが凄く怖いことを言ってるような気がする。
「気が向いたら、すぐそこの燐月堂ってアンティークショップに来てよ。僕と相棒の珪がきっと、おにーさんの望みを叶えてあげるよ」
そう言って透が立ち去ろうとしたとき「あ」と思い出したように呟き、僕の所へと戻ってきた。
「ちなみに代価は高いからね、お金じゃなくおにーさんの『才能』を頂くから」
勉強が出来る才能、運動が出来る才能、それらを僕から奪うと透は言う。
飯村から逃げるには僕は今までの優等生ではなくなる、だけどこのまま何も頼まなかったら一生、飯村は僕を脅しにやってくるかもしれない―‥。
―僕はどうしたらいいんだろう‥。
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●募集事項
◎これは映画で、出演者のみを募集します。
◎今回の役柄については以下の通りです。
・白石 透(逃がし屋)
・鹿嶋 珪(逃がし屋)
・OPの僕(依頼主)
・飯村(『僕』を脅す同級生)
※上記4つの配役は埋めてください。
※透・珪・燐月堂は前回参加してくださった方が決めてくれたものです。登場する人間は同じなのでそのまま使わせていただきました。
※燐月堂はアンティークショップ店で、店に並ぶもののほとんどは出所不明が多い。
※上記以外にも疑問点がありましたら、他の参加者の方と話し合っての設定追加はOKです。
●リプレイ本文
「こんにちは〜‥」
アンティーク店『燐月堂』の扉を開くのは西条(最上さくら(fa0169))だった。彼女は透(タブラ・ラサ(fa3802))と珪(レイス・アゲート(fa4728))の裏家業を知りつつも頻繁に店へやってきていた。
「これは、よくいらっしゃいました」
珪は入ってきた西条に穏やかな笑みを向けて出迎える。
「何か新しい物が入ってないかな、と見に来ました」
西条が言うと「毎回ご利用ありがとうございます、よくご覧になって下さい」と答えた。そして棚の商品を見ている時に「あ、そういえば」と西条が思い出したように呟いた。
「ここに来るまでに透君を見たんだけど、あれって裏のお仕事でしょう?」
そう、西条はここに来る前に快(氷咲 華唯(fa0142))と透が話しているのを見かけたのだ。幸いにも西条のいた位置は二人からは死角になっており、気づかれる事はなかった。
「あの子からは綺麗な水晶ができそうだね。あの子の水晶ができたら見せてね」
西条は妖しげな壷を手に取りながらクスと笑みを浮かべて珪に呟く。
「かしこまりました。こちらとしては代金を払っていただけるなら喜んでお売りしますよ」
そう、人の『大切な何か』を封じた水晶は西条の手に渡っている事が多い。作家である彼女は水晶を見てインスピレーションが降りてくるのだと話していた事があった。
「それじゃ、宜しくね」
そういいながら西条は燐月堂から出て行った。
「高羽、最近何かあったのか?」
帰宅する時、門の前で体育教師・大楯(マサイアス・アドゥーベ(fa3957))が快に話しかけてきた。
「‥いえ、別に‥?」
内心はどきどきしながらも快は平静を装って答える。
「何もないならいいのだが‥飯村(シヅル・ナタス(fa2459))と一緒にいる所をよく見かけるのでな」
飯村、その名前が出てきて余計に心臓が早鐘を打つ。何もありません、そう言って快は足早に大楯の前から立ち去った。
「‥はぁ‥僕はどうすれば‥」
快は大楯から逃げた後、人気のない公園に来ていた。ブランコに乗って意味もなく揺らしながらため息を吐いた。
「‥‥お前は‥‥」
今から仕事なのか、快が以前万引きをした店の店長・白桜(氷桜(fa4254))が快を見つけ、声を掛けてきた。手にエプロンを持っている所を見れば今から仕事に行くのだろう。快にとっては飯村の次に会いたくない人物でもあった。
「‥‥もう万引きはしていないだろうな?」
少し責めるようなきつい口調で言うと「してません」と短い言葉が返ってきた。快は万万引きをした時、事務所へと連れて行かれたが初犯という事で警察・親などに連絡をされずにすんだ。結局はその帰りを飯村に見つかってしまい、今に至るのだけれど。
「‥‥なら、いい。悔やむ気持ちがあるなら今後はしない事だ」
白桜は「‥早く家に帰れ」と言い残し、店へと歩いていった。
「‥悔やんではいる、だけど―‥」
快は苦しそうに呟く、それと同時に頭に浮かぶのは飯村の顔。きっと逆らえば先生達にバラされてしまう。
「‥お前、さっき透と話していたな」
今日はよく人に声を掛けられる日だ、そう思いながら快が顔を上げるとスーツ姿の名梨(名無しの演技者(fa2582))が立っていた。
「‥何か悩み事があるのか?」
名梨が問いかけると「‥関係ないです」と快は短い言葉を返した。
「万引き‥とか聞こえたが?」
名梨の言葉に快はビクと肩を震わせる。
「まぁ‥確かに万引きは悪い事だが、お前はガキだからな。気の迷いという事もあるだろう」
名梨の言葉を快は何も言う事なく黙って聞いている。
「才能なき者が努力によって才能ある者を打ち負かした事なんぞ世界にはざらとある。同じように才能ある者が悪に手を染める事も同じほどある。最終的にどうするかを決めるのはお前自身だ。透や珪でもなく、我輩でもなく、お前自身が決めた道を進めばいい」
名梨の言葉を聞きながら、依頼の話も聞かれていたのか‥と何処か他人事のように快は思っていた。
「それに」
考えている最中で言われ、快は「え?」と聞き返す。
「第三の選択として親に相談する、という事も出来るがな」
名梨の言葉に快の表情が暗くなる。親は自分に期待しているのだ、こんな事を言ったらきっと泣かれてしまうだろう。
「ま、人生綺麗な生き方なんて出来るかよ。どこかで汚れちまうんだ」
そう言いながら名梨は当初の目的だった燐月堂へと向けて足を動かし始めた。
「‥分かってる、分かってるからこそ決められないんじゃないか‥」
名梨の姿が見えなくなった頃に快は携帯を取り出して、メール画面を見ながら呟いた。
『優等生サンへ。最近さ、金の払いが悪くなったよな?別に俺は困らないけど、そっちは困るんじゃねーの?明日までに十万ヨロシクな』
これは数時間前に飯村から届いたメール。明日までに十万円を持ってこなければ親・学校にバラすと言ってきているのだ。もう考えている時間はなくなっているのだ。
「‥でも‥」
自分の平穏の為に人を消すことに躊躇いを感じている自分もいた。しかし飯村から脅される生活がいつまで続くのだろう?卒業まで?それとも―‥一生?
「お久しぶりですね。本日は、良い品が手に入りましたでしょうか?見せてもらえますか?」
そう言って珪は名梨が持ってきた品物を珍しげに見る。
「これは古風な刀剣ですね。状態もいい」
珪は鈍く輝く刀剣を見て、満足げに呟いた。
「では、それを収めるとしよう」
「いつもありがとうございます、またお願いしますね」
珪は丁寧に頭を下げ、名梨が出て行くのを見送った。
「そういえば、透。依頼人は来ると思いますか?」
奥の部屋でくつろぐ透に問いかけると「んー‥迷っている感じだったからね」とその時の事を思い浮かべながら答える。
「でも、彼はきっと来るよ‥‥ほら、来た」
入り口の方を見ながら透が呟く。珪は「おや、本当ですね」と少し驚いたように答えた。
「いらっしゃいませ」
中々、店に入ってこない快に珪は扉を開けて挨拶をする。快は驚きながらも「‥い、依頼の話を‥」と口ごもりながら呟いた。
「中にお入り下さい。詳しい話は中でしましょう」
快を奥の部屋へと促し、透が「決めたの?」と問いかける。
「‥このまま脅され続けるくらいなら‥才能という代償は大きいけれど、それで平穏が戻ってくるなら構わない」
快の言葉を聞き、珪は「そうですか、では」と水晶球を持って来て、説明を始めた。説明は至って簡単。快の才能を取り出し、水晶球に封じる。それと同時に飯村もこの世から存在自体が消えてなくなる、というものだった。
「本当に‥飯村は消えるんですか?」
「本当だよ、僕たちに不可能はない。代償を払ってもらえるなら何でもしてあげるよ」
どうする?と透がからかうように問いかける。快はゴクと喉を鳴らし「お願いします」と短く告げた。
「では、透。お願いします」
珪がテーブルに水晶球を置き、透は快の額に手を置く。そして次の瞬間には「はい、終わり」と告げられた。
「これで‥?」
「そう、終わり。キミは才能を代償に平穏を得た‥それが自分の望んだ平穏だといいね」
透は冷たく笑み、快は首を傾げながら燐月堂を後にした。
それから、飯村の姿を見ることはなかった。クラスメイトに聞いても「誰?」という言葉が返ってくるだけ。自分は解放された。これからは自分に出来る事を探そう、そう思うと少しだけ気が楽になる快だった。
「どうした、高羽!最近たるんでおるぞ!」
大楯が叫んで快を叱る。別に快は手を抜いて授業を受けているわけではない。『今』の快にとってはこれが精一杯なのだ。『昔』の才能はもう捨ててしまったのだから。
「はい!すみません!」
そう謝りながら快は校庭を走る。依頼してよかった、飯村がいなくなった事で心からそう思える快だった。
「取り返しのつく事とつかない事、ぱっと見では分からないよね。彼は『取り返しのつかない選択』をした。全てを明かしていれば本当の意味で自由になれたかもしれないのに」
快の才能を封じた水晶球を見ながら透はポツリと呟く。
「そうですね、しかしご苦労様です。今日も忙しい日でしたね。裏も表もお客さんがいるのは良い事です」
「‥何、それ」
それ、透は珪の持ってきた皿を指差しながら問いかける。
「そうそう、本日は良い筍を貰ったので味見をしてもらえませんか?筍はお好きでしたよね?」
「ま、好きだけどさ」
透は一口食べて「あれ、どうするの?」と水晶球を指差しながら珪に問いかける。
「西条さんにお売りするお約束でしたので、明日にでもご連絡しておきましょう」
「あの人はこれから幾つの水晶を僕たちから買うつもりだろう。そのたびに時間を僕たちに払って‥彼女は満足なのかな。やっぱり人間って理解できないね」
そう呟いて、透は再び筍を口にし始めた。
END